1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十二年六月二十八日(水曜日)
午後零時十四分開議
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○議事日程 第二十号
昭和四十二年六月二十八日
正午開議
第一 会期延長の件
第二 緊急質問の件
第三 最低賃金法の一部を改正する法律案(趣
旨説明)
第四 国際法定計量機関を設立する条約の改正
の受諾について承認を求めるの件(衆議院送
付)
第五 千九百二十九年十月十二日にワルソーで
署名された国際航空運送についてのある規則
の統一に関する条約を改正する議定書の締結
について承認を求めるの件(衆議院送付)
第六 地方交付税法の一部を改正する法律案
(内閣提出、衆議院送付)
第七 昭和四十二年度における地方財政の特別
措置に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)
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○本日の会議に付した案件
一、故衆議院議員・元衆議院議長清瀬一郎君に
対し弔詞贈呈の件
以下議事日程のとおり
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/0
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001・河野謙三
○副議長(河野謙三君)諸般の報告は、朗読を省略いたします。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/1
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002・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これより本日の会議を開きます。
衆議院議員・元衆議院議長清瀬一郎君は、昨二十七日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。
この際、本院は、同君に対し、院議をもって弔詞を贈呈することとし、その弔詞は議長に一任せられたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/2
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003・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
議長において起草いたしました弔詞を朗読いたします。
〔総員起立〕
参議院はさきに衆議院議長として憲政の発揚につとめられまた国務大臣としての重責にあたられました衆議院議員従二位勲一等清瀬一郎君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます。
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弔詞の贈呈方は、議長において取り計らいます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/3
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004・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第一、会期延長の件。
議長は、衆議院議長と協議の結果、会期を来たる七月二十一日まで二十一日間延長することに協定いたしました。
議長が協定いたしましたとおり、会期を二十一日間延長することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/4
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005・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、会期は、二十一日間延長することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/5
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006・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第二、緊急質問の件。
岡田宗司君から、緊迫を続ける当面のアジア情勢に関する緊急質問が提出されております。
岡田君の緊急質問を行なうことに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/6
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007・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。発言を許します。岡田宗司君。
〔岡田宗司君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/7
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008・岡田宗司
○岡田宗司君 私は、日本社会党を代表して、わが国の外交に関する若干の問題につきまして、総理並びに外務大臣に対し、その所信をただそうとするものであります。
去る二十三、二十五、両日、アメリカのグラスボロにおきまして、前後十時間にわたる米ソ両国首脳の会談が行なわれたのであります。この会談において論議された中東戦争、核拡散防止協定、核軍縮、ベトナム戦争等の問題の具体的な解決に到達するには至らなかったのでありますが、ベトナム戦争、中東戦争によって断ち切られたかと思われた平和共存路線が、ともかく両国首脳の努力によりまして維持され、さらに切り開かれていく見通しが与えられたことは、全世界のほとんどの国及び国民の愁眉を開かせたのであります。全世界の戦争と平和の問題について、最も大きな影響力と、かつ、責任を持つ米ソ両大国が、平和共存路線を再確認したことを、われわれは、もろ手をあげて歓迎するものでありますが、この最近の世界外交上の重大なできごとに対して、総理はこれをいかに評価されるか、まず、それを伺いたいのであります。
さて、この両国首脳による平和共存路線の再確認は、中東問題の解決、核拡散防止協定の成立への見通しを明るくするものであり、ベトナム問題の解決にも一るの曙光を感ぜしめるものがあるのであります。そして、世界各国の外交姿勢、もちろん、米ソ両国の間にあって、両国の関係の変化に直接間接影響を受けるわが日本の外交姿勢に、微妙な変化をもたらすものと言わなければなりません。そして、この会談を行なった米ソ両首脳の真意、その後の両国の動き、国際関係の変化等を正しく把握することは、日本にとりましても、また今日必須のことであります。総理は、この秋アメリカを訪れ、ジョンソン大統領と会談して、その真意を確かめ得る機会を与えられているのでありますが、それとともに、コスイギン・ソ連首相とも会談して、ソ連側の意向を確かめることも、またそれに劣らず、重要ではないでしょうか。ソ連はすでに、佐藤総理の訪ソを歓迎する旨を数回申し入れてきているのであります。総理はこの際、これを受諾し、訪米と前後して訪ソを実現してはいかがでございましょうか。幸いに、七月には、三木外務大臣が日ソ定期協議のためにモスクワにおもむかれるのでありますが、その際、佐藤・コスイギン会談の実現のため、取りきめをするつもりがあるかどうか、この点をお伺いしたいのであります。しかも、これは多くの問題をはらみ、悪評高い南ベトナム訪問を含む東南アジア訪問より前に行なわれることが適当であると思うのであります。両国首脳とひざ突き合わせて会談し、その真意を把握して後、東南アジア諸国を歴訪しても決しておそくはないのでございます。
ところで、総理は、今秋予定されている東南アジア歴訪のうちに、南ベトナムの訪問を加えておられるのでありますが、これに対して、多くの批判、反対の声が国内にあがっているのでございます。総理、外務大臣は、これに対し、「儀礼的訪問である」、「一国だけ抜くことはおかしい」、「平和的解決への道を探求するためである」、あるいは、「この訪問によって日本の対ベトナム政策が変更されることはない」等々と、弁明にこれつとめておられるのでございますが、決して、この批判、反対を納得させることはできず、政府がやっきになればなるほど、一そう疑念を深めるばかりなのであります。それは、儀礼以上のものであり、平和的解決への道を開くどころか、南ベトナム政府の戦争行為を鼓舞することになり、日本のベトナム政策の転換を公に示す儀式になるものと思われるのであります。政府は、日本国民の間に、広く、かつ根深いベトナム戦争反対の空気があることを考慮して、「グエン・カオ・キ首相の訪日を再三にわたって断わる」、「経済援助の要請に応じない」、「南ベトナム援助のためのマニラ会議に参加しない」等々と、従来、ベトナム戦争に対して、他のアジア太平洋諸国に比べて、比較的消極的態度をとってきたのであります。
ベトナム戦争の進展につれて、アメリカは、アジア太平洋において軍事同盟を結んでいる国々に、次から次へと働きかけて、あるいはベトナムに出兵させ、あるいは他の方法による積極的援助をやらせて、ベトナム戦争をアメリカひとりの戦争ではなく、アジア太平洋における いわゆる自由主義国の共通の戦争、反共の国際戦争に仕上げていったのであります。アメリカと軍事同盟を結んでいる日本を、この戦列に参加させることを陰に陽に口説き、あるいは圧力を加えてきたのでございますが、総理の南ベトナム訪問の決定は、単に南ベトナムからの要請によるものではなく、アメリカの強い要請によるものであることは否定できないところでありましょう。総理の南ベトナム訪問は、やがて南ベトナム大統領の日本訪問を招くでありましょう。そして、民主安定に名をかる南ベトナムに対する経済援助、技術援助は、直接間接、南ベトナムの戦争政策を鼓舞することになるのであります。これは、ベトナム戦争に中立的立場をとるとか、戦争の早期終結のために努力するとか、平和への道を探るとかいうこととは、全くつながらないのでありまして、総理の南ベトナム訪問の決定は、たとえ、あなた方が何と強弁しましょうと、日本の対ベトナム政策の変更をシンボライズしたものにほかならないことを隠すことはできないのであります。政府は、アメリカの要請にこたえて、その政策を変更し直接の軍事援助をしないまでも、南ベトナムに力をかすことに変更したのでありましょうか、その点を、はっきりとさしていただきたいのであります。
この政策変更の理由として、政府は、現存米軍にとって軍事情勢が有利に展開し、平定計画、経済援助等によって、南ベトナムの政治経済情勢が安定の方向に向かっていると見て、将来ベトナム戦争終結への動きが起こった場合、アメリカと南ベトナムの側に立って、これに割り込んで一役演じようと考えているのでございましょうか。
また、総理が今秋ジョンソン大統領を訪れる際に、日本が南ベトナムに対し、より積極的な政策をとることをおみやげとして持って行くつもりであるのかどうか、この点をお伺いしたいのであります。
さらに、中東戦争の結果示されたソ連の勢力の後退、中国の水爆実験と核兵器の急速な開発の見通しなどによって、日本はアメリカの世界政策への傾斜を深めていくことが現在必要であるとお考えになっているのかどうか、それを明らかにしていただきたいのであります。
私の見解によれば、ベトナム戦争は、アメリカの優勢、南ベトナムの政治的、経済的安定のうちに有利に解決される見通しはないのであります。たとえ日本が、何らかの形でアメリカと南ベトナム側に加担したといたしましても、それは、戦争を長引かせこそすれ、戦争の終結に役立つものではない。日本が、ベトナム戦争の終結とアジアの平和の確立のために寄与し、一役演じようとするならば、むしろ、厳正にこの戦争に対し中立不介入の政策をとり、日本が、戦争終結への動きが始まるときに、自由に身軽に動き得る立場をとっていくべきではないかと思うのでありますが、この点、総理並びに外務大臣はどうお考えになりますか。
国民の多くは、総理の南ベトナム訪問を、儀礼訪問だとか、平和的解決への手がかりだとか、そういうふうに単純に考えてはいないのであります。むしろ、そこに政策変更への危険を読みとっているのであります。自民党のうちにおいてさえ、反対の声が起こり、前外務大臣の藤山愛一郎氏が、総理の南ベトナム訪問中止を申し入れたのも、そのためではないでございましょうか。総理、外務大臣は、ベトナム戦争に対し、より一そう厳正に中立不介入政策をとることを明らかにするため、南ベトナム訪問のスケジュールをお取り消しになるつもりはないのでございましょうか、その点をお伺いしたいのでございます。
グラスボロ会談によりまして、米ソが再び平和共存路線を進むことが確認された以上、日本もまた、直接間接この路線に協力して、世界の平和、アジアの平和の確立を期すべきであって、現在アメリカがアジアにおいて行なっている力の政策、中国封じ込め政策等に、断じて、力をかし、同調すべきではないのであります。総理、外務大臣はこの点をどうお考えになるか、お伺いしたいのでございます。
なお、明後日に予定されております総理の朴大統領就任式参列の問題についてでございますが、わが党は、国会開会中に総理がみずからこれに参列するほどの必要はないと、こういう点から反対をしているのでございます。六月十五日の外務委員会におきまして、三木外務大臣は、私の質問に答えまして、次のように答えておられるのでございます。この点、私は当日の速記録をここに引用いたしまして、総理並びに外務大臣の見解を承りたいのであります。
すなわち三木外務大臣はその際、「佐藤総理としては……就任式に都合が許せば自分が行ってもいいという意向だと思います。しかし、国会開会中ですから、それは各党の了承を得るということが必要でしょうね。了承を得られれば総理みずから行って祝意を表したいという気持ちがあることは事実でありますが、何ぶんにも国会開会中ですから、これは各党のやはり行ってらっしゃいという、こういう了承が必要だと思います。……会期延長がどういうふうになるかということとも結びついておりますが、そういうことと結びついて国会がそういうことで了承しようということが前提になると思います。」。
閣議は総理派遣をすでに決定し、また、椎名悦三郎氏、本院の木内四郎氏等の随行をきめておりますが、国会各党の了承はまだ得られておらないようであります。話もされておらないようであります。国会の了承を必要とするという三木外務大臣の発言は、一体どういうことになっておるのでございますか。私は、外務大臣の言われるように、各党の了承、国会の了承を得べきものと思うのでございますが、総理は、各党の了承、国会の了承を必要としないとお考えでございましょうか。外相のこの発言は無視してもいいとお考えでございましょうか。もし、そうだとしたならば、これは国会軽視もはなはだしいものと言わなければならないのでございます。また、三木外務大臣も、当然、内閣に対しまして、各党の了承、国会の了承を得るべく総理に進言すべきでありますが、もし、そうしてもいれられなかったとすれば、副総理格としてのあなたは、かなえの軽重を問われてもしかたがないのであります。また、進言しなかったといたしますならば、あの言明によってわれわれはあなたに欺かれたことになるのでありまして、これは断じて許しがたいことと言わなければなりません。三木外務大臣のはっきりした御答弁をお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと存じます。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/8
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009・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
アメリカのグラスボロの米ソの会談、これは、まだその詳細が私はつかめません。十分のことはわかりません。しかし、その詳細よりも、とにかく、アメリカ大統領とコスイギン首相が直接会った。そうして世界の平和確保維持のために、両者が理解の上で、ひとつ誠意のある態度を示したものだと、かように私は、この会見を高く評価しております。そういう意味で、この種の会見は、たいへん、わが国としては歓迎すべきものだと、かように思っております。さらに、中身の問題がただいまわかりませんので、それらの点は、今後、さらに詳しく報告を待ちたいと、かように思っております。
次に、ただいま岡田君からもお話がありましたように、米ソのこの会合を、私は、社会党でも高く評価しておられると思います。そういう意味で、アメリカばかりじゃなく、ソ連にもひとつ出かけて、実際にこの間の事情を聞き、また、みずから積極的な外交を展開したらどうかと、こういうお話でございます。私も、たいへん望ましい事柄だと、かように思いますが、御承知のように、ただいま東南アジア諸国に出かけようとして、いろいろ準備を進めておる最中でございます。これをやめてもいいじゃないかと、かように仰せでございますが、私は、ちょうど三木外務大臣がモスクワに参りますので、三木君が参りました際に、日本の意向、同町に、また、ソ連側の意向も十分話し合って、そうして帰られた後に、こういう問題をきめればいいんじゃないだろうかと、かように実は考えております。ただいまのところ、私は、三木外務大臣の訪ソ、その成果によりまして、私自身の訪ソをいつにするかということを考えたいと、かように思っております。
次に、今回、東南アジアを訪問するに際しまして、その中に南ベトナムが入っているということで、いろいろの御意見を述べられました。私は、確かにその御意見が、ただ党利党略じゃなくて、ほんとうに、日本の国の前途について御心配のあまり、率直な御意見を述べられたものだと、かように思って傾聴いたしたのでございます。しかし、私は、重ねて申し上げますが、わが国の外交の基本方針、これには、しばしば申し上げますように、私どもは、平和外交を積極的に展開しておるのでありますし、また、憲法九条のもとにおいて、私どもの行動の限度は、はっきりしておるのであります。したがいまして、このベトナムの問題が勃発いたしまして以来、この地にわが国の公館を置き、大使を派遣はいたしておりますが、軍事的には絶対に介入しないという、中立の態度を保ってきた。また、今後も、これを続けるつもりでございます。ただ、問題は、私どもが、一口に東南アジア、東南アジアと申しますが、これの認識は、まだ不十分でございますので、みずからが事態を認識し、また、その政府当局と話し合って、今後の行き方等について、これは必ずしも、私は、全部意見が同一だとは思いませんが、その考え方も十分確かめたい。そうして、私どもがかねてから抱いておりますような、当方の主張も十分説得してきたいと、かように実は思っておるのでございます。
いろいろの問題を提起した南ベトナムの訪問ということでありますが、ただいま、これをきめたわけではございません。しかし、ただいま、行くつもりで準備をしておることだけは確かでございます。また、外務大臣から、しばしばお答えをいたしましたように、これがただ単に親善友好、これを深めるというだけのものではなく、ただいま戦争が行なわれておるこの土地でございますから、和平への道を積極的にさがす。こういうことのあることも、これも御承知願いたいと思うのであります。
私は、ただいま申し上げますように、いまのこの事態、たいへん、私、心配しておりますが、中東のあの戦争すら停戦が行なわれておる。そして米ソ両首脳が話し合って、これから先の問題をひとつ考えよう。こういうような世界的な平和への努力がなされておる際であります。私はそれよりもやや、関連する底域あるいは国際経済的観点からも、価値がやや軽く見られるようなベトナム問題というものは、もう長期にわたる戦争、これに終止符を打つ、そして、話し合いの場につくという、これは最も望ましいことだと思います。いろいろの問題が言われております。ただ南だけではございません。北側においては依然として強い発言をしておりますから、まだまだ私が一人でかように申しましても、すぐ成果があがるものとは私は期待はいたしておりません。しかし、やはりあらゆる努力を積極的にすべきときではないかと思います。そういう意味で、私は各方面の御意見も伺うつもりでございます。それで、私が南ベトナムに出かけることはこれは何らの意味もないとか、あるいはまた、日本独自の考え方ではないのだ、また在来の政策を変更するのだと、こういうような断定だけは困りますから、御意見はもちろん私は傾聴したつもりでございますが、どうか断定されないように。在来の方針に変更のないことも、それは今後の私の行動で確認していただきたいと思います。
ただ南ベトナムは、九月に、御承知のように、大統領選挙が予定されております。私は、こういう事柄が、いまの戦争が片一方で行なわれ、大統領選挙が予定される。何だか私どもに理解できにくいような状態のように考えるのであります。こういう点、この一つすら、こういう一つだけでも私は現地に出かけて、そうして、実態を十分認識することが必要だ。かように思います。
私は必ず今回の訪問は、そういう意味におきまして、正しい認識を持って私が帰り、そうして、今後ともわが国の基本的な外交路線の間違いないこと、これをやっぱり各国にも理解してもらうように、そういう態度はとりたいと思います。したがいまして、今回南ベトナムを訪問先に加えたことそれ自体は、私自身が独自にきめたことでございますし、第三国等からいろいろ強要されるとか、あるいは第三国に、アメリカに出かけた際に立場がよくなるだろう、あるいはもうすでに戦局についてのある程度の見通しをつけて、この際、先物を買うのだとか、こういうようないやしいような考え方ではございません。私はどこまでも正義に立ちまして物事を処理したい、真剣に取り組みたい、その行動のうちに私の誠意の一片、そういうものを示すことができれば、たいへんしあわせのように思うのであります。この点を重ねて申し上げておきます。
最後に、訪韓の問題についてのお話がございました。在来の慣例によりますと、総理が出かけます際は両院議長に行程を通知する。こういうことになっております。したがいまして、今回もその慣例どおりに従いましてすでに私はその手続をとりました。また、事前にいろいろ各党の内患も伺っております。したがいまして、私、こういうことは、いわゆるそれぞれの党におきましてもいろいろの御事情がおありだろうと思います。そういうことを十分考慮に入れ、かつまた、在来が通知であったから通知だけすればいいのだと、かような考え方ではございませんので、十分事前に、良識のある、無視をしない態度をとったつもりでございます。どうか御了承のほどをお願いしておきます。(拍手)
〔国務大臣三木武夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/9
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010・三木武夫
○国務大臣(三木武夫君) 岡田さんから総理のベトナム行きについて、いろいろ政府の立場を御心配くださることは多といたしますが、しかし、総理が、まだ決定には至りませんけれども、行こうとされることは、戦争を鼓舞するために南ベトナムに行くのではない、平和のために行こうとするのであります。したがって、それはどういう意図で南ベトナムを訪問するかということが問題の一番大切な点だと私は考えております。ちょうど、総理がもし行かれるとすれば、予定される時期は民政移管後になりますから、民政移管後の新しい首脳と総理が直接会談をされて理解を深められるばかりでなく、日本国民のベトナム戦争の早期和平の実現の熱意を伝え、また、いろいろ言われておりますけれども、ベトナムの首脳部がどのようにこの戦争の終結を考えており、あるいはまた情勢をどのように判断をするかということを話し合うことは、これはまさしく和平への努力の一環であると考えるのでございます。日本の国民が、ひとしく、一口も早くこの不幸な戦争を何とか終わらすことはできぬか、これは日本国民の総意でありますから、この日本国民の総意を体して、総理大臣が何とか和平のために努力しようとすることは、一国の政治指導者として当然の責務なりと考える次第であります。
次に、総理の韓国大統領の就任祝賀式に対する訪問は、いま総理からもお答えになりましたごとく、これは国会の承認という手続の問題でなくして、政治的なものでございます、この性質は。そこで、各党に対しましても、いろいろ議運等には通知をいたしまして、各党にも御相談の結果、いろいろな立場はありましょうけれども、各党としてこのような問題の処置に対するおとなの処置が済んだものと、私は解釈いたす次第でございます。(拍手)
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/10
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011・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第三、最低賃金法の一部を改正する法律案(趣旨説明)。
本案について、国会法第五十六条の二の規定により、提出者からその趣旨説明を求めます。早川労働大臣。
〔国務大臣早川崇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/11
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012・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 最低賃金法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
最低賃金制につきましては、昭和三十四年の法施行以来、今日までにその適用を受ける労働者は中小企業を中心として約五百五十万人に達するとともに、その金額も逐次改善を見せ、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善と中小企業の近代化に役立ってまいりました。
この間、わが国経済の高度成長の過程において、若年労働者を中心とする労働力の逼迫等により一般の賃金の上昇は著しいものがあり、このような中でなお改善から取り残される労働者に対し、より効果的な最低賃金制度を確立してその生活の安定と労働力の質的向上をはかっていく必要はますます大きくなっていると考えます。
かかる事情にかんがみ、政府は、一昨年来中央最低賃金審議会に今後の最低賃金制のあり方の御検討をお願いしていたところでありますが、先般同審議会より答申が提出されました。その答申に基づきまして、最低賃金の決定方式については、業者間協定に基づく決定方式を廃止し、最低賃金審議会の調査審議に基づく決定方式を中心とすることに改めることが適当であり、また、このような措置を円滑に進めるためにはある程度の経過措置が必要と考え、ここに最低賃金法の一部を改正する法律案を提出いたした次第であります。
次に、この法律案の内容につきまして概略御説明申し上げます。
第一には、最低賃金制度をより効果的なものとするため、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの最低賃金決定方式を廃止することといたしております。
このことに関連して、最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金につきましては、労働大臣または都道府県労働基準局長は、従来、その他の方式により最低賃金を決定することが因難または不適当と認めるときに限り審議会の調査審議を求めることができることとされておりましたが、その要件を除き、賃金の低廉な労働者の労働条件の改善をはかる必要があると認めるときは、調査審議を求めることができることといたしております。なお、最低賃金審議会が調査審議を行なう場合においては、関係労働者及び関係使用者の意見を聞くものとするとともに、労働大臣または都道府県労働基準局長の最低賃金の決定に先立ち、関係労働者及び関係使用者は異議の申し出をすることができることといたしております。
第二には、業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金の二つの決定方式の廃止に伴う必要な経過措置を定めることといたしております。すなわち、現在まで業者間協定に基づく最低賃金決定方式が広く実施されている実情にかんがみ、その廃止に伴い無用な混乱を生ずることのないよう、法施行の際現に効力を有する業者間協定に基づく最低賃金及び業者間協定に基づく地域的最低賃金は、法施行後なお二年間はその効力を有することとし、その間においてはなお従前の例により改正または廃止することができることといたしております。しかしながら、その期間内に最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金が新たに設定または改正されたときは、その最低賃金の適用を受ける労働者については、業者間協定方式による最低賃金はその効力を失うものといたしております。
以上が最低賃金法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/12
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013・河野謙三
○副議長(河野謙三君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。柳岡秋夫君。
〔柳岡秋夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/13
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014・柳岡秋夫
○柳岡秋夫君 私は、日本社会党を代表して、ただいま趣旨説明のありました最低賃金法の一部を改正する法律案について、総理並びに関係大臣に質問いたしたいと思います。
八年前に、多くの労働者の反対を無視しまして制定をした業者間協定による最低賃金の決定が、本来の最低賃金制としての役割りを果たし得ないことは、日とともに明らかになってまいっております。わが国の賃金水準が、近年少しずつ高まってきたと言われておりますが、欧米諸国に比しましてなお著しく低いことは御承知のとおりであります。そしてその生活水準も、実質賃金の上昇に伴って向上していることは事実でございますが、エンゲル係数が低下したといいながら、国民栄養調査によれば、栄養上問題のあるものは消費世帯の一八・七%に達しております。それは、所得水準に大きな格差があり、所得差による食物内容の違いが大きいことであります。今日、一人でぎりぎりの生活を維持するには二万円は必要であるとされております。しかしながら、その二万円にも満たない労働者が二六・九%もいるのであります。四十年九月の調査によれば、新規保護世帯のうち三七%は働いているものがいる世帯であり、その大部分は、日雇い、家内労働者並びに小零細企業の労働者であります。こうして世界第三位の工業国といわれながら、国民一人当たりの所得は世界第二十一位という不均衡を現出しているのであります。
本来、最低賃金制は、社会発展の基礎ともいうべき生産に従事する労働者の労働の価値を正しく評価し、労働者が再び誇りと希望をもって労働できるよう、その再生産に必要な生活をなし得るに足る賃金を国が保障する政策であり、国家の果たすべき最低の義務であります。
そこで、私はまず総理にお伺いしたいのでありますが、今日わが国労働者のかかる低賃金の現状をどう認識されておりますか。また、現行最低賃金法が施行されてから八年を経過しておりますけれども、なおこのようにその効果が発揮されていない理由はどこにあるのか。近年の賃金上昇は、最低賃金法の効果というよりも、経済の異常な成長による労働力の需給関係にその大きな要因があると考えるのでありますが、総理の所見を伺いたいのであります。
質問の第二は、最低賃金制と社会保障についてであります。労働者の生活確保にとって、最低賃金制と社会保障は車の両輪であります。すなわち、最低賃金は労働者に対して賃金の面で少なくとも最低生活を保障しようとするものでありますが、しかし、それだけでは最低生活を維持できない現実にあります。労働者は常に、疾病、災害、失業、老齢などの事故、労働不能の脅威にさらされているのであります。そこで、こうした所得の喪失に対する必要な保障のための社会保障の充実が叫ばれているのであります。しかるに、政府は、国民皆年金、皆保険といいながら、保険主義を強調して医療保険や失業保険を改悪し、社会保障の後退をはかろうとしていることは、きわめて遺憾であります。かつて、総理の諮問機関である社会保障制度審議会は、わが国社会保障について、四十五年までに欧米諸国と肩を並べることができるよう全体のレベルを引き上げること、そして、そのための予算を確保することを勧告いたしております。政府は、いかなる計画をもって憲法第二十五条の理念を実現しようとするのか。また、生活保護を本来のあるべき姿に戻すためには、有効な最低賃金制と家族手当制が必要でありますが、政府は児童手当制度をいつから実施しようとするのか。さらにまた、ILO百二号条約の批准についても、この際総理並びに厚生大臣に伺いたいのであります。
質問の第三は、最低賃金の決定基準についてであります。最低賃金制においてその金額をどうきめるかということは最も大切なことであります。現行法が、低賃金労働者の保護というよりは、むしろ初任給をめぐる中小企業相互の競争条件に一種の基準を設けるという経済政策的性格の強いものであることは、いなめないのであります。したがって、その金額の決定も、法第三条で、一応、生活賃金、公正賃金、支払い能力の三原則によると規定しているのでありますが、生計費の定義が明らかにされず、業者間協定方式ということで、いわゆる支払い能力に重点が置かれ、労働者の生活保障が忘れられているのであります。かつてアメリカの産業復興法制定にあたって、ルーズベルトは、「労働者に生活賃金よりも低く支払うことによって存在を続けている企業は、この国では存続する権利を持たない。生活賃金とは最低生存水準以上のものを意味している。それはていさいを保てる生活水準の意味である」と言っております。また、労働基準法第一条には、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」と規定されております。政府は、最低賃金額の目安をいかなる基準で算定したのか、その算出根拠を明らかにしていただきたいのであります。また、それは法定金額と同じ性格を持つものではございませんか。この際、生活賃金の概念等につきましても労働大臣にお伺いしたいのであります。
質問の第四は、ILO条約との関係についてであります。現行法制定に際し、当時の政府は、業者間協定方式が条約に違反しないとして、すみやかに批准することを約束されたのであります。しかるに、昨年二月、政府は中央最低賃金審議会に対し、最低賃金法がILO二十六号条約に適合するよう答申をいただきたい、と依頼したのであります。このことは、現行法が条約に違反していることを認めたものであり、当時の政府は、明らかに国民をだまして法律を制定したことになると思うのであります。政府はいつ条約に適合しないということがわかったのでございましょうか。その政治的責任はまことに大きいと考えるのでありますが、総理の御見解をお聞きしたいのであります。また、今回の改正案は条約に適合すると考えているのでしょうか。もしそうだとすれば、それは再び国民を愚弄するものであります。
ILO二十六号条約には、この制度の運用にあたっては、「関係ある使用者及び労働者は、如何なる場合に於ても、同一の員数に依り、かつ同等の条件に於て、該制度の運用に之を参与せしむべし。」と規定し、さらにまた、同時に採択されました三十号勧告では、よりこの点を具体的に述べております。すなわち、「決定せらるべき賃金率の権威を一層大ならしむる為には、関係ある使用者及び労働者が員数又は投票力を等しくする代表者を通じ共同して賃金決定機関の審議及び決定に直接参加すること」、また、「一ないし二名以上の中立者を包含する必要があるが、これは労使同数に分かれた場合に決定に到達することを助ける任務を持つものであり、選任にあたっては、労使の代表者の同意を得て、またはこれと協議の上できめるべきである」、と述べているのであります。しかるに、わが国における多くの審議会が、中立あるいは公益委員の名のもとに政府の任命による委員が最終的な決定権を持っているように、この法第十六条による最低賃金審議会もこの例外たり得ないのであります。したがって、私は、改正案もなお条約に違反するものと思うのでありますが、労働大臣の見解をいただきたいのであります。また、違反でないとするならば、なぜ今国会に批准案の提案をしないのか、また、いつ、しようとするのか、あわせてお伺いをしたいのであります。
質問の第五は、家内労働対策についてであります。家内労働に従事する労働者は、近年増加の傾向にあります。高度経済成長のもとで、またその間、労働者の実質賃金が上昇したにもかかわらず、家内労働が増大をしていることは、基本的には労働賃金の低いことにその要因があります。最低賃金が有効な実施を確保されるには、関連家内労働がそれ以下の工賃で供給されることを規制しなければなりません。今日、都市の内職的労働、農村の副業的家内労働は特に賃金が低く、政府の調査によっても、全国平均一時間当たり二十六円弱となっているのであります。これは労働力供給が多いということもございますが、何ら規制が行なわれず放置をされているところに、このような低賃金を可能にしているのであります。しかも、これら労働者は、労働保護法の恩恵の外にあって、きわめて悪い作業環境の中で働いているのであります。かかる労働者こそ最低賃金制を最も必要といたしているのであります。政府は、現行法に基づく最低工賃さえもきめようとせず、単に標準工賃の設定と家内労働手帳の実施でお茶をにごしているのであります。しかも、その行政措置の指導を受けている者はわずかに十万人余りであります。政府は、この際、最低賃金法の改正とあわせて、家内労働法を制定し、総合的家内労働対策を樹立をすべきであります。政府の方針と、家内労働審議会の答申がいつ出されるのか、労働大臣のお答えをいただきたいのであります。
質問の第六は、今回の法改正に関連してでございますが、現行最低賃金法は、最低賃金制度が具備しなければならない条件を全く逸脱した悪法の最たるものとして、国内はもちろん、国際的にもその非難を浴びてきたものであります。わが党はかねてより、わが国経済の二重構造によってもたらされる企業格差や賃金格差、さらには地域間の格差を是正するには、全国一律の最低賃金の実施こそ不可欠の要件であると主張してまいりました。労働者の最低生活は、いかなる条件下にあろうとも平等であるべきだとして、その実現を求めてきたのであります。そして、かつての大橋労働大臣はその意義を認め、「ある程度の地域的な例外を認めるならば全国一律制も無理ではないと思う。したがって、四十年末からの通常国会に提出することも考える」との公式の言明をし、それを受け継いだ石田元労働大臣も同様の意思を表明したのであります。しかしながら、このたびの改正は、九条、十条などの業者間協定を削除しているにすぎないのであります。全国一律制実施に対する両大臣の言明は、当然、同じ自民党内閣として、今日なお、政府の責任において引き継がれていると思うのでありますが、総理並びに労働大臣のお答えをいただきたいのであります。
さらに、この政府の労働者に対する裏切り行為に反省を求めるということで、総評の代表者は、昨年三月以降、中央最低賃金審議会に参加をしていないのであります。そして、その参加をしていない中で答申をきめ、今回の改正案となったのであります。このことは、最低賃金制度の運用にあたっては労使の対等の原則をうたっているILO条約の規定に照らしても、不当な行為と言わざるを得ないのであります。政府は、労働者代表の参加を求めるために、本改正案を撤回し、あらためて審議会の意見を聞くべきであると思います。労働大臣は、労働者代表の復帰を期待するいかなる方策を持っておるのか、伺いたいのであります。
最後に、最低賃金の決定方式と、その機関についてであります。今回の改正案は、今後は第十六条の最低賃金審議会の調査審議に基づく最低賃金方式によって運用をはかっていくというものであります。しかしながら、その発議権は、あくまでも労働大臣及び地方労働基準局長にあり、最も必要とされる労働者にはその権限がないのであります。労働者が、みずからの生活と労働条件を守るために決定さるべき最低賃金に対して、みずからその改正を要求する権限がないということは、それはまさに、審議会という名を借りた業者間協定方式の再現であると断ぜざるを得ないのであります。
いわんや、現行法が実施されて以来八年になりますが、業者間協定方式を含めて、その適用労働者はわずかに五百五十万人にすぎません。一千三百万人に及ぶ中小企業労働者の大部分は、業者間協定方式によっても適用困難な労働者であり、労働組合すら結成できず、劣悪な労働条件のまま放置されているのであります。したがって、決定に対して異議を申し立てることができるとあっても、これら未組織労働者は、一体いかなる手段と方法によって、その発言の場を確保されるのでありましょうか。これら低賃金政策のもとで呻吟している労働者を救済するためには、全国一律の方式以外にないのであります。そうして、その決定機関は、行政委員会の性格を持ち、全国的な労使の代表者による対等な立場での交渉を経て決定することが、ILO条約にも適合する本来の最低賃金制度であり、そのことがまた、国の中小企業に対する助成、育成政策を促し、いたずらに労使関係を紛糾させることなく、国民経済の健全な発展につながる道であると信ずるのであります。
政府は、労働者の最低生活を保障する制度本来の目的を達成するために、この際、法の抜本的な改正を行ない、今日の最低賃金行政の混乱を収拾し、もって正常な労使関係を樹立することが、行政府の当然の措置と思うのでありますが、総理並びに労働大臣の見解をただしまして、私の質問を終わるものであります。(拍手)
〔国務大臣佐藤榮作君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/14
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015・佐藤榮作
○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。
昭和三十年代は経済の高度成長、その結果、国民の生活も向上をいたしましたが、同時に賃金も相当の改善を見た、かように私は確信しております。ことに、三十四年に最低賃金法ができまして以来、今日までの経過を見ますると、大体賃金は倍程度になっておる、かように思います。もちろん、これをもって満足すべき状況と、かように私は申すのではございません。たいへん著しい改善が行なわれたということを申し上げたいからこれを言うのでございます。また、その他の労働条件等につきましても、最低賃金法が施行されましてたいへんな改善を見た、かように思います。これらは特に恵まれなかった中小企業の労務者五百五十万、あるいは、また、若年労働者等がたいへん私は恵まれて改善されて、いわゆる格差縮小の方向をたどった、かように思います。したがいまして、今日までの状況におきましては、なお満足ができないという御批判もおありだと思います。しかし、今日までたどってきたその方向は、まず成功ではないかと思います。したがいまして、この方向でさらに内容を整備していくように、この上とも、つとめたいと思います。その際に、ただいま御指摘になりました各種社会保障制度の問題もございます。私は、かねてから社会開発を口にしておりますし、また、政治の方向として、この社会開発の点から、社会保障制度の体系の整備、ただいまおあげになりました各種手当などをつくれと、今日までそういう点には触れておりませんから、そういう体系も整備しますし、また、その中身も整備していくように一そう努力するつもりでございます。
そこで、ILO百二号の問題でございますが、これは私が申し上げるまでもなく、柳岡君すでに御承知のように、今日までいわれておる九制度のうち、わが国でまず合格だと思えるものは、ただいまの状況では残念ながらまだ二つでございます。そういう状態のもとでこの批准に取りかかるということは、これは問題だと思いますので、批准はできませんので、さらに第三の点でどういう方向の努力をするか、これを一そう検討したいと、かように思っております。
そこで、次は、二十六号条約の批准をいつするかと、こういう問題であります。これは私が申し上げるまでもなく、現行法、これは最低賃金法ではいろいろの議論がありまして、ただいま御指摘になったとおりであります。政府自身は、この現行法でも二十六号はりっぱに批准できると、かように考えましたが、しかし、議論のあることだけは、これはもう確かでございますから、そういう現実に当面して、その状態のもとで二十六号の批准に取りかかることは、これは政府としても軽率だといわれ、そこでこれは慎んでまいりました。しかし、今回の改善にあたりましては、この議論の中心であります業者間協定というような問題は今回はないのでありますから、今度は私は積極的に、ただいまはまだこれらは批准はできないというような御意見でございますけれども、私は今度は可能なのではないかと思いますので、まず、この法律改正案が通りました上で、ひとついまの批准問題と取り組みたい、かように思っております。そうしてその際に、大橋君や石田君、元労相の言を引っぱってこられて、そうして全国一律の最低賃金をやらなければだめじゃないかという、ただいまのおしかりを受けたのであります。私は、必ずしも大橋君や石田君がさように申したとは申しません。ただいま柳岡君のおことばにも、例外を除いてというようなお話がございますが、これはやはり大橋君が、一つの型、あるいは一つの理想の型とか、こういうような意味で大橋君は述べたのではないかと思います。しかし、今回の改正案は、すでに御承知のように、中央最低賃金審議会、この審議会が答申をいたしまして、そうしてその答申をいたします際に、いまの段階における最低賃金のあり方、こういうことでただいま答申をしておるのであります。これはもう多分に経済の現段階を考えた結果だと思います。その結果がいまの大橋君や石田君の考えとは違って、その改正を提案しておるような答申を得たのであります。私ども、その申答を尊重して、ただいま御審議をいただいておるわけでございます。これらの点も十分御了承賜わりたい、かようにお願いしたいと思います。(拍手)
〔国務大臣早川崇君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/15
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016・早川崇
○国務大臣(早川崇君) 第一の御質問は、最低賃金の決定基準についてお尋ねでございます。この最低賃金の決定基準すなわち生計費の考え方は、その地域産業における実際に労働者が生活に要している費用を、総理府統計局の家計調査、消費者物価、また人事院あるいは人事委員会の標準生計費等を参考にいたしまして、この決定基準をつくっておる次第でございますが、また、法定の賃金と申しますか、いわゆる目安について、そのままそれが一律に機械的に適用されておるのではないかという御質問でございまするが、実際に、最低賃金の決定は、この目安どおり決定されておるのではございません。高いものは、目安では五百円のものが、東京あたりでは六百円をこえる最低賃金もございますが、あくまでもそういう目安をもとにして、実情に応じてきめておるというのが現状でございます。
二番目の、ILO二十六号条約問題は、総理からお答えされましたとおりでありまして、今回の法改正がなされますと、業者間協定が二年間でなくなります。そうしますと、ILO二十六号条約の批准をでき得る国内体制ができ上がるわけでございまして、一切の支障がなくなるものと考えておるのであります。
第三番目の、家内労働の問題につきまして御質問がございました。率直に申しまして、一時間二十六円というようなまことに低い低賃金の家内労働も多数存在をいたしておるわけでございます。われわれといたしましては、最低賃金の決定以前の問題として非常に重視をいたしまして、長沼弘毅さんを会長といたしまして家内労働審議会を設けました。これが昭和四十四年三月末までとなっておりますのを、家内労働の労働者の地位向上の重要性にかんがみまして、一年この答申を繰り上げさしまして、目下家内労働につきましての法改正につきまして諮問をいたしておる次第でございます。いずれ来年の三月末までには答申が出ますので、次の来年の通常国会までにはこの問題につきまする法案ができると考えておる次第でございます。
四番目の、全国一律、全産業一律方式というものについての御質問でございますが、これはあくまでも一つの最低賃金の方式でございます。世界におきましても、しかしながら、それぞれ地域差、あるいは職業、業種差等を考慮いたしまして、先進諸国ではまだこの全産業、全地域一律方式はとられておりません。ただ、フィリピンと沖繩でそういう方式がとられておるのにすぎないのでございます。したがって、今後の最低賃金制度の審議にあたりましては、一つの考え方として十分検討してまいりたいと思うわけであります。
これに関連いたしまして、この最低賃金審議会に総評の方が欠席された、これを復帰させる意思があるかどうか、こういう御質問でございます。労働大臣といたしましては、有沢会長を通じまして、再三総評委員の方々の御参加を願ったわけでございます。全国一律、全産業一律方式をその場で大いにひとつ主張してもらいたいと、こう再三お願いをしたのでございまするが、最終的に欠席されましたことは残念でございました。同盟と中立の労働組合の方々が入りまして、満場一致で最大公約数の答申が、今回御提案しておる法案となって、答申されたわけでございまするが、しかし、この審議会はこれで打ち切るわけじゃないのであります。今後、全国一律がいいか地域別がいいか、あるいは業種別がいいか、いろいろな観点でそういう根本的な制度問題は引き続き検討するということになっておりまするから、引き続き総評委員の方の御参加も努力をしてまいる所存でございます。
最後に、今回の改正は、政府並びに労働大臣並びに基準局長が発議する、労働者側委員が発議権がないではないか、こうなるとILO二十六号条約に合わないのではないかという御質問でございまするが、ILO二十六号条約は、その運用というものはすべてその国の国内法にゆだねておりまして、ただ労使同等の数でこの運用に参加するということがILO二十六号条約の規定するところでございます。そういう意味では今回の改正案は大きく前進をいたしておりまして、業者間協定を廃止し、また労使とも審議会に同数で同条件で参加することができまするし、基準局長、労働大臣の最賃決定に対して、労使とも不服があれば、異議を申し出ることができる、こういうことになっておりまするから、ILO二十六号条約によるこの体制は、これによってでき上がっているものと考えておりまして、労働者側委員も決して審議会の運用から除外されているのではない、むしろ平等な立場で、労使同数の条件で参加できるようになっていることを御了承賜わりたいと思っております。(拍手)
〔国務大臣坊秀男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/16
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017・坊秀男
○国務大臣(坊秀男君) 社会保障等の問題につきましては、すでに総理からお答えがございましたが、私からも補足的にお答えを申し上げます。
社会保障につきましては、従来から社会開発推進のための重要な柱として、その整備拡充につとめてまいったところでございますが、今般の経済社会発展計画においても示しているように、今後、医療保障部門の総合的な調整、所得保障部門の拡充強化、その他、保健衛生、社会福祉、児童福祉の分野における社会経済発展に即応する制度の整備等、その体系整備を進めることによりまして、西欧諸国の水準に接近させる方向で、全般的な水準の引き上げをはかってまいりたいと考えております。
次に、ILO百二号条約でございますが、これにつきましては、社会保障九部門のうち、ほぼ問題なく基準に適合すると考えられるものは、疾病給付と失業給付の二つの部門であるということは、総理からも申し上げたとおりでございますが、老齢給付、業務災害給付及び廃疾給付の三部門につきましては、実際に批准し得る状態にあるかどうか、条約の解釈になお疑義が残されております。また他の四部門については、残念ながら基準には適合いたしていない状態にございます。したがいまして、最低三部門の適合を条件とする本条約の批准につきましては、なお、各部門ごとに細部について慎重に検討を重ねてまいりたいと考えております。
最後に、児童手当でございますが、厚生省といたしましては、できるだけ早期に児童手当制度を実現させるよう、この制度の体系、構想について、目下、鋭意検討中でございます。
以上でございます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/17
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018・河野謙三
○副議長(河野謙三君) これにて質疑の通告者の発言は終了いたしました。質疑は終了したものと認めます。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/18
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019・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第四、国際法定計量機関を設立する条約の改正の受諾について承認を求めるの件。
日程第五、千九百二十九年十月十二日にワルソーで署名された国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約を改正する議定書の締結について承認を求めるの件。
(いずれも衆議院送付)
以上両件を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/19
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020・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。外務委員長赤間文三君。
〔赤間文三君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/20
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021・赤間文三
○赤間文三君 ただいま議題となりました条約二件につきまして、外務委員会における審議の経過と結果を御報告申し上げます。
まず、国際法定計量機関を設立する条約の改正について申し上げます。
この条約は、はかりの構造、誤差等、計量器類の使用に伴って生ずる、技術上、行政上の諸問題を、国際間で統一的に解決するための機関の設立を定めたものでありますが、本件改正は、この機関の業務を一そう効果的に行なうようにするため、執行機関である国際法定計量委員会を、全加盟国の代表で構成するように改めるものであります。
次に、国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約の改正議定書について申し上げます。
この条約は、国際航空運送における運送人の責任及び運送証券を国際間で統一的に規律することを目的とするものでありますが、本件改正議定書は、近年の航空運送事業の飛躍的な発展に伴い、国際航空旅客運送における運送人の責任限度額を、従来の約三百万円から約六百万円に引き上げるほか、運送証券に関する規定を整備する等の改正を行なったものであります。
委員会におきましては、両件につき熱心な質疑が行なわれましたが、詳細は会議録によって御承知を願います。
六月二十七日、討論、採決の結果、両件はいずれも全会一致をもって承認すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/21
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022・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
両件全部を問題に供します。両件を承認することに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/22
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023・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 総員起立と認めます。よって、両件は全会一致をもって承認することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/23
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024・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 日程第六、地方交付税法の一部を改正する法律案。
日程第七、昭和四十二年度における地方財政の特別措置に関する法律案。
(いずれも内閣提出、衆議院送付)
以上両案を一括して議題とすることに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/24
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025・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 御異議ないと認めます。
まず、委員長の報告を求めます。地方行政委員会理事林田悠紀夫君。
〔林田悠紀夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/25
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026・林田悠紀夫
○林田悠紀夫君 ただいま議題となりました二法律案につきまして、地方行政委員会における審査の経過及び結果を御報告申し上げます。
まず、地方交付税法の一部を改正する法律案について申し上げます。
本案は、地方公共団体の行政経費の増加に対処するため、地方交付税の単位費用を改定するとともに、地方交付税の算定方法の合理化をはかるため、経費の種類、測定単位、測定単位の数値の補正方法等を改めようとするものであります。
次に、昭和四十二年度における地方財政の特別措置に関する法律案について申し上げます。
本案は、地方財政の健全な運営をはかるため、昭和四十二年度に限り、地方公共団体に対して総額百二十億円の臨時地方財政交付金を交付することとし、これに伴い、同年度分の普通交付税の額の算定方法等に特例を設けようとするものであります。
委員会におきましては、両案について、一括して審査を行ない、地方財政の恒久対策、特別事業債の元利償還金、地方道路財源の充実等について熱心に質疑がなされましたが、その詳細は会議録によってごらん願いたいと存じます。
質疑を終局し、両案を一括して討論に入りましたところ、日本社会党を代表して占部委員より、また公明党を代表して辻委員より、反対の意見が述べられました。
討論を終局し、両案についてそれぞれ採決の結果、賛成多数をもって原案のとおり可決すべきものと決定いたしました。
以上御報告申し上げます。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/26
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027・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 別に御発言もなければ、これより採決をいたします。
まず、地方交付税法の一部を改正する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/27
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028・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/28
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029・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 次に、昭和四十二年度における地方財政の特別措置に関する法律案全部を問題に供します。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/29
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030・河野謙三
○副議長(河野謙三君) 過半数と認めます。よって、本案は可決せられました。
本日はこれにて散会いたします。
午後一時三十三分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105515254X02019670628/30
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