1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和三十九年二月二十一日(金曜日)
午前十時二十一分開議
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○議事日程 第七号
昭和三十九年二月二十一日
午前十時開議
第一 人事官の任命に関する件
第二 土地調整委員会委員の任命
に関する件
第三 運輸審議会委員の任命に関
する件
第四 道路整備緊急措置法等の一
部を改正する法律案(趣旨説
明)
第五 旧金鵄勲章年金受給者に関
する特別措置法案(趣旨説明)
第六 国有財産法第十三条の規定
に基づき、国会の議決を求める
の件
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○本日の会議に付した案件
一、日程第一 人事官の任命に関す
る件
一、日程第二 土地調整委員会委員
の任命に関する件
一、日程第三 運輸審議会委員の任
命に関する件
一、日程第四 道路整備緊急措置法
等の一部を改正する法律案(趣旨
説明)
一、日程第五 旧金鵄勲章年金受給
者に関する特別措置法案(趣旨説
明)
一、日程第六 国有財産法第十三条
の規定に基づき、国会の議決を求
めるの件
一、請暇の件
━━━━━━━━━━━━━発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/0
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001・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/1
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002・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。
日程第一、人事官の任命に関する件を議題といたします。
内閣から、国家公務員法第五条第一項の規定により、佐藤達夫君を人事官に任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/2
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003・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/3
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004・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第二、土地調整委員会委員の任命に関する件を議題といたします。
内閣から、土地調整委員会設置法第七条第一項の規定により、岡部得三君を土地調整委員会委員に任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/4
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005・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/5
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006・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第三、運輸審議会委員の任命に関する件を議題といたします。
内閣から、運輸省設置法第九条第一項の規定により、吾孫子豊君を運輸審議会委員に任命することについて、本院の同意を求めてまいりました。
本件に同意することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/6
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007・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 総員起立と認めます。よって本件は全会一致をもって同意することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/7
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008・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第四、道路整備緊急措置法等の一部を改正する法律案(趣旨説明)、
本件について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。河野建設大臣。
〔国務大臣河野一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/8
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009・河野一郎
○国務大臣(河野一郎君) ただいま議題となりました道路整備緊急措置法等の一部を改正する法律案の趣旨を御説明申し上げます。
政府におきましては、現行の道路整備緊急措置法に基づきまして、昭和三十六年度を初年度とする道路整備五カ年計画を策定し、これにより道路整備事業を推進し、今日まで相当の実績をあげてまいりましたことは御承知のとおりでございます。
しかしながら、最近の目ざましい経済の成長に伴いまして、道路輸送需要は計画策定当時の予想をはるかに上回って著しく増大しつつあり、現行計画によりましては、とうていその需要に応ずることができないことが明らかになってまいりました。また、現行の計画策定後の新情勢、たとえば全国総合開発計画、新産業都市建設計画等の樹立に即応いたしまして、産業開発のための道路整備を強力に促進することが必要となってまいったのであります。
ここにおいて、政府といたしましては、以上の情勢に対処するため現行の道路整備五カ年計画を改定拡充し、昭和三十九年度を初年度とする新たな道路整備五カ年計画を樹立し、道路の改良と近代化を促進し、輸送の隘路を打開するとともに先行的道路投資を行ない、産業経済の基盤の強化をはかることといたしたのであります。
このような観点から、計画策定の根拠法である道路整備緊急措置法等の一部を改正する法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の要旨を申し上げます。
改正の第一点といたしましては、ただいま申し上げましたとおり、現在実施中の道路整備五カ年計画を改定して、新たに昭和三十九年度を初年度とする新道路整備五カ年計画を策定することといたしたことであります。
第二点といたしましては、道路の改築で土地区画整理事業にかかるものの費用につきましては、従来、土地区画整理法に定めるところにより、国がその費用の二分の一を負担しまたは補助してきたのでありますが、昭和三十九年度以降五カ年間におきましては、国がその費用の三分の二を負担しまたは補助することができる旨の特例を設けることといたしたことであります。
第三点といたしましては、道路整備計画の一環として実施しております積雪寒冷特別地域の道路交通確保に関する計画につきまして、新道路整備五カ年計画と計画期間の調整をはかるため、昭和三十九年度以降の毎五カ年間を各一期とする積雪寒冷特別地域道路交通確保五カ年計画を策定することといたしたことであります。
その他これに関連いたしまして、関係規定の整備を行なうことといたしました。
以上が、この法律案の提案理由及びその要旨でありますが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決下さいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/9
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010・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。武内五郎君。
〔武内五郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/10
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011・武内五郎
○武内五郎君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました道路整備緊急措置法等の一部を改正する法律案について、池田総理並びに関係閣僚に対して若干の質問をいたしたいと存ずるものであります。
御承知のとおり道路整備に関する計画は、ガソリン税を目的税として、昭和二十九年度を初年度とする第一次計画が作成され、その後に昭和三十六年度を初年度とする投資規模二兆一千億円の現行第三次五カ年計画が樹立され、実施されてきたのでありますが、第四年度にあたって再び改定の必要に迫られ、本法案の提案を見るに至ったのであります。池田内閣の唱える国民所得倍増計画の構想においては、二重構造の是正と社会的安定の確保が柱の一つとされておりますが、この政策の実施のあとを見まするとき、産業と文化の集中する都市と、立ちおくれと窮乏の地方との大きな格差の生じていることは、否定できないのであります。しかも、最近における大都市の急激な膨張を見るとき、産業と人口の集中に対して都市機能のバランスが破れて、きわめて重大な過大都市問題を惹起して、過密の弊害を露呈しているのであります。すなわち、それは交通戦争となり、水飢饉となって、住宅難、土地騰貴等となってあらわれ、さらには地盤沈下、煙害となっておるのであります。
そこで、まず、池田首相にお伺いしたいのであります。交通運輸の体系は、産業、経済、文化の動脈であることは申すまでもありません。しかるに、今日の交通体系を見まするとき、既成大都市等、高度成長地域の経済活動が活発になればなるほど、低成長地域との間の開きが大きくなって、交通体系そのものが地域格差拡大の主因となってまいりました。池田内閣は、かつて地域格差の解消を唱えて、地方の人々を喜ばせました。地方住民は、現行の道路整備計画の実施によって、地方道路の改修を一日千秋の思いで待っておったのであります。低開発地域の向上、そのためには、道路整備こそが緊急な基盤造成であると考えられたのでありました。しかるに、この道路整備事業の実績を見まするとき、予算の大部分は、大都市と、きわめて少数の幹線道路とに食い尽くされて、地方道路に回る余裕はほとんどないという実情であったのであります。これまでの道路政策は、激化する大都市の交通戦争に追われるばかりで、地方の交通道路の整備を犠牲にしていたのでありました。私は、今日の産業、経済、文化の病的な偏在と集中は、道路整備政策がはなはだしく均衡を失っているところにあると考えざるを得ないのであります。私は、新たな道路整備事業計画の策定にあたって、池田総理は、依然として大都市重点政策を続けていかれるのか、また、道路政策の偏在性を是正して、地域格差の解消に努力されるのかどうか、お考えを承りたいのであります。
第二点は、河野建設大臣は、ビジョンとして、欧米先進国並みの道路水準に達するためには、昭和五十五年度までの十七年間に約二十四兆円の道路投資が必要であるといわれ、その第一次計画として、今回の四兆一千億円の五カ年計画が進められているのであります。道路整備計画等の策定は、投資額で決定すべきものではなくて、その策定基本となるものは、産業、経済、文化の均等な発達をはかるための総合的国土開発の計画に基づいた、具体的な調査に裏づけされた交通体系が立てられなければならないのであります。しかるに、この計画で取り上げられておりまするのは、都道府県道以上のものであって、特に新しい高速自動車道の建設と、一級、二級国道の舗装、改良が主体となっているのであります。わが国道路の総延長の九〇%を占めておりまする、国民の日々の生活と密着しておりまする市町村道以下の通路は、この計画の対象にはなっていないのであります。巨大な幹線道路網という産業基盤の整備は、かなり進むかもしれません。しかし、国民の生活基盤の整備は、全く取り入れられていないのであります。また、一般通路の整備は、計画性のない応急的な寸断工事または既存道路のきわめて小規模の改良程度で糊塗しようとするものではないかどうかを疑わざるを得ないのであります。前期五カ年計画の構想を見ましても、一般道路に二兆二千億円、有料道路に一兆一千億円を考えながら、地方単独事業として八千億円としていることは、やがては地方公共団体に対する過大なしわ寄せを必要とするときが来るのではないかと感ぜざるを得ないのであります。もし、かかる計画を実施するにあたって、地方公共団体が弾力的財政力を欠いている現状に照らして考えまするときに、過大な投資を強要することは、地方財政の破綻は避けられないこととなり、計画の実施もまたやがて行き詰まりを来たすのではないかと疑わざるを得ないのであります。池田総理、河野建設大臣、田中大蔵大臣、早川自治大臣のお考えを承りたいのであります。
第三点は、道路整備に要する財源の問題についてであります。今回の新計画推進のための必要な財源措置として、課税率を、揮発油に対して一〇%、軽油に対しておおむね二〇%の引き上げを断行しようとしていることであります。すなわち、この華麗豪華な道路整備計画は、今日四百五十万台の各種自動車、四十六万台の農業機械等の使用する燃料に対する課税に依存しようとするものであります。物価抑制策は、政府の直面する重大な課題の一つであるにかかわらず、道路整備の名目のもとに増税を行なって、運輸コストの上昇による一般物価への影響を顧みないという施策はあまりにも無謀なものと言わざるを得ないのであります。しかも私は、さきに一月二十三日の本会議で指摘いたしましたるごとく、この事業の推進をガソリン税に依存するとするならば、自動車使用度の濃密な大都市に集中することは避けられない。なかんずく池田内閣は、重要施策の一つとして農林漁業の近代化を標榜しておりまするが、近代化のための農業用機械に使用する燃料さえもこの道路財源に充当されるとするならば、きわめて不合理、残酷な施策と言わざるを得ないのであります。今日、欧米各国では、燃料税の軽減または廃止の方向をとっているとき、私は、かかる奇形的な財政を正常化するためには、ガソリン燃料税以外の財源、すなわち一般財源の投資が必要であると考えるものであります。この点に関し、大蔵大臣、農林大臣のお考えを承りたいのであります。
第四点は、雪寒道路の事業についてであります。計画構想によれば、「雪寒道路事業の拡大強化をはかる」ということになっておることでありまするが、昨年一月の豪雪による苦い体験、深刻な社会問題にまで発展した雪害に対して、道路、鉄道の交通確保が痛感されたことは御存じのとおりでありまするが、豪雪寒冷地方の交通を確保する対策というものは、私は、積雪、凍結に対する平常からの試験研究の充実、また基本的な調査の必要ということは、もう論を待たないところでありまするが、流雪溝、なだれ防止施設の建設、除雪機械の整備拡充等、調査研究に基づいた適切な工法を採用するならば、この地域の交通確保は決して不可能ではない。現実にそれがあるのでありまするので、私は建設大臣に、昨年の豪雪に対応して交通確保に関する対策をどの程度まで持っておられるかどうかを承りたいのであります。積雪地域における円滑な交通確保のための確信ある道路整備計画とその財政的措置の方策を明らかにしていただきたいのであります。
最後に、幹線自動車道路の建設についてであります。名神高速道路はこの夏完成を控えておりまするが、中央道、東名道路等については、昭和三十七年度においてその一部に着手し、それぞれ昭和四十二年、四十三年に完成する目途をもって、来年度は建設に拍車をかけることとなっておりますが、他の地域、すなわち中国、九州、東北、北陸並びに北海道に及ぶ国土縦貫道路は、いまだ調査の段階であり、着工までにはほど遠い感を免れないのであります。天然資源の開発、利用、国内産業の育成、強化、流通経済の円滑化等の見地に立って、国土の地域的半身不随を矯正するためには、縦貫道路とともに、肋骨道路の建設こそが緊要な問題であります。新五カ年計画には一兆一千億円の有料道路のワクを設けておりまするが、大蔵大臣は、その資金の確保について十分な自信がおありかどうか。建設大臣は、調査をいつまで続けるのか、建設に着手される見通しがいつなのか。さらに総理大臣は、国土の総合的な開発から、これら幹線自動車道路の建設のあり方について、総合的な構想を持っておるかどうか、はっきりお答えをいただきたいと考えるのであります。
以上をもちまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/11
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012・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 道路の整備拡充は、わが国の産業、経済、文化の発展上絶対必要なものであるのであります。したがいまして、政府は数年前一兆円計画を立て、またお話のとおり、三十六年に二兆一千億円計画を立てましたが、これでも不十分でございます。したがいまして、今回新たに新道路五カ年計画、四兆一千億円を計画いたしまして、全国の拠点都市、中枢都市、あるいは新産業都市等の配置を考えながら、国土の効率的利用と均衡ある発展をはかりたいと念願しておるのであります。したがいまして、今度、わが国の今後のいわゆる産業、経済、文化の発展上、五年たてばまた特別の構想を立てまして、総合的な考えのもとに道路整備による国土の開発を今後とも続けていきたいと考えております。(拍手)
〔国務大臣河野一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/12
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013・河野一郎
○国務大臣(河野一郎君) ただいま総理からお答えがありましたが、実は、道路の予算がここ数年来急激に増加してまいりまして、これまでは既定の道路計画もしくは既存の道路の改修ということでやってまいりましたけれども、この段階になりました以上は、私といたしましては、将来少なくともわが日本の産業構造もしくは人口の分布というようなものを想定いたしまして、この想定のもとに計画を進めることが必要であろう。もちろん、非常にむずかしい問題でございますから、二十カ年を一応のめどにいたしまして、各学識経験者の御意見を承って、これを将来のわが日本の一応の道路計画ということにいたしておるのでございます。その目標に基づいていろいろ計画を立てておりますが、ここでひとつ相当の決意をもって変えましたことは、これまでのように一級、二級国道、主要県道、これを舗装いたします際に、いずれも改良、拡幅をいたしてまいりましては、とうてい全国の道路を舗装するということは、何年かかるかわからぬというようなことに相なりまするので、まず舗装というような意味合いから、がまんのできる程度のところは現状において舗装していこう。一方、重要な産業道路の建設と、既存の道路を舗装をするという二つの目標におきまして、一応の計画を立てております。そういう意味合いからいたしまして、昭和四十三年もしくは四年までに、一級、二級国道は全部舗装を終わるという計画を立て、四十五年までには、主要県道は全部舗装を終わるということを第一の目標といたしております。
次に、こういうふうな意味合いにおきまして、都市偏重ということをしきりにおっしゃいますけれども、決して都市偏重にあらずして、いま申し上げますように、全国の主要県道までを四十五年までに舗装を終わるということに方針を変え、したがって、この計画を進めます上において、各府県のこれまでの道路に持っておられまする関心もしくは予算を、この機会に一ぺんお考え直しを願う必要があるという意味合いから、人口、もしくは県の面積、もしくは県の財政というようなものを勘案いたしまして、各府県の道路予算の適正な数字は、この辺までちょうだいする必要があるというものも一応参考にして、各府県知事さんと御懇談申し上げて、無理のかからない程度において、この計画を進めてまいるということにいたしておるわけでございまして、だんだんお示しになりましたような点につきましては、特に注意して事業を進めてまいりたいと考えております。
次に、積雪地方の道路でございますが、この点は、私といたしましても、昨年調査に参りまして後、特に深い関心を持ちまして、まず第一に各町村に除雪の機械を設置していただいて、これによって、細い町村道の除雪もしていただく必要がある。国道、県道につきましては、国、県においてやりますけれども、各市町村の除雪も必要であるというので、除雪機械の補助を相当大幅に持っていきたい。そうして、各市町村、県、国一体となって除雪をしたい。さらに道路につきましても、十分に整備をする必要があるということから、五カ年計画を立て、さらに、順次これらの地方の道路を、いわゆる雪から守る道路に構造を改善していくということに配慮いたしているわけでございます。
最後に、関東から新潟方面に参ります道路について特に御質問でございましたが、新道路五カ年計画におきましては、一応予算が四兆一千億になっております関係から、高速自動車道路といたしましては、東京−阪神間を結びまする道路を完成することと、中部縦貫道路のすでに決定いたしておりまするものを完遂することと、この二つができ上がるのでございまして、あとは九州にいたしましても、中国にいたしましても、東北にいたしましても、いずれも測量を終わり、一部その事業の緒につくという程度の予算でございます。したがいまして、これら表と裏を結ぶ道路につきましては、その予算が十分ございません。そこで私といたしましては、この裏と表とをつなぐ道路は、まず一級国道を十分に改装いたしまして、一級国道の十分なる改装によって裏と表をつなぐことによりまして、高速自動車道路はその次にいたそうということで、せっかく計画を進めて、これは新五カ年計画で相当に盛り込んでおくつもりでございます。ただし、関東と新潟の場合におきましては、東京−高崎間の高速道路を新たに今後三年間で完成するつもりでございますが、あとは、高崎からどの道を通って新潟に行くかということについて今後十分検討を加えて、そうしてこの延長を次の計画でやってまいるということでございます。御了承いただきたいと思います。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/13
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014・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) 新道路五カ年計画策定にあたりまして決定いたします八千億の地方単独事業分に対して、地方の財源等から考えまして過重ではないかという御質問が第一点にございましたが、近年における地方単独事業の趨勢が約一千億をこしているという事情から見ましても、また、財源的に地方交付税が増額せられておること、また、都市計画税等の収入が非常に増大をいたしておる等の事情から見まして、この五カ年、八千億の単独事業費は十分遂行できる見通しであります。
第二点は、ガソリン税及び軽油引取税の増徴に際して、道路に直接関係のない農業用燃料として使用せられておるものまで道路財源として組み入れることは不適当ではないかという御質問でありますが、これらの問題につきましては、原則的には、消費税であるガソリン税が目的税式になっておる現在の法律の体系上から見まして、これを道路整備の財源に入れるということには問題はないわけであります。しかし、現実的な問題といたしまして、今度の増徴が道路整備の財源を確保するための増徴になっておりますので、その意味において、農業用燃料として使用されているものを増徴するということに対しては不適当だという御意見があると思います。この意味に対していろいろ慎重に農林、大蔵両省において検討をいたしたいのでありますが、現実問題になりますと、徴税の面から見て、免税を行なうとしましても、そのコストが非常に高くなるということ、もう一つは、他への流用が防止できないというような問題もありますので、新しく農林予算に、農道の整備の費用としまして七十四億円、また改良資金として二十億円、計九十四億円の財政支出を行なうことにいたしたわけであります。今度増徴せらせる分を含めまして、農林用のガソリン税は現在九十億に約十億の増徴でありますので、ほとんど道路財源として使っております総額が農道等に還元をせられておるという事実を御承知いただきたいと思います。
第三点は、幹線及び肋骨道路の建設に対する財源措置に対しての御質問でありますが、幹線については、いま建設大臣の御答弁のとおりであります。しかし、将来にまたがる肋骨道路等の整備等については、御承知のとおり、建設省は国土基本構想との関連において概略将来図を描いているようでありますが、まだ案が政府部内で確定をいたしているわけではありませんので、現在のところ確たる財源措置を大蔵省では考えておりません。しかし、将来必要ありと認められ、具体的な計画がきまりましたら、そのときにおいて大蔵省でも検討をいたします。(拍手)
〔国務大臣早川崇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/14
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015・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 新しい八千億円の新道路計画による地方単独事業が地方自治体に対して過大な計画ではないかという御質問でありまするが、大蔵大臣も答えられましたとおり、来年度をとりましても、自主財源は二千三百億円、交付税八百億円、以上合わせて三千億円以上の増収が見込まれるわけであります。三十七年度単独事業をとりましても、一千億円という計画が実施されております。したがって、この八千億円計画に伴いまして、三十九年度は千二百四十億円の地方単独事業を道路に考えているわけであります。かく考えますと、市町村長、自治体の長もたいへん道路については意欲を持っておりますので、この八千億計画もおおむね実施可能であると考えている次第でございます。(拍手)
〔国務大臣赤城宗徳君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/15
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016・赤城宗徳
○国務大臣(赤城宗徳君) ガソリン税が現在その全額が道路整備の財源に充当されておりますので、農業機械が消費するガソリンについて農業の機械化を促進するためにも免税にしたほうが適当でないか、こういう御意見でございますが、私も免税とするのが望ましいと、こういうふうに考えております。ただ、いま大蔵大臣の答弁がありましたように、税務行政上、農家の消費するガソリンを農業機械用と他の用途に区別して取り扱うことが非常に困難だということ、それから消費者の数がきわめて多い、こういう理由から免税がきわめて困難であるということで今日までその実現を見ないのはまことに遺憾であります。
そこで、第二点といたしまして、免税はしないといたしましても、これを農業の改良とかあるいは農道の修築、改良等の財源にこれをしたらどうか。実は、そういうことからいろいろ折衝をいたして、そういう方向に大体考えも一時来たのでございますけれども、本年といたしましては、これに見合うような予算の措置をして、そうして農道関係等に予算の裏づけをしていこう、こういう話し合いになりましたので、これを農道等の財源にすることは成立いたしませんでした。しかし、この問題につきましては、なおさらに今後とも検討を続けていくつもりでございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/16
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017・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/17
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018・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第五、旧金鵄勲章年金受給者に関する特別措置法案(趣旨説明)、
本案について、国会法第五十六条の二の規定により、発議者からその趣旨説明を求めます。草葉隆圓君。
〔草葉隆圓君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/18
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019・草葉隆圓
○草葉隆圓君 旧金鵄勲章年金受給者に関する特別措置法案の提案につきまして、趣旨説明を申し上げたいと存じます。
旧金鵄勲章年金令は明治二十七年勅令第百七十三号によりまして制定されたものでありますが、昭和十六年に至り、勅令第七百二十五号をもちまして廃止され、昭和十五年四月二十九日以降の叙勲者に対しましては一時金として公債が交付されることとなりましたが、同日以前の叙勲者につきましては、引き続き旧令による年金が支給されてまいった次第でございます。しかるに、終戦後、昭和二十一年三月に至りまして、この勲章年金の支給は、昭和二十年十二月末日を限りとし、一切廃止され、また、一時金として交付されておりました公債も無効とされて今日に至った次第でございます。
戦後ここに十八年、この間幸いに、わが国の経済は順調に発展をいたし、国民生活もまた年一年と向上をたどりつつありますとき、旧金鵄勲章受勲者におきましては、その経済的期待権を喪失し、大部分が経済的、かつ、精神的に不遇のうちに、老後の日々を送っておるのでありまして、かつて、国のため生命を賭し、抜群の功績を立てた人々が、かくのごとき状態に放置されておりますることは、列国にもその例を見ないところでありまして、また、受勲者に対しまして、まことに惻隠の情にたえない次第でございます。よって、本法律によって、これらの人々の処遇改善をはかりますため、特別の措置を講じようとする次第でございます。
本法律案の趣旨は、昭和三十八年四月一日において生存いたしておりまする旧金鵄勲章年金受給者にして満六十才に達した人々に対し、その処遇改善の一端として、旧制の功級による区別なく、一律に金七万円の一時金を特別措置をもって支給しようとするものであります。その認定は、これを受けんとする者の請求に基づきまして、内閣総理大臣が行なうことといたしたのでございます。なお、この法律実施のための手続その他につきましては、政令をもって定めることといたしたのであります。
以上をもちまして、提案の趣旨説明といたした次第でございまするが、何とぞ慎重御審議を賜わり、すみやかに御賛同あらんことをここにつつしんでお願いを申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/19
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020・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。伊藤顕道君。
〔伊藤顕道君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/20
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021・伊藤顕道
○伊藤顕道君 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました旧金鶏勲章年金受給者に関する特別措置法案について、提案者並びに総理大臣及び関係各大臣に質疑を行なわんとするものであります。
まず第一に、勲章の名前で群を抜いて知られていたのが金鵄勲章でありましたが、また金鶏勲章というとすぐ軍隊と戦争を思い出します。この金鵄勲章は明治二十三年勅令第十一号により創設されたものでありますが、昭和二十一年勅令第百七十六号によって事実上廃止されております。いうなれば、軍国主義時代のシンボルともいうべき過去の遺物なのであります。また、金鵄勲章年金令は明治二十七年勅令第百七十三号によって制定されたものでありますが、昭和十六年勅令第七百二十五号により廃止されております。ただし、昭和十五年四月二十九日以前の叙賜者については旧令によって年金は下賜されていたのでありますが、昭和二十年十二月末日を限りとして勲章年金は一切廃止されておるのであります。したがって、それ以来、日本には勲章年金というものは絶対に存在していないのであります。
御承知のとおり憲法第十四条には、「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。」と明記してあります。これは、「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」という新憲法のもとにおける栄典制度の基本原則に基づくものであることは言うまでもありません、したがって、現在与えられているいかなる位階、勲章にも何らの恩典も伴っていないのであります。あの文化勲章にすら例外はございません。文化勲章の制度と文化功労者年金の制度とは全く別個のものとして存しておることはここに言うまでもないところであります。しかるに、かつての軍閥や官僚がこの世を謳歌した旧帝国時代の亡霊ともいうべき勲章に一時金を支給するというがごとき特権を与えることは、明らかに憲法違反の暴挙であると断言せざるを得ません。(拍手)そこで、旧金鵄勲章年金受給者に一時金を支給することは、栄典に特権が伴うことになるので、憲法第十四条違反となると確信いたしますがゆえに、総理と提案者にそれぞれの御見解をお伺いいたします。
なお、総理は、昨年六月三十日、衆議院本会議で、わが党の西村関一君から、私がただいまお伺いした問題とほぼ同様の質問があった際、こうお答えになっております。「金鵄勲章の年金を受けておられました方々に対し、かつての地位に対してやるのであります。したがって、憲法第十四条にいっておりまする平等の原則には違反しないものと政府は考えております。」と、こうお答えになっておりますが、これと同じような答弁では私には絶対に了解ができません。なぜならば、明治憲法下ですら勲章年金は昭和二十年十二月末を限りとして一切廃止されていること、新憲法では最初から栄典に特権の伴うことを禁止していること、金鵄勲章年金受給者という特定のかつての地位に対してのみ一時金を支給するとすれば、そのことこそが平等の原則に違反することになるということ、かような観点から、かつての金鵄勲賞年金受給者という地位に対して一時金という特権を与えてもよいという法的根拠はどこにも見当たらないのであります。この際、特に総理の明快な御答弁をお願いいたします。
質問の第二は、提案者の説明によりますと、年金が打ち切られたため、経済的、精神的に不遇のうちに老残の日々を送っている人々も多いので、これを救済する必要があるというのでありますが、受章者の中には、そういうお気の毒な方もおるかと思いますが、その反面、年間何十万円という軍人恩給の支給を受けている元将官閣下であった人々のいることも見のがすことはできないのであります。提案者は、不遇のうちに老残の日々を送っている気の毒な人々を救済する必要があるというのでありますが、その一時金の支給は元将官などを含めた年金受給者全員を対象としておる点も、われわれの了解に苦しむところでありますので、この点について提案者のお考えをただしておきたいと思います。なお、経済的、精神的に不遇のうちに老残の日々を送っているのは、何も金鵄勲章の年金を打ち切られた人たちだけではございません。戦災者、被爆者、海外引き揚げ物をはじめ、無数の戦争犠牲者はいまだにその痛手をいやすこともかなわず、救済されないままに、永年にわたり放置されている実例は実に枚挙にいとまがないのであります。このことは、歴代の保守党内閣の社会保障政策の貧困を意味するものであって、国民の一人としてまことに遺憾にたえないところであります。
そこで、総理並びに厚生大臣にお伺いいたします。この際、旧金鵄勲章年金受給者だけ、こういう狭い島国根性をかなぐり捨てて、経済的、精神的に不遇のうちに老残の日々を送っておるお気の毒な日本人全員に対して、たとえば老齢年金の支給額を大幅に引き上げるとともに、支給開始の年齢を逆に大幅に引き下げる、こういう措置によって社会保障制度を抜本的に改善することこそが急務中の急務であると確信いたしますがゆえに、総理並びに厚生大臣に、この施策に対してどの程度熱意がおありになるか、お伺いしたいと思いますので、それぞれ具体的にお答えをいただきたいと思います。
また、提案者におかれては、この法案がいかに不公平なものであるかということに賢明にももはやお気づきになられたと思いますので、この際、貧しきを憂えず、そのひとしからざるを憂うるという国民の皆さんの心を心として、本法案をすみやかに撤回し、今後社会保障制度の一環として検討し直そうというお考えはないかどうか、お伺いいたします。(拍手)
質問の第三は、旧金鵄勲章年金受給者に対し一時金を支給するというがごとき特別措置を講ずるならば、その次には、旧一時賜金金鵄勲章の持ち主にもぜひ支給してほしいというふうに発展してまいりまして、とどまるところを知らぬ形で範囲が拡大してまいります。現に、第四十三回国会の衆議院内閣委員会で本法案を自由党の暴挙による混乱の中で採決したと称しているのでありますが、その際付せられたと称する附帯決議の一部にもこうございます。「旧一時賜金金鵄勲章保持者は除外されているが、その事情は旧年金受給者と同一なるにかんがみ、可及的すみやかにこれにも適用するの措置を講ずるものとする。」とあるのでありまして、その該当者は推定で約六十万人ありますので、一人七万円とすれば四百二十億の巨額になることは明らかであります。このように、あらゆる戦争功労者と称する人たちがその権利を主張してまいりましたら、容易ならざる事態となることはきわめて明確でございます。この場合、一体どうなさろうとするのか、提案者にお伺いいたします。また、大蔵大臣としては、旧金鵄勲章年金受給者一人七万円の一時金を支給なさることに賛成なのか反対なのか。もし賛成だといたしますならば、そのいわゆる予算措置をどうなさろうとするのか。また、旧一時賜金金鵄勲章保持者一人について七万円、推定六十万として四百二十億、この点についてはどうお考えになっておるのか。さらに、支給の範囲がだんだん拡大したら、一体どうなさるお考えなのか。国民の血税を預かる大蔵大臣としての責任ある御答弁をお願いいたします。
質問の第四は、歴代の保守党内閣は、再三、新栄典法案を国会に提出し、あるいはわが社会党に対し働きかけを行なってきたのであります。その内容は、いたずらに過去への郷愁をかき立て、歴史の歯車を逆転させるような旧制度の復活を意図したものでありますが、このことは旧金鵄勲章年金受給者に、かつての戦争において抜群の功績があったとの理由で、違憲の疑いきわめて濃厚な特権を与えようとする措置と一連のものであることを、ここに指摘しなければならないわけであります。元来、栄典というものは、赤裸々に申せば飾りものであって、それ自体に何らの価値あるものではございません。したがって、ことさらかかる制度を急いで設けなければならないという理由は何もないのであります。しかるに、政府は昨年七月十二日の閣議で、突然に昭和二十一年五月以降停止してきた生存者叙勲制度復活をきめ、単なる行政措置として新栄典制度を実施しようとしていることは、きわめて遺憾でございます。栄典制度は、日本国憲法の基本的人権たる栄誉権に属するもので、もし実施するとしても、立法措置によって行なうべきものであって、単なる行政措置によってこれを実施することは、憲法上はなはだしく不当であると言わなければなりません。事実、政府は今日まで栄典法の法制措置を準備してきたのでありますが、国会通過困難を理由といたしまして、行政措置によって実施しようとすることは、国会軽視もはなはだしいと言わなければなりません。そこで、総理にお伺いいたします。政府は、この際、従前の栄典制度を廃止し、簡素にして、等級による差別を撤廃した、新憲法下にふさわしい平和と民主主義の精神を取り入れた新栄典制度を、しかも立法措置によって設けようとするお考えはないかどうか、お伺いいたします。また、新しい時代のこのような栄典制度の確立の前に、戦争において抜群の功績があったとの理由で、旧金鵄勲章年金受給者に特権を与えようとするがごときは、まことに百害あって一利なしと考えられるわけでございますが、総理はこの点についてどうお考えになるか、具体的にお答えいただきたいということを最後にお願いいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)
〔草葉隆圓君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/21
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022・草葉隆圓
○草葉隆圓君 伊藤顕道先生の私に対する御質問の点についてお答えを申し上げたいと存じます。
第一点は、憲法第十四条関係、いわゆる憲法違反と思われるそのうちで、栄典の授与は、いかなる特権も伴わないということと、法のもと平等であるという、こういうもろもろの問題にこの提案は違反しておるのではないかという御趣旨であったと存じます。しかし、私は、今回の一時金の支給の処置は、かつて受けておりました経済的処遇を失い、かつ老齢となって、その生活能力が低下いたしました旧金鵄勲章年金受給者、ただ単に金鵄勲章という名前が、いまのお話のように耳ざわりになるということでございまするが、それによって受けておりました受給者に、一律に七万円ずつ支給しようとするものでありまして、決して金鵄勲章の栄典制を復活しようとするのではございません。この点は、憲法とは全然違反をしないという私の最も強い根拠であると存じます。また、いわゆる戦功を新たに評価しようとするものでもございません。従来受けておりました経済的なものに対する損失の補償でありまするので、栄典授与に伴う特権と考えることは、妥当ではないと存ずるのであります。
次に、法のもとに平等であるべきものではないか。しかし、合理的な理由のある差別までも、この憲法第十四条は規定しておらないことは御承知のとおりであります。戦争による犠牲者は、もとよりこれを広く救済すべきことは当然でございまするが、国家財政上のかね合い、あるいは従来からやむを得ずこれに順序をつけて補償、援護が今日まで順次行なわれてまいりましたことは、御承知のとおりでありまして、まずもって、国家が制度上約束をいたしましたものから順次補償を行なうというのが、これが順序であろうと存ずる次第でございます。
第二の私に対しまする問題点の中で、むしろ、この法案は撤回をして社会保障に切りかえるべきものではないかという御趣旨であったと存じます。しかし、今回の旧金鵄勲章年金受給者に対しまする処置は、恩給その他各種戦争犠牲者に対する一連の処置に見合うものでありまして、事の性質上、主として国家補償という見地に立ち、これに老齢者の経済的処遇の改善をはかるという意味を含めましたことを適当と考えまして、このような処置をとったのでありまして、国家補償という重大要素がありまするので、もっぱら社会保障の見地のみに立っての施策をすることが、必ずしも妥当でないと考えて、このような処置をとったのであります。もちろん、一般に老齢不遇の方々に対しまする社会保障は、本問題とは別に十分進展いたすべきものと存じております。
第三の問題は、一時賜金についてほどういうことを考えたか、当然年金とあわして一時賜金も考えるべきではなかったかという御趣旨であります。また衆議院においては、かつて附帯決議もなされておる、この取り扱いについての御質問であったと存じます。この法案の立案にあたりまして、金鵄勲章を受けておりまする者のうち、一時賜金を受けておりまする人たちに対しまする対策についても、十分検討をいたしたのでございます。しかし、今回の一時金支給という要件について、特に年金受給者に限りましたことは、先ほど申し上げましたように、当時の金鵄勲章一時賜金は支那事変以降でありまして、そうして年金と一時金とはその持っておりまする比重、重みも経済的な立場もたいへん違うと存じます。かつまた、年齢も相当老齢者が年金受給者は多いのでございまするから、とりあえず年金受給者に限りましたことを、御了承をいただきたいのであります。
以上をもってお答えといたします。(拍手)
〔国務大臣池田勇人君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/22
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023・池田勇人
○国務大臣(池田勇人君) 旧金鶏勲章年金受給者に関する特別措置法案に対しましての憲法上の御質問でございまするが、ただいま提案者からこの問題につきましては、至れり尽せりの御答弁がありました。私も全く同感でございまするが、特に御質問がございましたので、私の所見を申し上げます。
今回の措置は、金鵄勲章年金令が廃止された後も、昭和二十年までもらっておった方々に対してであり、しかも六十歳以上で特別の事情のある方であるのでございます。したがいまして、憲法第十四条にいっておりまする栄典を与えるものではないのでございます。金鵄勲章制度を栄典として復活して一時金を与えるのではございません。だから、栄典を与えるものでないことはもちろん、一時金を支給するということは、憲法第十四条の特権を与えるといううちに入らない。これははっきりしておることでございます。
次に、社会保障制度の拡充につきましては、言われるまでもなく、政府は経済成長に伴いまして年金制度の拡充につきましては、御承知のとおり非常に努力をいたしてきておるのであります。本通常国会におきましても、年金制度の拡充につきまして御審議をいただく予定にいたしておるのであります。
最後に、今後の栄典制度につきまして、新しい制度を設けるかという御質問でございまするが、私は、せっかく従来国民に親しまれましたわが国古来の栄典制度がございます。これを戦後閣議決定によって一時停止しておったのでございまするが、御承知のとおり、すでに外国の元首その他の方々には、戦後千数百人もお渡ししております。また、死亡者にも与えておりますので、今後生存者にも与えることが、私は国として当然の措置と考えまして、昨年の七月十二日に生存者への栄典制度を復活することをきめたのでございます。私は皆さん方の御了承を得ることと確信いたしております。(拍手)
〔国務大臣小林武治君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/23
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024・小林武治
○国務大臣(小林武治君) 社会保障制度の拡充につきましては、ただいま総理からお答えがありましたが、ただいまのところ、老齢の所得保障というものにつきましては、一応制度としては全国民が対象として網羅されておるということになっておるのであります。すなわち、国民年金あるいは厚生年金、船員保険、各種公務員の共済制度、あるいは私立学校、農林漁業団体職員、かような保険制度によって老後の保障は一応できておるのでありますが、その内容はきわめてまだ不十分であるということはお互い承知しておるところでありまして、これからこの内容を充実して、国民が老後の保障を受けられるようにしようということは政府の大きな方針であるのでありまして、ただいまお話のように、現に、厚生年金等につきましては、一万円年金を実現せしめようとこの国会に提案、御審議をいただくことになっておるのでありまして、御趣旨の点は十分拝承し、われわれもその充実に努力いたすつもりでございます。(拍手)
〔国務大臣田中角榮君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/24
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025・田中角榮
○国務大臣(田中角榮君) お答えいたします。
大蔵省はこの法律制定に賛成か反対かということが第一点であります。
本件につきましては、策議院における審議の過程において内閣の意見が提出をせられております。すなわち、本案が成立すれば、法律違反を起こさないように措置いたしますと、こういう考え方であります。
第二点は、本法案が通過いたしますと、一時賜金受給者等を含めて、いろいろなものに波及するが、そういうものに対してどう考えるかということでございますが、本法は年金受給者に限っておるのでありまして、その他のものに波及するということには考えておりません。
第三点は、本法案が通った場合、予算は一体どうなっておるのかということでございますが、現在の御審議を願っております三十九年度の予算では措置いたしておりません。しかし、この法律が通過をして法律となれば、政府は法律義務を負うわけでありますので、予備費の支出をもってまかなわざるを得ないというふうに考えます。所要見込み総額は六億四千万円であります。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/25
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026・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/26
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027・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 日程第六、国有財産法第十三条の規定に基づき、国会の議決を求めるの件を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。大蔵委員長新谷寅三郎君。
〔新谷寅三郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/27
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028・新谷寅三郎
○新谷寅三郎君 ただいま議題となりました国有財産法第十三条の規定に基づき、国会の議決を求めるの件につきまして、大蔵委員会における審査の経過及び結果を御報告いたします。
本件は、国有財産法第十三条の規定に基づき、次に申し上げまする各事項について国会の議決を求めんとするものであります。
まず第一は、厚生省所管の公共用財産である京都御苑の一部を宮内庁京都事務所庁舎敷地とするために、総理府所管の公用財産に所管がえしようとするものであり、第二は、厚生省所管の公共用財産である皇居外苑の一部を、国有財産管理の適正を期するために、総理府所管の皇室用財産に所管がえしようとするものであり、第三は、皇居東側地区の皇居付属庭園としての整備の進捗に伴い、同地区内にありまする総理府所管の公用財産を皇室用財産に種別がえしようとするものであり、第四は、旧宮殿あとに新宮殿を新築し、予定価格六十七億六千九百万円の同宮殿と、その付帯施設として新築または新設される電気機械室、地下駐車場等をも皇室用財産として取得するとともに、皇居東側地区の庭園化に必要な道路等の工作物を新設し、皇后陛下の御還暦記念にホールを新築し、これらも皇室用財産として取得しようとするものであります。
委員会におきましては、さきに皇室用財産等の視察を行ない、慎重審査いたしましたが、特に乾堀周辺の財産管理が不合理であるといわれる実情、旧北の丸地区の管理の実態、公用財産を皇室用財産に種別がえすることの管理上の効果、不法占拠された国有財産の処理の実情等について熱心な質疑が行なわれましたが、その詳細は会議録によって御了承いただきたいと存じます。
質疑を終わり、討論に入りましたところ、鈴木市藏委員より、「皇居は民主的管理のもとに開放すべきである等の理由から本件に反対する」との意見が述べられ、天田委員より、「本件には賛成であるが、特に国有財産管理の万全を期すべきである」との意見が述べられました。
討論を終わり、採決の結果、本件は、多−数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告いたします。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/28
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029・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
本件全部を問題に供します。本件に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/29
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030・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 過半数と認めます。よって本件は可決せられました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/30
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031・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。
小林篤一君から病気のため二十九日間、野村吉三郎君から病気のため二十八日間、それぞれ請暇の申し出がございました。いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/31
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032・重宗雄三
○議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって、いずれも許可することに決しました。
次会の議事日程は、決定次第、公報をもって御通知いたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時三十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/104615254X00819640221/32
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