1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年四月十四日(火曜日)
午前十時三十二分開会
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出席者は左のとおり。
委員長 鈴木 強君
理事
亀井 光君
高野 一夫君
藤田藤太郎君
柳岡 秋夫君
委員
加藤 武徳君
紅露 みつ君
徳永 正利君
山本 杉君
横山 フク君
阿具根 登君
杉山善太郎君
藤原 道子君
小平 芳平君
村尾 重雄君
林 塩君
衆議院議員
発 議 者 八木 一男君
国務大臣
厚 生 大 臣 小林 武治君
政府委員
厚生政務次官 砂原 格君
厚生大臣官房長 梅本 純正君
厚生省公衆衛生
局長 若松 栄一君
厚生省医務局長 尾崎 嘉篤君
厚生省医務局次
長 大崎 康君
厚生省薬務局長 熊崎 正夫君
事務局側
常任委員会専門
員 増本 甲吉君
説明員
厚生省薬務局薬
事課長 横田 陽吉君
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本日の会議に付した案件
○生活保護法の一部を改正する法律案
(衆議院送付、予備審査)
○日雇労働者健康保険法の一部を改正
する法律案(衆議院送付、予備審
査)
○毒物及び劇物取締法の一部を改正す
る法律案(内閣提出)
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001・鈴木強
○委員長(鈴木強君) ただいまより開会いたします。
ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/1
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002・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 速記を始めてください。
生活保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、発議者、衆議院議員八木一男君より提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/2
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003・八木一男
○衆議院議員(八木一男君) 私は、ただいま議題と相なりました生活保護法の一部を改正する法律案、すなわち、生活保障法案につき、その提出の理由趣旨並びにその内容の大綱につき御説明申し上げます。
生活保護制度は、憲法第二十五条の精神を実現すべき制度の中で非常に大切なものであり、社会保障制度の基盤をなすものでありますが、この重要な制度を規定する生活保護法制度発足後、十数年間、その間に、社会状態、家族関係、経済状態、生活水準等の急激な変遷に際会しているのにかかわらず、変化に応じた根本的な改正がなされず、その運用もまた枝葉末節にとらわれて根本的精神にもとる方向がとられ、そのため、憲法に明記された健康で文化的な生活を営む国民の基本的権利が実際には保障されず、多くの不運な人たちが人間らしい生活をなし得ないでいる現状は、まことに憤激にたえない状態であり、その間の政府の責任は、まさに重大と言わなければならないと存じます。
わが党は、この現状にかんがみ、生活保護法を抜本的に改め、その重大な欠陥を是正して、憲法の条章のほんとうの意味の実現をはかろうとするものでありまして、法律名も、その趣旨に即応するよう、生活保障法と改めようとするものであります。
以下、順次おもなる改正点とその理由について御説明申し上げます。
まず、改正の第一の柱は、本法の施行をより実情に即した適切なものにし、特に保護の基準を適切なものにし、その改正を社会経済情勢に対応して迅速に行なわせるようにするため、生活保障審議会をつくることであります。生活保護制度には生活、住宅、教育、出産、生業、葬祭、一時の各扶助制度があり、また、六種類の加算制度、四種類の控除制度があり、かつ、その基準は年齢別、性別、世帯構成別、所在地域別におのおの計算されるわけで、非常に複雑な構成になっておりますことは、各位の御承知のとおりでありますが、そのあらゆるものがあまりにも低過ぎていることは周知の事実でございます。まず、その中心である生活扶助制度で調べて見ますと、東京都標準四人世帯で一月、一万六千百四十七円(四級地一万一千七百八十七円)、一人当たり、月四千三十七円(四級地二千九百四十七円)しか支給しないのでありまして、そのうち飲食物費については一級地一万四百十七円、一人当たり、二千六百四円、一人一食平均二十八円ということに相なります。もっと具体的に年齢別、地域別、男女別に飲食費一食当たりを出しますと、六才から八才までが一級地で一食平均約二十七円、四級地約二十円、十八才から十九才までが一級地男子約三十六円、四級地二十二円、六十才以上一級地男子約二十九円、四級地女子約十七円ということに相なるわけであります。多いところで三十円代、少ないところでは十数円代の食費という、まことに驚くべき僅少な金額に相なるわけでございまして、これでは全く健康な生活ということはできず、ただ現在生きているというだけで、自分の体力を消耗し、当然長らえるべき生命を縮めているといっても断じて過言ではないのであります。嗜好品費については、たばこ甘味等の費用は考慮されておらず、パンツなど消耗度の多い下着が一年に約二着余、四十ワットの電灯しかつけられない状態では、文化的生活などとは絶対に言えないのであります。
右のような実情から見て、即時大幅な基準の引き上げが断じて必要であり、その後も物価の上昇に見合うことはもちろん、さらに一般の生活水準の向上等に従って、時を移さず改正をさるべきものであります。
しかるにかかわらず、基準の引き上げについてはその場限りのごまかしの方法しかとられていなかったため、生活扶助を受ける世帯の生活水準は一般勤労世帯の生活水準に比して、立法当時よりぐんぐんと低下してきたのであります。
すなわち、その比率は昭和二十六年及び二十七年が五四・八%でありましたのが、二十八年より四〇%台に下がり、三十二年度よりは三十九%台に下がり、三十七年度の改定によってようやく四二%に達し、昭和三十九年度の改定で四七%に達するであろうかと推定されるだけであります。本来健康で文化的な最低生活の水準ということは絶えず進展すべきものであり、単純にきめがたいものでありますが、特定の地域における特定の時点においては客観的に決定し得るもので、かつ、決定すべきものであります。
しかも、最低限度というからには、その実施を予算のワクというものでしばり不可能にすることは絶対に許されないものであり、逆に、そのことを国民に保障するために予算が組まれなければならない性質のものであります。しかるにかかわらず、この当然の原則が完全に無視され、主管官庁の予算要求までがあてずっぽうのきわめて無責任、無気力、不十分のものであり、さらに、それすらも予算のワクということで大なたをふるわれるというやり方では、不運な人たちが人間らしい生活を保障されることは実現できないことになり、その間における人権の侵害は、あとからではいかにしても補うことができなくなるわけであります。
このような欠陥をなくし、かつ、この法律の運用の大綱をより実情に即したものとし、この法律に筋金を入れるために生活保障、審議会の制度を設けようとするわけであります。すなわち、同法の第二章のあとに生活保障審議会の章を起こし、基準決定に関する厚生大臣の権限との関係に関して、第八条に第二項から第五項までを新しく規定するほか、所要の改正をすることによって同審議会の活用をはかろうとするものでありまして、まず、審議会は両院の同意を得て内閣総理大臣が任命する委員八名及び厚生、労働、大蔵、地方自治、文部各事務次官計十三名をもって構成され、十分重大な任務を補佐するに足る事務局を置き、毎年一回以上保護の基準の適否に関する報告をし、変更の必要を認める場合の勧告権を持ち、厚生大臣はこれについて必要な措置を講ずべきこととし、また、厚生大臣に保護基準の制定、改正の際の諮問義務を課し、厚生大臣が審議会の意見によりがたいと認める場合の再諮問義務を規定するとともに、従来社会福祉事業に規定されておりました社会福祉審議会の生活保護専門分科会の機能をも本審議会に吸収し、実施要領その他の本法の施行に関する重要事項及び本法の改正についても諮問を受け、またはみずから進んで関係行政庁に意見を述べ、関係行政庁はこれらの答申、勧告、意見を尊重すべき義務を規定するものでありまして、審議会として最も大きな権限を付与して、その熱心な調査、民主的な審議による適切迅速な決定によって従来の政府の怠慢、無責任のため、憲法第二十五条の精神が実際に十分に確立されていない弊を除こうとするものであります。
改正の第二の柱は自立助長に関してであります。
本法の目的として、第一条に自立助長が明記されておりますが、自後の具体的条文はわずか生業扶助の項を除いて、それ以外はこの目的を実現しようという意味を持つものは全然なく、それのみか、この目的を抹殺する作用を有する第四条のごとき規定すらあるのであります。
自立助長は、対象者が機械ではなく、生きた感情を持つ人間であることを念頭に入れたものでなければ実効があがりません。現在の収入認定の制度は、不運な人が何とか苦しい努力の中から人間らしい生活を再建しようとする意欲を喪失させる仕組みになっております。夫が死亡し、足腰の不自由な老母と、幼い三人、四人の子をかかえている母が懸命に働いた収入が扶助の金から差し引かれるのでは、疲れだけが残る仕事をやめて、せめて家族たちのそばにいて、子供たちをかわいがり、親に孝養を尽くしたほうがよいという気持ちになることはあたりまえの話であろうと思います。苦しい中、条件の悪い中で、母を慕う子供、看護してあげたい親に目をつぶって家に残して働きに出ることは、その子供に、親に、少しでもおいしいもの、栄養になるものを食べさせたいという考え方で気力をふるって働いているのに、その収入が実際の生活を潤すものにならないのでは、働く意欲など喪失し、自立の道は閉ざされてしまうことは明らかであります。
現在の制度の運用においてもこの実体が直視され、行政上はこの法律をできるだけ広く解釈して、冷酷無比な収入認定の制度を緩和しようという方法がとられておりますが、いかにせん、第四条第一項の鬼畜のごとき条文に縛られて、十分なものになっておりません。
いわゆる勤労控除という制度は、大衆の切なる希望に従って厚生省が智恵をしぼり切ってつくった制度でありますが、条文に縛られて、必要経費の控除という理論の上にしか立てないため、実際の働きによる実生活の向上という問題はほとんど解決しておらず、勤労控除等でもし実際的に幾ぶんの効果ありとしても、この制度は働く者一名につき幾らの控除の制度であって、前例のごとき、家族を多くかかえた未亡人には何分の一の効果しか及ばないわけであります。したがって、この勤労控除の制度は必要経費補てんという目的のため有効な制度であり、存続拡充すべきでありますが、ほんとうに自立を促進するためには、これとは別に対象家族に応じた、しかも、必要経費というワクに縛られない収入認定控除の制度をつくり、要保護者家庭中のある程度働き得るものが家族のために一生懸命働いた収入が、実際に相当程度家族を潤し、その結果さらに働く意欲を燃やし、仕事の習熟、顧客の増加等によってさらに収入がふえ、自立の道が急速にかつ大きく開けるようすべきであります。本案は、そのため第八条の二の規定を新しく設け、右の目的を達成しようとするものであります。
以上は、自立助長をはばむ収入認定を緩和しようとする条文でありますが、他の点においても、自立助長に配慮いたしておりますことはもちろんであります。
改正の第三の柱は、適用の過酷な要件を緩和しようとするものであります。
現行法でこれを規定いたしておりますのは、保護の補足性の条項、すなわち、第四条第一項及び第二項であります。まず第一項は、「保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる」と規定されているのでありまして、あらゆるものまで極端に縛ったこの過酷きわまる条文のために、数年前までは病床の老人がただ一つの楽しみであったラジオ、それも売り払った場合幾ばくの金にもならないものでも処分しなければ扶助が受けられない。なき夫の形見の記念品を泣く泣く手放さなければ扶助が受けられない、田畑のまん中の家を処分しなければ医療扶助が受けられないといった状態があったわけであります。
このように、実情に合わない条文に対して、行政に当たるものは、厳密にいえば、この悪条文を幾ぶん冒したともいうべき苦しい解釈をしながら、できるだけあたたかい運用がなされ、現在ではラジオとか自転車とかを保有し、また、家屋等の全般的な処分をしなくても保護が受けられるようになっており、また、逐年幾ぶんずつ緩和される傾向にありますけれども、やはりこの条文に縛られて実情にそぐわず、対象者の人間らしい感情を踏みにじり、あるいは再起の希望を断つことが非常に多いわけであります。
この点を改めるため、右条文中、「その他あらゆるもの」を「その他のもの」に改めて、冷酷な鉄条網を取り払い、さらに、積極的に第四条第一項に後段を加えて、たとえば親の形見、夫婦の記念品、老人、病人、子供等の娯楽品など、社会通念上保有させることが適当なもの及び将来再起のため必要な、たとえば家屋、田畑、店舗、オートバイ、三輪車等々、自立助長に必要なものの保有をしたままで保護が受けられるようにしようとするものであります。
次に、第二項では、民法の扶養義務者の扶養が本法保護に優先して行なわれるものとすることになっており、この条文のため、家族とともに余裕のないきりきりの生活をしている人が、要保護者に対する扶養義務のためその生活を破壊されたり、また、それをめぐって親戚間の感情が対立したり、また、遠方に親戚がいるため保護を必要とするものが急速に保護が受けられなかったり、いろいろの不都合が生じ、担当者も扱いに苦悩する現状にかんがみ、実情に合わない民法の扶養義務優先条項を削除して、あたたかい運営を行なおうとするものであります。
改正の第四の柱は、現在保護は世帯を単位として行なうことを原則としているのを、個人単位を原則とすることに改めようとするものであります。
現在、世帯単位を原則とされているため、民法にいわゆる生活保持義務者ではない扶養義務者が同一世帯にいることによって要保護者と完全に同一水準の生活をしいられることになっていることは、全く不合理といわなければならないことでありまして、実例をもって考えてみますと、障害者の父、病人の母、幼い弟妹二名と同一世帯でいる十八才の少年がどのくらい懸命に働いても、収入がこの五人の生活保護費以上の金額にならない限り、実生活費を引き上げることにならないわけであって、若い青年の人権がじゅうりんされ、両親に対する孝心も実際には実を結ばないことになるわけでありますので、このような重大な欠陥をなくすため、第十条を改め、原則的に個人単位とし、ただ例外として、同一世帯の夫婦と未成年の子供のみを単位として扱うことにしようとするものであります。
このことによって、要保護世帯の中で懸命な努力をする青少年は、その働きに見合う生活を建設し、かつ、実際的には収入のある部分は両親や弟妹の生活のため消費せられて、青少年の勤労による自己の生活建設の努力と、家族に少しでもよい生活をと願う愛情が実際上実を結ぶことになると考えるものであります。
改正の第五の柱は、本法施行上の苦情の処理を民主的なものにするため、中央、地方に苦情処理機関を置こうとするものであります。
従来、本法の取り扱いにいろいろ苦情が生じ、かつ、その処理が必ずしも適切に行なわれないことは、いわゆる朝日裁判の例をもっても明らかでありますが、裁判に訴えることはもちろん、実際は官僚の手によって冷ややかに処理されることが多い知事決定に期待が持てず、苦情申し立てすらもあきらめている対象者が多い今日、民主的な機関を設けて本法のよき運用を期することが緊要なことであり、そのため、第六十五条の二の規定を新設し、第六十六条に改正を加えまして、保護の決定及び実施についての審査請求や再、審査請求については、厚生大臣が裁決する場合は中央生活保障審査会の、都道府県知事が裁決する場合は地方生活保障審査会の議決を経て行なわなければならないものとし、第九章の二を新設して、中央審査会及び地方審査会の組織及び権限を規定したのであります。
中央審査会は停止省に置かれるものであり、厚生大臣の任命する学識経験者六名、関係行政機関の職員五名、計十一名をもって構成するものであります。
特に、その機関の特質にかんがみ、心身故障など、特別の場合のほかは、その意に反して罷免することができないことにしようとするものであります。地方、審査会は各都道府県に置かれるものであり、関係地方公共団体の職員六名、学識経験者七名、計十三名をもって構成し、委員の身分が保障されることは中央審査会と同様であります。
以上が具体的な改正点でありますが、その他本法の理念を明らかにするための改正を行なうものであります。
まず、現行法の目的が、生活に困窮する国民に対してつくられたものであるとしているのを発展させ、憲法第二十五条の理念を明確に確立させるため、生活に困窮するというあいまいかつ、消極的な規定を改め、健康で文化的な生活を維持することができないものに対して適用させるものであることを規定するため、第一条及び第四条を改正し、さらにこの改正と前述五項の抜本的な本法骨組み改造に対応し、かつ、題名より、恩恵的なものであるという誤解を一掃し、国民の生存権を明確にするため、題名を生活保障法と改正しようとするものであります。
本改正法は昭和四十年一月一日から施行しようとするものであり、ただし、生活保障審議会に関する規定は、その任務上、公布の日から直ちに施行するものであります。
本法施行に要する直接の費用は、生活保障審議会及び審査会の費用で年間約五千万円であります。
以上が本法案の内容の概要でありますが、要するに、本法案は、社会保障の基盤の法律である生活保護法があらゆる面でその目的を十分に果たしておらず、国民の生存権がはなはだしく侵害されている点を根本的に改め、憲法第二十五条の精神を実際に、確立しようとするものであります。
健康な生活を保障する目的をもった法律が不完全であり、対象者が自分の体力を食べて健康をすり減らしながら毎日を送らなければならない状態、文化的などとはどんな観点よりも言えない状態、寿命や人間性をすり減らす状態を幾分でも少なくするためには、この法律をごまかすことすらしなくてはならない状態、関係官庁が違反すれすれの行政解釈をしなければならない状態を考えるとき、生活保護法の改正は、一日もゆるがせにすることはできないと存じます。
このような欠点を根本的に改め、ほんとうに健康で文化的な生活を保障し、さらにほんとうに自立の助長をはかるため、あらゆる観点から検討いたしました本法案でありまして、憲法を尊重し擁護する義務を持たれ、そのことに最も忠実な各位の慎重な御審議の上、急速なる満場一致の御可決を心からお願い申し上げる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/3
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004・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 本日は、本案に対する提案理由の説明聴取のみにとどめておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/4
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005・加藤武徳
○加藤武徳君 委員長、ちょっと……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/5
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006・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 何ですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/6
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007・加藤武徳
○加藤武徳君 従来の役所方の提案理由の説明ではなしに、新しい立場に立ったかような提案理由の説明をなさろうという提案者の意欲はよくわかるのでございますが、ただいま提案理由の説明を聞きまして、理由全体に非常に誇張された点があり、誇大に表現された点もあるのでありますが、しかし、これは提案者の考え方、見識でございますから、あえて私はここで何も申そうとは思わないのであります。ただ、いま承った提案理由の中で、法律の改正案の提案としてはきわめて不穏当であると思えることばがないでもないのであります。たとえば三ページの最初のほうでございますが、「第四条第一項の鬼畜のごとき条文」、また、同じページの最後のほうでありますが、現行法を「冷酷な鉄条網」、かように表現をいたしましたし、また、最後のページでございますが、「この法律をごまかすことすらしなくてはならない」と、かような表現は、私は、法案の提案理由の説明としてはきわめて不穏当だと、かように思わざるを得ないのであります。また、院の品位からいたしましても、かようなことを活字にとどめることは適当でない、かように思うのであります。委員長は、かような不穏当な用語を、委員長の権限において削除なさるように提案をするわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/7
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008・阿具根登
○阿具根登君 ただいまの加藤君の御意見は御意見として聞きますが、提案者は相当な審議をいたし、この生活保護に対してきわめて熱心に審議をされ、あるいはきわめて深い関心を持っておられ、しかも、現実の生活保護者がいかに社会の片すみに追い込まれているかということに対する現行法の恨みを述べられているものと思います。それはお互いの論争の中で論ずることはけっこうでございますが、提案者の提案したものをこの場で削除するということについては、私は反対いたします。そういう問題については、十分理事会なりその他で論議すべきものでありまして、提案者のことばそのままをとって、直ちにここで動議提出の形にして削除するということは、それこそ私は不穏当であり、議院の立法権に対する一つの侵害だと、圧力だと考えますので、そういう点は取り上げてもらわないようにお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/8
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009・加藤武徳
○加藤武徳君 阿具根委員のおっしゃった点も私わからないわけでもないのでありますが、しかし、提案理由の不穏当な字句を修正することは、決して議院の発議権の侵害等であるはずはないのであります。しかし、ここで阿具根君と論争しようとは思わないのでありまして、また、委員長も、直ちにここで取り消せ、かように要求いたしましても、どの個所をいかようにということは直ちには決定しがたい、かように思うのでありますが、後刻理事会においてこのことを取り上げ、御審議を願う、かような運びはぜひ実現をしたい、かように思うわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/9
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010・鈴木強
○委員長(鈴木強君) それでは、お二人の発言もございますので、委員長といたしましては、理事の皆さんとも御相談いたしまして、いまお二人の意見の趣旨に沿うようにやってまいりたいと思います。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/10
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011・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。
まず、発議者、衆議院議員八木一男君より提案理由の説明を聴取いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/11
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012・八木一男
○衆議院議員(八木一男君) 私は、ただいま議題になりました日雇労働者健康保険法の一部を改正する法律案の提案の理由、並びにその内容の大綱につき御説明申上げます。
医療保障制度の改善向上は識者の強く主張し、国民の熱心に要望するところでありまして、わが日本社会党はじめ、各政党も積極的に公約をいたしております。
しかして低所得階層と、対象としてその給付内容のきわめて貧弱な日雇労働者健康保険法の改正が最も優先的に取上げられるべきものの一つであることは、論をまたないところであります。ところが、御承知のごとく、昨年の法改正によって国保健保等の幾ぶんの改善が進められたのにかかわらず、本法に対する政府提出改正案が昨年もおろか、本年も提出されていないことはまことに当を得ていないことであります。
ちなみに、本法による療養給付は二年でありまして、国保、健保等において、療養給付を転帰までにするという医療保障の本筋の方向が進められながら、本法については置き去りにされているわけであります。また、傷病手当金については、健保等におきまして通常の傷病の場合ヶ月(結核等の場合一年六ヶ月)であるのにかかわらず、本法においてはわずかに二十二日、出産手当金は健保等においては産前産後計八十四日以内でありますのに、本法においてはわずかに二十一日と、はなはだしく懸隔がございます。社会保障制度審議会の一昨年八月の答申勧告にあるごとく、社会保障というものは、必要な人に必要な給付がいくことにならなければなりません。この意味から考えるとき、失対労働者等、最も所得の少ない階層に対する保障は、他の人たちに対するもの以上の保障が必要であり、少なくともすべての給付を政府管掌の健保並みにすることは焦眉の急であると信ずるものでありまして、その実現をはかろうとすることが本法提出の第一の理由であります。
次に、療養給付の給付率は、医療保障の本質より見て、できる限り早期に全国民に対し十割を達成することが絶対に必要であり、そのため即時国保の全被保険者、健保各制度の家族に対する給付を少なくとも七割にすべきことが社会保障制度審議会によって勧告されているにかかわらず、政府がわずかに国保の被保険者の七割を段階的に実現しようとすることのみにとどめていることはまことに不誠意、怠慢であり、池田内閣成立当初の公約にも大きく違反しているといわなければならないと存じます。わが党は、すべての七割に満たない給付率を直ちに七割とし、自後短期間の年次計画をもって全国民に対する給付率十割を達成するという基本政策を確立しているわけでありますが、その一環として、本法の被保険者家族の七割給付を本年度から実現したいと考えるわけでありまして、これが本法案提出の第二の理由であります。
さらに、労働者でありながら、常用雇用でないために一般健保制度の適用を受けておらない人が多いことはわが国医療保障制度の大きな欠陥であります。建設労働者、山林労働者に日雇労働者健康保険制度が擬制適用されていることはこの欠陥を補っているものでありますが、一歩進めて、これらの人々に法的に適用の道を開き、さらに付添婦、鼻緒工等にも適用の道を拡大し、十割給付、傷病手当金等々、労働者として当然の給付を確立することは制度審議会勧告の精神に沿うものであり、その急速な実現の必要性を痛感するものでありまして、これが本法案提出の第三の理由であります。
これらを実現するために要する費用については、被保険者の所得がきわめて低い点より見て、当然国庫の支出増をもってまかなわれるべきであり、そのため、高率の国庫負担率になっても、社会保障制度審議会の勧告に示すとおり、労働者の健康保険制度が分立され、その中で本制度が特に低所得労働者のみの制度であることより見て当然であると確信するものでありまして、その立場に立って国庫負担率を七割五分にして実現しようとするものであり、年間約八十四億円の国庫支出増をもって確実に実現し得るものでございます。
以下、順次その内容について御説明申し上げます。
先ず、第一は、療養の給付の期間を現行二年より、健康保険法の継続給付の場合にならい、五年にしようということであります。
第二は、家族療養費の給付率を現行五割より七割に引き上げることであります。
第三は、傷病手当金支給期間を、現行二十二日から、通常の傷病の場合六カ月に、結核等については一年六カ月に改めることであります。
第四は、出産手当金の支給期間を、現行分べんの日以後二十一日以内を、分べんの日前四十二日、分べんの日以後四十二日以内に改めることであります。
第五は、分べん費現行四千円を六千円に、家族分べん費現行二千円を三千円に改めることであります。
第六は、育児手当金を新設し、被保険者及び配偶者が分べんしたときは育児費の補助として二千円を支給することであります。
第七に、特別療養費の給付率を、本人、家族とも、現行五割から七割に引き上げることであります。
第八は、給付条件の緩和でありまして、まず一般の条件として、現行二カ月二十八日あるいは六カ月七十八日のいずれかの要件を満たせばよいことになっているのを、二カ月二十八日あるいは六カ月六十日のいずれかの要件を満たせばよいこととすることであります。
次に、特別の条件緩和として、初めて被保険者となって二カ月以内に療養の給付を受けようとする場合、十四日以上の保険料を納めていればよいこととし、これに伴い、傷病手当金及び埋葬料の支給条件を緩和しようとするものであります。
第九は、認可による被保険者の章を新設し、他の労働者健康保険制度の適用を受ける条件を持たない労働者に本法の法的適用の道を開こうとすることであります。
第十に、給付費に対する国庫負担率を、現行三割五分から七割五分に引き上げることであります。
最後に、本法案は本年五月一日より施行することにいたしております。
以上、提案の理由並びに内容の大綱について御説明申し上げたわけでありますが、社会保障改善に熱意を持たれる関係各位には、失対労働者をはじめ、仕事と生活の不安定な労働者やその家族が発病あるいは負傷したその苦悩に思いをいたされ、私どもが心血を注いだ本案に対し、積極的な好意をもった審議を尽くされ、一日も早く満場一致の御可決あらんことを衷心よりお願い申し上げまして説明を終わる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/12
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013・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 本日は、本案に対する提案理由の説明聴取のみにとどめておきます。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/13
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014・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 毒物及び劇物取締法の一部を改正する法律案を議題といたします。
これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/14
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015・高野一夫
○高野一夫君 ちょっと政府委員のほうに伺いたいのですが、今度の改正の主眼は、毒液物を原材料として使っておる工場あるいは処理場の取り締まりという点にあるわけですが、それはこれのどこに、第何条にそれは該当しますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/15
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016・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 現行法では、業務上取り扱いをいたします者の規制としましては、毒物及び劇物取締法の第二十二条にいわゆる準用するという形で、見出しとしまして、「営業者及び特定毒物研究者以外の者に対する準用」という形になっておるわけでございますが、この第二十二条の見出しを、お手元に配られております法律案のように「業務上取扱者の届出等」ということにいたしまして、政令で定める事業を行なう者についての規制を強化するというふうにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/16
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017・高野一夫
○高野一夫君 よく工場からいろいろな血液物を含んだ汚水が河川、海などに放流されて、水産物、そういうものに非常な被害を与えるということはいままで、ままあったわけですが、従来は、この改正前はそれは取り締まることができなかったわけですか。従来のそういう点に対する取り締まりの方法ですね、ここに現行法の二十二条の準用をするということであるならば、これでやれたはずじゃないかと思いますが、その辺はどうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/17
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018・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 御承知のように、十一条、十二条が準用されておりまして、十一条が取り扱いにつきましての規制でございます。これは抽象的に書いた十一条の規定でございますし、それから、十二条につきましては表示の問題、それから、十七条においては立ち入り検査ということでございまして、肝心かなめの業務上取り扱い者につきまして、いわゆる責任者を置くということが、現在のところは業務取り扱い者についてはないわけでございます。そこで、今回の改正につきましては、必ず業務上取り扱い者につきましては、毒物、劇物の取り扱いの責任者を遣いて届け出の義務を課すというふうにいたしますと同時に、十一条におきまして、構造、設備につきましての抽象的な表現を省令に移すことによりまして、省令でもって構造、設備につきましてのしっかりした基準をつくりたいということで、その規制の徹底をはかるということにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/18
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019・高野一夫
○高野一夫君 今度そういう責任者を置いてやるということは、私は非常にいいことだと思うけれども、かりに従来どおり責任者がなかった場合でも、そういう業務に従平している者を対象にして適用ができるわけだから、十分取り締まりをやろうと思えば、まあ今度の改正はなお完全だろうけれども、現行法でも取り締まれば取り締まることはできたはずじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/19
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020・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 高野先生のおっしゃるように、法の運用である程度の取り締まりは、立ち入り検査等の権限も持っておりましたから、業務上取り扱い者につきましての立ち入り検査も、過去の、実績におきましては、毒物劇物監視員が検査をしたという事例もございます。しかし、その実態を正確に把握するということにつきましては、届け出を十分行なわれておらないために、実態の把握というものがなかなかむずかしくて、事実上事故が起こったといった場合に、初めて監視員が乗り出して事態の解決に当たるというのがこれまでの状況だったわけでございます。ところが、今度の改正案におきましては、まず、取り扱い責任者を置くということでもって、責任者が明確になりますと同時に、取り扱い責任者の義務を明確にいたしました。それから、また、こういう業務取り扱い者の事業管理、取り扱い責任者の義務といたしまして、構造、設備を明確にし、それから、また、廃棄基準等も、これを明確にするということによりまして従来以上の効果を期待するということで、とにかく全体の業種が、中小企業を含めまして、二十万に近い工場、事業所でございますので、それぞれの届け出を明確にすることによって不測の事故に備えたいということで本改正に踏み切ったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/20
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021・高野一夫
○高野一夫君 そうすると、従来は工場で毒液物を原料、あるいは何かその材料に使う、そして、その処理いかんによっては、それこそ多摩川のアユもみんな浮き上がってしまうというようなことなんですが、ある工場で毒液物を原材料で使っているという、その実態は把握する方法はなかったわけですか。たとえば届け出であるとか何とかいう制度はなかったわけですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/21
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022・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 従来は届け出というものが行なわれておりませんで、監視員が随時立ち入って検査をするということで、実態の把握はできておらなかったというのが現状だったわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/22
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023・高野一夫
○高野一夫君 私どもは、かつて本州製紙の汚水事件を決算委員会で取り上げて吟味したことがあるのですが、実は、われわれも、これは不勉強のせいだったかもしらぬけれども、工場で毒液物を買い入れて原材料に使っているその工場のいろんな処理の仕方、汚水の排出、そういう点を取り締まることが従来完全にできておらなかった、そういう法律になっておらなかったということは、これは非常な私はどえらい欠陥じゃなかったかと思うのですが、長い間これをだれも気づかなかったわけですかね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/23
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024・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 先生御指摘のとおりでございまして、この法律ができましたのが二十五年でございます。それからあと、例のパラチオン等の農薬の被害というものが非常にやかましくなりまして、いわゆる毒物劇物取締法の一部改正といたしまして、三十年に特定毒物の制度を導入いたしまして、その際にも、いわゆる業務上取り扱いの規制というものは見送られておったというふうな状況であったわけでございますが、最近におきまして、高野先生御指摘のように、工場廃水その他で非常な問題が出てまいりました。もっとも、いままでの毒物劇物取締法の主たる対象が輸入業者、製造業者、あるいは販売業者ということで、毒物、劇物自体を取り扱っておる業者を対象にいたしておりまして、たとえばメッキ工場等でその毒物を取り扱っておるというものは、これは実際には検査の対象にはなりますけれども、届け出も、それから、事業管理者、責任者を置く必置義務を認めておらない。それと、もう一つは、非常に現行法で
一番欠陥とされておりますのは、毒物、劇物自体の規制はある程度やっておられましても、小さなメッキ工場その他におきましては、これを含有するものということで、毒物、劇物自体じゃなしに、それが何らかの他の液体と一緒になりまして含有されたものということで、規制する対象にはなっていない。したがって、毒物、劇物自体をとにかく取り扱っておれば対象にはなりますけれども、これを含有するものまで、つまり水に溶けたりその他の液に溶けたものまでを規制するという形にはなっておらなかったわけでございます。それを今度新たにメッキ工場等につきましては、その含有するものまで、これを廃棄したりその他することにつきましての規制まで入れたということによりまして、従来のこの法律の取り扱いがさらに厳重になった。よって、公害その他の被害も防止できるというふうに私どもは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/24
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025・高野一夫
○高野一夫君 そうすると、今度の改正では、この毒液物を原材料で使う工場は、そこに責任者を置いて使っているものを一々届け出る。そうすると、届け出ることによって、保健所かどこか知らぬけれども、監視、検査を随時行なう、こういうことになりますか。そうすると、はっきり原材料として使う処理場、工場というものは、二十万あろうが二十三万あろうが、一軒残らず全部把握することができますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/25
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026・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 先ほども申し上げましたように、毒物、劇物を取り扱っている工場等は二十万ぐらいございまして、非常に多くの数になるわけでございます。しかし、この二十万の工場全部を、業務上取り扱い責任者を置いたり届け出をしたりするようなことを全部包括してやるということは私ども考えているわけではございませんので、その点が、先ほど申し上げましたように、二十二条で、いわゆる二十万の工場の中からメッキ工場等の政令で定める事業を行なう者であって、しかも、その業務上シアン化ナトリウムまたは政令で定めるものということで、毒物、劇物のうち、いわゆる公害として一般に被害を及ぼすおそれの多い毒物、劇物を政令で定めまして、業種も政令で指定しているし、それから、毒液も政令で指定して、そういうものについて厳重な規制をするということで、この対象は大体五万ぐらいになりますか、そういうふうな考え方でもって立案をしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/26
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027・高野一夫
○高野一夫君 そうすると、二十万軒のうち、わずか五万軒が対象になる。あとは従来どおりほとんど野放し——野放しでもないが、十分取り締まることができない状態に放置して、しかも、その十五万軒なら十五万軒では、厚生省が省令や政令できめた、ここで指定する以外の毒物、劇物をやはり使っているのでしょう。今度の改正案では、ある毒物、劇物を指定して、それを原材料に使っている工場約五万軒に該当するものはこの改正案の対象になる。そうすると、あとの十五万軒というものは、やはり厚生省の省令できまった毒物、劇物を現在使っている。これは従来のように放任しておく、こういうことになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/27
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028・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 先生ちょっと誤解しておられるのではないかと思いますが、今度の改正案は、従来の取り扱いにつきまして、相当シビアな改正をいたしましたという点につきましては、たとえば五条の構造、設備等につきましては、これは業務上の取り扱い者全部にかぶってくるわけでございます。それから、流出防止が十一条でございますけれども、こういうもとになります条文をより厳密に改正いたしましたので、その点につきましては、いわゆる二十万の工場のうちの五万を除きました十五万の工場は、本改正によりまして規制はかぶってくるわけでございます。しかし、より以上に、いわゆる公害として害毒を流すおそれのある工場等につきましては、よりシビアな監督をするために業務上取り扱い責任者を必置する義務を置く、他の工場は、これは必置する義務はない。しかし、流出防止とか、あるいは事故の防止その他の事項につきましては他の工場も規制を受けるわけでございまして、根本的な差は取り扱い責任者を必ず置くか置かないかという点に差があるというふうに御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/28
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029・高野一夫
○高野一夫君 どうも私はほんとうの正直なところ、その辺どうも納得できないんですが、二十万軒のうちの五万軒だけは厳重にやると、これはけっこうです、いままでやらないんだから。しかも、最も危険な対象物だから、いいと思う。しかし、あと十五万軒に対しては責任者を置く必要がない。そうすると、従来どおり、その業務を行なっている者というわけですから、会社の社長になるのか、工場の責任者になるのか、個人経営だったらばその御主人になるのか、そういう人が処罰なら処罰——取り締まりを受ける対象になるわけですか。責任者を置かない十五万軒のものについての処罰なり、いろいろ取り締まる対象というのは、工場責任者とか社長とか、個人経営の場合の主人とか、そういうことになるわけですか。その場合と、こっちの、責任者を今度新たに改正で置いたその人を対象に処罰なら処罰をする、この場合とどういうふうに違ってきますか、結果においては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/29
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030・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) いわゆる毒物、劇物の一般社会に流す害といいますか、それにつきまして規制をしなければならない対象といいますものは、毒物、劇物を使用しておる工場等については軽重の差があるというふうに私ども考えておるわけでございまして、たとえば青酸カリ、あるいはシアン化化合物等、そういうものを取り扱っておる工場等の規制と、それから、大工場で、そういったものじゃなしに、純粋に化学材料として使っておる毒物、劇物の工場の場合とは、おのずから規制は異なってこざるを得ないんじゃないか。したがいまして、より公の害に関係のあるような工場につきましては、専門家である業務取り扱い責任者というものを置かなければならないし、その他の工場にありましてはその必要はない、これは、その化学工業会社が工場内で管理させることでもって十分ではないかというふうな判断に立ちまして立案をいたしたわけでございます。したがいまして、規制の対象からいえば、私が申し上げました前者のほうが当然規制はきびしくなる、こういうふうに御了解をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/30
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031・高野一夫
○高野一夫君 私は、その約五万軒に該当するものに対するそういう改正は、きわめてけっこうだと思ってるんですよ。それは、やはり厚生省が省令できめた毒物、劇物を使用するということから考えれば、それは危険性の厚薄、強弱はあるだろうけれども、全部に私はこういう改正の趣旨を徹底させることが望ましいんじゃないか。ということは、毒物、劇物を製造する者、輸入する者、販売する者、取り扱う者、それはすべてこの法律の対象になって、強弱いかんにかかわらず、全部あなた方取り締まっているわけなんだ。今度は、それを原材料に業務上使う工場、処理場についてはそこに強弱の差をつけて、取り締まりを厳重にする対象とそうでない対象とに区別することは、私はどうかと思う。そこで、かりにこの五万軒以外の十五万軒の工場において、だいぶ危険は薄いといっても、どんなあやまちが起こるかわからない。それで間違って、たとえば毒物を何か材料あるいは原料に使って処理する、その廃液を川に流す、流す場合に、誤って原液があるいはこの中に流されるということもあやまちであり得ることは、これはもう十分考えなければならない、毒物、劇物そのものを使っている限りは。だから、その十五万軒に責任者を置く必要がないというのは、非常に思いやりから考えられたのかもしらぬけれども、一般の民衆の安全ですね、河川の衛生、安全の保持の上からいけば、十五万軒の工場も当然私は対象にすべきものじゃないか、その強弱のいかんにかかわらず。政府が定めた毒物、劇物を扱っている業務の工場である限りは、当然この改正の趣旨を徹底させるのがほんとうじゃないかというのですがね。だから、最も危険なものを特に大事に取り扱うということは、これはよくわかるけれども、あと十五万軒もほうっておくということは、私はそこのところが、せっかくのこの改正には賛成だけれども、どうも何となく不徹底なような感じがする。ここまで改正されるならば、十五万軒も全部対象にすべきじゃなかったかという考えを私は持つのですよ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/31
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032・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) そういう御心配いただくことは、私ごもっともだと思うのでございますけれども、たとえば先生の御指摘のように、取り扱い責任者の問題自体については、あるいはそういうことがいわれるかもしれませんが、しかし、業務上取り扱うそういう工場等につきましては、流出防止等の規制につきましては、このもとの条文が相当シビアに省令の中身に入ってきますので、従来のようなほとんど野放し程度の規制にはならないわけでございます。したがって、いわゆる十五万と称せられる工場等につきましては、従来以上の流出防止その他につきましての事故を未然に防止する措置は本改正によってかぶってくるわけでございます。ただ、業務上取り扱い責任者という専門家を置かなければならないかどうかということにつきまして、先生の御意見と私どもの意見とは若干違っているわけでございますが、過去のいろいろな取り扱い例に徴しましても、他の私どもが今度規制をいたしております五万数千軒の金属メッキ業その他の業種と比べまして、その他の業種は、あるいは毒物、劇物の取り扱いの数量がきわめて少ない場合もある。たとえば染めもの工場あたりにつきましては、これはもうきわめて量的にも少ない、そういったところに業務取り扱い責任者までを置く必要があるかどうかという点も考えなければなりませんし、また、近代工場と称せられるところでもって、あらためて、さらにいわゆる中小企業で金属メッキ業、トタン等やっておりますそういうふうな業種と違った規制をしなければならないかどうかという点にも、やはり若干問題がございますので、私どもとしましては、まず現状におきましては、一番公害が生ずる可能性の最も高い五万何千軒の中小企業をおそらく主体とするような業態をつかみまして、これを規制する対象とし、業務取り扱い責任者を置くというふうに踏み切った次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/32
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033・高野一夫
○高野一夫君 この問題は、せっかくいい方面に改善されようというのだし、私はもっと徹底させたいと思っている点で、まあいいです。いいですが、ひとつ実例をあげてお尋ねしたいのは、たとえば先年の本州製紙が汚水をどんどん荒川に流して、そうして千葉県のあの東京湾付近のノリなり水産業に非常に打撃を与えた。われわれ決算委員会でやかましく取り上げて、何回もこれを糾弾したのですが、あのような場合に——あれはパルプも製紙の繊維ですよ。けれども、何か使っているでしょう、標白剤に。あれは劇物でしょう、亜硫酸か何か。そのときにわかったのだけれども、工場から川に放出する液を取って検査してみると、たいした害はない。しかし、毎日毎日しょっちゅう繰り返し繰り返し放出している間に魚介類に非常に死滅的損害を与えることが出てくるわけです。そういうような場合はこの対象となりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/33
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034・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) しばしば同じことを申し上げて恐縮でございますが、先生御指摘の本州製紙の工場でございますか、それにつきましての工場設備の中身につきましては、今度の五条、十一条の改正によりまして、より詳細な省令が規定されますので、それに基づきました工場の設備の改善というものを、当然工場としては負わなければならないことになります。それから、また、しばしば工場等で河川に汚物を流すということで問題になりますのは、毒物、劇物それ自体じゃございませんので、それに水等が入りました「含有する物」ということでもって、含有するものが河川に流れて人畜に被害を及ぼすと、こういうことになっておるわけでございますが、現在の毒物劇物取締法は、含有するものまで規制することにはなっておりませんので、それは新たに含有するものも規制の対象にするということで、これは全く新たな中身として取り上げたわけでございますから、それに基づいて、より正しい規制ができると、こういうふうに私どもは考えているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/34
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035・高野一夫
○高野一夫君 そうすると、たとえば高知県に行きましても、あの高知市を流れている鏡川のあの状態、御承知でしょう、ひどいものです。上流にパルプ工場がある、全部そこから出る汚水のおかげです。そうすると、今後パルプの処理工場、製紙工場というものからどんどんそういうようないろいろ混濁した汚水が河川に排出される。そうすると、それはすべて今度の改正によって取り締まりの対象になし得ると、こう考えていいんですか。染料工場にしてもそうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/35
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036・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) その工場から排出されるもの自体の中に毒物、劇物が入っておるとすれば、当然この法律の全部規制の対象になる。従来は、毒物、劇物の含有するものは、これは対象になっていなかったわけですけれども、だから、従来のままだと対象になりませんけれども、新たに「含有する物」まで含めようということになりますので、これは対象になるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/36
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037・高野一夫
○高野一夫君 まあほかの委員の質問もありましょうし、私、まだたくさん質問があるのですけれども、ほかの委員に時間を譲るために、あともう一点きょう説明を願っておきたいのは、この第四条の二ですか、今度この販売業、これを三通りに分けてありますね。これは提案理由の説明でもあったと思いますけれども、この三通りに分けた趣旨をもう少しひとつ詳しく説明してみてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/37
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038・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 従来の販売業につきましては三通りには分けておらずに、これは一本にいたしておったわけでございますけれども、しかし、その販売業の中身として、販売業の中に「事業管理人」、これが今度の法律で「毒物劇物取扱責任者」というふうに改まっていますが、販売業の中には事業管理人がおることになっていますが、この事業管理人が試験を受ける場合の中身といたしまして、全品目と、それから農業用品目と特定品目というふうに、事業管理人の資格によって販売業を分けておったわけでございます。それをこの三つに分けましたので、中身はちっとも変わっておらないわけでございます。
それと、もう一つは、従来の取り扱いは販売品目ごとになされておりましたので、品目は登録事項とされておった。それで、登録の変更がない限りは、登録品目以外は販売できないという不便があったわけでございます。ところが、今度はこのように三種類に分けまして、しかも、三種類の販売業につきましてそれぞれ従来どおりの試験を行なうということになりますので、品目ごとの販売じゃなしに、試験をするとすれば、農業品目、あるいは特定品目、一般販売業を含めまして、一般販売業については、販売品目の登録じゃなしに、全部の品目の取り扱いができるという利点が出てまいったわけでございます。しかし、中身といたしましては全く同一である、こういうふうに御理解いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/38
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039・高野一夫
○高野一夫君 そうすると、第二の農業用品目販売業の登録というのがあるが、そうすると農林省が主管としてやっている農薬の取締法ですか、あれとの関係はどうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/39
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040・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) これは明らかに競合してまいります。したがいまして、農業用品目の販売業をやると同時に、やはり農薬取締法において、その方は農薬取締法によります販売業者の登録を受けるという、お互いに競合する形になってまいるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/40
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041・高野一夫
○高野一夫君 そうすると、法律が二つあって、二つの法律を一人の人間が適用を受けるために、同じ農薬を扱っている、そうすると農薬の取り締まり法でのいろいろな登録なり許可も受けなければならぬ、これでも受けなければならぬ、こういうふうなことになりますが、そうすると、その取り扱う人は非常に複雑ですね、どっちか一方でよさそうなものですが、そういきませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/41
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042・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 御指摘のとおりだと思うのでございますけれども、これは従来もそういうことになっておりましたし、また、農薬といいましてもいろいろあるわけでございまして、毒物劇物取締法に引っかかる農薬と一般の農薬とあるわけでございますので、少なくとも、その取り扱う農薬が毒物劇物取締法に規制されております農薬であるとすれば、こちらのほうに引っかかってくるということに相なるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/42
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043・高野一夫
○高野一夫君 農薬取締法にも毒物、劇物に該当する農薬を製造するとか、取り扱いする、販売する、使用する場合は、これは農薬取締法の中にも別個の規定があるのです。毒液物でない農薬と毒液物である農薬とは区別してあの法律の中にもあると私は記憶しているのですが、そうすると、その毒液物である農薬は、やはりそこで特別の規定がある、農薬取締法に規定する。そうすると、今度その毒液物である農薬は、またこっちの取り締まりの対象にもなる、こういうふうになりますね。向こうの取り締まり法の、中に毒液物と普通の農薬の区別をしてなければわかるけれども、向こうでもすでに区別してあるのじゃないですか。だから、毒液物である農薬を扱う場合はどうこうだとか、管理者はどうこうとか、何とか試験をするとか、いろいろなことになっておったように思うのですが、いま私はここで条文を見てないからわかりませんけれども、そういう辺がいかにもこの二つの法律がダブってくるような感じがする、もう一ぺんひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/43
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044・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 高野先生御指摘のように、農薬取り締まりのほうでも指定品目制度というものがございまして、やはり普通の農薬の中で特に毒性が強いとか、あるいは広範に散布するとかいったものにつきましては、これを指定して特別な取り扱いをするというふうな形になっているわけでございます。したがいまして、毒物劇物取締法にいう農業用品目の場合には、普通指定品目制度に引っかかるものが相当あると思います。しかし、それ以外に、農薬一取り締まりのほうで指定品口になりますのは、毒物、劇物取り締まりの対象になります以外のものも、やはり相当広範に散布されるようなものにつきましては、向こうの指定品目の制度に引っかかってくるものがあると思いますので、これは確かに法律上の競合ということで、先生御指摘のように私ども考えまして、必ずしもすっきりしないという点については先生のおっしゃるとおりだと思いますけれども、すでに現行法としてお互いに連絡しながら十分円滑に行なわれておりますので、その点はひとつ御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/44
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045・高野一夫
○高野一夫君 私は、まだ次回に質疑をやりますから、もう少し次回に質疑したいと思いますが、きょうはこれでやめますけれども、私が言いたいことは 農薬というものの一番有効な農薬の大部分が全部危険物でしょう、危険物が多いでしょう、毒物、劇物以外にこれの対象になるようなものは。これを工業用に使う毒物、劇物は通産省でやるのじゃなくして、厚生省で取り締まっておって、農業に使うからといって毒物、劇物を農薬取締法でやって農林省にまかせなければならぬというのがおかしいということを言いたい。だから、それは薬品である限りは、通産関係の工場で使うものであっても、当然あなた方がこれを管理して取り締まるべきだ、現在そうです。それならば、農林関係でやるこういう毒物、劇物だって、農林省にまかさないで、当然通産関係と同じように、厚生省のあなた方がこういう工業用、医療用の薬品の取り締まりに一括して統一した取り締まりをやられるべきだ。それをいま一人の人が使う場合に二つの法律を競合さして適用を受けなければならぬ、似たり寄ったり——厚生省と農林省、こう分けておっていろいろめんどう——厚生省ばかりならばよろしい、農林省ばかりならばまだいいですよ。省の系統が二つ違っておって、府県庁にいけば衛生部と農林部と違うわけでしょう、それが違っておって、そうしして同じそういう毒物、劇物を使うことについての違った法律があるということが、私はこれはやり方として少しまずいのじゃないか。これは将来の問題だから、これは今後どうあるべきかということについて大臣ともよく相談をなすって、次回にこの点について私もう少し農薬取締法を調べてきますから、政府の考え方をもっとはっきり述べてもらいたい。われわれももう少しこれを研究する必要があると思っております。しからば、どうしたらいいかということはまだ触れませんけれども、次回に十分ひとつ研究してもらった上で、大臣、局長から、はっきりした将来かくあるべきであるという一つの構想を示してもらいたい。私も研究しておきます。
以上、私はきょうはこれでやめます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/45
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046・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 先ほどの御質疑を聞いておりまして、この毒物、劇物の取り扱い者が約二十万ある。そこの中の大体営業者ですか、五万八千くらいのものに対して今回の改正がなされておる、こういうふうに私ちょっと理解したのでございますが、しかし、いままでの資料等を見てみますと、毒物、劇物による被害というものは非常に多くなってきているわけですね。したがって、特にいま最後に申された農薬の被害等におきましては非常に多くなってきておるという観点からすれば、この五万八千くらいの営業者だけの規制で、あとは現行法によってやっていけるのだということでは、やはり根本的な取り締まりの改正にはならないのじゃないか、こういうふうに理解するのですけれども、常業者以外のこの取り扱い者に対する取り締まりの体制というものはどういうふうに考えておられるのか、その辺をひとつ。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/46
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047・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 先ほどの私の説明が、実は先生いまお話になりましたように、二十万近い業務上取り扱い者といいますか、使用者といいますか、そういったものの規制を考えておる、こういうふうにおとりになったのは、私そのとおりだと思いますけれども、実は、毒物、劇物取り締まりの法律の主体は毒物、劇物の有害性にかんがみまして、そういったものを従来は主体とせずに、毒物、劇物を輸入したり、あるいはこれを製造したり、それから、これをまた販売するというのを主体にいたしまして、その取り扱いについての規制が主体だったわけでございます。したがいまして、お手元の資料にも差し上げてございますが、販売業あたりは五万八千ぐらい、全体で言いますと、従来の法律の規制の対象になっております製造業、輸入業、販売業を含めまして六万近い業態というようなものが毒物、劇物取締法の規制の対象になっております。その管理等につきましても、また、譲り受け、これを譲渡するといった場合につきましてもシビアな規定があるわけでございます。ところが、それだけではどうしても毒物、劇物の事故が絶えない。あの絶えない最も大きな原因は何かということが先年来ずいぶん問題になってまいりまして、それで、昨年におきましても行政管理庁のほうから、従来の毒物、劇物取り締まりの法律の運用だけでは十分な危害防止ができない。やはりこれを直接取り扱っておる工場等の、従来あまり規制対象になっておらなかったものを、さらにより法律の適用範囲を拡大して、そこまで取り締まったらどうかというふうな勧告もいただいておりますので、これを取り上げまして、いま先生御指摘のように、業務上使用しておるものという、従来法律の規制になっておらなかったものまでを今度新たに規制をいたしたわけでございまして、それによっていろいろ指摘されましたこれまでの一般的な公害といいますか、そういったものにつきましても規制は相当効果があがる。しかし、それだけでもって私どもはまだまだ完全だというふうに申し上げておるわけではございませんけれども、しかし、この際、公害問題その他も非常にやかましい世論になっておりますので、この際、非常に工場等についても規制がきびしくなるという批判もございますけれども、これを一歩踏み切ってそこまで広げようというふうにいたしたわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/47
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048・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 資料によりますと、立ち入り検査をした件数が二千五百二十八ヵ所やって、そのうち施設なり設備の非常に悪い、管理状態が悪いものが四〇・五%、あるいは廃棄方法が悪くて危険状態にあるものが一七・五%というように、両方合わせますと六〇%近くのものが非常に不完全なままに放置されておったと、このような結果が出ておるわけでございますけれども、こういうのはわずかに二千五百二十八ヵ所です。しかし、いま言われたように、実際には販売業あるいは製造、哲業者を含めて約六万という数からしますと、これはもう半数以上の、非常に不完全、いつ大きな被害が起こるかわからないような状態に置かれておるということでございますが、こういう状態を改善することが今度の改正によってできるのかどうか、その点私はひとつ疑問があるのです。というのは、これに対して監視員の数が千九百二十三名ですか、これはどういう形で全国にばらまかれているかわかりませんけれども、こういうわずかな監視員の数でもって、ただ単に法制上こうやってはいかぬ、あるいは技術上こうしなくちゃいかぬというような、そういう指定だけでこういうような完全な取り締まりというものはできないじゃない一か、こういうように思うのですが、この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/48
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049・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 御指摘のように、現在、監視員の数が、これだけの膨大な対象者を徹底的に監視をするというたてまえからいいますと、先生のおっしゃるように、不十分だということは、私どもはこれは現実の姿として認めざるを得ないというふうに思っておりますが、しかし、この毒液の監視員のそれぞれの方々の資質向上ということで、新たな法律の改正に伴いまして、その法律の施行を完全にするために講習会その他の職員の訓練等にも意を注ぎまして、十分な監視態勢をとれるように、今後とも各県を督励してやってまいりたい、こういうふうに思っておりますが、ただ、これでもって私どもは十分なる監視態勢がとれるというふうには思っておりませんけれども、その点は財政上その他の理由によりまして、監視員の数をふやすということは従来とも努力はしてみてはおりますけれども、なかなか所期の目的を達せられないような形になっておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/49
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050・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 まあ労働関係の、たとえば労働基準法に基づいて、基準法が的確に守られておるかどうか、安全衛生の面においてどうか、こういうことで基準監督官が立ち入り検査なりをするというのと、この毒物、劇物に対する監視員の立ち入り検査というものは、まあいずれも大事ではありますけれども、より毒物、劇物の監視のほうが直接人命に関係することであるし、大きな被害を与えるという面からも、単にこの労働基準法に基づく労働基準監督官の監督というような面と同じような考え方でこの監視員制度というものを考えておると、私は非常にまずい面が起こるんじゃないかと思うんです。したがって、こういう点については、十分なやはり取り締まり体制というものをまず確立をするということが最も必要ではないか、こういうふうに思うんです。で、先ほど出ました農薬の問題等にいたしましても、農薬の不正販売、あるいはその農薬を使っての犯罪、こういうものが非常に口立ってきているわけですね。これらに対して、今度の法改正はどういう形でこれらの規制ができるのかどうか、この点をひとつ伺いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/50
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051・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 農薬に伴います犯罪防止までは、実はこの取締法の対象としては、そこまでの規制までを考えるということは、実は直接の本改正の原因にはなっておらないわけでございますけれども、しかし、従来とも毒物、劇物の保管なり製造なり、あるいは販売等につきまして、抽象的な基準でもって法律で規制されておりましたのを、盗難の防止その他につきまして、より具体的にこれを省令でもって規定をするということでもって、保管その他の規制がより厳重にたるということを考えておるわけでございまして、その他につきましては、この毒物劇物取締法のもともとの法律のたてまえが、これを販売、譲渡する場合には、必ずそれぞれ販売業者のところで、何月何日どういう人にどういうものを売ったということは全部これを記録にとどめるようになっておりますし、その取り扱いにつきましては、他の医薬品等と違いまして、きわめて厳重な取り扱いを規制をいたしておりますので、このたてまえを今後とも国民に対するPRその他によりまして徹底をして、こういう事故が最小限度にとどまるように今後とも努力をいたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/51
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052・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 次の機会にいろいろ論議したいと思いますが、販売業者に対しては、確かにいろいろ規制の面で十分やれる改正のように見えますけれども、しかし、一たんそういう毒物、劇物が使用者の手に渡ってからの取り扱いについての厚生省の指導なり、あるいはその毒物、劇物の危険性についての啓蒙宣伝と申しますか、この取り扱いに当たっての注意、そういう面の指導町が私はやはり欠けている面があるのじゃないかと思うのです。したがって、一面では取締まりを強化するという面と、そういう毒物、劇物を取り扱う、使用する場合の指導、そういう面の両面をかけないと、これからますます公害が多くなってくる中で片手落ちになるような気がするのですが、そういう毒物、劇物の使用にあたっての指導なり監督というものについてはどういうふうに処置をされておりますか。全然やっておらないですか、厚生省としては。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/52
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053・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 農薬の使用といいますか、それにつきましての危害防止につきましては、これは先ほど高野先生御指摘のように、農薬取り締まりのほうでいろいろな規制もやっております。それから毒物、劇物につきましては、農薬所であっても私のほうの規制の対象にいたしておるわけでございますが、先生御指摘のように、やはり国民に対するPRというものが必ずしも十分ではないということは、私どもこれを認めるにやぶさかではないのでございまして、その辺は農林省ともよく相談をいたしまして、毎年五月に入りますと、農薬の災害防止運動というふうな月間のPR活動等も毎年毎年年中行半としてやっておりまして、なるべくそういう被害が起こらないように極力宣伝し、事故を未然に防止するということに今後ともつとめてまいりたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/53
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054・徳永正利
○徳永正利君 いままで鋳掛け屋なんかも青酸カリを使うわけですね、小さいいなかの鋳掛け屋でも。そういうものは実際どういうふうにいままで規制をやっておったか、今度の改正でそれはどうなるのか、改まったのか、改まるというとおかしい、か、また取り扱いがむずかしくなるのか、それが一つと、いままでのことと今後のこの改正によって。それから、相模川でよく毒が流れてアユやフナが何万匹も死ぬというような新聞記下が出るわけですね。それはいままでどうやっておったのか、そうして今度の改正で今後どうなるのか、それだけ一つ御説明願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/54
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055・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 従来は、先ほど御説申し上げましたように、現行法二十二条のいわゆる「営業者及び特定毒物研究者以外の者に対する準用」規定によりまして、ある程度規制の対象になっておったのでございますが、これが実は、たとえば運搬したり陳列したりする場合にかぎをかけろとか、あるいは流れ、しみ出ることを防ぐのに必要な方法を講じなければならないという程度のきわめて抽象的な規定で、それを具体的にどういうふうな施設をしなければならないというふうなことにつきましては、ほとんど野放し状態になっております。それを今度ははっきりした基準を省令でもってより詳細に具体的に示すようにするということになりますので、この点は、構造、設備等につきましての規格は厳重になる。いままでは、一応業務上取り扱っておるということで、表面的な法律の規制は受けておりましたけれども、しかし、それが今度はより厳重になる、これが第一でございます。
それから、従来は、事故があった場合には、そのメッキ業者と鋳掛け屋等に立ち入り検査をすることができますけれども、どこでどういうことをやっておるということが事実上把握ができておらないというのがこれまでの状況だったのでございますか、今度はこういったものを、全部一応いままでやっておらない毒物、劇物の取り扱い責任者をそこに置かせるということでもって、責任者の届け出義務を課すということになりますと、どこでどういう工場がどういうことをやっておって、こういう人が管理人にたっておるということが明白になるわけでございます。したがいまして、届け出を受けるということによってそれの取り扱い責任者としての義務規定もございます。従来以上に規制がはっきりしてくる、こういうプラス面が出てくるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/55
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056・徳永正利
○徳永正利君 いや、私の質問はそういうような一般的なものじゃなくて、鋳掛け歴のおやじがどういうふうな制約を受けるのか、あるいは工場主がいままでは何でもなかったんだけれども、今度はこの法律でどういうふうにしばられるのかということなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/56
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057・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 失礼しました。鋳掛け屋という例でございますが、これは業務上の取り扱い者にはなりますけれども、毒物、劇物の取り扱い責任者を置く義務はないわけでございます。しかし、そこで使っておる青酸カリその他の毒物を明らかに業務上使っておる業態でございますので、これを廃棄したり保管をする場合の留意といったものにつきましては、その根っこになります法律の中身が改正されますので、従来以上の取り扱いの義務といいますか、順守義務といいますか、これが厳重になる、こういうふうに御解釈願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/57
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058・徳永正利
○徳永正利君 私は具体的に聞いているわけで、ナマズやらフナがひっくり返ったという事件があるでしょう、相模川なんかで。新聞によく出ますね。あれはいままで野放しにしておったのか、取り扱いとかそういうものが。あるいはどの程度規制しておったのか、今度はどうなるのか、この改正で。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/58
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059・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) きわめて具体的な事例でございますし、前例もございますので、説明員のほうより詳細に答えてもらいます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/59
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060・横田陽吉
○説明員(横田陽吉君) 御説明申し上げます。ただいま御質問の鋳掛け屋等の場合でございますが、先ほど局長が御説明申し上げましたように、鋳掛け屋、かじ屋、そういったものは、いずれも毒物を業務上使用するものでございます。で、業務上使用するものの中には、ただいま御質問の、そういった非常に零細な業態と、それから、自動車の部品をつくっておる工場でありますとか、非常に大きなメッキ工場、そういった大きい工場と二つに分かれてまいります。それで、今回の改正につきましては、大企業、小事業場、それによって差別をつけるという考え方は別に持ち込んでおりませんけれども、ただ、現実問題といたしまして、従来から起こっております事故例でありますとか、あるいは現実に使っております毒物、劇物の使用量等によりまして、起こる被害の対象というものがおのずから定まっております。したがって、今回の改正といたしましては、非常にたくさんの毒物、劇物を業務上使っておるものであって、しかも、従来からの事故例の経験に徴しまして、非常に危険な業態について特に監督規制を厳重にするというふうな配慮を盛り込んでおります。そういった観点から、業務上取り扱い者につきましては二分類いたしまして、まず、第一の範疇は、政令で定める毒物、劇物を業務上使うものであって、政令で定める業態であるもの、これを第一の範疇にいたしております。それから、第二の範疇は、毒物、劇物を業務上使用するものであって、第一の範疇に属さないもの、そういうふうな分類をいたしております。
第一の範疇にさしあたり入れたいというふうに考えておりますのは、現実には政令によってその範囲がきまるわけでございますけれども、無機シアン化合物を業務上使う業態であって、しかも、その業態がメッキ部門であるもの、そういうふうな考え方をいたしております。つまり簡単に申しますと、第一の業務上取り扱い者を設置する義務を負い、しかも、その毒物、劇物を使用するにあたっては、これからそういうものを使用いたしますという届け出義務を課せられるものはメッキ業者である。しからざるものは、いずれもそういった特別な管理者の設置義務とか、あるいはそれを使用する届け出義務は課せられません。そうなれば、その業務上取り扱い者の中で、メッキ業者以外の者については今回の改正は何の意味もなさないではないかという御疑問もおありのようでございますけれども、これにつきましては、先ほど来、局長から御説明申し上げておりますように、第五条の関係の構造、設備の基準が非常に詳細に省令で定めるというふうな仕組みになっておりますことと、それから、第十一条の外部への流出防止の義務でございますが、現行法では外部へ毒物、劇物を流出してはならないという場合にどういう規定をいたしておりますかということを申し上げますと、その毒物、劇物を貯蔵、運搬、陳列しておる場合には、その毒物、劇物を外に流し出さないようにしなさい、簡単に申しますと、こういうふうな規定でございます。したがって、貯蔵、運搬、陳列でございますから、製造業者とか販売業者とか輸入業者とか、そういった僧業者につきましては、その規定はなるほど当てはまります。その規定を業務上取り扱い者について準用いたしておるわけですが、現行法では。業務上使用者は、その貯蔵、運搬、陳列という面に関しては、実はそれほど問題になるわけはありません。むしろそれを工業用の原料、材料として使用いたしております作業工程中において、たとえばメッキ槽のパイプがはずれて、それが外へ流れ出すとか、そういった事故が非常に多いわけでございます。したがいまして、十一条の改正といたしましては、貯蔵、運搬、陳列という限定をはずしまして、あらゆる場合に外へ流れ出ないような注意をしなければならない、こういうふうな点でございます。それが現実問題としては、業務上取り扱い者に対する非常に厳重な規制というふうな結果になってあらわれてまいるわけであります。
それから、もう一点は、十一条につきまして、先ほど局長から申し上げましたように、現行法では毒物、劇物その本体だけが流出防止義務の対象になっております。しかしながら、メッキ業者の場合を例にとりますと、メッキに使いますシアン化合物は、大体シアン化合物としての含有量が三%ないし八%で、ございます。現在の法律では、三%ないし八%に薄めたものは毒物、劇物ではございません。毒物、劇物を含有するものでございます。ところが、現在の法律では、毒物、劇物については、しかも、貯蔵、運搬、陳列の際において流出防止の義務を課しているというのが十一条でございます。その二つの面から規制がはずれてくるわけでございます。まず、作業に使っております場合は、貯蔵、運搬、陳列のいずれの形態にも該当いたしませんし、それから、もう一つは、「含有する物」でございまして、毒物、劇物それ自体ではございませんから、これが流出防止義務の対象になっておらない。その第二の面については、特定のものについては「含有する物」も流出防止の義務に加えるというふうな対象の広げ方をしたわけでございます。
それから、第三番目は、第十五条の二という規定がございますが、これは毒物、劇物を廃棄する際の基準を政令で定めるという規定でございます。この規定も、先ほど来御説明申し上げておりますように、営業者、製造業者、販売業者等を含めた営業者、それから、準用される業務上取り扱い者、その両方に適用ないし準用される規定でありますけれども、この点につきましても、廃棄する場合には、政令で定める技術上の基準に従わなければならないものは何を廃棄する場合であるかといいますと、これも毒物、劇物それ自体を廃棄する場合でございます。したがいまして、メッキ業者の例を再び引用させていただきますと、メッキ槽の中に入っておりますシアン化合物の溶液は、これはすでに毒物でも劇物でもございません、含有するものでありますから、それをそのまま多摩川にもし捨てたといたしましても、現行の毒物劇物取締法によってはいかんともなし得ないという、そういったことになっております。しかし、現実に起こっております事故例は、いずれもそういった溶液等を多摩川等に、故意か過失か、いろいろなケースがあろうと思いますけれども、大体の場合は過失によってであろうと思いますが、そういったものが投棄された場合でも、少なくとも毒物劇物取締法上何とも手当てのしかたがないということになっております。この点につきましては、第十一条のところで申し上げましたように、流出防止義務の対象に「含有する物」を加えたと同じように、廃棄する場合の廃棄義務、廃棄する際に守らなければならない基準、それを当てはめる対象にこの毒物、劇物を「含有する物」のを加えたと、こういうことでございます。そういうことでございますので、業務上取り扱い者について、これは大体二十万くらい業態がございますけれども、その中でメッキ業者だけを取り上げて届け出義務、それから、取り扱い責任者の設置義務をさらに加えたわけでございますけれども、その他の業務上取り扱い者につきましても、ただいま申し上げましたように、五条の構造、設備、それから十一条の流出防止義務、十五条の二の廃棄する際に守らなければならない義務というものがきわめて強くなるような法律改正をお願いいたしておるわけでございますので、その点に関しては、全般的にこの毒物、劇物に関する主として公害防止の見地からする規制というものは強化されるものだというふうな仕組みになっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/60
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061・阿具根登
○阿具根登君 そうすると、いまの説明を聞いていると、熊本の水俣のあの病気は、あれは一体どうだったのか。数年かかって奇病だ、水俣病だといわれて、そうして廃人になってしまった。それに厚生省の出した考え方が非常にあいまいで、いまの説明を聞けば、いままでの法律ではそれは取り締まれなかったのだ、こうなるでしょう。廃人になったことがわかっても取り締まれなかった。じゃ、それで通産省の関係は一体どうなっているのか。、だったら、あれだけの何十人という人を廃人にしておいて、これは会社側の責任ではないということになりはしませんか。いままではそれは取り締まることができなかった、そんなばかなことはないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/61
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062・横田陽吉
○説明員(横田陽吉君) 私がただいま御説明申し上げましたのは、毒物劇物取締法上取り締まれるかどうかという問題についてだけ申し上げたのでございまして、それらの点については私の御説明申し上げる範囲外でございますから申し上げなかったわけでございます。それで、毒物劇物、取締法は、少しまた補足させていただきますと、これは大体におきまして製造業者、販売業者を通じての生産流通に関する法律である、そういった性格を現行法は持っております。したがって、これを業務上使う段階になってからどういうふうな使い方をするか、それを廃棄する場合にどういうふうな廃棄のしかたをするかという点につきましては、非常に何といいますか、規定自体が不備でございます。したがって、ただいま申されましたその事例に毒物劇物取締法がどういうふうに当てはまるかという点になりますと、先ほど申し上げましたように、非常に手薄だったので、さらにこれを厳重にすることが、ある意味では毒物劇物、取締法の一つの体系の変更と申しますか、そういったことにもつながるわけでございますけれども、先ほど局長から申し上げましたように、公害防止的な見地からそういったことは踏み切ってやらなければならぬという見地からこういう改正法案を提案させていただいているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/62
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063・阿具根登
○阿具根登君 どうもはっきりしないんですがね、踏み切るとか踏み切らぬとかいうことでなくて、廃棄物に毒物がまじっておって数十人の人が廃人になった、そういうのが取り締まれなかったんだとか、あるいは今度踏み切るんだ、そういう問題じゃないでしょう。そうすると、いままでそういうことをやってよかったんだということになるわけですよ。私はそういう法律はなかったと思うんですよ。そうすれば、いままで水俣でそれじゃあれだけの人が廃人になった、その場合に学者の方々がずいぶん論争もされた、私たちもこの委員会から派遣されて現場を見に行った、それじゃ何のために児に行ったのか。当然毒物、劇物であったならば、これは禁止すべきである。それは毒物であるか劇物であるかということか非常にひまがかかったわけです。会社側でいえば、これは博物じゃない、劇物じゃないという反証もするし、一方では、当然これは会社の廃液であるということを言っておったが、現実には、御承知のように、現在の医療ではどうにもならない。しかも、最近の新聞では、これは物理的に、別府かどこかの、どろの温泉に入れたところが、水銀が尿からどんどん出てくるようになった、こういうことまでいっておるのであるから、第一点は、いま言われました、いままでの法律では取り締まれなかったんだということに疑問を持つのと、劇物であるか毒物であるかの判定を厚生省自体ができないではないか、できない場合は一体どうするのか。だから四年も五年もかかった、そうして結論が出なかった、一体そういう場合はどうするのか。現実問題は、一人はそのために廃人になってきた。しかし、会社側は会社側で、それなりの学者を使って、会社の廃棄物ではありませんと、こう言う。ところが、実際今日になってみると、当然そうであったということがだれの目にも明らかになっておる。そういう場合は一体だれが責任を負うのか、どういう取り締まりをするのか。その廃棄物の中に毒物が入っておる入っておらぬというのは、今度きまるこれで監視員ができるのか。また、通産省の関係はどうなっておるのか、工場設置問題等についてどうなっておるか、そういう点はどういうふうにされておるのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/63
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064・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 先生の御質問は、この毒物劇物取締法でもってあの水俣の問題を取り締まることができたかできなかったかというふうな御質問とすれば、現在の法律のたてまえからすれば、これはこの法律の対象にはならなかったということは、これは明白だと思います。しかし、今度の改正によりまして毒物、劇物を政令で指定する、「含有する物」、これを政令で指定するつもりでございますが、含有するものまでもひとつ規制の対象にしようというのか私どもの今回の改正のたてまえでございますが、これは政令でどのようなところ衣で広げるかどうかということは、学者の方々の御意見を聞いた上で慎重に検討いたしいたいと思います。それで、あの水俣の場合には、私どもが拝聴いたしておりますところでは、何か有機水銀か何かがあったというふうに考えられるのでございますけれども、その辺はなかなか学者の方がやはり四年も五年もかかっても結論がまださだかでない。しかし、「含有する物」に、はたしてそういう有機水銀まで含めるかどうかという問題につきましては、政令の段階で私どもは検討いたしたいと思っております。しかし、責任問題ということになってまいりますると、これはいわゆる会社の工場管理の方法といいますか、そういった問題で解決する問題であって、私どもとしましては、この毒物劇物取締法自体で、そういう責任問題といいますか、つまり雇用主と被用者との間のその労働関係の問題とはこれは別個の問題だと、こういうふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/64
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065・阿具根登
○阿具根登君 労使問題をあんたに聞いておるわけじゃないんですよ。労使問題は、失礼ですが、私のほうが詳しいですよ、あんたよりも。そんなものを聞いておるわけじゃないんですよ。これは会社の廃液のためにこうなったかということの判定をだれがするのかと言っている。その先の問題はわれわれがやりますよ。それから、肝心のものは政令にまかせろ政令にまかせろと言うのですね、私らにはわからぬ。役人の皆さんが政令でやられるだけで、肝心なものは政令にまかせろ政令にまかせろとおっしゃる。時間がないから私はやめますけれども、これは次回に延ばしておきますが、第一この資料をちょっと見てみても、別表の第一から第三までに百三十のこれは劇物、毒物の名前がついておりますよ、全部あなた方は知っていますか。ここの議員だってだれも知らぬですよ。だれもこんな専門家はおらぬです。私が読むのに読めないような、かたかなでばらばらに書いたやつを百三十個も並べてある。もっと親切に、これはどういうときに使うやつだと、どういうものだということを説明しておかねは——あなた方は議会にこれを出しさえすればいいと思っているけれども、これでわかりますか。これは大臣もわからぬでしょう。大臣、読んでみてわかりますか、これは何というのかわからぬはずですよ。あなた、こんなものを百三十も並べておいて、そしてあなた方、質問されると、もう官僚的に懇切丁寧にやられるけれども、実際時間を食うばかりで、議員が聞いていてわからぬですよ、こんなことでは。こういうやつをもっと親切に、こんな何とかという用語だって、読むのにめんどうですからこれは読みませんが、これはどういう場合にできるやつであるとか、どういう工場でどういうものを使用する場合にこういうやつができるとか、あるいはこれはどういう劇物である、どういう毒物であるというくらいのことを書いておかなかったら、これはこの次に私は丁から百三十まで質問していきますよ。きょうは十二時半にやめろと委員長から言われているからやめますが、私が一つずつ質問してあなた方説明できますか。こういう専門家なら別ですけれども、議員が何人おっても、わかる人はだれもおりませんよ。もう少しこういう質問をせぬでもいいように、親切にやられたらどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/65
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066・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) たいへん申しわけございません。薬の名前自体、全部こういう法律のたてまえ上、化学名で載せるということになっておりまして、非常に長たらしい名前になっているわけでございますが、これは化学方程式に基づいた化学名をそのまま載せるという薬の関係の法律全部共通の問題でございまして、それがどういう用途に使われるかということにつきまして説明書きをつけておりませんでしたのは私どもの手落ちでございます。これはどういう用途であるかということにつきましては、あらためて資料でもって提出いたしたいと思います。ただ、用途につきまして、たとえば毒物なら毒物の化学名に出ております最初のEPNといいますか、こういったものにつきましては、これは殺虫剤だ、殺虫剤で、たとえばアカダニその他の虫にきく。それで、磁性につきましては、大体一キログラム当たり何グラムぐらい飲めば毒性になるのだというふうな資料は用意いたしておりますが、大体農薬と、それから化学材料といいますか、化学工場等でつくる関係のものが主体でございまして、その辺大別して区分けすることはできるわけでございますけれども、主たる用途につきましては、先生御指摘のとおり、次回までに必ず表にいたしまして提出する予定にいたしております。非常に申しわけございませんでした。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/66
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067・高野一夫
○高野一夫君 いま阿具根委員のおっしゃるのはもっともだと思いますよ。いま局長のほうからそうおっしゃったから、特に今度の改正が業務関係に使用しているいわゆる工場、処理場、そういうところを対象としている、その点においてはわれわれはいいと思っております。だから、それがどういう工場で使用されているかということと、先ほどメッキメッキという話があって、メッキだけが今度の対象になるようなふうの話に私には聞こえたのだけれども、ほんとうにメッキ工場だけを政令で指定する考えなのか、そのほかは何もないのか、そういう点をもう少し今後学者に研究させるにしても、ここまでくる以上は、厚生省として相当専門家で研究ができていると思うから、こうこういうことを一応考えているというその資料もあわせて次回に提出を願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/67
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068・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 局長よろしゅうございますか、その資料について。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/68
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069・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) 承知しました。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/69
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070・小平芳平
○小平芳平君 同じく、この資料を見ますと、事故の例がいろいろと出ておりますね。要するに、こういう事故を防いでいくための法律改正じゃないかと思うのですが、そうですか。いろいろと毒物、劇物の取り扱いを間違えたとか、あるいは運搬中ひっくり返ったとか、こういうことばではこの法律は範囲外かもしれませんけれども、こういういろいろな事故があるという資料が出ているのです。それから今度は、こちらのほうの改正点では、先ほど課長さんからも詳しく説明がありましたが、これこれしかじかのこういう改正をするのだというふうにもおっしゃっているのです。こういうふうに実際改正した場合には、そういう業者の人もまた実際の規制を受ける人が出てくるわけです。ですから、こういう事故があるからこういう改正をしてこういうふうに事故を防げるのだ、あるいはこういう事故を防ぐためにこういう改正が必要だということを説明していただくなり、あるいはそれがわかるような資料を出していただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/70
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071・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 局長よろしゅうございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/71
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072・熊崎正夫
○政府委員(熊崎正夫君) ここに出ております事故の中に、たとえば河川に流すとか、そういったもので被害を受けた場合のこれにつきましての対策は今度の改正には盛られておるわけでございますけれども、たとえば農薬を飲んで自殺したとか、そういったところまでの防止策というものは、これは先ほど御質問がございましたけれども、国民にPRをやるということで、それが具体的にこの取締法の中に、よりシビアに規制するというような形にはなっておりませんので、その辺はひとつお含みおきをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/72
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073・鈴木強
○委員長(鈴木強君) 小平委員、それでよろしゅうございますか。
本日はこれにて散会いたします。
午後零時二十七分散会
————・————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104614410X02119640414/73
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