1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十六年五月十七日(水曜日)
午前十一時三十六分開議
出席小委員
小委員長 岡本 茂君
岡崎 英城君 笹本 一雄君
首藤 新八君 板川 正吾君
中村 重光君
出席政府委員
通商産業事務官
(企業局長) 松尾 金藏君
小委員外の出席者
議 員 春日 一幸君
通商産業事務官
(企業局商務
課 長) 斎藤 太一君
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本日の会議に付した案件
割賦販売法案(内閣提出第四〇号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/0
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001・岡本茂
○岡本小委員長 これより割賦販売法案審査小委員会を開会いたします。
割賦販売法案を議題とし審査を進めます。
質疑の通告がありますので、順次これを許します。中村重光君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/1
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002・中村重光
○中村(重)小委員 この前の委員会で疑問点をただしたわけですが、なお疑問に思う点が相当ありますのでお尋ねします。
第五条に、「契約の解除等の制限」というのがあるわけですが、この中に、十五日以上の支払い催告に応じなかった、こういう場合は、割賦支払いのいわゆる期限の利益を失うのだ、こういうことで、前回私は、病気であるとかあるいは農村地帯は現金が毎月きまって入るわけではない、そうしたこと、あるいはまた寒冷地の関係、そのような点をどう考えているのか、なおまた十五日というのは、期間としてはあまり短過ぎるのではないか、こういうような点をただしたのですが、民法上は三日ということになっているので、十五日が相当だというような松尾局長の答弁があったのですが、この点は前の国会でも相当議論になっておるところです。流通部会の方でも、この点はいろいろ論議されたということも伺っておるのですが、やはり十五日というのは無理だというように思うのです。そうした病気の場合であるとか、もろもろの事情というような点をどのように考慮していこうとするのか、そういう点を一応局長から伺ってみたいと思うのです。
それから時間の促進をはかるため、その他の点をお尋ねしてみるわけですが、十五日が過ぎた、支払いがその期間内にできなかった、こういう場合は、何月何日をもってこの契約は解除されるんだという販売者側の意思表示というものがこの条項では必要になっていないのです。その間にはもろもろのことがあろうと思うのです。実はこういう事情でどうしても支払えないから待ってくれないか、こういう相談もありましょうし、あるいは遅滞金全額を払い切らなかった場合、一部を払うということもあるんじゃないかと思うのです。その場合は、やはり販売者側と購入者側ですから、そこに円満な話し合いというものもできると思うのです。ところが、そこでは一応話はできたけれども、その話の通り実行できなかったというような場合、再度の催告というものが必要になっていないと思うのです。そういう点はいろいろ問題を起こしてくるんじゃないかと思うのです。もう少しこのところは流通秩序をよくしていくんだ、健全にするんだというこの法律の建前からしても、もっと親切に、問題を起こさないによう、明記すべきところは明記していくことが適当ではなかろうかというように思うのです。まだその他第五条に関連していろいろありますけれども、そういった点に対しての考え方を一つ聞かしていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/2
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003・松尾金藏
○松尾政府委員 今お話のございました点は、法律でこのような問題を規制していく場合に、現実の、特に割賦販売は私の生活と非常に密着しておりますので、そういうところとの調整が法律制度の限界として、どこまで行き得るかということは非常にむずかしい問題だと思います。この法律の第五条の規定の仕方は、今お話のございましたように、民法の例外を認めて、例外規定をして、特に催告をしなければならない、しかも十五日以上の相当期間を定めて書面で催告をしなければならないということにいたしております。それでは催告をしてもなお払わなかった場合に直ちに、契約解除という事態が起こるのかどうかという点は、法律上の形だけで読みますと、今お話しのように催告の仕方にもよると思いますが、催告をして、この催告期間内に支払わなければ直ちに契約を解除いたしますよというような催告と同時に契約解除の申し入れをするような催告の仕方をやる場合もあると思います。しかし、そうではなくて、催告だけをして、そのあとで支払いがなかったら、あらためて契約解除の申し入れをするというようなことをやる場合もあると思います。それは実際問題でありますが、ただ、この第五条で書いておりますのは、そういう手続を踏むことを販売業者の方に法律をもって強制をして、最小限度それだけはやらなければならぬ、しかし十五日以上の相当期間を定めて催告をしたならば、直ちに契約解除しなければならないとかなんとかいうことを規定しているわけではもちろんございませんで、それだけのことをやらなければ契約解除はできませんよということをいっておりますから、現実の場合に、販売業者の方がそこで直ちに契約解除した方が、自分の方に有利であると判断するかどうかという問題が、現実の問題としてあると思います。おそらく割賦販売の場合には、販売業者はすでに商品を渡しておる場合が大部分であります。かりに契約解除をして、あと契約解除手続で品物を取り戻したりあるいは云々という手続をとるよりは、できるならば契約を継続して、最終的には代金の受け取りが若干おくれても、おそらく販売業者の方からいえば人手することが、経済的には有利であるという常識的な判断ができると思いますので、この法律では最小限度のことを書いておりますけれども、現実問題とすれば、催告期間が切れてすぐに契約解除という事態が起こって物を取り返す云々ということではなくて、当然両方の間で話し合いが行なわれるであろう、話し合いの結果、販売業者の方が、今お話のありましたようなお客さんの方でやむを得ない病気その他の事故があって、おそらくその事態が過ぎれば、いずれは払ってもらえるであろうというような経済的判断をいたしますれば、先ほど申しましたように、販売業者の方は契約解除に行くよりは契約を続けて若干おくれても代金を回収した方が有利なのでありますから、そういう場合には契約解除ということにならないで、話し合いの結果いずれ払ってもらえるという見通しがつけば、契約解除という事態は起こらないと思う。この法律の五条で規定しておりますのは、最小限度そういうことをやらなければ契約解除はできないということだけを規定しておるのであります。そこが法律の限界点だ。法律で現実問題を規制しようとするときには、法律技術的にはそこまでのところしかできない、法律の限界点だという感じを私は持っております。これが先生の御質問に十分お答えしたことになるかどうかあれですが、現実にはそういう格好になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/3
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004・中村重光
○中村(重)小委員 立案者の思想的な考え方もあると思うのですけれども、契約というものは相対的でなければならぬと思うのです。今あなたの御答弁だと、最小限度とおっしゃる。販売業者側にとっては最小限度でしょうが、これは相対的ですから、今度は購入者側にとっては、それだけの最大限度というか、非常に無理な形が要求されるということになるわけです。これは現実の場合にも民法上から考えても、これでは不備だと私は思っておるのです。まず十五日以上の催告をし、それでも払わないという場合が履行しないのだから、その場合は何月何日をもってあなたとの契約は解除する、こういう意思表示をするという民法の建前であり、現実にもそういうことでやらなければうまく行かないのです。また外国の例をとってみても、ドイツやスイスは、二回引き続いて遅滞した場合、しかもその遅滞額が販売総額の一〇%に達した場合でなければ契約の解除はできないということになっているのですね。ところが、私は、二回引き続いてというのには無理があると思うのです。そうなってくると、二回続いた。三回目にまた入れた、また二回続けた、こうなりますから、引き続いてということはいけないけれども、やはり二回以上というような形、そのくらいに緩和しなければかえってうまく行かないのじゃなかろうかというように思う。
もう一つは、常識的に考えてみてもそうなんですが、販売した品物がまだ販売者側の占有になっていない期間があるわけです。契約は解除した、解除したけれども、まだ品物は取り戻していない、こういう場合は購入者側がまだ占有しておるわけです。その目的物が販売者側の占有に帰するその前に遅滞額を持っていって払った、そういう場合はやはり契約は継続されるという形の明記が第五条の中に必要だということ、そうしたことをここへ明記することは何も複雑なことでもないわけです。契約解除の場合は販売者側の意思表示が必要であるということ、それから目的物が販売者側の占有に帰する前に、何日ということを限ってもいいわけですが、そういう遅滞額を持ってきたならばその契約は継続されるということ、こういうことをうたう必要があると思う。
それから三点は、先ほど申し上げましたように、ここでは十五日だけだ、こういうことなんですけれども、諸外国の例等を見ても、非常に過酷になるのじゃなかろうかと思うのです。こういう点どうですか、いろいろ流通部会でも論議されているのでしょうが。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/4
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005・松尾金藏
○松尾政府委員 「十五日」云々のこの期間は、前から御説明いたしておりますように民法に対する特例としてこの程度ということについては、十五日では長過ぎる、とんでもない話だという意見と、逆の今のような御意見と双方の妥協、というと言葉は悪うございますが、この辺でしか流通部会での御議論の折り合いがつかなかった、そういう経緯を持っております。現在の民法で三日程度、しかもそれは特約をやらなくても、書面の催告も要らない、で、即時に契約解除ができる。それに比べれば、まず書面の催告、しかも十五日以上の書面の催告、それも書面は当然到達主義でありますから、それにも若干の日にちがかかるであろうというようなことを考えますと、「十五日」云々の点は、特に悪質な販売業者がこれを悪用するというようなことを考えない限りは、お客さん、消費者のためには私は一応十分な保護期間であると思います。しかし逆に悪質の消費者、お客さんがおってこの規定を乱用されないようにということで、結局販売業者と消費者との間の利害の調節をはかって、悪質のお客さんが不測の損害を販売業者に与えたために、販売業者は逆にそのコストを善良なお客さんの方に転嫁しなければならぬというような事態を防ぐことも、また割賦販売の健全な発達のために必要でありますから、そこは双方の調整点をとらざるを得ない。その意味で十五日という保護期間というのは、私は消費者のためにかなり有利な保護期間であると思います。
それからその問題を離れまして、今お話の契約解除についてあらためて意思表示をする必要があるのではないかという点は、この法文の書き方は、当然契約解除はある手続をふまなければできないという表現になっておりますから、契約解除には契約解除のための意思表示をしなければならぬことは、これはこの条文自体にはそこを書いておりませんが、契約解除をやりたければ、この第五条のような手続をふんででなければ契約解除ができない。従って契約解除のためには契約解除の意思表示をしなければならぬということは、これはむしろ当然出てくる問題であろうと思います。ただ先ほど申しましたように、この契約解除を催告と同時にやるのか、あるいは催告期間が過ぎてあらためて契約解除をやるのかという問題がございますけれども、契約解除の意思表示をしなければ契約解除という事態が発生しないことは法律上明らかになると思います。
それから第三点の占有の状態が販売業者に戻る以前に一部でも支払えば、それについては契約解除ができないようにしたらどうかという御意見であると思いますが、これは販売業者が契約解除という手続をとらない以前に返品した品物を取り戻すということは実際上あり得ないと思います。契約解除をしてしかる後に品物を取り戻す、従って占有を取り戻すということになると思いますが、その際に契約解除はしたけれども品物がまだ戻っていないならば、代金をあわてて持っていけば、また契約解除がもとに戻るというような法律手続として非常に複雑な手続になるのではないかと思います。従いまして契約解除はしたけれども、また契約解除が戻るというような法律構成は、技術的に非常にむずかしいと思いますので、もしそういうことがありますならば、そういう場合は契約解除が起こらないとか、あるいはできないというような、もう一歩手前のところで制限をつけるということしか方法がないのではないかと思います。これは法律技術の問題と現実の問題との限界点ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/5
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006・中村重光
○中村(重)小委員 第五条の契約解除の問題ですが、これは松尾局長のお話はそういう御解釈でしょうけれども、この法文の上から、今あなたのおっしゃったようなことになるということは言えない。その人の解釈の仕方です。これは十五日の期間を過ぎたら自動的に契約は解除される。こういうようにもとれます。私はそういう解釈をとります。あなたはそうじゃないんだ。当然何らかの意思表示をしなければならぬ、そういう解釈なんです。そういうようにいずれにもとれるような法文の規定の仕方をしておる。金融関係の支払いとか何とかいうものもいろいろ例があります。これは御承知になっておるところもあると思うのですが、必ず意思表示というものが行なわれることになっておるのですが、やはりこういう法律を作るときには、いろいろな解釈が成り立たないように、もうちょっとここに書き添えればいいわけですからそのことが必要だろう。商行為ですから、できるだけ業者との間にトラブルが起こらないような形が望ましいと思う。そういう思想でこうした条文は作っていく必要があると思うのです。それから目的物の占有が販売者側に移っていない場合、それは契約を解除したあとでは問題があるのではないかというような問題、その前に何かあればけっこうでしょうけれども、その売った品物をまだ取り戻していない場合、いろいろ金策をやってようやく持っていく。しかし相当期間身過ぎておった、すでに契約を解除されていた。そういう場合にはやはりお金を払う、そしてこの契約は依然として継続するという、いわゆる契約の復活なんです。そういう形が現実にあるのです。やはり契約はそれによって継続されるんだ、こういう建前を法律上とっていく必要がある。私はこの点はやはり修正をしなければならぬと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/6
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007・岡本茂
○岡本小委員長 ちょっと速記をとめて。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/7
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008・岡本茂
○岡本小委員長 それでは速記を始めて。中村小委員。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/8
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009・中村重光
○中村(重)小委員 次に第六条の「契約の解除に伴う損害賠償等の額の制限」というのがあるわけですが、この契約解除によって期限の利益を失った。ところが販売者側から購入者が物を買った、そういう場合に、実際は無効なのだけれども、特約を結ぶということがある。ところが実際は履行しなかったから販売者側はその結んだ特約によって損害賠償金を払えとかあるいは違約金を払えとか、こういう請求をする。ところがこの法律によるとそれは無効なのですね。そういう特約は無効だということになっている。そこでその次に販売者側の要求は第七条の所有権の留保の推定が行なわれた。それなら物を引き取るぞ、物を返せ、こういう要求をしてくる。そこで購入者側はそういう無理を聞かなければ、いわゆる損害賠償とか違約金とか不当な要求を聞かなければ物を取られる。物を返すよりも幾らかでも払った方がましだ、こういう弱い立場に立ってそういう無理に従わなければならぬという問題等も起こってくることが現実にあるわけです。私はこのことを一つの修正の意見として申し上げるわけではないのですが、この法文をずっと読んでみると、そうした無理が起こってくる。これを何か規制するような措置がないのか。これにはこういう場合は勧告措置というものがないわけです。先ではいろいろな場合、頭金の問題とか割賦支払い期限の問題では通産大臣は勧告することができる。ところが販売者がやってはならない契約、いわゆる特約を結んでおこった場合、そういうことはけしからぬぞ、こういうことで購入者側を守るための勧告はどこにも出てこない。そういうことがやはり一つのトラブルを起こしてくる結果が生まれてくる。こういうこともこの法律の片手落ち的なところである、こう思っておる。そういう点はどうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/9
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010・松尾金藏
○松尾政府委員 一般的にこの法案の趣旨といたしますところは、御承知のようなことでございますから、秩序法ではありますけれども、政府が個々の契約にあまり介入してどうこうということはとうてい繁雑でもあり、またやるべきことではないと、思います。そうではなくて、むしろ一般的に契約約款につきまして、模範約款というようなものを行政指導その他で、一般的な行政指導ということは当然私どもとしては考えておりますが、今お話のような場合に、この法律に違反するような特約を結んでおいて、それが販売業者の思う通りにならなければ、所有権留保の規定があるぞ。これは法律の仕組みからいえば、そういうことは主張できないはずでありますが、それが必ずしも一般に法律に明るい人ばかりではありませんから、心理的に何となしにそういうことで不利な状態に陥るということを防ぐためには、やはり約款そのものが公正に作られておらなければならぬ。従いまして個々の契約の問題に立ち入ることではありませんが、一般の約款にも模範約款ということを考えていくべきだと思います。
それから今申しましたように所有権留保の規定というのは、これは今の説明の中にありましたような、この法律の条項に違反するような特約、特約を許さないものについて特約を結んでおいて、それで思う通りにならなければ取り戻すというようなことを想定しているわけでは決してない、法律もそういうふうには読めないわけであります。この法律では所有権留保ということで最終的に物を取り返そうと思えば、その前提として消費者の万に、契約解除の原因になるような不払いその他の手落ちがあって、第五条、第六条というような条文の手続で契約解除が行なわれて、しかる後でなければ所有権の留保の規定が働いてきて取り戻すことができないということで、法律上はそこは何ら欠くるところはないはずであります。ただ今お話の何となしにそういうことで心理的な圧迫を受けやせぬかという事実問題が、あるいはあるかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/10
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011・中村重光
○中村(重)小委員 おっしゃる通り法律の中からそうい結うびつきは出て参りません。しかし現実はそういう結びつきが必ず出てくることは間違いございません。そこで第七条の所有権留保の推定ということも一つの問題点として考えていかなければならぬと思います。しかしそれはそこでおきます。
次に、当該商品が返還された場合、通常の使用料の額というのがあるわけですが、使用料の額は一般的な定めがあるものがありますけれども、ほとんどないですね。その場合は使用料はだれがどういう方法でやるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/11
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012・松尾金藏
○松尾政府委員 法律問題として非常に形式的な論議をいたしますれば当事者間の話し合いがつかなければ、裁判所の手続ということになるわけでありますが、現実問題といたしましては、御承知のように割賦販売の行なわれている商品は、大体定型的な取引が行なわれている一般化した商品であります。従いましてもちろん全部ではございませんが、相当部分につきましては、御承知のテレビその他につきましては月賦販売も行なわれておれば、他方に賃貸しも行なわれているようなものが相当ございます。そういうものはこの運用には書かないと思いますが、お話の点はそういう賃貸の制度があまり一般的に行なわれていない場合というところに問題があると思います。その場合はもちろん当事者の話し合いによるのでありますから、販売業者が一方的に通常の使用料とはこれだというわけには参りません。当然その話し合いによるのでありますが、その話し合いの場合にも何らか標準的なものがないと、話し合いの基礎がないではないかというような問題があろうかと思います。そういう点は、現在私どもの考えておりますのは、できれば割賦販売をやる商品につきましては、割賦販売業者の間である程度こういう商品は通常の使用料というものは、一応損料ということで経済的にある目安がつくわけであります。通常の使用料はおおよそこの辺だということを、業者間である程度常識的な範囲で取引慣習として話し合いといいますか、この話し合いも程度を越えると独禁法の関係になりますので、そこはむずかしいと思いますが、取引慣行としてこの程度の通常の使用料というものが常識であろうというようなことが、一挙に全商品についてはできなくとも、かりにこういう事態がしばしば起こるということになりますと、漸次そういう取引慣行が行なわれていくだろう、できれば業者間である程度しばしばこういう事態が起こるようなものについては、そういうことも話し合ってある標準的なものを考えて用意しておく、それをもとにして話し合いをするということに、これも現実問題としては法律でそこまで書くわけには参りませんが、行政指導というようなことで、そういう健全な取引慣行が行なわれるように進めて参りたい、そういう気持でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/12
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013・中村重光
○中村(重)小委員 まあ使用料というのはほとんど一般的なものはないのですね。それでこの使用料の額の決定というものは、おっしゃるように業者の協定という形にどうしても発展して参ります。法制局も言っておりますが、そういうことはやっぱり独禁法違反になる。これは公式に伺ったものではありませんが、問題点としてこの法律を法制局に一度検討さしたところが、やはり問題点として考えておるようです。どうしてもそういうような点を考慮しなければならぬ。いろいろな面から私どもは審議会制度というものが必要になってくるというふうに考えているのです。
それから使用料と同時に、返還された品物の価値の評価をやらなければいけないのですね。この価値の評価ということも、ある場合には使用料以上に問題がある。こういう評価も当事者の話し合いということになりますか。また使用料の場合でお答えがありましたように、業者の話し合いというような、一つの標準を定めていくというような形にどうしてもなっていくのじゃないか。これについては何か使用料の場合と異なった考え方がありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/13
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014・松尾金藏
○松尾政府委員 今御指摘の点は、この第六条の一号のカッコ内の問題に触れてのお話であると思いますが、現実問題といたしましては、おそらく通常の使用料というところで大部分の場合問題は解決すると思います。カッコ内に書いてありますのは、それ以上に非常に品質が落ちたとか、あるいは通常の使用をした以上に品物が非常にいたんでおるというような、非常に特殊の場合を想定をして、その場合をも一応カッコに入れて、補足的にでもそういうことを書いておかないと、法律としては穴になりますので、そこは法律上の空白がないようにという意味で、ここに書かれておりますが、現実問題としては、よほど大きな乱暴な使用、その他のことがなければ、大部分の場合このカッコ内の規定の運用は行なわれないで済むのではないかと思います。しかしその場合に、かりにこういう事態が起こりますれば、これもこの段階になりますと、ある標準的なものを作って云々ということは、とうていむずかしいと思います。これは具体的には当事者間の話し合いでという以外には、方法はなかろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/14
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015・中村重光
○中村(重)小委員 通常使用料という形でこれは計算されるので、返還された品物の評価ということは、まず例としては少ないのじゃないかということなんですが、確かに使用料という形の計算でいくということが多いでしょう。しかし自動車の場合であるとか、その他一度物を売って販売者から購入者側に移った、購入者が物をとってみたところが、自分の希望しておるものと違っていた、そういうことで返すと、一たん渡ったものだからということで、価値が非常に減少したと販売者側が見る。そうすると、信頼利益であるとか、いろいろな問題が出てくる。そういう場合に、使用料という形ではなしに、価値の減少ということが強く出て参りまして、力関係が大きく支配する。ですから、お考えのようなこととはだいぶん現実には異なってくると思うのです。そこで話がつかないでトラブルが起こるのです。それで裁判に持ち込むとかなんとかで、また力関係で非常に複雑になってくることもあるのです。そういうことも、私どもはこの審議会等があるとあらかじめ審議会等で話し合いをしていけば、独禁法とかなんとかいう問題も起きてこないという形ができてくると思うのです。これもあとで一つ議題として検討していただきたいと思うのですが、問題としてはそういう形が出てくると思います。
それから当該商品の引き渡し前の契約解除の場合の通常要する費用の算定これはどういうことなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/15
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016・松尾金藏
○松尾政府委員 商品の引渡しが行なわれておりました場合には、契約がすでに一たんは商品引き渡しという形で履行されたわけでありますから、そういう場合には、契約締結、履行のために通常要する費用というようなわずかの費用は、当然販売業者の方が負担することの方が商取引の慣行上むしろ常識ではなかろうか、こう意味で一号、二号の規定が書かれておるのでありますが、法律の規定を書くことになりますと、それではそういう品物の引き渡しも行なわれてないという場合には、一体何が最終的には割賦販売業者の方の損害であるかということが出て参ります。その部分を書かないということになりますと、やはり法律制度としては空白になりますので、空白にならないようにということで考えて参りますと、現実に商品の引き渡しが行なわれていないという事態であるならば、割賦販売業者の損害というのは契約締結、履行のために通常要する費用ぐらいのものであろうということで書かれておるのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/16
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017・中村重光
○中村(重)小委員 返還されない場合は「当該商品の割賦販売に係る価額、」これがやはり疑問点としてあるわけです。当該備品の割賦販売価額というならはっきりしています。特にここに「係る」という字句を入れてある。これはどういうことを予想されたのか。何かということが第一点。もう一つは、第三号の場合は、契約締結及び履行ということは何を予想されているか。これは解釈によっては非常に幅広くなって参ります。信頼利益なんということも起こってこないとは言えないし、どういう場合を予想されたのか。かりに御説明のように法律条文としての空白を埋めるためだとしても、そういうことではこれは間違いが起こると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/17
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018・松尾金藏
○松尾政府委員 法文で表現しております意味は、契約のために要する費用というのは、たとえば契約の書面の作成費でありますとか、あるいは金額によりましては印紙税を取られるわけでありますが、その印紙税というようなものが契約成立のために要する費用であると思います。さらにその契約の履行のために要する費用と申しますのはかりに品物は渡してないけれども頭金の支払いが行なわれておった、そういう意味の代金の取り立ての費用、あるいは前払いその他の場合には契約解除に至る途中で催告の手続等が行なわれるかもしれません。現実にそういうことが行なわれておる場合に、かりに代金取り立てのために高級車に乗って行ったから、その費用も契約履行のための費用だというわけには参りませんが、そういう場合に商人が代金取り立て等に普通要するであろうと予想される費用まではよろしい、通常の常識を逸脱したような契約費用とか履行費用はだめである、そういう意味でここで通常要する費用という制限をしておる、そういう意味合いでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/18
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019・中村重光
○中村(重)小委員 信頼利益は入りませんね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/19
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020・松尾金藏
○松尾政府委員 それはもちろん入りません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/20
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021・中村重光
○中村(重)小委員 履行というのはやはり荷作りとかなんとか、たとえば箱を作ったり何かして送るような場合がありますね。そういうことですか。締結というのは常識的に考えて印紙代とか書類作成費と見るべきでしょう。履行というのは先ほどおっしゃった何か前払い式の場合が考えられるならば、集金の費用であるとかなんとかいうものも入るのじゃないか。それから荷作り、そういうようなものが履行という形に入りますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/21
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022・松尾金藏
○松尾政府委員 その例は私は必ずしも多いとは思いませんけれども、たとえば契約履行のために荷作りをしてお客さんのところへ持っていったら、いやその後私の方の事情でそれは要らなくなりました、持って帰って下さい、こういうような事態がかりに起こったといたしますならば、その場合の荷作りの費用というのはそういう事態の場合には通常要する費用であると思います。その場合に非常に高級単で運んだというような場合であれば、高級車の費用まではだめでありますが、通常の自分の店で使う程度の輸送費をかけて、通常の荷作りをして持っていった場合を想定すれば、それは入り得ると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/22
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023・中村重光
○中村(重)小委員 そうすると販売者側の責めに帰する理由によって契約が履行されなかった、こういう場合も起こり得ると思います。マス・コミの宣伝というものがある、ところが実際買ってみた現物は宣伝とは相当違う、いろいろな場合が起こって、くると思う。そういう購入者側の責めに帰する理由によって契約が成り立たない場合、販売者の責めに帰する理由によって契約が成り立たない場合、双方がある。その一方の場合はここで明示する必要はなかったのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/23
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024・松尾金藏
○松尾政府委員 契約解除の、原因につきましては、これは民法の一般原則にもとるわけでありますが、販売業者の責めに帰すべき事由によって契約解除が行なわれた、その場合には当然購入者の方から契約解除をいたすでありましょう。そういう場合には販売業者の方が購入者に対して損害賠償ができないのみか、逆に購入者の方から販売業者の方に対して損害がもしありますればなし得る場合がある。そちらの方は民法の一般原則で参ることに相なると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/24
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025・中村重光
○中村(重)小委員 それから第二の「係る価額」というのは何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/25
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026・松尾金藏
○松尾政府委員 割賦販売価格と申しますときには、その割賦販売にかかわる商品のいわゆる販売価格、プライスという意味であります。ここに第六条の第二号で申しておりますのは、返還する場合に、その割賦販売価格で売られたその全額を返還する、こういう意味でないと正確な表現でないというので、私どもの普通のものの言い方で言いますれば、当該商品の割賦販売価格によって売られた金額を返還しなければならない、こういうことに割賦販売価格そのものを返還するのではなくて、割賦販売価格で売られた、それに相当する金額を返す、こういう意味になるのですから、これは「割賦販売に係る価額」、こう表現をするのだということであります。私もちょっと受け士知りですが……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/26
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027・中村重光
○中村(重)小委員 この点は将来問題が起こってくると思いますので、懇談の場合に検討していただきたいと思います。これがどのようにも解釈されまして、損害賠償とかいろいろな問題がここに生じてくるというおそれがございますから。
その次は第七条になるのですが、十二時半になりましたから、実は第七条は相当問題がありまして、時間がだいぶかかりますから、きょうはこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/27
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028・岡本茂
○岡本(茂)小委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明十八日木曜日午前十一時より開会することとし、これにて散会いたします。
午後零時二十六分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/103804485X00219610517/28
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