1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十一年五月三十一日(火曜日)
午前十時四十六分開議
出席委員
委員長 大久保 武雄君
理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君
理事 小島 徹三君 理事 田村 良平君
理事 井伊 誠一君 理事 坂本 泰良君
理事 細迫 兼光君
鍛冶 良作君 唐澤 俊樹君
四宮 久吉君 田中伊三次君
濱野 清吾君 早川 崇君
神近 市子君 山口シヅエ君
山田 長司君 横山 利秋君
吉田 賢一君 志賀 義雄君
田中織之進君
出席政府委員
法務政務次官 山本 利壽君
検 事
(大臣官房司法
法制調査部長) 鹽野 宜慶君
委員外の出席者
判 事
(最高裁判所事
務総局民事局
長) 菅野 啓蔵君
専 門 員 高橋 勝好君
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五月三十一日
委員中垣國男君及び西村榮一君辞任につき、そ
の補欠として鍛冶良作君及び吉田賢一君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員鍛冶良作君及び吉田賢一君辞任につき、そ
の補欠として中垣國男君及び西村榮一君が議長
の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
執行官法案(内閣提出第一四九号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/0
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001・大久保武雄
○大久保委員長 これより会議を開きます。
執行官法案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。坂本泰良君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/1
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002・坂本泰良
○坂本委員 私は本法案の具体的質疑をいたす前に、執行吏制度の改善に関する問題について基本的な所見を伺っておきたいと思います。
それは昨年の三月四日法務省から出された「執行吏制度の改善に関する問題点」についてでありますが、これは「昭和二十八年四月法務事務次官が、最高裁判所事務総長、各大学法学部学部長及び日本弁護士連合会事務総長あてに、執行吏制度の改善に関する各裁判所、執行吏、各大学法学部、日本弁護士連合会及び各弁護士会の意見の照会を行なった際、照会文書に添付した別紙である。」そうであります。それは第一から第六までありますが、内容は第一から第五まで五つあるわけであります。その第一に「執行吏の執行機関としての地位」として、「現行制度においては、執行吏は、一応原則的な強制執行の実施機関とされているが、他方、相当広範囲の重要な強制執行の実施は、執行裁判所等の他の執行機関の権限に属するものとされている。しかし、この点については、執行の能率化等の見地から種々の改革意見が出されており、」——大体三つになっておりますが、「或は執行の権限を」第一は「執行裁判所に一元的に集中させ、執行吏はその補助機関とすべきであるとの意見、」第二は「執行の権限を執行吏に一元的に集中させ、執行裁判所には単に執行吏の執行処分に対する異議の訴訟を介してのみ執行の適正確保に関与させることとすべきであるとの意見、」第三は「執行吏を一元的な執行機関とするとともにこれを裁判所から移して法務省その他の行政部に属させることとすべきであるとの意見等」、大きく分けると三つありますが、「執行吏制度を検討するに当っては、まずこの執行吏の執行機関としての地位をいかにすべきかの問題について考慮する必要があると思われる。」と、こうあります。
この点に関して、本法案の提案にあたってはいかなる見解に基づき、いかなる方針に基づいて、執行官の執行機関としての地位を本質的に定められたか、まずその点を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/2
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003・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 執行官制度の基本的な問題についての御質疑でございますが、ただいまお読みいただきました問題点の中に、ただいまのような記載があるわけでございます。問題は、執行官制度を整備する場合にどういう形のものが最も妥当であるか、合理的であるかということでございますが、ここに記載してございますように、考え方といたしましてはいわゆる一元論、二元論という問題があるわけでございます。一元論と申しますのは、御承知のとおり現在では強制執行の制度が、不動産に対する執行につきましては裁判所がこれを行なう、それから動産につきましては執行吏がこれを行なうという形になっておりまして、これを私どもは二元論と申しますか二元的な考え方というふうに言っているわけでございます。これに対しましていわゆる一元論と申しますのは、これをすべて統一いたしまして、一つの機関が責任を持って強制執行を実施するという形に統合する考え方を、一元論というふうに申しているわけでございます。
さらに詳細に申し上げますと、一元論の中にも二種類あるわけでございまして、従来執行裁判所が行なっていたような事務も執行官が引き受けて、執行官が一元として行なうという一元論の考え方と、それから強制執行につきましてはすべて執行裁判所が責任を負う、そして執行吏はいわばその手足として実施の面を担当するというふうな一元論の考え方もあるわけでございます。
そこで、ただいまお読みいただきました問題点は、昭和二十八年に関係方面の意見を求める際の参考資料としておつけしたものでございまして、問題点がこういうところにあるのだということを明らかにするために添付いたしたものでございます。そこでいまお読みいただきましたように一元論的な考え方もあるし、二元論的な考え方もある。さらにはまたこの執行機関を行政部のほうへつけるというふうな考え方もある。そういうような考え方を御参考にしていただいて、御意見を寄せていただきたい、こういうことをお願いいたしたわけでございます。
そこで、いろいろ御意見が出たわけでございますが、その結果、先般も御説明いたしましたとおり、翌年の昭和二十九年に法務省の法制審議会に対しまして、法務大臣からこの問題について諮問がなされたわけでございます。それは「執行吏制度を改善する必要があるとすれば、その要綱を示されたい。」こういう諮問であったわけでございます。その諮問に基づきまして法制審議会で審議が進められまして、法制審議会におきましては各種の部会があるわけでございますが、この関係につきましては強制執行制度部会というものが設けられまして、ここで検討をし、さらにその部会に小委員会も設けられて細目の検討をするというような段取りで、検討が進んだわけでございます。その結果法制審議会におきましては、先般補足説明にも申し上げましたとおり、昭和三十一年に至りましてその小委員会におきまして一つの目標を打ち出したわけでございます。それは要するに、「現行の執行吏制度、すなわち、当事者の委任によって事務を取り扱い、当事者から手数料を受けてこれを自己の収入とする制度を廃止し、これを固定俸給制の裁判所職員たる執行官の制度に改める」という方向を打ち出したわけでございます。これは小委員会段階でございます。そこでそういう方向で検討が続けられているわけでございます。したがいまして、現在の方向は裁判所職員として制度を固めていくという方向は一応きまっているというふうに考えてよかろうかと存じます。
それから、問題の一元論、二元論の問題につきましては、法制審議会でいろいろ御審議があったわけでございますが、現在までは最終的にはまだ審議が終了いたしておりません。しかし大体の方向として現在まで検討されておりますのは、一元論でまとめ得るだろうかということを検討してきているわけでございます。しかしながら、従来執行裁判所と執行吏と二元で行なっておりましたものを一元で行なうということになりますれば、従来裁判所が行なっていた仕事まで執行吏が担当する、こういうことになりますので、非常に大きな改革でございます。同時に、適任者を得られなければこの強制執行を円滑適正に行なうことが非常にむずかしいということになりますので、その人材の補給というような面を考え合わせますと、はたしてこの執行官一元の方向にすぐに進み得るのかどうかということにつきましては、なお検討いたさなければならないものが残っていると考えられるのでございます。
そこで、今回の法案は、提案理由の補足説明でも御説明申し上げましたとおり、さような根本問題につきましては現在なお法制審議会で審議中でございます。しかもその審議の内容におきましては、いろいろ解決すべき困難な問題が出てきておりますので、早急にこの制度を一挙に解決するというわけにもいかないという状況になってまいりましたので、当面の対策といたしまして、現段階ででき得る限度の改革を試みようということで、この法案を提出いたしたわけでございます。根本的な改革につきましては、将来さらに検討を進めて、しかるべき制度の根本的な改革をいたしたい、かように考えている次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/3
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004・坂本泰良
○坂本委員 たいがいこの法務委員会に出される法律案は、法制審議会の答申をまってやられることが普通だと思います。これはその例外であって、法制審議会の答申がないわけなんです。その理由がいまわかったわけですが、もちろんこの執行吏制度についてはいま御答弁のようにまだきまっていない。しかしながら、その根本問題がきまらずに暫定的なことをやるということは、ちょっと早計に過ぎるのではないか、こういうふうに思うわけです。そこで、この法案を作成されるにあたっては、法制審議会で大体の意見がまとまっておる、そうすれば、大体一元論になるわけですが、その人材等の問題が困難な状態にあれば、まだ出す必要はないじゃないか。もう少し法制審議会で審議を進めて、そうしてその答申をまってこの執行官についてはやるべきじゃなかろうかと思うのです。と申しますのは、これは不動産、動産、あるいは仮処分、あるいは仮の地位を定める仮処分、その他重要な問題であり、さらに国民の財産権に関する問題である。軽々にしてこれを執行吏から執行官に移すというようなことをやれば、直接被害をこうむるのは国民であると思うのです。ですから、その点については私はもう少し慎重にすべきであった、こう思うわけですが、その中間段階としてやられるならば、法制審議会の大体の意見が出ているなら、その速記録等もここへ出してもらって、そうしてわれわれ法務委員の検討の難上に乗せてこの法案を審議すべきだ、こういうふうに考えますが、御所見いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/4
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005・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 私の御説明が不十分でございまして、ちょっと誤解をなさったわけでございます。実はこの法案は法制審議会の答申に基づいているのでございます。その点を先ほど申し上げませんので、まことに申しわけございませんでした。その間の事情を一言御説明させていただきます。
この点につきましては、先ほど御説明申し上げましたとおり、法制審議会におきまして、執行吏制度の根本的な改革について審議をしているわけでございますが、先ほど来申しておりますような理由で、いますぐ最終的な結論に到達するということがなかなか困難であったわけでございます。そこで前回の通常国会におきまして、この法務委員会におきましてもその点についていろいろ御指摘を受けまして、根本的改革についてはなるほどいろいろ問題があろう、しかしながら、この執行吏制度の問題は、そういつまでも放置できる問題ではない、そこで根本的な改革がさらに検討を要するのであれば、当面の対策でも早急に検討してこれを打ち出すべきであるというふうな御意見があったわけでございます。私どもといたしまして、まことにごもっともな次第であると前々から思っておりましたところでございまして、実はその点は法制審議会におきましてもさように考えていたわけでございまして、そこへ前回の御指摘がございましたので、昨年法制審議会におきましてもさような検討が開始されまして、根本的な制度の改革の検討を続けると同時に、当面早急に手を打たなければならない、また当面改革のでき得る手段というものはどういうものであろうかということを並行して検討いたしました。その結果、本年の春に現在提案しております執行官法のような内容の答申が一部答申としてなされたわけでございます。そこで法務省といたしましては、その法制審議会の一部答申に基づきまして、この法案を作成したという次第でございます。先ほど坂本委員から御指摘のございましたとおり、この執行吏制度と申しますのは、この運用いかんによっては、国民に非常に重要な利害に関する問題でございまして、私どもといたしましても、制度の改革ということにつきましてはできるだけ早い機会にいたしたいと考えておりますが、それと同時に、慎重な検討を要する問題であろうというふうに考えているわけでございます。そこで将来の改革といたしまして、なお引き続いて努力を続ける所存でございます。今回は最高裁判所ともいろいろ協議いたしまして、法制審議会の一部答申に基づきましてこの法案を御提案した次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/5
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006・坂本泰良
○坂本委員 法制審議会の一部答申をどうして出されなかったのですか。これは出してもらいたいと思うのですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/6
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007・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 法制審議会の答申はこの法案の内容とほとんど変わりませんので、資料として御提出しなかったわけでありますが、御必要でありますれば至急に提出するようにいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/7
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008・坂本泰良
○坂本委員 そこで、この際私は質疑をいたしておきたいのは、現在の執行については、一番重要な不動産の執行は執行裁判所が主としてやっておる。執行吏のほうはただ鑑定をするとか、鑑定ができたならば期日を指定して実際の競売を実施する。その保証金が、競買価格の一割の保証金、これを裁判所に納入する。そしてその後の競落の許可決定並びにそれに対する公告その他の処理は裁判所が全部やってくれる。
それからもう一つ大事なのは仮処分事件なんです。その仮処分は執行裁判所がやっているわけですが、この仮処分がこのごろは非常にふえておる。特に会社が解雇する。解雇をすると労働者は直ちにめしの種がなくなる。給料がもらえない。国家公務員であれば、休職になれば七割はもらえる。しかしながら、一般会社の労働者は解雇されると一銭ももらえない。その日の生活から困る。そこでその解雇無効の訴えを起こすとともに地位保全の仮処分をやる。地位保全の仮処分が二年も三年も、六年も七年もかかっておるのが実際あるのですね。それではその日の生活に困る。労働者は直ちに困ってしまう。何のために地位保全の仮処分をするか。裁判所はなぜ急いでやらぬか。会社側の申請の仮処分に対しては民事訴訟法どおりです。申し立て人の簡単な審尋をして、そうして仮処分を出す。ロックアウト等の点の入る場合もある。ところが労働者の地位保全の仮処分については、六年もかかってようやく決定が出る。六年もかかったら、あなた、その間に労働者は何をやるというのです、絶対権利の保護というものはできていないわけです。権利の保護もないし、せっぱ詰まった、生活もできないということになっておるわけです。ですから執行官法をもって——もちろん改正の要は私も認めます。認めるけれども、もう少し執行裁判所の点についてこれは大いに検討すべきだと思うのですが、そういう点については検討されましたか。裁判所と法務省と両方にお伺いしたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/8
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009・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 執行吏制度ということで法制審議会で検討しているわけでございますが、先ほども申し上げましたように、一元論、二元論というものがありまして、一元論ということになりますと、従来二つに分かれてやっておりますものを、執行官が、あるいは執行裁判所が一元的にこれを取り扱うという問題でございますので、当然、この執行吏制度と申しますか、執行官制度と申しますか、この問題の検討の中には執行裁判所の問題も検討の対象にはなっているわけでございます。しかしながら、先ほども申し上げておりますように、まだ最終まで突き詰めてこの問題の検討が終わっておりませんので、現在のところ、ただいま御指摘の執行裁判所の問題をどういうふうにするかということにつきましてまで御説明できる段階には立ち至っていない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/9
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010・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 仮処分事件のうち、いわゆる労働仮処分と申される事件が年間に百数十件ございますが、こういう事件につきまして、御指摘のとおり相当長期間かかっている事件がございます。それらの事件を見まするというと、かなり複雑な事件でございまして、長くかかっているにつきましてはそれ相当の理屈があるように私ども見ておりますが、しかしながら、仮処分事件が早急になされなければならないことは御指摘のとおりでございまして、この点につきましては、今度の執行官制度が一応固まりますれば、それを前提とした訴訟法の改正ということを法務省でも考えておってくださるようでございまするので、その改正によって、なお一そう事件の早期解決ということに努力いたしたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/10
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011・坂本泰良
○坂本委員 そういうなまぬるいものじゃいかぬじゃないかと思うのです。少なくとも裁判所は、資本家も労働者も憲法に基づいて平等に取り扱い、平等の結論を得るような裁判をする。さらに執行裁判所は、不法なればその仮処分の決定を却下をする、しかし、事情があれば地位保全の仮処分をどんどんやらなきゃならぬ、こういうふうに考えるわけです。七、八年前までは裁判所は非常に公平であったのです。私が関係した事件だけでも、例の大牟田の三井三池の問題にしましても、第一回の首切りは二千数百名でした。それに対して地位保全の仮処分を東京地方裁判所に提出しました。そのときの執行裁判所の裁判官は、労働者側と三井の会社側と双方呼び出して、数回、あるいは十数回にわたったかもわかりません、事実上の裁判官が中に立って団体交渉をやらせまして、そのときは首切りが不当であったから、二千四百名くらいだったと思うのですが、全部解雇を撤回しました。そうして労働者はもとどおり復職しまして、その間の給与に対しては全部——幾らか減ったかと思いますが支払って、労働者の生活にはこと欠かない解決が出ている。その後だんだん裁判所は反動になった。このごろの東京の地方裁判所の執行裁判所を見てごらんなさい。労働部というのがあるでしょう。そこに園部という判事がおる。その判事のやり方を最高裁判所は知っておるですかどうですか。これは、裁判所長その他に弁護人その他から要望書も出ておるはずと思うのですが、まずその点を知っておられるかどうか承っておきましょう。
〔委員長退席、田村(良)委員長代理着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/11
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012・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 労働部に園部判事がおられることは存じております。しかしながら、その判事の担当しておられる事件の処理のことにつきまして事務当局としては申し上げる筋合いでないと存じますので、この点は答弁を差し控えさせていただきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/12
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013・坂本泰良
○坂本委員 言えなかったらこっちから言って上げます。
園部裁判官は、前任地である旭川地方裁判所において昭和三十七年五月から三十九年三月まで二ヵ年間同地方裁判所の刑事部の裁判長として、日教組の学力テスト反対運動に関する刑事公判事件の審理に関与中、通算五回にわたる忌避の申し立てを受けておる事実があります。さらに、その裁判官が東京地方裁判所に参りまして、そうしてやっておることがどういうことかと申しますと、たとえば、裁判長の認めた一人三十分の持ち時間の範囲で被告人が意見陳述を始めたところ、園部裁判長は、何と三十分に十三回も、うしろの柱時計をながめたり、手元の時計と柱時計を見比べたりして、聞く耳を持たないという態度を露骨に示しております。たまりかねた被告が、途中で、「裁判長、時計ばかり見ていて、一体私の話を聞いているのですか」とただしたところ、同判事はわきを向いて、ただ一言、「耳はあいています」、こう言っただけであった。審理に臨む裁判長の態度とは想像もできない不遜な態度を示しております。
また、忌避申し立てが棄却され、公判が再開されたとき、園部裁判長は、法廷では、いままでのことは水に流して充実した審理に協力されたいと発言しながら、同じ日に、新聞記者にはこっそりと、いままで審理のおくれたのは被告人弁護人らが、いわれのない忌避を乱発したからだ、と一方的に被告と弁護人を非難する一文をわざわざ印刷して配付するという背信的事実もあっております。同判事が東京地裁民事十九部に着任以来示した前記の種々の不公正な態度が旭川地裁における異常な不公正な事実と共通の本質を持ち、それを労働専門部においてさらに一歩を進めたものと想像せざるを得ないのであります。このような園部裁判官の不公正な訴訟指揮があると同時に——長くなるから省略しますけれども、最近の東京地方裁判所労働部の状況は、労働者がどんなに要請しても、地位保全仮処分の事件すら結審までに三年もかかることがあたりまえのように行なわれておる。十年前の三池の解雇の問題のときとは雲泥の差がある。たとえば、東京信用金庫解雇事件では、六年かかっておる。いまだ結審になっていない。見通しも立っていない。準備手続だけで一年、二年とかかっている事件もたくさんある。証人尋問期日は間隔が二ヵ月もありますから、この証人尋問も仮処分の場合は普通の民事訴訟の手続の証人でなくて、疎明の証人でしょう。それに二ヵ月もかかるわけです。このようなありさまでは、さっき申し上げましたように、労働者の権利を救済する裁判とは言えないわけです。
さらにこの園部裁判官は、裁判の傍聴に許可の制度をとっておる。そうして傍聴した者に住所氏名を書かせて、そうしてそれを全部許すというわけでもないわけです。結局傍聴許可書というのを出させて、その制限をする。さらに制限をする場合は、部屋が狭いとかなんとか言っている。部屋が狭ければ、三十人、四十人も解雇の地位保全の仮処分があれば、あいている大きい法廷を借りてでもいいわけです。三池の事件なんかは、執行裁判所の判事の部屋は狭かった。だから合議部の部屋とか、あるいは公判廷を利用して審尋をされて、二、三ヵ月のうちに審尋を遂げて、地位保全の仮処分が通過しそうになったから、会社のほうは申し立てておる被告の全部の解雇を撤回したでしょう。何でいまになって、裁判所の大きな建物もできておるのに、部屋が狭いと言って制限する必要もない。そういうことをこの執行裁判所がやっておるのですから、とにかく十数年来の変化というのはひどいものであるわけです。労働事件の特殊性に着目して、事案の真相を迅速公正に把握する熱意は全くないわけです。結局傍聴許可書が要るからというので、住所、名前を出させて、思想調査にするのかもわからない。こういうような執行裁判所の状態ですよ。これを無視して執行官制度だけをやるというのはおかしいと思うのです。そういう点を十分承知の上で、まあまあ執行官制度をこの際出そう、そういう考えですか、どうですか、さらに承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/13
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014・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 ただいまの東京地裁の労働部の裁判のよしあし、このことにつきましては、私ども事務当局といたしましては、お答えをいたしかねますが、事件を迅速に処理すべきことは仰せのとおりでございまして、これは先ほども申し上げましたように、執行官制度というものが一応きまりますれば、さらに仮処分手続等に関する検討がなされるわけでございまするので、その際に十分迅速に行なわれるような手続をくふうしてまいりたいと存じます。
それからただいま傍聴制限のお話がございましたけれども、そういう事実につきましては、私ども調査いたしておりませんけれども、しかし、およそ公判の傍聴を制限するということはできないはずであろうと思います。ただ人数の制限はございまするので、順番によって入れるというようなことはやむを得ないかと思いまするけれども、その人の住所を尋ね、あるいはつとめ先を尋ねる等のことをいたしまして、傍聴を制限するというようなことは、公判の公開のたてまえからいって、法律上できないことであろうと思います。ただ、労働部におきましては、準備手続におきまして、これは本来は公開の制度でないのでございまするが、東京都におきましては、事務手続におきましても、一定の関係人を立ち合わせるという慣行ができておるように聞いておりまして、そういう意味におきまして準備手続あるいは審尋の手続等におきまして、本来ならば当事者以外の立ち合いを要しない場合におきましても、労働部におきましては、特に関係の深い第三者を審尋に立ち合わしておるということを聞いておりまするので、その審尋に立ち合わせるかどうかということについて、ある程度関係等を聞いておるのではないかというふうに思っております。
〔田村(良)委員長代理退席、委員長着席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/14
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015・坂本泰良
○坂本委員 そんな、あなたの考えるようななまやさしい問題じゃないんですよ。労働者が三十人も五十人も首を切られて、あすからの俸給がもらえないんですよ。だから、一日も早く仮処分をしなければならぬ。それが二年、三年、長いのは六年もかかってまだ見通しもついていないという事件も具体的に裁判所にあるのですよ。この国民の権利を保護するためには、もちろん執行吏が公正にやらなければならぬのは当然だ。しかしながら、ひどいのがある。家屋取りこわし、土地明け渡しの強制執行なんかは、執行吏がみずから行かずに執行吏代理を行かすのです。これから問題にしようと思うのですが、執行吏代理をよこして、本執行吏は行かずに、人夫を使って家をめちゃめちゃに取りこわして土地の明け渡しをする。ひどいのはこういう事件もある。だまされて借家人が和解調書をつくっておる。民事訴訟にあるでしょう。双方が出頭した場合は、その和解契約を調書に記載すれば、判決と同一の効力がある。東京の事件ですが、その和解調書を持って、しかも執行吏でなくて執行吏代理をよこして、そうして工場ですが、その一部の執行を即日やる。こんな和解調書は、これはだまされて判を押したのだから違いますと言っても、不意打ちに行って、そうしてその中の工場の一部と事務所の約半分くらいを執行する。そうして執行しないところに荷物を運び込んで、そこをくぎづけして、そうしてそれを債権者に直ちに引き渡す。その救済はどうしてやりますか。執行処分の異議の申し立てをして、いまの執行裁判所に仮処分の申し立てをすると、執行でやったあとの仮処分は出したこともないし、これはできぬだろうと思う。できるじゃないかと言うけれども、とうとう却下しちゃう。ですから、結局は和解無効の訴えを出して、そうして原状回復の判決をもらうよりしかたがない。そういう執行官のひどいのもある。けれども、それより以上に、この執行裁判所のいまのやり方というものはひどいものです。少なくとも裁判所は、この執行制度の改革を基本に置く以上は、こういう点の事実を知らずに私は出す必要はないと思うのです。もしも知らずに出すというならば、こういう法律なんかは手直さなきゃいかぬと思うのです。どうです、裁判所、知っておりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/15
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016・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 いろいろな問題が御指摘がございました。まず、代理による執行という点は、昨年も御指摘にありましたとおり、私人である代理人が強制力を行使するということは、理屈の上から申しましてもおかしいことでありますので、本回の法案ではこれを廃止することにいたしました。
それから和解による執行、これは民訴の法律の上で認められておる制度でございます。しかしながら、和解が無効であるという場合には、これを御指摘のように和解無効の訴えを起こすという方法でそれを本案とする仮処分、それによって執行の停止ということができるわけでございますし、そういう停止の仮処分というものもたびたび出されているわけでございます。ただ、執行が一挙になされてしまえば、そういう停止の手段ということもないわけでございまして、あとから原状回復という手を打つよりかしかたがないわけでございますが、ただいまの執行吏のやり方といたしまして、家屋明け渡し、家屋の収去という執行は、一ぺんに一挙にこれを行なってしまうということは実情としてほとんどないのでございまして、一部手をつけるということが、先ほど御指摘にありましたが、そういう場合は、一部執行をしてあとは停止しておくという執行のやり方はあろうかと思いますけれども、その場合にはまだ執行行為が残っておるのでございまして、これを停止、そしてその執行を取り消すという仮処分も可能でございますので、和解による執行の場合でも、これを回復する手段、これに異議を申し立てる手段というものは法律上講ぜられておりますし、そういう申し立てがなされた場合に、裁判所は停止決定をするということはたびたびであるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/16
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017・坂本泰良
○坂本委員 あなたは、違うですよ。和解の場合、一部を執行した場合、ただくぎづけをしておるくらいなら原状回復の点が執行吏の手でできますけれども、すでにその部屋だけは、何坪だけは債務者の専有を執行吏に移して、すぐそのまま債権者に明け渡しの執行をしているわけです。だから引き渡しをやっている。ですから、仮処分で一部執行を停止しようといっても、一部分の執行停止が及ばないのですよ。私より法律を知らぬですな。そこを私は言っているのです。差し押えの場合は、差し押えをして競売までは二週間の期間があるでしょう、民事訴訟法で。ですからその二週間の間に、そういう不都合な和解調書をつくったのは——債務者に金がない場合非常に困るのですが、その場合は訴訟救助でも受けて、その競売をとめる、執行を停止することはできるわけです。しかし家屋の明け渡しとか土地の明け渡しなんかは一部をこわして、こわしたところはもう引き渡しを済ましてしまう。それは暴力団の圧力を受けるようなこともなきにしもあらずです。家屋の明け渡しでも、八畳と六畳が三間あれば、八畳と六畳を一部執行して、そこは債権者に引き渡す、そうすると債権者が翌日から使用するわけです。そういう非道なことが行なわれているわけです。そして今度は和解調書に対する和解無効の確認の訴えと、それから執行停止の残っておる分については、一年、二年かかってそこは停止するけれども、もう引き渡しを済ましておけばそれができない。ですから、仮処分の申し立てをすると、執行裁判所は仮処分命令を出し切らない。そこは出していないのですよ。一般の場合の執行停止の仮処分は出しておる。そういうことをやる執行吏、執行吏代理に対する問題は、形式的にはこれであるいは進歩になりましょう。ただ執行裁判所の、この労働者が解雇された場合の地位保全の仮処分というのは、それこそ早く処置しなければならない。審尋はして、その審尋の方法で二ヵ月おきにその疎明となるべき証人の審尋等をせずに、もっと早くすべきである。そうしなければ執行官だけの権利擁護ということをやっていても、執行裁判所のほうの権利擁護というのができなくなる。だから私が冒頭に一元論か二元論か、あるいは行政機関のどこかに執行裁判所と執行吏を一緒にしたところのものをつくるか、こういう基本的な問題をお伺いしたのはそこにあるわけなのです。それを解決しなければ、ただこの執行官法の法律案だけを出して、そしてあとでやるというけれども、やはり早くて一年先でしょう。どうせ法制審議会の答申が出なければ、また二年も三年も先にならないとできないから、抜本的改革をするというにしきのみ旗を立てられるならば、やはりそこまで考えてやらなければならないと思うのですが、そういうのを知らずにやられたとすれば、私はこの執行官法だけの独走になろう、こういうふうに思うわけですが、その点の御所見はいかがですか。裁判所と法務省と両方にお聞きします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/17
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018・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 執行制度全般ということになりますれば、執行吏だけの問題にとどまりません。裁判所が執行機関としていわゆる執行裁判所として執行を行なう場合があるわけでございますから、双方を包括して考えなければならないと御指摘の点は、そのとおりでございますが、まずさしあたって執行吏の制度というものを改革してもらいまして、そしてさらに進んで執行裁判所が現になしておるところの執行制度というものにつきましては、民事訴訟手続の改正ということを通じて法務省がやってくださるわけでございますので、それとの関連によりまして引き続き執行裁判所の行なっております執行ということの改善に、この法案が成立いたしますれば引き続いてその改善に向かって努力いたしたい、かように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/18
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019・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 この問題につきまして、根本的な方向を確立していくということが最も重要であることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、先ほど来御説明申し上げておりますように、向かうべき方向というものは出ているわけでございますが、その方向の終局点がいかなるものになるか、その具体的な構想までは、現在まだ到達していないわけでございまして、これは今後さらに鋭意研究、努力をいたします。法制審議会の協力も得まして、なるべく早い時期に根本的な方向につきましても具体的な構想を確立したい、かように考えております。
それから、それのできるまでに、執行吏だけを取り上げてやるのは早過ぎる、あるいは意味がないという趣旨の御指摘がございました。根本問題全体から見ますと、まことにごもっともなようにも思われるのでございますが、御承知のとおりこの執行吏の制度は、長年の懸案でございまして、戦前も昭和の初期から十年あまり法務省で検討した。これは、戦争が激しくなったために、遺憾ながら結論を得ずに終わったようでございます。戦後におきましても、さらにいろいろ批判が出まして、先ほど坂本委員の御指摘のとおり、昭和二十八年当時、法務事務次官から各方面に御意見を伺う、翌年には法制審議会に諮問するというようなことで、問題は、この執行吏制度は御承知のとおり明治二十三年の法律でございまして、現在までこの執達吏規則を基礎にいたしまして、七十数年間この形で運用してきております。それが必ずしも妥当な制度ではないということで、昭和の初期から問題が提出されていたわけでございます。
そこで、私どもといたしましても、この問題につきましてはできる限り早い機会に、当面の対策でも、とにかく問題点を一つずつでも解決していきたいというふうに考えておりましたところ、前通常国会におきまして、この法務委員会におきましても、その点御指摘をいただきましたので、この一年間当面可能な改善策というところに精力を集中いたしまして、ごらんになりますとあるいは不十分な案であるというふうに御指摘をいただくかも存じませんが、私どもといたしましては、当面改善できるところから改善していこうということで、一年間鋭意努力いたしまして、その結果到達いたしましたものを、ここに法案として御提出した次第でございまして、これが不十分であるという御指摘を受けることは、私どももある程度覚悟しておりますが、決して私どもといたしましては、ここでストップするというふうには考えていないわけでございます。さらにできるところから逐次改善の手を打っていきたいと考えている次第でございます。その点御了承いただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/19
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020・坂本泰良
○坂本委員 この問題に対する最後に、法制審議会の答申がこの執行官法案そのものだということになれば、これは法制審議会もただ執行官のことについてだけのものであって、やはり私の申し上げたいのは、地位保全の仮処分なんかについてああいう非道を裁判所がやっておるから、当然現在としてはこの執行裁判所と執行吏——執行官になるのですが、これと二つに出てきて——この執行吏の行為も非常にひどいのがありますが、それより以上にこの執行裁判所の任務というのは労働者に対して重大であり、それに対して非常に反動的になっておる。この園部判事については、これは地方裁判所所長に対して、所属がえをしてもらいたい、司法行政の面でひどいのにも程度があるから所属がえをしてもらいたい、そういう要望も出ているようなわけで、もしこの執行裁判所の関係について法改正ができなかったら、やはりこの司法行政の指導面においてもう少し円滑にやってもらわなければならない。裁判所は、それは司法権の独立で、職務の独立はありましょう。しかしながら、何も園部判事をこの東京地裁民事第十九部労働専門部に置く必要はない。旭川の反動刑事裁判長として数回も忌避を受けた裁判官を、まあ東京では大きい事件がふえて労働事件が多いから、ここにあれを持ってこい。そうするとやはり人間だから英雄的になる。そうして資本家のためにやっておればいつ弁護士になっても食っていけるのだ、裁判官も人間だからこういうような考えを起こしておると思う。最高裁判所の裁判官でも見てごらんなさい。ある労働者の不利な判決を出した者は、裁判官をやめて定年になって弁護士になっておるじゃないですか。大きい会社の顧問をしておるとも聞いておる。しかし裁判官たる者は、そういう考えを起こしてもいかぬし、そういう指導も——何のために所長がおり、高裁の長官がおり最高裁の長官がおりますか。やはり円滑に指導しなければならぬと思う。ですから、この執行官法についてはこれから質疑をいたしますが、執行の基本問題について、やはり裁判所と執行吏との両方とも国民に直結したところの大きい弊害が出ておる。だから、もっとこの執行裁判所の問題等については、司法行政指導でやるべきである、こういうふうに考えますが、その点の所見を承っておきます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/20
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021・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 特定の判事の訴訟指揮の問題、これにつきましては、やはり司法は独立でございますので、私ども、とやかく申し上げる筋合いのものではないと存じます。その手続内において、不服な点につきましては、法律上認められておる方法によって園部に対する異議を申し述べていただくより手はないと存じます。
なお、その人の身分上の事柄につきましての裁判官の身分につきましては、それぞれその分限の方法もきまっておりまして、私はとやかく申す立場におりません。しかしながら、その事件事件によりまして、それは最も適した裁判官というものがあるはずでございまして、なるべくそういうところに、そういう事件を取り扱いますにつきまして最もふさわしい人をそういう所属にはめていくということ、これがやはり裁判所の人事行政としてのいき方であろうかというふうには考えておりますけれども、ただいまの具体的な裁判官につきまして、これをどうしろと仰せられましても、私ども事務当局といたしまして現在のところ何ともお答えのしようがございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/21
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022・坂本泰良
○坂本委員 かつて当委員会で全電通のマンモス訴訟の問題で質疑をしたことがあります。しかしその際、裁判所も輔佐人をつけるとか、準備できるだけの傍聴者は許す、あるいは電電公社においては、有給休暇を出す、そういうふうにやはり行政の運用についてだんだん改善されている事実もあるわけです。この執行裁判所の点も、執行裁判所の判事をして、やめてから弁護士になるのは、執行事件なんかずいぶんはやる。戦前のそういう例もわれわれはずいぶん見ておるわけですが、やはり裁判官もなにやめたら弁護士になればいい、そのためにうんと資本家のためにやっておけ、事件があるだろうというようなのも、人間だからなきにしもあらずだから、そういう点は私は司法権の独立ではない。やはり司法行政の立場からその運用をしていかなければならぬ。いやしくも特定の裁判官に対して新聞種になるとか、あるいは弁護士になった場合どうするとかというようなことを許すべきものではないと思うのです。そのために所長とか高裁の長官とかがあるのであって、司法権の独立というのは、裁判の独立であって、むしろ私はその裁判官が時の行政権力に合わないような判決を下しても、その地位が厳然としておるのだ、それが私は司法権の独立だと思うのです。いやしくもその裁判官の地位にあって、資本家の一方の意見をやるような、事務をやるようなことは、これは断じて許すべきものじゃないと思うのです。そういう点はやはり行政指導でやっていかなければならぬと思うのです。だからこの執行官法と同時に執行裁判所の問題が解決せなかったというならば、そういう点はひとつ直接にどうこうというのも——いろいろな運用の面はあると思いますから、その点はひとつぜひ配慮しておいてもらいたい。まあこういう事件が、あるいは最高裁では知られなかったのかもわからぬがあった以上は、やはり暴力団を排除し、いろいろな汚職事件その他を排除するための執行官法ができたならば、それに見合うように法改正がなくともその指導はやるべきである、こういうふうに思うわけですが、その点の御見解を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/22
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023・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 執行制度の問題は、執行官だけの問題にとどまらなかったということでございますが、執行官法の改正にあたりましては、なお執行裁判所、執行全体というものを考えていかなければならないことは御指摘のとおりでございまして、私どもは執行官法の改正というものは、その方向に向かってのただ第一歩を踏み出したにすぎない。今後さらに重要な執行手続、執行制度全体というものを、この執行官法の改正を足がかりといたしまして、さらに前に進んでまいりたいという所存でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/23
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024・坂本泰良
○坂本委員 そこで第二の問題ですが、「執行吏の権限」として「執行吏の権限に関する問題は、根本的には執行吏の執行機関としての地位の問題に関連するが、その点を離れても執行吏の権限については、或は送達に関する事務を執行吏の権限から除外すべきであるとの意見、或は現行法上執行吏の権限とされているその他の各種の事務についてもさらに検討を要するとの意見、或は労働事件、家事事件等に関する執行の事務を執行吏の権限から除外して、これらの事件の執行のために特別の機関を設置すべきであるとの意見等があるので執行吏の権限をどのようにすべきかの問題についても検討を要するものと思われる。」まことにそのとおりだと思います。今度の執行官法について、この幾つかの問題がありますが、どの方針をとってやられたか、その点を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/24
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025・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 ただいまお読み上げになりましたのは、先ほどの問題点の第二項でございますが、御指摘のとおり、この中に執行吏の権限について、送達に関する事務を執行吏の権限からはずすべきではないか、あるいはまた、その他各種の事務についてさらに検討を要するだろう、それから労働事件、家事事件等の特別事件の執行について、特別の機関を設置すべきではないかという問題でございます。この点につきまして、まず送達に関する事務をどうするか、これはたびたび申し上げますが、この執行吏制度と申しますのは明治二十三年に設けられたものでございまして、現在で見ますと、その当時とは交通通信の状況というものは非常に変わっているわけでございます。そこで、この文書の送達という問題につきまして、はたしてこれを昔のままに執行吏の職務ということにしておくのがいいのかどうか、そういう必要があるのかどうかということが、一つの検討の対象になったわけでございます。そこでこの法案におきましては、訴訟に関する書類の送達事務は、執行吏の職務ということでそのまま残しております。ただ検討いたしました結果、将来の問題点ということで残しましたのは、告知、催告に関する送達の問題でございます。これは本来の執行吏の職務として残しておく必要があるのかどうかということについて、いろいろ検討いたしました結果、この分につきましてはさらに慎重な検討を要するのじゃないかということで、附則の第九条に特別にこの条文の規定を設けたわけでございます。第九条をごらんいただきますと、「執行官は、当分の間、第一条に定めるもののほか、私法上の法律関係に関する告知書又は催告書の送付の事務を取り扱うものとする。」ということで、私人間の告知書、催告書というものの送達が、現在の制度では執行吏の仕事になっているわけでございます。しかしながら、こういうものは先ほど申しましたように、郵便の発達というようなことで、内容証明郵便が活用されればそれでもまかない得るんじゃなかろうかということで、いろいろ検討いたしましたが、はたして実際にどの程度にこれが活用されているものか、またこの事務が、どれほどの事務量があるのかということにつきまして、まだ詳細な実態調査ができなかったのでございます。そこで将来の方向としては、こういうものは執行吏の本来の職務からはずしていくのがいいのではないかという配慮のもとに、第一条の執行官の職務の中には含めませんで、暫定措置の形で附則の第九条で、当分の間この事務もあわせて行なうのだということにいたしだわけでございます。したがいまして、ただいま申しましたような実態調査をいたしまして、その結果この分についてはおそらく将来は整理するという方向で検討が進められるものと考えているわけでございます。
それから次の、「現行法上執行吏の権限とされているその他の各種の事務についてもさらに検討を要する」ということでございますが、これはお手元に執行官法案の参考資料といたしまして、いろいろ現在の法令関係、統計関係を資料にいたしたものを差し上げてございますが、その第六ページに現在の執達吏規則の第一条、第二条、第三条というところに、現在の執行吏の職務内容と申しますか職務権限が記載されているわけでございます。この各条文にございますように、第一条は「法律ニ従ヒ訴訟ニ関スル書類ヲ送達シ及裁判ヲ執行スルモノ」ということで、ここに書類の送達ということが出ているわけであります。訴訟に関する書類の送達でございます。それから裁判の執行、これは執行吏の仕事の中核になるものでございます。
それから第二条に、当事者の委任によって取り扱う事務が掲げられているわけでございます。その第一に、先ほど申しました告知、催告がございます。これを先ほど申しましたように本来の執行官の事務からはずしまして、暫定的な事務ということで、将来検討の結果廃止できる時期になりましたならば、執行官の仕事からはずしていこう、これは郵便を活用するほうが合理的じゃないかという考え方でございます。それから同条の第二に、動産不動産の任意競売、これは御承知のとおり競売法に規定のあるところでございます。これは今後の執行官法でももちろん執行官の仕事ということになっております。それから第三、これは非常に古いことばを使っておりますが、「拒証書」というのは、内容は現在の拒絶証書でございます。これは昭和八年でございましたか、拒絶証書令等に、この拒絶証書を執行吏がつくるという規定がございます。その手続、その権限でございます。これは現行法におきましてもそのまま、法令に定められた職務ということで執行官の職務といたしておくわけでございます。
それから次に第三条でございますが、「法律規則ニ定メタル職務ノ外裁判所及検事局ノ命令ニ依リ其職務ニ応スル事務殊ニ左ノ事務ヲ取扱フノ義務アリ」、これは執達吏が裁判所の職員であるというところから、裁判所が命じた事務で一条、二条というようなものに相応するような事務は執行官が当然行なうのだということ、さらに御承知のとおり裁判所構成法当時の法令でございますから、検事局は裁判所に付置されていたわけでございます。そこで、付置されている検事局の命令の場合も同じように取り扱うべきであろうという配慮からおそらく「裁判所及検事局ノ命令」ということになっていたものと思われます。そこで「殊ニ左ノ事務ヲ取扱フノ義務フリ」、ということで、一号、二号、三号と並んでおりますが、この第一の「書類物品ノ送付」ということでございますが、これは実は率直に申し上げますと、現在私どももこの第一の規定の内容を十分に理解することができないのでございます。現在は御承知のとおり執行吏が物品の送付をするというようなことはないのでございます。そこで明治二十三年当時の手続法等がはたしてどういうものであったのか、私どもよく調べましたけれども十分に理解できないのでございますが、あるいは何らかの形で執行吏が物品の送付をするとかいうような場合があったものであろうと考えられます。少なくとも現在ではそういうものはないのでございます。したがいまして、物品の送付というような点は、今後は執行官の職務からはずすという整理をいたしました。それから第二は、罰金、科料、過料の徴収、没収品の取り上げまたは売却ということでございますが、これは刑事手続の最後の段階の執行行為でございます。これは御承知のとおり、現在では刑事訴訟法の四百九十条で、民訴に関する規定を準用するということになっておりまして、執行吏の法律上の職務権限である、あるいは義務である、こういうことになっておりますので、これはそのまま内容は今回の執行官の職務内容になるわけでございます。それから最後の第三、令状の執行でございますが、これは御承知のとおり、現在執行吏が各種の令状の執行をするということはないわけでございます。これもおそらく明治二十三年当時何らかこういう手続があったのだろうと思いますが、現在におきまして死文になっているわけでございます。こういうふうな現在の規定になっておりますので、ただいま御説明申し上げましたような検討を加えまして、それをまとめて整理いたしましたのが今回の執行官法の第一条でございます。
第一条の一号には「法令において執行官が取り扱うべきものとされている事務」ということで、民事訴訟法、競売法、それからその他の先ほど申しました拒絶証書令等、法令に執行官が取り扱うべきものというふうに書いてあるものは全部一号で吸収するというふうな整理をいたしたわけでございます。それから二号のほうでは、その他の事務で、裁判所の命令で執行官が取り扱えということになった事務は執行官の職務とする、こういうことでございます。しかし裁判で執行官が取り扱うべきものとされるということになりますと、その範囲が非常にばく然といたしまして、とんでもない仕事が執行官に与えられるということではいけませんので、そこで注釈をつけまして、民事訴訟法の規定、競売法の規定、「その他私法上の検利を実現し又は保全するための手続を構成する物の保管、管理、換価その他の行為に係る事務で、裁判において執行官が取り扱うべきものとされたもの」ということで、大体第一号で各種の法令に基づいている事務と類似、匹敵するような仕事で裁判所から命ぜられたというようなものがここに入るわけでございます。たとえば先ほど坂本委員がおっしゃいました不動産の強制競売の場合の評価の仕事とか、あるいは不動産の強制管理の場合の管理人の仕事というようなものが法令上は執行官の仕事というふうには書いていないけれども、実際問題として現在執行吏が命ぜられているという事例がかなり多いのでございます。こういうものを執行官の職務ということで明確にいたしますために、この二号を設けたわけでございます。さような関係で、現在の執達吏規則の一条、二条、三条と今回の執行官法の一条とは、かなり形は変わっておりますけれども、従来のものの不要になったものを整理し、そうして新しい形の条文に書き上げたということで、さほど内容に相違はない次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/25
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026・坂本泰良
○坂本委員 そこでこの書類の送達のところで一つだけ疑問がありますのは、東京地方裁判所の執行吏の東京合同役場では、従来は送達部というのがあって、送達部長がいて、これが執行吏である。そうして外勤者執行吏代理というのが二十三名で、民事、刑事の書類の送達を実施する。それから内勤者執行吏代理が二名で、事務員が十四名、これは送達書類、記録の整理等、こういう分掌になっているようですが、大阪では合同役場でなくて、分離した制度をとっておる、こういうふうに聞いております。この送達について、執行官法については執行吏代理もなくなるし、事務員というのはどうなりますか。執行吏とそれからその執行吏代理のやった仕事、並びに内勤者としての執行吏代理と事務員、この送達書類、記録の整理、こういう事務は、具体的にどこでどういうふうにしてやるか、その点についての構想を承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/26
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027・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 会計、受付等の事務につきまして、これを裁判所のほうに取り入れる方法で進めたいというのがこの法案のねらいでございますが、送達につきましては、これを将来執行官の職務の内容にするかどうかという点につきまして、先ほど法務省から御説明がありましたように少し問題があるのでございますけれども、この送達の事務というものを執行官の職務行為に残しておく限りは、すべてこれ執行官の職務といたしまして、これに対する補助職員的な仕事、すなわち内勤の事務員の仕事というものは、将来もずっと執行吏の仕事として、そうしてまた事務員の仕事として残していくつもりでございます。送達の仕事が執行吏の職務となっておる限りは、この仕事は裁判所で扱うということはしない方針でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/27
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028・坂本泰良
○坂本委員 そういたしますと、執行官だけが国家公務員で裁判所に入って、そのほかの事務員になりますか、執行吏代理はなくなりますから、そういう者の身分とかそういう点はどんなふうになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/28
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029・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 ただいま申し上げましたとおり、執行吏の事務でありましたものを裁判所のほうに次第に取り入れていくという方向でまいりたいと思います。したがいまして、その事務が裁判所のほうにある程度移るわけでございます。それでその移りました限度におきまして執行吏事務所、執行吏役場に勤務しております人々を、なるべく裁判所のほうに吸収していくという方向でまいりたいと思いまするが、送達の手続につきましては、送達自体を執行吏の事務として残しておくかどうかという点に問題がございまするので、その点につきましての結論がつきました上で、これを裁判所でやるとか、あるいは執行吏に残しておく、したがって、事務員もその限度で残しておくというような結論になってまいるかと思うのであります。でございますから、いまのところ送達につきましてはその事務自体、それからそれに要する人自体というものをどうするかにつきまして、まだ結論を得ていないという状態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/29
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030・坂本泰良
○坂本委員 暫定事務として取り扱われるから残しておく、こういうことになるのですか。その残しておく場合に、雇用関係は裁判所が雇うようになるのですか。あるいはそうでなくて、別に裁判所の書記官その他書記官補というのですか、こういう人が取り扱うようになりますか。そうしたならば、従来の事務をとっておる者が全部首になってしまうか、あるいは裁判所の書記官か書記官補に変わって採用されてずっといくか。裁判所の書記官か書記官補になれば、給与の問題から恩給の問題すべての問題がそうなるわけですが、そうでなかったら今度は裁判所の別な雇用関係か何かで事務をとるようになりますか、その点の関係ですね。書記官補になればそっちのほうになると思うのですが、そういう点についてはどうなんですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/30
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031・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 送達事務を全部裁判所でとるがどうかについて、結論を得ていないのでございますけれども、これを裁判所の中に取り入れるということになりますれば、この送達を特別に扱う、たとえば送達官というようなものを完全な公務員として考えてまいる。そして執行吏役場で現在そのほうの仕事をしている人で適当な人があれば、これに充てていきたいという考えでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/31
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032・坂本泰良
○坂本委員 そこでその場合裁判所が雇うようになりますか、執行官が個人的に雇うようになりますか、そういう関係はどのようになりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/32
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033・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 そういうふうになりますれば、かりに送達官という名前をつけるといたしますれば、これは完全な公務員というふうに考えておりますので、裁判所の職員ということに相なろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/33
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034・坂本泰良
○坂本委員 そこで心配しますのは、従来合同役場あるいは個人の執行吏から雇われて事務をとっておる人ですね。そういう人が失業する、そういうことになれば非常に問題であるわけですが、送達事務を取り扱うのは送達官ですか、そういう裁判所の公務員としての地位をとってやるか、暫定措置だから当分の間現状のままでやるかということを考えますと、現状のままでやるならば、それでは裁判所との関係になるか、執行吏個人との関係になるか、その点が明瞭でないのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/34
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035・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 現在の方向といたしましては、執行吏の事務は、次第に裁判所のほうに取り入れていくという方向でまいるということに決定いたしたわけでございまするが、一挙にできないがために、暫定的な措置が同時に取られておるわけでございます。したがいまして、暫定的な措置の間は、たとえば執行吏代理にいたしましても、事務員にいたしましても、その執行官との関係は執行官と代理あるいは事務員との間の私法上の関係でございまするが、これを裁判所の中に取り入れるということになりますれば、純然たる公務員という形にして取り入れるつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/35
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036・坂本泰良
○坂本委員 そこでこの法律案の施行は、附則第一条施行期日、「この法律は、公布の日から起算して六月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。」準備期間が六ヵ月しかないわけです。いま方針が定まっていないのに、この法律案が通過してから六ヵ月間内にそういうような準備ができるかどうか、疑問なんですが、その点いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/36
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037・鹽野宜慶
○鹽野政府委員 先ほど私の申し上げ方に不十分な点があったかと存じますので、ちょっと補充させていただきます。
先ほど坂本委員から御指摘がございまして、送達に関する事務の検討はどうなったかという御質問もあったわけでございますが、その点につきまして、この法案の際に検討したその結果はこうなったという御説明をしたわけでございます。その御説明が不十分でございましたが、訴訟に関する書類の送達は民事訴訟法に規定がございますので、この第一条の一号の事務の中に入るのでございます。私が申しました告知、催告、これは私人間の書類の授受でございますので、不完全なものでございますが、裁判所の職員である執行官の事務ということにしておくのが適当であるかどうかということで、この分だけが将来廃止の方向へ向かって検討していこう、こういうことでその分だけ附則に回しましたので、訴訟に関する書類の送達事務はこの法律では執行官の職務であるというふうに考えているわけでございます。したがいまして、その事務だけは執行官法が施行になりまして執行官の仕事として残ってくる。したがいまして、それに関してかりに補助職員が必要であるというような場合には、現在どおりの人が必要である、こういうことになるわけでございます。ただ送達事務は執行官、あるいは暫定的にございます執行官代理がやるのでございまして、事務員がやる仕事ではないわけでございます。その面で送達の事務自体に事務員が使われることはおそらくないはずでございます。ただ何か事務的な手続に書類の整理とか何かございますれば、そういうものは事務員がやる、こういうことになるわけでございます。
それから事務員の問題でございますが、これは最高裁判所から先ほど来御説明があったのでございますが、制度の面からちょっと補足して御説明させていただきますと、この事務員というのは、御承知のとおり従来は執達吏、執行吏が手数料制で、しかも、役場を持って仕事している、こういうことでございますので、その補助的な事務は執達吏の責任、負担においてまかなっていくというのがたてまえであったわけでございます。手数料と申しますのは、本来はそういう多少の人件費あるいは消耗品費というような雑費の類、こういうようなものも支弁できるような考え方でおそらく定められてあったに違いないのでございます。ただその後物価の変動、法令上の手数料の額の変動というようなもので、当初の性格が現在までそのまま維持されているかどうかということにつきましては、何ぶんにも七十年間実施してきました制度でございますので、必ずしも当初の方針どおり現在もなっているというふうには申し上げられないのでございますが、たてまえとしては手数料というのはそういう形になっているわけでございます。そこで今回は役場制度は廃止いたしましたけれども、手数料制だけはまだ根本的な改革まで到達いたしませんので、当分の間残る、こういうことになりますので、その執行吏の補助事務が相当の事務量でございまして、だれか補助者が必要であるということになりますれば、従来どおり執行吏の補助者として事務員を置く必要が出てくると思います。出てくると申しますよりは、おそらく従来どおり必要であろうと考えられるわけでございます。したがいまして、今回は事務分配、それから金銭の保管ということは裁判所の仕事になりましたので、かりにその面について従来執行吏役場の事務員がある程度の事務量を費やしていたということでありますれば、その分に関しては裁判所の事務官が肩がわりしていくということでございますが、その余のいろいろの事務につきましては従来どおり事務員の仕事は残るわけでございます。したがいまして、この施行までの六ヵ月以内にその問題を全面的に整理するということは必要ないわけでございます。将来裁判所と執行吏との間の事務の分配をだんだんに整理していくという段階で検討する、あるいはその際にさらに法令の改正を要するものがあるかもしれませんが、そういうふうにして徐々に整理していけばいい問題でございます。この施行までの数ヵ月の間に、その問題を根本的に整理しなければならぬという問題ではないわけでございます。
一言補足御説明いたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/37
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038・坂本泰良
○坂本委員 これはあとでまた聞きたいと思っていたのですが、関連するからこの際聞いておきたいと思うのです。
いままでは執行吏が手数料制度で独立採算みたいにしてやっていたわけです。それを今度そのまま暫定的にやらざるを得ないと思うのですが、やるということになれば、それは執行官個人の使用人としての個人として補助事務をやっていくようになるか、それとも裁判所がその職員をしてやらせる、こういうことになるのか、その点がちょっと疑問ですが、どういうお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/38
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039・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 ただいま法務省のほうから御説明がありましたように、執行官の事務のうち、受付、事務分配、会計以外の事務は執行官の事務としてこの際は残っていくわけでございまして、その事務を補助するという意味での事務員が今後も残っていくわけでございます。その事務員と執行官の関係は従来どおり。と申しますのは、これは執行官の事務を補助するための事務員ということでございますから、その関係は従来と変わらないわけでございます。裁判所の行なうべき事務をその事務員がやっておるという関係ではないわけでございます。将来もしばらく残されていきます。執行官の事務に関してその事務を補助するために働らく事務員は、従来と同じような執行吏と事務員との関係、すなわち私法上の関係として残ってまいるのでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/39
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040・坂本泰良
○坂本委員 そこで私が頭の整理ができぬでわからぬのかもしれないが、そうすると、たとえば東京の執行吏の合同役場、これは結局この法律が通ってもこのまま存置して、ただ執行官だけが裁判所の職員になって、そしてその職員もほかの裁判所の書記官その他とは違って、やはり補助者を雇って、それは雇用関係で、給与等も出す、こういうことになる。しかし、そういたしますと、この事務員なんかが執行吏に対して結局労務を提供してやるということになるわけですね。そういう点をはっきりしておかなければ、結局執行吏の補助者として事務をやるわけでしょう。その場合、間違いなんか起きた場合、その責任の帰趨は執行官になるか、民事関係においては大きい役所は裁判所なんだから、賠償等の問題についてはどんな関係になるか。その点が、ちょっと私がまだ頭が混乱しているかわからぬけれども、少し整理してお聞きしておきたいわけなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/40
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041・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 御指摘のとおり、役場の制度はなくなります。しかしながら、役場がやっておりました事務というものがすべて裁判所に吸収されてしまうわけではないのでございまして、役場に残る事務というものがあるわけでございます。その事務を行なうための職員、事務員というものは執行官とその事務員との間の私法上の雇用関係として今後も残ってまいるわけでございます。つまり数名の執行吏のおるところでは、従来合同役場という形で、合同役場が人を雇っていくというような形であったわけです。今後は数名の人がやはりそういう事務を合同にやるという合理性、それは経費の節約であるとか、事務を合理的にやるという必要がありまするから、役場という独立採算性の企業体としての役場というものは、この際廃止になったわけでございますが、しかしながら、執行官の事務というものが残るものがある、そしてそれを数名でやる場合には合同してやっていくという必要性、合理性があるわけでございますから、数名の者が規約をつくって、いわば組合的なものとして、それが事務を合同してやっていく上において補助者を必要とする場合には事務員を雇っておるという形のものが残っていくわけでございまして、従来の執行吏の事務のうち残っておる事務を処理する姿を見ますると、それはさほど従来とそのやり方が変わるというわけではございません。
それから、そこに私法上の関係で働いておる執行吏代理なり、あるいは事務員が、第三者に損害を及ぼした場合の補償関係、これは従来とも執行吏とその事務員あるいは代理の関係は私法上の関係ではあると申しながら、執行吏が自己の責任において雇っておるものであり、執行吏は、国家公務員としての、機関としての違いがあるわけでありますから、従来ともその事務員あるいは代理の非違の行為についての補償責任というものは国が負うというたてまえをとってまいったわけでありまして、それは今後も変わらないわけで、むしろ、国が責任を負わなければならないという関係は、執行官というものの公務員性が強化されればされるほど、そういう国が責任を負うという立場になってまいるものと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/41
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042・坂本泰良
○坂本委員 どうもそこがまだはっきりしないが、昨年の訴訟費用等の一部改正の際の参考人で、事務職員の労働組合の方が出ておる。それの発言を見てみますと、大体事務員の給与が平均三万二千円だ。初任給が一万四千八百円で、大学卒は一万五千八百円だ。現在は東京合同役場では八十五名だけれども三十四年当時は百名いて、八十五名では相当忙しくて労働強化である。こういうことが言われておるのですが、大阪、名古屋、それから各地方裁判所管内で、事件が多い少ない、事務員が多い少ないという点はあるでしょうけれども、その事務職員の処遇の問題になると思いますが、これはまず最初に暫定措置として、そういう事務は残るからというと、この事務員は全部この法律が通過しても従来どおりにやっていくかどうか。それがやはり一部心配しているように、この法律が通ったら首切りが行なわれるのではないかという心配もあるわけですね。そういう点を考えまする場合に、もう裁判所の職員になってしまった執行官はそれでいいでしょうが、その他の者がどういう地位に置かれるか、あるいは退職者その他も出るようであったら、退職金その他について、これはその合同役場で五億円もあるような預金で満足であればいいですけれども、なかった場合はこの法律通過によってそういう処置がとられるなら、やはり退職金その他の点についても予算も必要ではないか、こういうふうに思うわけです。そういう点が法律が通過しなければわからぬと言われればそれまでですけれども、しかし、法律が通過すれば、少なくとも六ヵ月以内にはこの施行をしなければならぬわけです。結局、来年少しかかるにしても、年内に執行しなければならぬ。その際にこの事務職員についての問題がどうやられるか、法律が通ったから、もう事務員はそう要らぬから首だと言われても現在の事務員は非常に困ると思うのですが、そういう点についての見通しはないものかどうか、計画があれば、それをぜひ明らかにしてもらいたいと思う。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/42
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043・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 先ほどの法務省の御説明にありましたように、この六ヵ月の施行期日のうちにすべて事務員等の処置をつけるというのではございませんで、この法律が施行された後におきましても会計事務、事務分配の事務等を除きましては依然として執行吏の事務として残る事務があるわけでございまするから、そのために執行官の事務員が全然不必要になるということはないのでございます。御承知のように、一片の法律の施行によりましてその人が職を失うというようなことは、最も私どもが考慮しなければならない点でございまして、今後執行官の事務は減っていく方向でありますので、事務員の数は増していかないであろう、現状よりもふえないであろうということは想像されるのでございまするが、しかしながら執行官の事務をすべて裁判所に取り入れるというような時期がまいりましても、したがってそれによって事務員としての事務がなくなるというような時期がきますといたしましても、その間に事務員を裁判所の職員として取り入れる等の処置を講じまして、事務員がいたずらに職を失うというような事態は絶対に来たさないだけの配慮をいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/43
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044・坂本泰良
○坂本委員 わかったようなわからぬようなものですが、たとえば、東京合同役場の機構を見てみますと、これは昨年の三月の統計ですから人数なんか少し変わっているかと思いますが、大体これは総務部と会計部と執行部、不動産部、送達部、五つに分かれておりまして、総務部長は執行吏で総務部を統括し、総務部には庶務、統計、給与の支払い、これには事務員が七名おるのです。それから会計部、これは今後裁判所のほうに移るのじゃないかと思うのですが、会計部は金銭の出納。会計主任は執行吏が一人、それから執行吏代理が一名、事務員が二名、これは会計部を統括する。それから執行部のほうは、まあこれが中心をなすのでしょうが、執行部長は執行事務の統括をやる。これが執行吏である。それから外勤者と内勤者に分かれまして、外勤者は執行吏が十四名、各種の執行を実施する。執行吏代理が五名、これは執行の補助等。それから内勤者は執行吏代理が三名、事務員が十六名、執行記録の整理等。それから次の不動産部が、不動産部長、これが執行吏、不動産競売実施。事務員が三名、競売記録の整理等。それから送達部は、さっき申し上げました送達部長が執行吏で、これは通れば執行官になるわけですね。これと、外勤者の執行吏代理が二十三名、内勤者の執行吏代理が二名と事務員が十四名。結局総員九十六名で、執行吏が二十名、執行吏代理が三十四名、事務員が四十二名、こういう構成になっておるわけですね。これが残るとすれば総務部、執行部、不動産部、送達部が残りまして、会計部が裁判所に移る、こういうふうになると思うのですが、この組織をどう変動するか、しかもこういう合同役場を、やはり今後東京の執行官が全部——ここでは現在は二十名になっておるのですが、それとの雇用関係として別に置くか、それとも裁判所の中に全部入ってしまうか、先ほどからの御答弁を聞きますとこのままにしておく、こういうことなんですね。そうしますとその会計はこれは裁判所から出さなければならぬわけですね、その費用その他は、給与その他は裁判所から出すことになる。そうすると、裁判所にはこの執行官法が通過すればどういうように会計事務を従来の会計事務と別に執行事務というのをふやしてやられるかどうか。これは私の想像ですが、そういうような具体的の問題がなかなかそう簡単にいかぬじゃないかと思うのですが、それは六ヵ月の施行期間内にそういう整備を全部して、そうして執行事務というのはもう一日もないことはないわけですから、国民のために遺憾なく事務が運ばれていくかどうか、そういう点が第一疑問になるわけです。
そうして、さらに私はこれに付加して事務員の問題を申し上げましたけれども、執行吏代理はなくなる。これは全国で二百四十何名ですか、おるのです。この問題についてはいままでの委員会で各委員の方からもいろいろ質疑があったようですが、これはまた執行吏代理の処遇はどういうふうにするか、その点がありますから、そういうことについてやはり腹案がないとできないし、一番またおそれるのは退職者を出すんじゃないか、逆に率直に言えば首切りが出るんじゃないか、こういうことにもなると思いますし、その点についての御所見をもう少し承っておきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/44
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045・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 まず執行吏代理の処遇の問題でございます。これは前委員会でもほかの委員からの質問に対してお答え申し上げておきましたけれども、執行吏代理はまず三年の間に、そういう制度はなくなるわけでございますが、暫定措置としての制度もまず三年後にはきれいにいたしたい。しからば、現在執行吏代理としての職務をとっておる人をどうするのかという問題が一つ起きてまいると思いますが、二百四十五名の執行吏代理のうち百名は送達代理ということで三年後にも残っていくということを考えております。執行吏代理の最もはなはだしい弊害は、いわゆる執行代理の点にあるわけでございまするから、執行代理の存在というものは暫定的にもまず三年ぐらいで終局を打ちたい。そうして送達の問題につきましては、先ほども申し上げましたが、いままだ問題も残っているわけでございますので、しばらくはこの送達のための代理というものは、三年後も百名程度は残っていくということを私どもは考えておるわけでございます。あと百四、五十名の代理は、従来の経過から見まして自然減というものが年々十五名ないし二十名ありますので、三年後の姿といたしまして、百名という人をどうするかという問題が、具体的な問題として出てまいると思うのでございます。そこで、執行吏代理の経歴等を調査いたしました結果によりますれば、新しい執行官に採用できる人もその中にはございますし、それから、裁判所の事務官としての適格を持っておる人が大多数でございますので、裁判所の事務量をふやすと同時に、裁判所の人員が必要でございますから、その予算的措置を講じつつ、その執行吏代理を裁判所の職員として吸収していきたい。それで三年の間に約百名足らずの人を裁判所の中に吸収する方向でいきたいというふうに考えておるわけでございます。事務員につきましても同様でございまして、先ほど来申し上げておりますとおり、執行官の事務員としての仕事がいま直ちになくなるわけではございません。会計と事務分配の仕事だけが裁判所のほうに、この法案施行によって移るということだけがきまっておるわけでございまして、将来はさらにもっと多くの事務が裁判所のほうに移るといたしましても、しばらくの間は事務員の仕事が残っていくわけでございます。それで、裁判所に取り入れる事務がふえますと同時に、やはり裁判所といたしましても、その事務に対処するための人を必要とするわけでございます。これはなるべく執行吏の事務員の中から吸収いたしまして、そうして、執行吏の事務員、あるいは代理人の中から、いやしくも職を失うというような事態が生じないように万全の考慮を払っていくつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/45
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046・坂本泰良
○坂本委員 執行吏の権限のところで関連しましたから、第四の執行吏の給与のことでお聞きしたいこともあわせて聞いたわけなのですが、まあなしくずしの方法等もありますけれども、この際執行吏代理は二百四十五名もおるわけですが、これは昨年の訴訟費用の法案審議の際にも、執行吏代理はもっと研修しなければいかぬじゃないか。少なくとも執行吏と同じような行為をやるわけなのですね。しかも、家屋の明け渡しとか、家屋、建物をとりこわして土地を明け渡すとか、こういう場合は本執行吏は行っていないわけですね。執行吏代理が行くわけです。代理がそういうことをやるから——それから差し押え等についても相当大きな不動産の差し押え等もあるわけですが、それも昨年の当時の執行吏代理では、これはもちろんたんのうな人もありますけれども、概括的には執行吏としての資格を与えてやるべきだ。まず先ほどからずっと当委員会でもこの執行吏や執行吏代理については問題があったのですが、しかしながら昨年は、少なくとも執行吏代理を研修して、そうして先端に立つ執行行為については万遺憾なきを期すべきである、こういうふうに考えて附帯決議がついておるわけで、その後執行吏代理については研修等もやっておられると思うわけですが、この際いわゆる執行官にして——やはり何といっても執行吏代理として実務には携わっておるわけですから、執行官に任用すれば相当公務員としての責任を感じて、そうしてその人自身も努力し、勉強もするだろうし、そのやり方についても過去の経験に基づいて努力をする、こういうことになれば、従来の執行吏を執行官にするならばこの際執行吏代理を執行官としてやったほうが、この執行事務については円滑にいくじゃないだろうか、こういうふうに考えるわけですが、そういう点についての御所見はいかがでありましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/46
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047・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 今後の方針といたしましては、新執行官に採用するにつきまして、執行吏代理の経験のある人というような者を、できますならばなるべく多く採用していきたいという方針でございます。それにいたしましてもやはり研修を経てそういう試験を受けさせ、新執行官に任命していくということがよりよい方法であると思いますので、従来は執行吏に対する研修の予算すらなかったわけでございますけれども、ことしは執行吏を研修するというその費用も、わずかばかりではございますが取れたわけでございますし、その中に執行吏代理も執行吏と一緒に加えて研修するということも不可能ではないわけでございますから、執行吏の研修の中に執行吏代理を加えるということをひとつ考えたい。
それから事務員の研修にいたしましても、これは身分上は先ほど来申し上げておりますように私法上の関係の人でありますけれども、しかしこれも裁判所の事務職員と同じ研修の中に加えていくという方法も検討していきたいと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/47
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048・坂本泰良
○坂本委員 それからもう一つは、これは以前他の委員から聞いておられる点もあると思うのですが、今度執行官として裁判所の職員になるわけですね。公務員になるわけです。そうすると、従来は独立採算で、執行吏役場というのを個人でも、あるいは合同でもやっておるし、東京みたいな理想的な——理想的かどうか別ですが、機構上も整った合同役場をつくって運営していたが、執行官となれば庁舎の中にその場所を設けるか。現在ではたいがい裁判所の構内に弁護士会だとか公衆控え所があり、執行吏役場がある、こういうような形式で長年運用されてきておるわけですが、
〔委員長退席、田村(良)委員長代理着席〕
そういうような措置、机だけを裁判所の中に置いて執行官の場所を置くのだというような答弁もあっておるようですが、もう少し具体的に、その地位その他の処遇をしたならば、その場所等の関係もはっきりしておくべきじゃないか。さらに暫定処置として執行吏代理にやはり執行事務を行なわせる、そういうことになればその暫定的な執行吏代理についての場所等の問題、こういうのをどういうふうに考えておられるか、それを承っておきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/48
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049・菅野啓蔵
○菅野最高裁判所長官代理者 役場制度をとっておりました従来におきましても、裁判所外に役場がありますのはむしろ例外でございまして、全国約二百三十ヵ庁のうち五十ヵ庁ばかりが裁判所外に役場を持っていたのでございまするが、今後役場という制度がなくなりますれば、これをすべて裁判所の中に取り入れなければならないのでございます。そうして、ただいままで調べましたところによりますと、外に役場のありますその役場のうち十ヵ庁ほどは、予算的措置を構じなければ裁判所の構内に直ちに取り入れるということが不可能でございます。しかし、その他の庁四十庁ばかりは、この法律が施行されますれば裁判所の中に取り入れられる態勢にございます。問題は、約十ヵ庁でございます。しかしながら、法律の制度の上で役場が廃止されるということになりますれば、どうしても形の上で執行官が裁判所の構内に事務室を持っておるという形をとらなければならないわけであります。そこでこの十ヵ庁につきましては、やむを得ず、たとえ机一つでもその庁内に取り入れるということを申し上げたのでございまして、机一つあれば足りるという趣旨では決してございません。やむを得ずさしあたって、十ヵ庁については場所がございませんので、机一つだけでも取り入れて裁判所の中に事務室があるのだという形をとらなければならないわけでございます。しかし、そういうところにつきましては可及的すみやかに予算的措置を構じまして、実質的に執行吏の事務所というものが裁判所に取り入れられたという形をとらなければならないと思っておるのでございまして、極力予算的な措置をとるための努力をいたすつもりでおります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/49
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050・坂本泰良
○坂本委員 あとに、執行吏の権限、執行吏の身分、執行吏の給与、執行吏の補助機関と、関連してだいぶん質疑したところもありますが、なお中心的な問題等もありますから、次会にお願いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/50
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051・田村良平
○田村(良)委員長代理 次会は来たる六月二日に開会することといたしまして、本日はこれにて散会いたします。
午後一時四分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105105206X04019660531/51
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