1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年三月八日(火曜日)
午前十時十九分開議
出席委員
委員長 田中 正巳君
理事 小沢 辰男君 理事 齋藤 邦吉君
理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君
理事 伊藤よし子君 理事 河野 正君
理事 吉村 吉雄君
大坪 保雄君 熊谷 義雄君
小宮山重四郎君 地崎宇三郎君
中野 四郎君 西村 英一君
橋本龍太郎君 松山千惠子君
粟山 秀君 淡谷 悠藏君
石橋 政嗣君 滝井 義高君
堂森 芳夫君 長谷川 保君
八木 一男君 本島百合子君
吉川 兼光君 谷口善太郎君
出席国務大臣
労 働 大 臣 小平 久雄君
出席政府委員
労働政務次官 天野 光晴君
労働事務官
(大臣官房長) 辻 英雄君
労働事務官
(労政局長) 三治 重信君
労働基準監督官
(労働基準局
長) 村上 茂利君
労働事務官
(婦人少年局
長) 高橋 展子君
労働事務官
(職業安定局
長) 有馬 元治君
委員外の出席者
労働事務官
(大臣官房労働
統計調査部長) 大宮 五郎君
専 門 員 安中 忠雄君
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三月三日
委員足鹿覺君辞任につき、その補欠として勝間
田清一君が議長の指名で委員に選任された。
同月四日
委員西岡武夫君及び勝間田清一君辞任につき、
その補欠として賀屋興宣君及び足鹿覺君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員賀屋興宣君辞任につき、その補欠として西
岡武夫君が議長の指名で委員に選任された。
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三月三日
労働組合法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一〇四号)
は本委員会に付託された。
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三月七日
全国保健所に栄養指導員(管理栄養士)必置に
関する陳情書外三件
(第一二四号)
国立栄養研究所の整備拡充に関する陳情書外七
件
(第一二五号)
福祉年金法の一部改正に関する陳情書
(第一二七号)
環境衛生金融公庫の設置に関する陳情書外一件
(第一二八号)
献血に関する陳情書
(第一二九号)
母子福祉対策に関する陳情書
(第一三
〇号)
在外引揚者及び戦災者補償に関する陳情書
(第一三一号)
戦没者遺族の処遇改善に関する陳情書
(第
一三二号)
精神衛生法に基づく措置入院患者の代替措置改
善に関する陳情書
(第一三三号)
国民健康保険全被保険者七割給付実施に伴う財
政措置に関する陳情書
(第一三四号)
国民年金事務費増額に関する陳情書
(第一三
五号)
小型漁船乗組員に対する社会保障制度確立に関
する陳情書
(第一三六号)
原子爆弾被爆者援護に関する陳情書
(第一三七号)
長期療養生活者の医療保障制度改善に関する陳
情書(第一三八号)
生活保護基準引上げに関する陳情書
(第一三九号)
労働災害に対する安全確保等に関する陳情書
(第一四〇号)
国民健康保険制度改善に関する陳情書
(第一四一
号)
国民健康保険財政の健全化に関する陳情書
(第一四二号)
社会福祉対策に関する陳情書外二件
(第一四三号)
失業保険法の改正に関する陳情書外一件
(第一四五号)
国民年金制度改善に関する陳情書外十四件
(第一四六号)
国民年金制度改善等に関する陳情書
(第一四七号)
国民年金法の改正に関する陳情書外五百十八件
(第一四八号)
同(第二一
八号)
保育所予算増額に関する陳情書
(第一四九号)
重症心身障害者(児)福祉対策に関する陳情書
(第一五〇号)
保健所職員の定員増加等に関する陳情書
(第一五一号)
原水爆被害者援護法の制定並びに原爆症の根治
療法研究機関設置に関する陳情書
(第一五二号)
保健所に対する国庫補助増額に関する陳情書
(第一五三号)
総合健康保険組合に対する医療費国庫補助に関
する陳情書
(第一
五四号)
人命尊重に関する陳情書
(第二一六号)
社会福祉の増進に関する陳情書
(第
二一七号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
労働組合法の一部を改正する法律案(内閣提出
第一〇四号)
労働関係の基本施策に関する件
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/0
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001・田中正巳
○田中委員長 これより会議を開きます。
内閣提出の労働組合法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/1
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002・田中正巳
○田中委員長 提案理由の説明を聴取いたします。小平労働大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/2
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003・小平久雄
○小平国務大臣 労働組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び概要を御説明申し上げます。
労働委員会の委員の任期は、現行の労働組合法において一年とされておりますが、これは他の行政委員会の委員の任期に比して短かく、また公共企業体等労働委員会の委員の任期がすでに二年とされていることにかんがみ、これを二年とすることとし、さらに、地方労働委員会の委員の定数は、現行の労働組合法上、労、使、公益各側委員それぞれ七人または五人のうち政令で定める数と定められておりますが、東京都及び大阪府の地方労働委員会については、その事務量の増加等にかんがみ、その定数を増加することとし、もって労働委員会の事務の円滑な遂行を期することといたした次第であります。
以下、本法律案の概要について御説明申し上げます。
まず第一に、現行の労働組合法第十九条第十一項は、委員の任期を一年と定めておりますが、これを二年とすることといたしております。
第二に、現行の労働組合法第十九条第二十一項は、地方労働委員会は、使用者委員、労働者委員及び公益委員各七人または五人のうち政令で定める数のものをもって組織することとしており、現在、東京都、大阪府等七つの都道府県の地方労働委員会が各七人の委員をもって組織されているのでありますが、そのうち東京都及び大阪府の地方労働委員会に限って、それぞれ、各十一人及び各九人の委員をもって組織することといたしております。なお、現行の労働組合法第十九条第二十一項は、地方労働委員会の公益委員のうち同一の政党に属する者の員数を制限いたしておりますが、東京都及び大阪府の地方労働委員会の委員の定数を増加することに伴い、所要の整備をいたしております。
第三に、経過措置といたしまして、これらの改正規定は、いずれも、この法律の施行後任命される次期委員から適用することといたしております。
以上が労働組合法の一部を改正する法律案を提案するに至った理由及びその概要であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願い申し上げます。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/3
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004・田中正巳
○田中委員長 労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
質疑の申し出がありますので、これを許します。淡谷悠藏君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/4
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005・淡谷悠藏
○淡谷委員 この前の労働大臣の所信表明をよく聞いておりましたが、この所信表明の中に出ております雇用対策について若干お伺いしたいと思うのであります。
この中には「労働力過剰から労働力不足へと移行しつつあります。」というのが一つ。さらに、「その過程における雇用の停滞」ということが出てまいりまして、大臣自身が「複雑な様相を示しております。」ということを言われている。これは、確かに現在の労働力の雇用というのは複雑な様相を呈しておりますが、この労働力過剰から労働力不足へと移行しつつあるという実態、さらにその過程における雇用の停滞という実態、これをいま少し詳しく次官から、大臣にかわって御答弁を願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/5
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006・天野光晴
○天野政府委員 具体的な数字の問題に入ると思いますので、以上局長から答弁させます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/6
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007・淡谷悠藏
○淡谷委員 数字のことはあとでよろしいのでございますけれども、この複雑な様相ということを、具体的にはどういう複雑な様相を呈しておるか、次官から、数字を離れてひとつお話しを願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/7
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008・天野光晴
○天野政府委員 複雑な様相を呈しているというその内容について、やはり流れを十二分にわかるように、具体的に説明しなければいかぬと思いますので、その点、事務当局から御説明いたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/8
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009・淡谷悠藏
○淡谷委員 あとで事務当局からも十分伺いますけれども、まず大臣としての、この複雑な様相の内容をどう把握しているのか、ひとつ次官がかわって御答弁願いたい。もしおわかりにならなければ、おわかりにならないということをはっきり言っていただきまして、あとで大臣が出た場合に直接大臣からお伺いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/9
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010・天野光晴
○天野政府委員 雇用問題については、当面景気の停滞に伴いまして、雇用は伸び悩みの状態にあり、中高年齢者の就職問題並びに転職問題が生じているのが、長期的に見ますと、新規労働力の供給が減少に転じ、基調としては労働力不足に移行するとともに、他面、産業構造の進展等により、技能労働力の要請、確保、職業転換の必要性が増大することが予想されているわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/10
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011・淡谷悠藏
○淡谷委員 そこで、その過程における雇用の停滞はどういうふうにあらわれておりますか。いまの労働力の不足はわかりましたが、過程における雇用の停滞。これは事務官の方にはあとでお聞きいたしますから、大臣としての次官の御答弁を願いたい。過程における雇用の停滞。私は、数字はあとから聞きます。数字は大体わかっているのだ。わかっていますが、過程における雇用の停滞はどうして生じたかという、この原因。その過程というのは一体何をさすかということ、そういうことをお聞きしたいのです。現象じゃないのです。現象ではなくて、その過程における停滞の起こった理由、その見通し等についてお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/11
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012・田中正巳
○田中委員長 ちょっと速記をとめてください。
〔速記中止〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/12
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013・田中正巳
○田中委員長 速記を始めてください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/13
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014・天野光晴
○天野政府委員 ただいま申し上げましたように、景気の停滞に伴いましてそういう現象が起きているわけでございますので、その点御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/14
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015・淡谷悠藏
○淡谷委員 景気の下降によって雇用の停滞が起きた、こういうふうにお答えになる。はい、わかりました。
それじゃひとつ事務当局にお聞きしますが、労働力の不足といってもいろいろな種類があると思う。たとえば、高年層労働者の労働力、それから同じ若年層の労働力でも、中学卒業、高等学校卒業、あるいは大学卒業でこれは違うと思います。さらにまた、男子労働者と女子労働者との間にも違いがある。それから産業の面におきましても、最近は特に農村における労働力の不足が非常に問題になっております。特に農業の構造は次第に協業化しまして、準農業労働者というものも相当出てきているのであります。これを全部一からげにしまして、労働力の不足だとか、あるいは労働力過剰とかといってもちょっと見当がつきませんから、今度はひとつ、先ほどからいろいろお申し出のありました事務当局から数字について、じっくりその点を御説明願いたいと思うのであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/15
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016・有馬元治
○有馬政府委員 ただいま先生から御指摘がございましたように、基調として、労働力の不足基調へ移行しつつある、現在は景気の停滞に伴って雇用が停滞をしておる、こういう概括的なお話がございましたけれども、これを分析いたしますと、いろいろと労働力の種類によって需給の関係が大きく違っております。
御承知のように、学卒は、中学校、高校を通じまして、昨年は三、四倍くらいの求人倍率でございましたが、ことしは、それが新規の採用手控え等に伴いまして、求人が大幅に減りました。たとえば、中学生で三割から四割方求人が減っております。それから、高校生で二割見当求人が減っております。こういうふうな情勢を判断いたしまして、倍率も、中学が三倍、高校が二倍というふうに、ことしの三月卒業の学卒については、従来の求人倍率が若干緩和をいたしております。しかしながら、これは、ことしの三月の卒業生が、中学、高校合わせますと、供給量としては最大の供給量になる年でございますので、倍率が若干下がったといたしましても、今後の見通しとしましては、若年はますます需給の関係が逼迫をしてくる、こういう見通しがなされるわけであります。
大学につきましては、やや事情を異にいたしまして、昨年まで順調に大学卒の就職問題は推移してきたのでございますが、ことしの三月の卒業予定者につきましては、やはり不況に伴って、大手筋を中心とする採用手控えが相当強く出てまいりました。したがって、従来、昨年までのような大学生の売れ行きというようなわけにはまいりませんで、昨年の夏以来、私ども文部省、学校当局に協力をいたしまして、大学生の就職あっせん、雇用の促進ということに全力を尽くしてきたわけでございますが、これは三月末現在で、従来の就職率でございまする九二、三%程度を確保できるかどうか、この点は非常に疑問を持っております。特に短大、それから四年制大学の女子の学生については、就職が非常に困難なようでございます。なお一月近く卒業までにございますので、私どもの安定機関も督励をいたしまして、大学卒についても、さらに一段と就職の確保を期するように努力してまいりたいと思います。
それから一般の技能労働者でございますが、これは毎年労働省で調査をいたしておりますが、不況下において雇用が停滞ぎみにありながら、技能労働者の不足は依然として著しく、昨年二月の調査によりますと、百八十万人の技能労働者が依然として不足しておる。要するに、現場の労働者が不足しておるという実態でございます。
それから、御指摘のように、農業の基幹労働力は、あと継ぎ——後継者が漸次減ってまいりまして、基幹労働力が不足しがちになっておる、こういう実態がございます。この反面、石炭の離職者等に見られますように、主として中高年の離職者、失業者については、就職が依然として困難である、特にこういった不況のもとにおいては、中高年の求人倍率といいますか、就職倍率はさらに一段と悪化しておる、こういう実態でございますので、全体として不足基調に移行しつつあるとはいうものの、中高年の問題は、依然として需給がアンバランスで、その間の就職の促進措置がどうしてもこれから必要になってくる、こういうふうに情勢判断をいたしておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/16
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017・淡谷悠藏
○淡谷委員 ここに四十一年の二月の「労働時報」がありますが、これの職業安定局で出されました「雇用政策の今後の方向」を見ますと、いまの御説明とは若干違うようなことが書いてあるのです。すなわち、若年労働力、特に「本年三月の中学卒業者に対する求人倍率は、就職希望者の減少もあって四〇年三月卒(同三・七倍)の場合よりも上回ることも予想される。」いまの御説明では、ずっと減っているような御説明なんですが、職業安定局から出された分析とこれとの相違は、一体どういうように扱ったらよろしいんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/17
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018・有馬元治
○有馬政府委員 四十年三月と四十一年三月の見込みと比較をいたしますと、先ほど私が申しましたとおり、この三月の卒業予定者についての求人倍率は、昨年より中学、高校ともに下がっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/18
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019・淡谷悠藏
○淡谷委員 ところが、これには上回る見込みと書いてあるのですよ。上回るということは、下がるということではないですよ。これをごらんなさい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/19
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020・有馬元治
○有馬政府委員 この「労働時報」の数字は、昨年の十月末現在の数字見込みを中心にいたしまして、分析をした資料だと思いますが、私どもは、最近の一月末現在で見込み調査を行なった最近のデータがございます。それによりますと、先ほど申しましたように、求人が相当大幅に減りまして、その関係で、倍率は、昨年の三月の倍率を下回っております。これが一番確実な予想でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/20
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021・淡谷悠藏
○淡谷委員 非常に正直に言ってくださったので、了解しますが、少なくとも十二月の見通しといまの見通しでは、はっきり言うと、予想が違ったということですね。これは職業安定局と名前を打って、しかも、一番最近に出た四十一年の二月の雑誌ですから、これは見込み違いであったということになれば、この記事が誤っておったんだということにとってよろしいですね。確認しておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/21
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022・有馬元治
○有馬政府委員 御指摘のようなことに相なるわけですが、その記事も、「上回ることも予想される。」というふうに書いてあって、ちょっとその辺が書き方があいまいだと思いますが、確かに、十月現在の見込みと一月末現在とは若干倍率が違っております。その記事は、そういう意味では不正確であったと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/22
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023・淡谷悠藏
○淡谷委員 経済の見通しでも、総理大臣が見通しを誤ることがあるんですから、安定局が雇用の見通しを誤ってもしかたがないと思います。
そこで、お聞きしたいのは、中学卒の労働力の需要はやはり高い。この中学卒の労働力が今後急速に減少するという見通しですね。この見通しに誤りがなければ、需給が非常に狂うんです。求人の面では、中学卒業者が非常に多い。見通しとしては、中学卒業労働力は今後急速に減退する。この見通しが、幸いにして誤ればけっこうですが、誤らない場合には、雇用状態が非常に悪化する、こう思うのですが、その点はいかがでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/23
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024・有馬元治
○有馬政府委員 これは私どもの推定は誤りがないと思います。なぜならば、出生率が世界一低くなっておりますし、進学率が非常に高まってまいりますので、この見通しは間違いないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/24
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025・淡谷悠藏
○淡谷委員 非常に不幸な見通しになるわけですがね。そこで、中学卒業者の進学率が高まるということは労働力の需要とは逆な方向ですね。これはいろいろ文部当局にもいつかお聞きしてみたいのですけれども、そうしますと労働需給としてはどういうことになりますか。また国の方針としてはこれでよろしいかどうか。この労働力の需要状況を中学卒業者から高校卒業もしくは大学卒業のほうに持っていくのか、あるいはもっと中学卒の労働力の需要に対応するような体制をとられるか、労働省として教育問題と関連してどういうお考えを持っているか、これは大臣の答弁が必要だと思いますので、次官からひとつお聞きしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/25
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026・天野光晴
○天野政府委員 ただいま局長が申し上げましたように、出生率が減退しておると同時に進学率が非常に高いので、そういう点からいって、今年度も文部省は大学の急増対策で約四万人の増募をいたすというような状態からいって、先ほどの説明のように、今年度三月に卒業する大学の卒業生すらも相当失業者が出るという状態にあるにもかかわらずまだ増募をするというので、私たち労働省としては急増対策に一応反対の意思表示を——私個人でありますが文部省にいたしたわけでございますが、なかなかこれを受け入れられないので、ついやむを得ず今年度も予算化しつつあるようであります。いま先生のおっしゃるように、中学校卒業生のいわゆる技能労働力の基本をなす労働力は将来大きく減退をしてまいります。要するに、私たちの統計からいっても、これから数年後における大学を卒業をして就職する数よりも中学校を出て就職する者が非常に少なくなるという状態で、いわゆる技能労働力を確保する面からいって、日本の労働行政という問題はひとつ大きく転換をする段階にきておると私は考えておりまして、よりより省内では現在どういう方向に持っていくかということで話を進めている状態でございますので、その点御了承願えればたいへんけっこうだと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/26
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027・淡谷悠藏
○淡谷委員 いずれにしましても、雇用政策の前途には国全体として非常な隘路がある、こう考えてよろしいと思いますが、この求人側のほうからいう隘路ですね、これは一体どうなっているのですか。この隘路も二つあります。たとえば求職者側の隘路もあるでしょう。学校は大学を出たい。だが求人のほうは中学卒業者がほしい。求人側で大学卒業者が余り、中高年労働者が余っているのに、中学卒業者に殺到していくというこの原因は一体どこにあるのですか、ひとつ次官の御答弁を願いたいと思います。
〔委員長退席、澁谷委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/27
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028・天野光晴
○天野政府委員 求人者側のほうの考え方も、実は今年度の大学卒業生の就職あっせんに関しまして私たちもわらじをはいて話し合いをしたのでありますが、大学を卒業した者よりは要するに年少労働者の中学卒業生のほうを大歓迎するという状態でございまして、そういう点で現在のままの日本の教育行政の実態で進んだのでは、いわゆる産業界の要望する労働力の需給関係は非常にむずかしくなってくる。そういう点はいなめない事実ではないかと考えるのでありまして、こういう点やはり政府当局といたしましてもホワイトカラーだけを奨励するというようなかっこうの教育方針ではなしに、技能労働力に転換できるような方向に教育方針を持っていくように努力をすべきではないかという考え方をいたしまして、この問題についても部内では現在話を前向きで進めておるというような状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/28
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029・淡谷悠藏
○淡谷委員 はっきりお聞きいたしますが、現在の文部省の教育方針と労働省の求める労働行政における教育方針とははっきり矛盾しておるように聞き取れましたが、そう理解してかまいませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/29
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030・天野光晴
○天野政府委員 それは非常にデリケートなことでございますから、私個人で発言するのならば幾らでも発言できるのでありますが、立場が立場でございますので、現在の労働省の中での方針、今後の対策というものを局長から答弁させることで、ひとつその点御了承を願っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/30
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031・有馬元治
○有馬政府委員 進学率が高校の場合も大学の場合もいずれも高まってくる。これは世界的な風潮でございまして、まあわれわれの立場から考えますと、特にブルーカラーの給源として考えますと、学歴程度が高くなるということは非常にゆゆしい問題でございますけれども、この世界的な傾向に正面からさからうというわけにはいかないと思います。したがって、それらの学歴程度の高い良質の労働力をどうやって産業界でうまく使いこなすかという観点がどうしても必要になってくると考えます。しかし、実際の産業界、雇用主側の実情をながめてみますと、いま御指摘のあったような学歴水準の高度化に伴って受け入れ側の態勢が十分準備されていない、こういうギャップがございますので、私どもとしましては、求人側に対しては供給構造の将来というものをよく見通して、それに対応できるような受け入れ態勢を至急確立するようにということで指導をしております。一番重点は、やはり中学から現場の労働者になっておった者が、今後は高校が労働力供給の大宗を占めるということになりますので、高校卒をうまく現場作業員として使いこなせるように、これは労働条件の問題ももちろんございます、あらゆる面から見て十分使いこなせるように求人側を積極的に指導してまいりたい、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/31
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032・淡谷悠藏
○淡谷委員 これはもう一ぺん次官にお聞きしたいのですが、確かに人間としては大学を卒業したほうが一番よろしい、そうあるべきなんです。ただし、求人側は大学卒業者を希望しない、ここに根本的な一つの矛盾があると思うのです。求人側が大学卒業者を希望しないで中卒を希望するというのは、第一には賃金が安いことではないですか。やはり最近の産業状況を見ますと、高度な技能も必要でございましょうけれども、非常に労働が単純化されておる。これは合理化するに従ってあまり熟練を要しないような労働者がたくさん使われることは、理想から申しますと大学を卒業した者が工員にもなり、あるいは農業労働にも従事する、これが一番正しいのですが、現実の日本はまだそこまでいっていない。同時にだんだん知識が出、社会の状態もわかってきますと非常に求人側では使いにくいということを言うのですが、この使いにくいということばの中に、逆に求人側のほうに改善すべき点があるだろうと思う。局長も確かにそう言っておられましたが、次官はどうなんです。労働の需給についてさまざまな手を打つと同時に、産業資本の側について雇用条件を思い切って是正していくというところに雇用需給の本来の姿をあらわしていくというような構想がおありかどうか、その点をまず大臣答弁としてお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/32
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033・天野光晴
○天野政府委員 私だけの考えを申し上げても、これは通らないでしょうが、その点は大学を出て就職されることがほんとうに望ましいかどうかというところにも問題があると思います。ともかくも現在の日本の労働力の最も不足している点は技能労働力でございまして、技能労働力を仕上げるために、要するに純粋な良質の技能労働力を仕上げるためには、やはり若年労働力をこのほうに向けるという形が一番望ましいのではないか。ともかくも二十五、六歳以上の、精神的にも肉体的にも固まってから、そういうほうに、技能労働力のほうに向けるということは、はたして良質の労働力になるかどうかということも問題があろうと思いますが、私はそういう意味でなしに、純粋な意味でりっぱな労働力、技能労働力を確保するために中卒、少なくとも高等学校卒業程度で、そのほうから技能労働力を確保するという形に国の施策を大きく向ける必要があるのではないかという感じを強く持っておる一人でございます。ただいま先生のおっしゃいましたように、賃金の問題も相当あると思います。中学を出たよりも高等学校を出たよりも、大学を出た者が高いということは、これは現在の日本の客観的な、要するに産業界における大きな流れでございますから、この根本的なものを打破するという考え方、要するに大学を出ても高等学校を出ても、中学校を出た者でも、相当の年数を経て大学を出た者と同じくらいの力をたくわえた者には同じような扱いをするという方向に持っていかなければ、現在の日本の技能労働力は確保できないのじゃないかという感じをいたしております。ある職場では、会社の社員の履歴書を全部焼却したという会社が現在あるそうでございますが、現在の日本のすべての事業所では、中学校を出た者、高等学校を出た者、大学を出た者というふうに、全部マル大、マル高、マル中というしるしをつけまして、終始一貫、高等学校を出た者が大学を出た者を、どんなに技術がよくても追い抜けないというような状態になっておるように承知しておるのでございまして、そういう点を大きく是正するという形でなければ、良質な、日本の産業界で最も必要とする技能労働力というものを確保するということは、困難でないかというふうに私は考えております。そういう点で、大学を出た者を受け入れする受け入れ側、いわゆる資本者側においても、相当施策の面で転換をすれば、大学を出た労働力でも相当確保できるのじゃないかという先生の御発言でございますが、その点も私はあると承知いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/33
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034・淡谷悠藏
○淡谷委員 同じ求職側の姿勢の問題ですが、男子労働力と女子労働力との推移、どう変わってきているか、これはひとつ局長から数字的に詳しく御説明願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/34
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035・有馬元治
○有馬政府委員 非常に数字的にはむずかしい問題でございますが、中卒、高卒については、御承知のように男子についても女子についても、職場はあるいは職種はそれぞれ違いまするけれども、求人の倍率、就職の状況等は、大体男女にそう大きな差はないということでございます。ただ大学になりますと、男子の大卒と女子の場合とは、相当就職難の状況も、さらに初任給も若干違っておる。職場も必ずしも男子と同じような職種に全部開放されておるということは事実上ありません。大学の場合には男子と女子とが多少違ってきておりますが、中学、高校の場合は、少なくとも学卒者として就職する場合には、男子も女子もそう大きな差はない、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/35
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036・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは誤解を受けないように初めから断わっておきますけれども、私はやはり日本の雇用者側の労働者に対する基本的な姿勢の問題だと思いますが、ただ計算的に得か損かということで簡単に割り出しますと、非常に女子労働力を阻害する傾向が出てくるのです。国民の半数を占めている、あるいは半数以上を占めている女性が、労働界においてどういう位置を占めているかということは非常に大きな問題なんです。放任しておきますと、女子労働力が随時職場から駆逐される傾向が出てきておることは事実であります。あるいは生理休暇の問題とか、産前産後の休暇の問題とか、あるいは夜間労働の問題とか、さまざまな女子としてのハンディキャップがつきますので、これは企業採算の上から申しますと、随時職場から締め出されるという傾向があらわれているように私は思うのです。これは大臣、どうおとりになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/36
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037・天野光晴
○天野政府委員 現在までのデータでは、それほど、先生のおっしゃるほどのものがないように思いますが、今年度のいわゆる大学卒業生の就職難というものに伴いまして、女子のほうが就職難が大きいということは事実でございますし、肉体的な点から考えてみても、女性という立場から考えてみても、要するに使用者側としては先生のおっしゃるような考え方をお持ちになられる点も相当あるように了承しておりますが、しかし、そこは現在のように労働力が非常に不足してまいっている状態でありますので、できるだけ指導いたしまして、そういう点をカバーできるように処置をしつつやりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/37
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038・淡谷悠藏
○淡谷委員 詳しいデータはないといいますが、こういう重要問題についてデータがないということはおかしいじゃないですか。さっきから大臣は、しばしば局長から数字をあげて説明しなければ説明がつかぬというのですが、この女子労働力と男子労働力との重要な問題についてデータがないということはおかしいじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/38
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039・有馬元治
○有馬政府委員 学校程度別に申し上げますと、中学校の場合には、たとえば、四十年三月の初任給で比較いたしますと、女子のほうが男子よりも若干高くなっております。女子の場合は一万三千三百三十円でございますが、男子の場合は一万三千百九十円、若干女子のほうがよくなっております。それから、高校にまいりますとこれが逆転いたしまして、男子のほうが高いわけですが、男子は一万六千四百三十円、女子は一万五千六百七十円でございます。ところが大学へまいりますと、男子は二万二千九百八十円でございますが、女子は二万一千七百四十円、若干差が出てまいっております。さらにことしの三月卒業する大学の場合の就職の決定率を女子学生と男子学生と比較いたしてみますと、四年制の大学におきましては、一月十五日現在で、男子の場合は八六・九%就職内定をいたしておりますが、女子の場合は五九・六%で、相当男子の就職率を下回っております。さらに短期大学で見ますと、男子は七二・八%の内定率でございますが、女子は四六・九%というふうに五〇%を割っておる状態でございます。学歴程度が高くなればなるほど女子が分が悪いということは、ある程度いえるのではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/39
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040・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは一がいに労働条件とだけいえませんが、日本の結婚制度とか家庭生活の面からも、女子は結婚したときは家庭に引っ込むという習性がございますから、これはいろいろあるでしょうけれども、業種別に、男子労働者と女子労働者を希望するものがある。女子労働者でなければどうしてもだめだという業種と、また男性でなければどうにもならないという業種別のものがあると思うのですが、女子の就職状況を大体データをあげてお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/40
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041・有馬元治
○有馬政府委員 職種別の男子、女子別の就職の状況の資料は、私どもいま持っておりませんので、私どもの各種の資料からそれが全部集計できるかどうかちょっと疑問でございますが、できるだけ御要望に応ずる資料を整備して後刻出さしていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/41
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042・淡谷悠藏
○淡谷委員 サービス業における男子、女子のデータはできていませんか。サービス業だけでけっこうです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/42
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043・有馬元治
○有馬政府委員 これもせっかくでございますが、手元にデータを持っておりませんので、後刻調べて提出させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/43
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044・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは伊藤委員のほうからたいへん御支持を受けると思いますけれども、非常に日本の労働行政の上では、女子労働者の受け取り方が不完全であると私は思う。女子を男子と同じ職場で働かせ、男子の条件で働かせようというところに雇用者側も誤りをおかしていると思うのです。やはり女子労働者でなければならない職種というのはあるはずです。この女子労働者でなければならないという職場の種類をあげていただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/44
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045・有馬元治
○有馬政府委員 非常にむずかしい御質問でございますが、私ども常識的に考えておりますのは、女子の中学卒の場合には、繊維関係あるいは軽電機部門のいわゆる女子向きの職種ということに重点がなっておるのでございますが、そのほかには看護婦さんをはじめ女子でなければならない職種が相当ございます。私どもも御指摘のように女子の職場を確保し育てていくという観点から、もう少し女子でなければならない職種、職場というものを検討さしていただきまして、またこれも後刻資料として出さしていただきたいと思います。
〔澁谷委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/45
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046・淡谷悠藏
○淡谷委員 さっきも大臣のほうから御答弁を願ったのですけれども、将来の雇用状態の見通しでは、労働力不足ということが大体出てまいります。これは勢い女子労働力というものは半数を占めるものとして重要視しなければならない。この場合に、これは理想的にいえば、女子特有の職場があるでしょう。これはそれぞれ使っているようです。しかし、同じ職場で同じ条件で働くためには、女性としての若干の開きがあると思う。この開きをなくするのを、ただ雇い主だけに負担させて解決がつくかというと、残念ながら現在の産業資本家というのはあくまでも資本主義の利潤追求の上に立ちますから、なかなかやらないと思う。国家がその職場における女子労働者の休暇の問題その他についての格差を埋めてやるというような意思をお持ちかどうか。個人産業家の手にだけまかしておくのか、労働行政として国家がこれに一つの保障を与える政策的な投資をしてそのアンバランスを防いでいくという方向をお持ちかどうか。これはひとつ大臣の御所見を承りたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/46
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047・天野光晴
○天野政府委員 ただいまの淡谷先生の御質問、ごもっともだと思います。労働力が不足してなかなか容易でないという段階に至るまでにその労働力の不足をどうしてカバーするかという政策を展開する必要があると思いますが、いま先生の御質問がございましたように、女子専門、女子でなければならないという仕事以外のもので、男子とともに同じ条件で働かなければならないという職場も数多くあるわけでございまして、現在そういう方向につきましても、いま先生がおっしゃるような扱いを雇用者側ではいたしてはおらないと思うのですが、万が一そうしたものが出てくるような場合には、政府としても善処する必要もあろうと思いますし、労働力を確保するという面からも、前向きでその点も調査研究する必要があると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/47
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048・淡谷悠藏
○淡谷委員 基準局長にちょっとお聞きしたい。
いま大臣に答弁をお願いしたのですが、男子と女子とが同じ職場で働く場合に、たとえば女子の場合は産前産後の休暇だとか、あるいは生理休暇だとか、その他夜間労働の禁止だとか、さまざまな制約があるはずです。これに対して、現在の基準法に従っても、雇用主に義務を課しているはずなんです。その点について、大臣とは若干話が違うようですけれども、確かに雇用主のほうで負担している面があるように私は思うのです。たとえば、生理休暇の間の給与だとか、産前産後の休養期間の費用だとかいうものは大体雇用主の負担でしょう。その点をひとつ……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/48
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049・村上茂利
○村上(茂)政府委員 たとえば、淡谷先生御指摘のように、労働基準法上も、女子については休日であるとか、深夜業であるとか、いろいろな制限がございます。特に休暇につきましては、産前産後の休業といった問題がございますが、有給であるかいなかという点につきましては、有給休暇というのは年次有給休暇だけでございまして、産前産後の休業が有給であるかいなかという点については、法律は有給とはされておりません。しかしながら、労働協約その他によりまして産前産後の休業の期間中一部有給といったような取りきめをしている場合もございます。しかし、基準法上は無給でございます。そういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/49
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050・淡谷悠藏
○淡谷委員 そこにちょっと矛盾があるのです。基準法の上では産前産後の休暇を与え、生理休暇を与えるということはきまっている。与える場合は、負担しなければ女子労働者としては、雇用関係において給料が安くなる。それから与えている場合は、賃金の資本効率の上から見るとマイナスになる。これは確かに実情としては与えている職場と与えていない職場とある。基準法は休暇を規定しておきながら、これに対して国が保障しないということは少し徹底を欠くと思うのです。その点についてひとつ質問したわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/50
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051・村上茂利
○村上(茂)政府委員 立法論としてはいろいろ御意見があるところであろうと思います。女子に特有な休暇といたしましては、御承知のように生理休暇という制度があるわけでございますが、産前産後の休業、生理休暇、ともに「その者を就業させてはならない。」という文言になっておりまして、就業をさせないという義務を課しておるだけでございまして、労働をせざる場合に賃金を払うべきかどうかという問題になりますと、また別の角度からの検討を要するかと思います。たとえば、産前産後の休業といったような問題を女子労働者の生理的な問題として扱うか、あるいは産めよふやせよといったような見地から、人口政策的な観点から評価するのか、いろいろな評価の観点を異にすることによりまして、これを有給とし、国が負担するかいなかという点については見解の分かれるところであろうと存じますけれども、いろいろな立法例を見ましても、有給という点につきましては、産前産後の休業について一定の金円を支給するかいなかという点についてはいろいろ問題があるところであろうというふうに存じておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/51
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052・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは一つの人権問題だと私は思うのです。つまり婦人が婦人としての生理上の休みをとられなければならないというのは、これは女性の罪じゃない。業でもないわけです。したがって、この間、基準法によって、労働をさせてはならないということがきめられれば、基準法に従っておそらく労働させませんよ。その場合、出てくる現象というのは、無理をして休まないで働くか、あるいは労働協約等によってその休んでおる間の賃金を取るか、こういうことになってくるのです。雇用主のほうから言えば、自然そういうやっかいな女子労働力は職場から締め出そう、こういう傾向を生ずるのは当然じゃないですか。そこの基準法と雇用主の企業採算と人権を守るという立場の国家理想と、この矛盾を一体どう解決するかということはやはり大臣の思惑にあると思うのです。その点についての所見を聞きたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/52
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053・村上茂利
○村上(茂)政府委員 確かに女性に特有な生理現象ではございます。しかしながら、生理現象とは言いながらも、個人差がかなりあるようでございます。したがいまして、産前産後の休業にいたしましても、その産前産後の六週間まるまる使用者が休業させるというたてまえにはなっておりませんので、女子の個人差がございますから、請求した場合においてその者を就業させてはならないという、女子ではあっても個人差がありまするがゆえに、請求があった場合に休暇を与えるという立場をとっておる。これは生理休暇の場合も同様でございます。生理休暇についても個人差があるといったような問題があるわけでございまして、「女子が生理休暇を請求したときは、その者を就業させてはならない。」こういうふうになっておるわけでございまして、その休む期間中賃金を与えるかいなかという問題を考えます前に、頭から休業させるのだというのじゃないので、やはり請求があった場合に個人差も加味いたしまして請求によって休暇を与える、こういったたてまえをとっておりますので、先生の御指摘の点、確かに女性の生理に特有な制度でございますけれども、なおかつ請求者の意思が働くという面におきまして、どのように扱うのが適当であろうか、かりに立法論的な立場から考えますると、いろいろ議論のあるところであるというふうに考えます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/53
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054・淡谷悠藏
○淡谷委員 これはいろいろ議論があると思うので、いずれ大臣が出席されました場合に尋ねますけれども、生理休暇と産前産後の休暇の場合とは一緒にできないのです。生理休暇の場合は結婚してもしなくともある。それからこれに対する対策もいろいろ進歩しているようでありますから、あまり気にしないで働く人もあるようであります。けれども、生活が非常に苦しくなったり不景気になったりしますと、職場から締め出されないためにかなり無理をする。また雇用者もこれは明らかに女子労働者、特に結婚した女子労働者を職場から締め出す。これは教員労働者もそうなんですね。大きなおなかをして教壇に立つことはつらいのはむろんのことですが、また何か校長のほうから言わせますと、女の先生は休まれるので困るということを言っている。こういうふうな男子と女子との間における違いを労働政策上取り上げる必要があると思うのです。いまのような基準局長の答弁ですけれども、これはほうっておきますと女子自体が非常に無理をします。問題点としてひとつ残しておくのはかまいませんけれども、その問題点をすみやかに善処するような労働政策を立てていただきたい。これもひとつ大臣から御答弁を願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/54
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055・村上茂利
○村上(茂)政府委員 淡谷先生御質問の点は、非常に幅広い角度から検討を要する問題ではなかろうかと存ずる次第でございます。すなわち、個々の使用者と個々の労働者との間の個別労働契約上の問題として扱うか、そうではなくて、労働関係の揚というものをこえた、もっと広い社会的な立場から、そういった女子特有な生理を把握いたしまして、社会的な立場から、いわゆる母性保護の見地から特段の措置を講ずる、こういう問題の把握ということもあり得ようかと存じます。そういった点については国際的にいろいろな考え方が出されております。労働者であることのゆえをもって保護するというよりも、むしろ母性保護という見地からのいろいろな社会保障的な立場からの御意見があるようでございます。そういった点からいろいろ研究を要する問題であるというふうに私ども存じておりますので、その点だけを申し上げさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/55
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056・淡谷悠藏
○淡谷委員 やはり基準局長の答弁では困るんじゃないですか。幅広い質問ですから、やはり大臣答弁が必要である。特に、いまの話でもわかりますとおり、労働行政だけでは片づかないものがある。しかし労働大臣は労働大臣であるとともに、閣僚の一員ですから、全般的な人権問題として、女性の立場からさらに一そうの御検討を願いたいと思うのです。
さらに、同じようなケースですが、中高年層の労働問題です。これはもう明らかに若年労働力の需要がふえていると同じように、中高年労働者の需要もふえているように私は思うが、これは何か局長、データが出ておりませんか。中高年層の就職状況、特に関連して申し上げたいのは、何歳ぐらいから失業者がふえているかというような問題です。これは中高年層の基準の問題ですがね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/56
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057・有馬元治
○有馬政府委員 年齢別の求職倍率で申し上げるのが一番よろしいかと思いますが、それによりますと、五十歳以上をとってみますと、三十五年当時には求職倍率が一五・二でございます。これは一人の求人に対して五十歳以上の求職者が一五・二人押しかける、こういう要するに就職難でございます。これが漸次高度成長に伴って雇用事情がよくなりまして、三十七年には求職倍率が八・〇、三一十八年には七・二、三十九年には四・九というふうに非常に改善されたわけでございますが、四十年に入りましてやはり不況の影響を受けて一二・六というふうに非常に倍率が高くなってきております。これで見てもわかりますように、中高年齢者の就職は依然としてむずかしい。特に不況のときにはむずかしい状態になってまいりますので、私どもの雇用対策の重点は、どうしても中高年対策に重点を置かなければならぬというふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/57
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058・淡谷悠藏
○淡谷委員 いまの標準は五十歳以上ですね。その五十歳以上の人たちの就職した職種というのは、一体どうなっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/58
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059・有馬元治
○有馬政府委員 職種別の内訳は、整備しておりませんので、ちょっとごかんべん願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/59
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060・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは労働といっても、いろいろありまして、非常にていさいのいい労働もあるし、それからひどいところもありますから、やはり調べる場合は、景気がよくなった場合にたとえ雇用されましても、中高年労働者がどういう場面で使われておるかということの調査が、やはり必要だろうと私は思うのです。(「不可能だ」と呼ぶ者あり)不可能なんといったら労政を放棄しなければならない。
いろいろ申し上げましたが、求人の隘路、求職の隘路というのは、相当まだ根が深いものがある。特に、大臣の所信表明でもわかっておるとおり、過渡的には非常に労働力が過剰になるだろうというのが、いまその段階なんです。この不景気と労働力の需給の問題は非常に変わると思うのです。一体この不景気は、今後どういう見通しに立って労働政策を立てるか、これは大臣でなければできないと思いますから、大臣答弁でお願いしたい。いつごろから雇用状況が順当になっていくか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/60
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061・天野光晴
○天野政府委員 当面の雇用の停滞に対処するためには、積極的な財政金融政策の推進によって、景気の回復と雇用の拡大をはかりつつ、中高年齢離職者等の就職促進につとめるとともに、長期的な労働力需給の変化に即応して、産業及び労働面における構造的変化に伴う雇用に関する政策についての雇用審議会の答申を十二分に尊重いたしまして、総合的な雇用対策を積極的に推進する考え方でございますが、今年度の見通しとしては、現在の予算に組まれておる内容的なものは、この予算によりまして相当景気回復を刺激してやるという見通しでございまして、私たちのほうの期待しておる点は、大体今年度下期になれば相当軌道に乗るのじゃないか。そういう点で、ただいま申し上げましたように、前年度からの中高年層等の、あるいはその他の雇用関係の状態がずれてまいりますので、軌道に乗るのには、やはり今年度末期ごろにならなければ、軌道に乗らないのじゃないかという見通しでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/61
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062・淡谷悠藏
○淡谷委員 この所信表明に従いますと、はっきりした方向が出ておるのです。労働力の過剰から労働力不足へと移行しつつあるというのがある。これはいまの大臣の御答弁だと、来年度からになりますね。大体ことし一年は過程における雇用の停滞というふうにとらえて、雇用の停滞の上に立脚した労働政策を行なわれると私は思うのですが、その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/62
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063・天野光晴
○天野政府委員 今年度中ではなくて、今年度中途ころまでは停滞の状態で、中途以降においては相当伸びるのではないか、そういう考え方であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/63
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064・淡谷悠藏
○淡谷委員 過剰の場合と不足の場合とでは、これは百八十度違いますからね。さっきのような十二月と二月の見通しの誤りもあるわけですから、これは見通しを誤ったら、雇用対策に非常に大きな狂いがくる。これは見通しの場合ですからあえて言いませんが、十二月までは、それならば停滞の形でいく。十二月以後は労働力の不足の方向に向かうだろう。これは学校卒業期とはずれていますから、あわててやりましてもなかなかおさまりがつかぬと思う。この点はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/64
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065・天野光晴
○天野政府委員 まあ九月ころから大体乗っていくのじゃないか、一応十二月までには相当乗るのじゃないかという見通しでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/65
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066・淡谷悠藏
○淡谷委員 この見通しによって立てられる労働政策がはっきりしていませんと、思わざる事態ができてくる。たとえば、いま農村から非常に労働力を吸収しています出かせぎ労働者の問題です。これは職安を経由してこないのがだいぶ多い。この実態は、土木その他の労働に従事しているようですが、職安を経由したのとしないのとで、どれぐらいの差があるか。数の上の差ですよ。お調べになっておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/66
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067・有馬元治
○有馬政府委員 職安を通さないほうが多いので、なかなか調査がむずかしいのですが、主要府県を若干調査いたしました結果、推定できますことは、職安を通しておる状態は、現在二〇%から二四、五%程度ではないかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/67
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068・淡谷悠藏
○淡谷委員 職安局長にお伺いしますが、職安を経由しないでかってに農村から出かせぎ労働者を集めてくるということは、何か法規上に違反するのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/68
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069・有馬元治
○有馬政府委員 法規的に法制的に申しますと、直接募集という募集形態がございますので、許可を受けて会社の責任で直接募集する場合には、これは合法的にできます。それから、あとは許可手続その他が不要な場合は、いわゆる縁故募集という形でございますが、この縁故というのは、親族、縁者を中心とした縁故を考えておりまして、縁故募集の名のもとに手配師的な介在が許されるというわけではないわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/69
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070・淡谷悠藏
○淡谷委員 二〇%ないしは二五%が職安経由。あとの八〇%ないし七五%の雇用状況は、一体どうなっているのですか。いまの会社が許可を受けたものなのか、縁故募集が多いのか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/70
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071・有馬元治
○有馬政府委員 許可の件数は、ちょっと数字が違っておるかもしれませんが、非常に少なくて、数十件程度じゃなかったかと思います。したがいまして、残余の募集の形態としては、縁故募集という形が考えられるわけでございますが、その他はいわゆる募集あっせん人あるいは手配師というようなもぐり形態の募集方式が相当横行しているのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/71
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072・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは大臣、ちゃんと国が職業紹介所をつくって、職安法をつくっておいて、そのうちもぐっているのが七五%という事態は、放置できない状態じゃないですか。もしも職安そのものに何らか、これを逃げなければならない欠点があり、あるいは労働政策上の上で誤りがあるとするならば、すみやかにこれは是正しなければならない。ただ景気がよくなってくれば労働者をどんどん採るのだから、かってに行って募集してくれということになれば、人買いになっちゃうと思うが、この状態を許しておけましょうか。もう対策をはっきり立てなければならないと思うのですが、その対策についてお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/72
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073・天野光晴
○天野政府委員 実はこれが非常に問題でございますので、それではそのもぐりでやるものを厳重処断するかということになりますと、なかなかその把握がむずかしいというふうなことがございましたので、できることなら使用者側のほうでそういう違法行為を犯してまで持ってくるものを使うことをやめてほしいというような考え方をいたしまして、実は今月の二日に、建設業関係の団体の責任者並びに大手筋の業者の代表的な方々にお集まり願いまして、この問題を協議いたしたわけでありますが、正式ルートを通さざるためにいろいろな問題が派生して出てくるわけでございますので、その点もはっきりしないと、いろいろな派生する問題を押えることも困難だと思いまして、これは前向きで強力な立場で是正をする方向に進んでおりますので、その点御了承願えればたいへんけっこうだと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/73
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074・淡谷悠藏
○淡谷委員 このもぐり雇用の実態が暴露されているというのは、賃金不払いの問題です。賃金不払いの問題につきましても職安を経由していないので、基準局長はじめ苦労されているようです。特にその実態を申しますと、下請制度なんです。もう名だたる有名な土建会社がたくさんの下請業者を使っています。下請業者が下請業者にとどまっているうちはいいけれども、さらにこれは現場のタコ部屋みたいなところまでだいぶ下請が進んでいっていまして、もう末端には全く近代的な雇用条件を欠いている例が多い。こういう例で出てきておる件数も相当あると思いますが、そのデータができているかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/74
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075・村上茂利
○村上(茂)政府委員 賃金不払いにつきましては、遺憾ながら相当な件数に達しておりまして、ただいま政務次官から御答弁がございましたように、建設業界の代表的な方々を招きまして、賃金不払い等について強く改善方を要請したのでありますが、その件数は毎年三カ月に一回ずつ調査いたしております。
昭和四十年九月現在におきまして建設業関係の賃金不払いは、千六百十三件、対象労働者は一万二百二十五名、未解決金額は一億六千七百二十六万円という数に達しております。しかし、これは解決に努力して残った件数でございます。試みに年間の賃金不払いを建設業について見ますると、昭和三十九年七月から昭和四十年六月までの間、八千六百四十二件、その中で支払わしめた件数が七千百九十六件、残りが未解決として千四百四十六件残った。これが四十年六月末現在の数字でございます。金額にいたしますと、年間六億八千二百六十三万円、こうなっております。しかしながら、この不払い事件を通じて見られます特徴は、一件当たりの金額ないしは一人当たりの金額が、かなり零細であるということであります。いま申しました六億八千二百六十三万円、これを先ほど申しました件数と、それから人員、人員が四万五千四百九十九人となっておりますが、この関係から一件当たりの金額を出しますと、七万九千円、一人当たり平均金額は一万五千円という金額になっております。この平均値から見ても推定できまするように、農繁期を控えまして労働者が帰郷を急ぐといった最後の一カ月分の賃金の支払いがなされなかった、そういった出かせぎ労働者特有な事情からして、ごく零細ではありますが、取り残しの金額がかなりあらわれておる、こういうととでございます。
これは淡谷先生きわめてこういった事情を詳しく御存じでございますので、私から申すまでもないと思いますけれども、このような一件当たりあるいは一人当たりの金額から見るときわめて零細であるという事実にかんがみまして、これをもたらす原因が、かりに下請のまた下請業者であって、その者の個人的な責任ではありますけれども、何とかいたしまして、その上の元請業者が社会的な責任なり社会的な立場からこれを代替して払うような措置が講ぜられないものかというふうに私どもは考えておりまして、過般の建設業界に対する警告におきましてもこの点とくと要望いたし、従来事実上第一線の監督署等では、元請にも働きかけまして、事実上支払ってもらうというような処置を講じておりましたが、さらに業界全体における深い理解と積極的な協力態勢のもとでこういった措置も進めさしていただきたい。また、飯場等につきましてもいろいろな問題を生じております。これにつきましても、第二種事業付属寄宿舎という観点から、さらに是正を要する点が少なくございません。こういったいろいろの問題を踏まえまして、一方においては業界にきびしく警告いたしますと同時に一斉監督を行ないまして、監督と実態調査をさらに深めたい。これは出かせぎ労働者がおる時期でなければ監督調査をいたしましても効果があがりませんので、その時期を見計らいまして、一斉監督を実施いたしまして、監督とともに将来の改善策をとるための資料を得たい、かように考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/75
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076・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは私も知っていますが、基準局長にもずいぶん苦労かけましたから、基準局長がずいぶん苦労されておることはわかっております。ただし、もう基準局で扱った数だけでもこれくらいにのぼるということは、泣き寝入りになっておるのがまだまだ多いということなんです。特に末端のタコ部屋的な労務管理では、刑事問題になるような事件も相当起こっておるわけなんです。こういう事例はお調べになっておりませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/76
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077・村上茂利
○村上(茂)政府委員 ただいま先生御指摘のような問題も考えられ得るわけでございます。私どもといたしましては、労働基準法の立場からいたしますれば、強制労働の問題、それから中間搾取の問題、労働基準法第五条及び第六条の関係が問題になるわけでございます。私どもといたしましては、こういった問題が生じました場合にはきびしくこの問題をただし、司法処分に付するという態度をもって臨んでおりますが、御参考までに昭和四十年の実績を申しますと、中間搾取という観点から送検をいたしました件数は二十三件、その中で建設業だけをとってみますると十四件という数になっております。強制労働なりあるいは中間搾取につきましては、御指摘のようになかなか表面上目に触れないような環境のもとにいろいろなことがなされておりますので、努力はいたしておりますが、把握漏れがあるのではないかということをおそれておるわけでございます。しかしながら私どもは一方においては、この問題の重要性にかんがみまして、問題を処理する場合にはできるだけ証拠をあげまして、これは事実を確認し、証拠をあげませんと、強制労働なりあるいは中間搾取に関する事案といたしまして司法処分に付するということはなかなか問題が起こりやすいという観点から、事実調べといったような点にも留意いたしまして、行政の一つの大きな重点として従来扱ってきたわけでありますが、今後も一そう努力したいと考えておる次第であります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/77
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078・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは実際の状況を調べてみますと、強制労働、中間搾取だけでなくて、非常に前近代的な暴行が相当多い。これなども今後ひとつ基準局のほうでも十分に監督していただきたい。同時にこれは政務次官にお聞きしたいのですが、いまの建設業者などにこういう制度をなくするように要請しましても、このほうがやっかいじゃないし、また、いざというときには責任をのがれられますから、大きい業者ほど、いまの機構上下請を使っている、これを全然禁止するということは不可能に近いかと思う。この辺でひとつ下請業者のはっきりした規制なり、あるいは下請業者に対する、末端の飯場労働に対する規制なり、出かせぎ労働者の問題に根本的に法的に対処するような姿勢ができておるかどうか、これをひとつお聞きしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/78
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079・天野光晴
○天野政府委員 これは、考えはあるのですけれども、どうもここで私の個人的な見解を述べてもどうにもならない。強力に行政指導をしていく以外にいまの段階では処置はない。たとえば、元請業者が全責任を持つような法改正をやったらどうだというような意見もありましたが、これもいまの段階では非常にむずかしいようでございますし、そういう点で、先ほど申し上げました業者との懇談会におきましては、私これは個人の意見で申し上げたのですが、職安法あるいは労働基準法の関係で違反を起こした者は仕事から放逐するという処置をとったらどうだ、たとえば、一流業者の末端の下請のまたその下請でそういう事態が起きたという場合においては、元請負のほうで全責任を持って、公共事業の指名停止をやるとかいうような極端な処置をとらない限りこの問題の解決はむずかしいのではないかということをこの間意思表示しておいたのでありますが、これは、いまの御質問に対する私のほうの政府側としての答弁ではございません。そういう思想の上に立ってでき得るだけ強力な行政指導をやって、件数を一件でも少なくしたい、要するに残っている件数ほど、零細なものほど、被害をこうむったものの立場というものは実に極端にひどいわけでありますから、そういう点で、私たちのほうからも、数多くの出かせぎが出てきておる立場でございますので、一件でも件数を少なくするために、ただ単なる行政指導ではなくて強力な行政指導をやって、この是正をはかるという方向へ向かわなければならぬのじゃないかという考え方をいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/79
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080・淡谷悠藏
○淡谷委員 去年あたりから見ますと、労働状況の下向きから、出かせぎは少し減っているという現象が出てきている。これは農繁期になりますと、なおさら減るでしょうが、大臣がちょうど景気の上向きと見ておりますことしの秋から、再び、農閑期になれば、景気上昇に伴ってとの風潮がまた出てくる可能性が多分にある。その強い決意を具体的にあらわされるように要望しておきたいと思う。
要するに労働者の働く場というものは非常に広い。大きな企業とか近代的な工場とか、むろんこれは労働条件の改善が必要ですけれども、目に見えないところで案外法律規則に矛盾ができている例があるのですが、その一つは駐留軍労務者の問題です。との駐留軍労務者は、雇用の形で一体何を目ざしているのか、どういうふうな形をとっているのか、まことにはっきりしない。ここでひとつ駐留軍労務者というものの身分をはっきりさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/80
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081・有馬元治
○有馬政府委員 駐留軍労務者には、御承知のように間接雇用方式と直接雇用方式とございますが、十二月末現在で間接雇用方式による駐留軍労務者は四万四百十六人でございます。それから、直用方式によるものが一万二百六十一人ございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/81
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082・淡谷悠藏
○淡谷委員 間接雇用の場合は、雇用の責任者はどこになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/82
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083・有馬元治
○有馬政府委員 防衛施設庁が労務者を雇用して提供するという義務を負っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/83
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084・淡谷悠藏
○淡谷委員 直接雇用の責任者は防衛庁になるわけですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/84
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085・有馬元治
○有馬政府委員 雇い主としての責任は施設庁になると思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/85
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086・淡谷悠藏
○淡谷委員 施設庁が雇ってこれを駐留軍に提供する。提供してから日本の労働法が適用されますか。職場は米軍にあるわけですからね、米軍の中で日本の労働法というものを適用できますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/86
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087・村上茂利
○村上(茂)政府委員 雇用されました後に労働法規の適用という問題がどうなるかということでございますが、労働基準法に関する限りにおきましては、駐留軍従業員の労働条件については、いわゆる地位協定によりまして日本国法令によるということが明らかにされておりますので、労働基準法は適用されるということになるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/87
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088・淡谷悠藏
○淡谷委員 米軍の基地その他で労働に従事している人たちの中に、現在まで基準法違反というような事例が起こったことがございますか。あったらその具体的な例をお示しを願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/88
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089・村上茂利
○村上(茂)政府委員 これは御承知かと存じますが、従来保安解雇が労働基準法第三条に抵触しないか、いろいろな問題がございました。私どもは、そういった問題のほかに、安全衛生の見地からボイラー等の検査などもいたしておりますし、また労働者からの申告等によりまして定期監督のほか申告監督というような措置も講じておる次第でございます。
ただ問題は、在日米軍基地内におけるこのような監督につきましては、労働基準監督機関は監督の権限はございますけれども、国際的な慣行に従いまして基地内における担当部局と連絡をいたしまして監督を実施するといったような手続をとっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/89
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090・淡谷悠藏
○淡谷委員 直截に申し上げますと、基地内では日本の労働法は適用されないことになるのですね。実際に基準法の適用ができなければこれはないも同じなのです。その場合に、基地外の施設庁と話をして、そこでやるということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/90
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091・村上茂利
○村上(茂)政府委員 問題は、そういう施設の場所的な問題と、いま一つは裁判管轄権の問題がございます。労働基準監督機関は、国内法の適用がございますので監督はいたしますけれども、かりに法違反があった場合の裁判管轄権をどうするかという場合に問題が生ずるということでございまして、監督は実施いたしておるということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/91
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092・淡谷悠藏
○淡谷委員 具体的に申し上げましょう。青森県の三沢の裁判管轄権はどこにありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/92
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093・村上茂利
○村上(茂)政府委員 これは私がお答え申し上げるよりも外務省あるいは法務省でお答えするのが筋道かと存じますけれども、ただいま申しました件につきましては、法的な解釈をいたしましては、裁判権がいずれにあるかという問題と、具体的な裁判権を行使するのはだれかという問題になろうかと思います。そういった抽象的なことよりも、先生御指摘の点に関連してお答え申し上げますと、いわゆる地位協定第十七条の規定によりまして合衆国側にこれがあるというふうな解釈がなされておるようでございます。私からお答え申し上げますのはちょっと行き過ぎの感がございますが、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/93
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094・淡谷悠藏
○淡谷委員 大臣、いまお聞きのとおり、これは幾ら防衛施設庁が雇用責任者だといっても、基地内における駐留軍労務者の身分、地位というものは非常に不安定なんです。しかも、防衛施設庁が雇うというのは各府県の県庁あたりに頼んでやるのでしょう。そうじゃないですか。この点はどうですか。施設庁がじかに雇いはしないでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/94
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095・有馬元治
○有馬政府委員 これは募集の形式としましては、やはり職安の協力を求めてまいりますので、安定機関もできるだけ施設庁に協力しておる状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/95
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096・淡谷悠藏
○淡谷委員 間接雇用でも、これは同じ日本の労働者でありながら、完全に日本の労働関係の法規のもとにないということははっきりしているのです。これは単に労働法だけじゃありません。基地内に起こった犯罪でもしばしば例がありますとおり、非常に日本の国民としての権利を喪失している面が多い。これは広い意味ではまた別に問題にいたしますけれども、労働省の関係におかれましても、これは十分にひとつ大臣から注意をしていただきたい。特に間接雇用でもそのとおりですから、直接雇用になったらどうなります。直接雇用についてお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/96
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097・村上茂利
○村上(茂)政府委員 概括的に防衛施設庁が中に介在いたしまして行ないますもの以外が、俗に直接雇用、こういわれておるわけでございますが、その直接雇用につきましても、これはいろいろな職種によりまして同様でないと私ども考えておる次第でございます。その場合には、基本的な型といたしましては、いわゆる労働契約を個別的に締結いたしまして労働関係に入るものというふうに私どもは考えて、一般の場合と同様に処理しておる、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/97
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098・淡谷悠藏
○淡谷委員 少なくとも直接雇用の労働者というのは一万をこしているわけです。これは頼むのは米軍でしょう。米軍との間に直接にやはり雇用関係、雇用契約が結ばれる、この場合には、一体日本の法が雇用関係に働くかどうかというのが問題なんです。あくまでもアメリカの法律でやられるんじゃないですか、直接雇用の場合には。あるいは慣行によってやるのじゃないですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/98
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099・村上茂利
○村上(茂)政府委員 たとえばPXで働く労働者、これは直接に雇用するというような例を考えてみますと、いわゆる家事使用人については、労働基準法の適用は日本人でございましてもないわけでございますから、これは論外といたしましても、家事使用人以外の労働者が使用される場合は、これは労働基準法の全面適用になるということでございまして、先ほど申しました防衛施設庁が介在いたします場合には、防衛施設庁がいわゆる労務基本契約によりまして、さらに具体的な内容は就業規則で定めるとか、いろいろな手だては講じますけれども、そうでない場合におきましては、それぞれの実情に応じまして契約を通じて雇用関係が成立し労働基準法はそのまま全面的に適用する、こういう関係になっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/99
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100・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは基準局長に率直にお答えを聞きたいと思うのですが、さっきの間接雇用ですら基地内の労働者に対しては十分こっちの権限が働いていないでしょう。まして米軍が直接雇用した場合、具体的に基地内における労働者に基準法の発動を十分にできますか。これは理屈の上ではできるが、具体的にはできていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/100
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101・村上茂利
○村上(茂)政府委員 先ほど申しましたように、いわゆる基地ないしは施設内におきます裁判権の問題、強制捜査の問題については制約があるわけでございます。しかし、それ以外のものについては制約がないことは当然でございますので、基地内はどうかと言われました場合には、いまお答えした前者の形になろうと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/101
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102・淡谷悠藏
○淡谷委員 大体駐留軍の労務者というのは、基地内で働くのが多いのです。非常にきびしいアメリカの慣行か、アメリカの規律かによる規制を受けている。同じ日本の労働者が、五万以上の者が日本労働法規、基準法に定められた保護の外にあるということは、これはやはり考えなければならないことです。次官、いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/102
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103・田中正巳
○田中委員長 委員長から申し上げますが、本答弁は非常に重要な問題ですから、後刻労働大臣が御出席の節に答弁していただくことにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/103
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104・淡谷悠藏
○淡谷委員 ではもう一つ、これはまたあとで労働大臣にしっかり詰めてみたいと思うのですが、LSTの乗り組み員の問題が出ましたが、あれは労働省で把握しているのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/104
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105・有馬元治
○有馬政府委員 LST関係の乗員の問題は、私のほうでは把握いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/105
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106・淡谷悠藏
○淡谷委員 これはどういうわけなんです。運輸省が労政を担当するのですか。たぶん運輸省がやるのだとおっしゃるでしょうけれども。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/106
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107・有馬元治
○有馬政府委員 LSTの乗り組み員は、これは船員扱いでございますが、船舶が外国船舶でございますので、またこれは日本の船員法の適用を受けないというふうに相なろうと思いますが、私どもは安定機関を通じて就職のあっせんをする立場でございますので、今日までのところLSTの乗り組み員について安定所があっせんを申し上げておる事例がないという意味で承知していないということでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/107
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108・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは所管が運輸省かもしれませんが、これは大臣に御答弁願いたいのです。さっきと同じですが、労働者がある場合は労働省の労働政策のもとにあり、ある場合は運輸省の労政のもとにあるということは、これは明らかに労政の分裂じゃないですか。政務次官、どうお考えになります。委員長の御配慮のように、あとで大臣が来た場合にというなら、それでよろしいが、答弁できるなら答弁していただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/108
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109・田中正巳
○田中委員長 本件も先ほどと同じように扱いたいと思いますから、御了承賜わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/109
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110・淡谷悠藏
○淡谷委員 さらに、日韓条約の発効によりまして、保税工場というものができますね。日本の部分品が韓国に持ち運ばれまして、そこでその部分品が完成されるわけです。その場合に、これは韓国にある工場ですから、ここへ日本の労働者が出向くことはないでしょうが、韓国の労働者の賃金は非常に安いので、韓国人労働者を入れまして、安く完成するというのがねらいらしいのです。関税なども出さないでやろうというのがねらいらしい。その場合に、日本の製品ですから、日本からも若干熟練工が行くことがあり得ると思うのです。LSTという船の上でさえ労働省の労政監督権が発動しないとしたならば、まして韓国における保税工場に発動するわけもないと思うのですが、こういうところの労働者は一体どうなりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/110
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111・有馬元治
○有馬政府委員 外国で働く日本人労働者の問題でございまして、韓国で労賃が安いために、日本から部品を持っていって委託加工するという形が考えられるわけでございますが、私どもとしましては、日本の雇用市場に悪影響があるという場合には、そういった委託加工方式そのものを、通産省に申し入れまして、通産大臣の承認の場合にチェックをしてもらう、こういうふうな考え方で進みたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/111
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112・淡谷悠藏
○淡谷委員 どうもまだはっきりしないのですが、一体韓国における保税工場というものは、日本の権限がどれだけ及ぶのですか。これは端的に申し上げますと、昔は安い労働者を日本へ連れてきた。今度は連れてくるのはやっかいだからというので、保税工場という従来例を見なかったような工場形式をとりまして、無関税のものを向こうへ持ち込んで、ここで工場をやるということになりますと、基本的な性格はどうなりますか。日本の工場になりますか、韓国の工場になりますか。これは労働省には無理でしょう。しかし、閣僚として、やはり大臣からはっきり見解をお聞きしておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/112
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113・有馬元治
○有馬政府委員 御指摘のように韓国の工場でございますが、労働問題といたしましては同じような影響があるわけです。労働力を持ってくる場合と、仕事を向こうへ持っていく場合と、実態は同じような関係がございますので、先ほど申しましたように、日本の雇用市場に非常に悪影響が出るというような場合には、そういった委託加工貿易そのものに対して、通産省に申し入れをしてチェックをしてもらう、そういう仕事の出し方をしてもらわぬようにしてもらうという考え方でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/113
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114・淡谷悠藏
○淡谷委員 これは国際的な関係を生じた雇用問題ですから、これは日本の国内に来るだけでなくて、非常に労働者の生活には影響があると思うのです。これなども将来どうするかということを基本的に考えておきませんと、たいへん複雑な問題が出てまいりまして、いまでも複雑な情勢にある日本の雇用状態をますます複雑にするおそれがありますから、これは一括してこの次に大臣にお聞きしたいと思う。
そこで、ひとつ基準局長にこれまたお聞きしたいのですが、日本の軍需工場と称されている工場もっと端的に言うならば、新三菱の航空機製造工場、その他韓国に戦車さえ出しているのがありますね。こういう軍需関係の工場に自由に立ち入って調査する権限を現在のところ持っているかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/114
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115・村上茂利
○村上(茂)政府委員 私ども、御承知のように、生産品の種類によって監督を差別するとかそういうなにはいたしておりません。国内にあります工場、事業場でございますれば、検査、監督等の権限を有するというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/115
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116・淡谷悠藏
○淡谷委員 従来そういう工場などで、何か兵器の機密に関するからというので断わられた実例はありませんか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/116
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117・村上茂利
○村上(茂)政府委員 問題は、労働基準監督の場合の問題かと思うのでありますが、監督官が調べますのは、賃金台帳とか安全衛生の見地からの問題でございまして、そういった製品を、どのようなものをつくっているかといったような問題は、労働基準法外の問題が多かろうと存ずるわけでございまして、いままで寡聞にして、私はまだ断わられたということは承知いたしておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/117
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118・淡谷悠藏
○淡谷委員 調べようとされたことはあるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/118
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119・村上茂利
○村上(茂)政府委員 軍需品をつくっておるかどうかというような観点からの調査とか監督はいたしません。これは権限外の問題でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/119
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120・淡谷悠藏
○淡谷委員 これはアメリカの例をとってもわかりますけれども、時代はもう明らかに、産業と軍需が依存体制をとってきたわけです。したがって、日本における国内の兵器生産というものはだんだんその機密性を増して、あるいはこれを外部から遮断するという方法などもとられるおそれが随時あらわれてきている。これは調べようとしなければ断わられることもないでしょうけれども、会計検査院などでも若干こぼしていたことがある。防衛庁の内部の機構を若干調べようとすると、これは軍事機密上の問題だからやめてくれということもあるらしい。これははっきり申し上げます。ですから、いずれ小さいくつだとか被服だとかしか調べられないといっている。少なくとも軍需産業などが相当になされておる場合、これはいまから基準局、労働省全体が、労働者保護の立場から自由に立ち入り検査する権利というものはあくまで持っているという心がまえを持っていただきたいのですが、大臣、どうですか、その点の心がまえを聞かせていただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/120
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121・天野光晴
○天野政府委員 ただいまの御質問ですが、現在の段階では各法律を施行するのに支障はないようでございます。自今そういうものがもしかりにあるような場合には、適切な処置を講じたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/121
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122・淡谷悠藏
○淡谷委員 最後に、もう一問お聞きしておきますが、ここに最初に引きました大臣の所信表明の「過程における雇用の停滞」ということがありますが、同時に賃金の問題も関係があると思うのです。一体物価の上昇と賃金の上昇とはどっちが先ですか。時期的に具体的にデータによって出していただきたい。答弁によってこの次の質問をしますから、データによって出していただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/122
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123・村上茂利
○村上(茂)政府委員 賃金の上昇と物価の上昇がどちらが先であるかということばを、表面的に解釈いたしますと——そのような御趣旨かと存じますが、一つの経済現象といたしましてどっちが先になるべきかという法則性の確認というのは非常に困難でございます。ただいま数字のことを……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/123
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124・淡谷悠藏
○淡谷委員 ちょっと待ってください。私の質問の趣旨が取り違えられているようですから……。私の言うのは原因結果論じゃないですよ。データの上にあらわれてきた賃金上昇と、データの上にあらわれた物価の上昇がどっちが先になっているか。これは理屈から言えばはっきり対立するから、データでいきましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/124
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125・村上茂利
○村上(茂)政府委員 これは労働省の毎月勤労統計調査あるいは総理府統計局の小売り物価統計調査等の資料によりまして申し上げますと、三十五年を一〇〇といたしますれば、賃金の指数は、全産業でその後三十六年は一一一・三、三十七年は一二二・七というふうに上がってまいりまして、直近の資料といたしましては、昭和四十年の一月—十一月の数字を申し上げますれば一四八・五と、全産業の賃金指数は上昇いたしております。これに対しまして消費者物価指数は、同じく昭和三十五年を一〇〇といたしますと、これも三十六、七、八年とやや微騰と申しますか、かすかに上がってまいりましたが、ここ両三年の間にかなりの上昇を見せまして、昭和四十年一月から十月までの指数を申し上げますと、全産業の賃金指数は一四八・五、消費者物価指数のほうは一三五・一、こういうふうな形になっておりまして、この間の上昇傾向は必ずしも同一でございませんので、先ほど御指摘の点につきましても、いずれが先かあとかといったような点については、はなはだお答えが困難であるということで御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/125
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126・淡谷悠藏
○淡谷委員 最終的な物価の指数は、ごく新しいところで幾らになっていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/126
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127・大宮五郎
○大宮説明員 消費者物価につきましては、本年の一月分まで全都市平均が出ておりますが、それによりますと、一月の消費者物価については、前年の一月と比べまして五・六%の上昇でございます。また、東京都の分につきましては、本年の二月まで出ておりますが、それによりますと、前年の二月に比べまして六・一%の上昇ということになっております。さらに、卸売り物価につきましては、一月まで出ておりまして、これは前年の一月と比べまして二・三%の上昇となっております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/127
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128・淡谷悠藏
○淡谷委員 三十六年を一〇〇とした指数をお話し願いたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/128
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129・大宮五郎
○大宮説明員 現在の指数はいずれも三十五年を一〇〇としておりますので、若干お時間をいただけば三十六年に計算し直しますが、三十五年を一〇〇といたしますと、先ほど申し述べました消費者物価の本年一月の指数については一三八・五、それから東京都の二月の指数は一三八・八、さらに卸売り物価は一〇四・三でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/129
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130・淡谷悠藏
○淡谷委員 大体それは、一月の米価の値上げ、今回の鉄道運賃の値上げなどのデータは入ってないデータですね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/130
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131・大宮五郎
○大宮説明員 消費者物価の一月分及び二月分には、すでに消費者米価の改定分は入っております。また、運賃の改定分はまだ入っておりません。ただし、私鉄の運賃の値上がり分は、すでに前に実施されておりますので、この中には入っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/131
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132・淡谷悠藏
○淡谷委員 そこで、これは、前後の関係はまだまだ私は議論がありますけれども、あとでまた申し上げますが、物価の上昇ということは賃金の実質的な引き下げだということ、これはわかりますね。これはもう常識ですから、当然の話だろうと思う。そうしますと、やはり今後における労働問題の重点は、物価の上昇に伴って賃金をどう引き上げたら最も合理的かということにしぼられてくると思う。これはさっきの雇用関係にも関係ありますけれども、その点に非常に労働行政の本質が出てくると思う。これに対する大臣の所見などは、この次に一緒に聞きましょう、基本的な問題ですから。
きょうはいろいろ申し上げましたが、まだ労働問題の一般の取り上げ方においてはたくさんの問題点が累積しております。きょうは労働大臣もお見えになりませんし、きょう提起しましたいろいろな問題、さらにお出しを願えなかった各種のデータ、これはすみやかに提出方を委員長においてお計らいの上、あらためて大臣御出席の上で質問を継続したいと思います。本日はこれで終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/132
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133・田中正巳
○田中委員長 吉村君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/133
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134・吉村吉雄
○吉村委員 きょうは、労働行政の権威者であってきわめて高邁な識見を持っておる天野次官がおりますが、実は私は天野次官とは同じ選挙区でございますので、その高邁な識見等については後日承ることにして、きょうは、大臣不在ですので、最賃法の問題についてこの前の委員会で少しく労働省の方針等をお尋ねしましたが、なおその際最終的に質問を保留にしておきましたので、このあと大臣が出席をされておる時期に質問を続行したいと考えています。それに先立ちまして、その際に時間をできるだけ節約するという意味で、実は局長のほうから、きわめて断片的に質問をしますので簡潔に御答弁をいただきたい、こう思います。
第一番目は、この前私が最賃法の問題についていろいろ質問をしたその当日、大臣が労働組合の代表の方々と会って、最賃法に対する労働省の見解等のやりとりがあった模様です。その際村上基準局長も同席をされておったと思いますから、その経緯について、これから少しく問題になると思いますので、お尋ねをしたいと思うわけです。
一つは、こういう事実があったかどうかということです。今回、中央賃金審議会のほうに二十六号条約に合致するようなものをつくってもらいたいという諮問をした、これに対して組合側のほうの代表は、これは白紙諮問というのはけしからぬではないか——この点は私も再三強調しましたけれども、そういう意見が述べられてやりとりがあった際に、最終的に大臣が、もし中央賃金審議会のほうで希望をされるならば労働省としての見解を表明してもよろしい、こういう趣旨の答弁をしたかいなかについて、同席をされた局長の答弁を求めたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/134
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135・村上茂利
○村上(茂)政府委員 この前の会合のときには、そういうお答えがなかったように私は記憶いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/135
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136・吉村吉雄
○吉村委員 再度確認をしますよ。組合側の代表とのやりとりの中で、白紙の諮問というものは問題ではないか、こういうやりとりの過程で、もし中央審議会のほうで要望されるならば労働省としての見解を表明してもよろしい、こういう答弁があった、こういうふうに聞くのでありますけれども、ないということですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/136
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137・村上茂利
○村上(茂)政府委員 大臣は、いま中央最低賃金審議会で御検討いただいておるのであるから、労働省側から具体的な意見を述べるということは、むしろ適当でないじゃないかという点を申し上げたというふうに私ども理解いたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/137
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138・吉村吉雄
○吉村委員 そうすると、私が指摘をしたような事実はないということに尽きますね。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/138
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139・村上茂利
○村上(茂)政府委員 この前の会合では、そのような明確な御発言がなかったように私は存じております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/139
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140・吉村吉雄
○吉村委員 この前のというのは、私が冒頭に申し上げましたように、前委員会の当日ですから三月の一日ということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/140
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141・村上茂利
○村上(茂)政府委員 速記をとっておりませんので、その事実を確認するわけにはいきませんが、私どもとしましては、そのような、審議会から求めがあれば労働省の見解を明らかにするという御発言はなかったように私は記憶いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/141
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142・吉村吉雄
○吉村委員 わかりました。
それでは、その場合の局長の言う委員会というのは、基本問題小委員会を含めてという理解でよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/142
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143・村上茂利
○村上(茂)政府委員 いま申しましたような趣旨の発言がなかったのでありますから、総会たる審議会か小委員会であるか、これはちょっとわかりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/143
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144・吉村吉雄
○吉村委員 第二番目。大体労働省としては、いままで最賃法の実施三カ年計画の中で、約五百万人の適用者ということになるわけでございますけれども、労働省として最賃法を適用せしめなければならないと考えておった労働者の数というのは、大体どのくらいに考えておりましたか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/144
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145・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働省の見解と申しますよりは、中央最低賃金審議会の答申の中に、最低賃金制を普及せしめるべき業種といたしまして重点業種を御指摘になり、それについて一定の目安を定めて最低賃金制を普及するように答申でお示しがあったのであります。そういう意味で、中央最低賃金審議会の答申によって予定されております労働者の数は、昭和四十一年度末現在におきまして五百十三万程度というふうに予定をいたしておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/145
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146・吉村吉雄
○吉村委員 大体中小企業関係の雇用労働者というのは千三百万くらいになるかと思うのですけれども、そうしますると、その全部が最賃の適用ということではないにしましても、五百十三万の方々を除いた人たち、これらについては、労働省としては、最賃法の関係は一体どういうふうにしようとしておるのかという方針はないのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/146
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147・村上茂利
○村上(茂)政府委員 労働省といたしましては、いわゆる低賃金労働者の労働条件改善という観点から深い関心を有しておるわけでございまして、ただ、最低賃金制度の扱い方を振り返ってみますると、当初は、むしろ日の当たらない産業について考えるべきではないかといったような観点から、四つばかりの業種を対象にして最低賃金実施の可能性を調査したり、検討したことがございました。しかしながら、かえって、そのような産業について最低賃金制を手始めとして行なうことについては、いろいろ問題があるではないかというような考えもございまして、それについては具体的な結論を得なかった。そうこういたしまして数年を経過しました後におきまして、実効性ある最低賃金制を普及するためにはどうしたらよいかという観点から、昭和三十八年に中央最低賃金審議会の答申があったわけでございます。
そこで、いろいろな進め方はございますけれども、いわゆる重点対策業種として、同じ中小企業の中にありましても、国という立場から最低賃金制度の普及が望ましいという業種を取り上げまして、それに対して定めた目安に適合するような最低賃金制度を確立していこう、こういう考え方を持ったわけでございます。
そこで、先生御指摘のように、中小企業の総労働者数は千三百万程度であろうというふうに言われておりますが、その中でいわゆる重点対象業種として考えられますものは四百九万九千、まるめて四百十万程度でございまして、その重点対象業種以外の業種に属する労働者の数は、九百十八万というふうに私どもは踏んでおるわけでございます。先ほど申し上げました、昭和四十一年度末現在におきまして五百十三万の労働者に最低賃金を適用したいという、その内訳を見ますると、重点対象業種については三百八十九万。先ほど申しました四百十万に対する比率は九四・九%ということでございまして、いわゆる重点対象業種についてはほとんど最低賃金制を実施する、こういう形に持っていきたい。それに対しまして、重点対象業種以外の業種については、百二十四万人程度に対して最低賃金制を適用したい。この比率を見ますると一三・六%というように、非重点対象業種につきましてはかなり低い比率でございます。そこで、非常に困難ではございますが、このような非重点対象業種に対して今後どのように最低賃金制を適用していくか、普及していくかということに非常に大きな問題があろうかと存ずるのであります。この点につきましては、過般来大臣からも御答弁申し上げておりますように、昨年八月に中央最低賃金審議会に対しまして、最低賃金制度の基本的な検討をお願いしておりますので、そういった問題もあわせて御検討いただくというふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/147
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148・吉村吉雄
○吉村委員 この非重点産業というものの中に、サービス業関係は相当含まれておると理解してよろしいですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/148
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149・村上茂利
○村上(茂)政府委員 いわゆるサービス業の中にも各種の業種がございますが、たとえばクリーニング業、理容業、美容業といったような事業は重点対象業種の中に入ってございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/149
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150・吉村吉雄
○吉村委員 その次にお尋ねしますことは、労働組合の側としては、現行最賃法そのものが、きわめて低賃金の温床的な役割りしか果たしていない、言いかえると最賃法たるていをなしていない、そういうことでこれを改正して、本来の最賃法を実現するために長い間運動をしてきた、あるいは国会等でも議論されてきたことは局長御存じのとおりです。そこで、本年におきましても、この最賃法のほんとうのものを法制化すべく、ことしの春の組合側の闘争の中で、特に最賃法のために近い時期にストライキをかけてでも政府側に反省を求めなければならない、こういう方針を打ち出しておるのでありますが、これに対して労働省の考えはどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/150
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151・村上茂利
○村上(茂)政府委員 最低賃金制度については、いろいろ意見がありまして、労働組合側におきます意見にも幾つかの意見があることは、私どもも承知いたしております。しかし、先生が御指摘のような御意見が、有力な労働組合側から強く主張されておるということは事実でございます。これに対しまして、私どもといたしましても、従来できるだけ接触を保ちつつ、十分御意見を伺いながら今日まで至ってきておるわけであります。ただ、御存じのように、いわゆる春闘と称せられます労働運動の展開の中におきますいろいろな問題でございますので、最低賃金制を目標とするストを実施するということも伺っておりますけれども、はたしてそれだけのものであるかどうか、その実態を十分判断いたしませんと、軽々に結論を出すべき筋合いのものではないというふうに存じております。しかし、いずれにいたしましても、労働者側におきまして非常に強い要望がありますことは御指摘のとおりでありますので、労働省といたしましても十分真剣に、そのような御要求には対応いたしまして、できるだけの措置をいたしたいと存じておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/151
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152・吉村吉雄
○吉村委員 その次に、最賃法の問題の中で、これは聞くところによるとでありますけれども、もし政府が旧来どおりの頑迷固陋な態度で終始していくとすれば、中央最賃審議会の労働者側委員、地方最賃審議会の労働者側委員、これらを総引き揚げをする、こういう方針も議論されておるやに聞いています。そうなっまいりますと、この間答申をいただきました五百十三万人適用の目安の問題等々とからんで相当労働行政は渋滞をする、こういうふうに予見をされるのでありますけれども、その点について労働省の見解はどうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/152
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153・村上茂利
○村上(茂)政府委員 それぞれの立場がございますので、要求という形でいろいろお話がございます。しかし、私どもは、最低賃金制度の問題にいたしましても、たとえば決定方式の問題もあれば、最低賃金の額の問題もあり、いろいろ検討すべき内容があろうと思うのであります。御要求は御要求といたしましても、さらに十分話し合うべき問題が多々あるのではないかというふうに思います。したがいまして、さらに意を尽くしまして十分話し合いを継続していきたい、かように考えておるわけでございまして、いろいろ方針はおきめになっておるようでございますけれども、なおかつ、この種労働問題につきましては、十分話し合いをしつつ問題を進めていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/153
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154・吉村吉雄
○吉村委員 これ以上は方針上の問題になりますから次回に譲ることにしますが、ただ、どうしても一言申し上げておきたいと思いますのは、村上基準局長の先ほど来の答弁を聞いていると、労働者側の本問題に対するところの要求の深刻さをあなたは十分把握していない。いままでも、最賃法の問題についていろいろ闘争が行なわれました。単に最賃法だけでなしに、その他の目標も掲げておりましたのでという程度の理解でございますが、本年度の情勢はそういう状態ではない、もっと深刻なものがある。なぜならば、これは三十九年、四十年におけるところの労働大臣、大橋労働大臣当時からの言明あるいは石田労働大臣等の言明、こういう経緯を経ておりますから、したがって、あなた方のほうでも国会の答弁の中で、ILO二十六号条約に合致をしたそういう答申を期待する、すみやかにという表現もとられるようになってきたわけです。ですから、いま労働者側が考えておりますのは、労働省がもっと真剣にこの問題と取り組んで、労働行政の最高責任者としての労働大臣が今回の諮問をするにあたっては、現行最賃法のこういう点が問題だと思うから、ここをこういうふうに検討してもらうとか、そういうような方向を打ち出してしかるべきではないかという意見がきわめて強い。それが白紙諮問をしておる。こういう状態ですから、これは見ようによっては、労働省としては最賃法の問題については遷延をして、時間かせぎをやっていこうとする意図がきわめて強いという認識をとっておる。この認識は、私は当然ではないかと考えております。しかし、いまの局長の答弁では、そのような深刻な事態に対する認識が非常に甘いように私は受け取らざるを得ない。ですから、現在の情勢の中で労働省側としてとるべき道は、とにかく白紙諮問という無責任な態度をやめて、何らかの意向——労働省としてはかくかく考えるということ、すみやかにということはいつごろまでの時期を期待するのだ、こういう程度の責任ある態度を明確にしなければ、事態は非常に紛糾していくであろうということをこの際は申し上げて、あとの質問は次回に譲ることにします。
終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/154
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155・田中正巳
○田中委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。
午後零時三十七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105104410X00719660308/155
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