1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十三年三月五日(火曜日)
午前十時四十二分開議
出席委員
委員長 永田 亮一君
理事 大竹 太郎君 理事 田中伊三次君
理事 中垣 國男君 理事 濱野 清吾君
理事 猪俣 浩三君 理事 神近 市子君
鍛冶 良作君 瀬戸山三男君
千葉 三郎君 渡海元三郎君
堂森 芳夫君 中谷 鉄也君
横山 利秋君 山田 太郎君
松本 善明君
出席国務大臣
法 務 大 臣 赤間 文三君
出席政府委員
法務省刑事局長 川井 英良君
法務省矯正局長 勝尾 鐐三君
委員外の出席者
警察庁交通局運
転免許課長 西川 芳雄君
厚生省公衆衛生
局精神衛生課長 岩城 栄一君
最高裁判所事務
総局刑事局長 佐藤 千速君
専 門 員 福山 忠義君
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三月四日
委員渡海元三郎君及び林百郎君辞任につき、そ
の補欠として鍛冶良作君及び谷口善太郎君が議
長の指名で委員に選任された。
同月五日
委員綱島正興君、岡田春夫君、成田知巳君及び
谷口善太郎君辞任につき、その補欠として渡海
元三郎君、中谷鉄也君、横山利秋君及び松本善
明君が議長の指名で委員に選任された。
同日
委員渡海元三郎君、中谷鉄也君、横山利秋君及
び松本善明君辞任につき、その補欠として綱島
正興君、岡田春夫君、成田知巳君及び谷口善太
郎君が議長の指名で委員に選任された。
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本日の会議に付した案件
刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、第五
十五回国会閣法第九四号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/0
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001・永田亮一
○永田委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
質疑の申し出がありますので、これを許します。中谷鉄也君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/1
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002・中谷鉄也
○中谷委員 刑法の改正に関連をいたしまして、いわゆる運転免許について診断書添付を廃止したという問題について、最初に警察庁にお尋ねをいたしたいと思います。この問題についてはすでに数回にわたって質疑がなされておりますが、次のような角度からお尋ねをいたします。
要するに、実効がなかったので診断書添付は廃止をするという廃止の理由の説明は、当委員会においてもなされております。ただしかし、この制度発足にあたっては、当委員会において幾多の疑義が提出されたことは、会議録によって明らかな事実であります。といたしますと、警察庁としては、この制度が失敗をしたことは明らかな事実でありますけれども、一体制度発足にあたってどのような見通しを持ち、どの点において誤ったか。単に実効がなかったからこれをやめますというふうな御答弁では、この問題について私は結末、決着をつけるわけにはいかないと思う。制度発足にあたってどの点において見通しを誤ったということを反省をしておられるか、この点についてまずお答えをいただきたいと思います。何と申しましても、国民はこの制度によって三十八億円の金をむだ使いさせられた、こういう印象を持っている。見通しの誤りの責任というものは、私は大きいと思う。この点についてお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/2
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003・西川芳雄
○西川説明員 この制度を発足させる際に、精神病者であるかないかというものを見分ける方法としてどういうものがあるかということを、非常にいろいろ検討いたしたわけでございます。いろいろの考え方がございましたけれども、その中で当時の時点において一番いい方法は、診断書制度である、こういうふうに考えまして当時行なったわけでございますが、なぜ診断書添付制度をとったかということでございますが、これは私どもが従来、現在の道路交通法の規定の中にございます臨時適性検査制度というものにのっとって、すでに免許を持っている人たちの中で、精神病であり、または精神病などであると疑う者について専門医の診断を受けさせるという制度を大いに活用するという観点から、専門家の御協力を得まして、私どもでは観察要目と言っておりますが、要するにチェックリスト、こういうものを作成をいたしまして、交通事故だとか違反などを行なった人たちの中で、取り調べの過程からどうも精神病ではないだろうかというように思う人について、ただいま申し上げましたチェックリストを使って容疑性があるかないかを確かめてみる。容疑性があると思う者について専門医の診断を受けさせる。その結果、そういうチェックリストを使っておらなかったときよりも、容疑者の判定率と申しますかそういうものがよかったという経験に徴して、しろうとの警察官でも、精神病についての特定の教養を受ければ、ある程度見分けがつくという実績に徴して、警察官よりももちろんお医者さんがそういう問題については専門的な教養を持っておられるわけでございますので、そこでお医者さんにお願いしたらというふうに考えて、医師会の御協力を得てやった、こういうことで診断書制度をやったわけでございます。
しかし、やりました結果は、先ほど先生の言われましたように、実績があがらなかったのでやめたのでございますが、考えてみますと、私どもが従来やっておったこのチェックリストで一応判別するということでいい成績を得ておったからということでございますけれども、これはなるほど警察官が、一応精神病の容疑者と事故の取り調べの関係だとかその他の関係で二時間、三時間面接をして、その過程で判断をするという時間をある程度かけた結果である。そういうことがいい成績を得たというところでございますが、診断書では、診断する時間が非常に短時間で行なわれるというような結果もあって、所期の、私どもが期待しておったような成果にならなかった、こういうふうに感じております。結局、形式的に流れてしまった部面が多かった、こういうふうに考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/3
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004・中谷鉄也
○中谷委員 診断書問題は、当法務委員会は従前から非常な関心と、なおこの問題についての疑義を提出しているわけなんです。だから、いま御答弁になったようなお話などは、万々承知をしている。そういう前提でお尋ねをしているわけなんです。たとえば昭和四十年の四月六日、法務委員会においては、警察庁は、「簡単でしかも確実にそういう不適格者を発見できる方法を目下鋭意研究開発をしている最中」だという答弁があり、さらにいよいよこの制度が施行されるということがきまった四十二年の委員会における質疑、すなわち昭和四十二年六月二十日の質疑においても、警察庁の答弁は、要するにこの制度はベターなんだ、そうしてしかし完全なものとは思っておらないけれども、「千段の階段のうちの一段だけをのぼった、このような考え方を持っております。」と言っておる。千段の階段を一段のぼってひっくり返って落ちてしまったというのが、現在の警察庁の現状じゃないかと私は思います。そういうことであるならば、いま一度、どの点についての見通しを誤ったのかという点について、明確な反省に基づいた御答弁がなければ、国民は納得しないだろうと私は思うのです。実績があがりませんでした、やめますというだけでは、納得をしないと思う。三十八億円という金は大金です。それは国民がその金を使った。鋭意新しい方法を開発中だと言われたその警察庁が、その翌々年この制度を発足させられた。そしていまのお話では、診断をおやりになるお医者さんの診断時間が非常に短かかったというふうなこと、そんなことがわかりましたというふうなことでは、これは非常にきついことばを使いますけれども、言うてみればはなはだ見通しの悪さをみずから暴露した、あるいはそのような問題について深刻にお考えにならなかったと言われても、私はしかたがないと思う。まず警察庁としては、明確に申し上げて、私は一つの失態だと思うけれども、こういうふうな、ある意味においては人騒がせなことをして失態だと思うけれども、この点についての責任、それは結局見通しの誤りということと責任とが私は結びつくと思うが、明確にお答えをいただきたい。どの見通しを間違ったのか。どの点で間違ったのか。もう一度申し上げますけれども、実績があがらなかったからやめますというふうな、結果に基づいた、その結果の上に乗っかったような御答弁というのは、私はいただきたくない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/4
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005・西川芳雄
○西川説明員 成果が全然あがらなかったわけではないということは、ひとつ申し上げておきます。この制度をやった結果、前回の委員会でも申し上げましたとおり、発足後半年の期間の調査ではございますが、四十五名の者が排除をされておるということで、全然効果がなかったということではございません。しかしながら、この制度実施後のそれだけの数というもの、それからそれのために多数の受験者あるいは更新者が時間と診断料を負担をしておるということを考えます際に、この程度の数では両方比較した場合に、この制度を続けるということはいたずらに多くの人たちに負担をかける結果になるということにかんがみて、できるだけ早く結果がわかれば廃止をすべきだろうということでございます。
そこで、問題は見通しの誤りの問題でございますが、これは先生から先ほどお話がありましたとおり、これで完全無欠だという制度で発足をしたわけではございませんで、主としててんかんでございましたけれども、当時の相次ぐ死傷事故にかんがみて警察も何とかすべきではないかという声に励まされて、完全ではないけれども、考えてみると、その時点においてとり得る策としてはこの制度がいい策ではないかということでとったわけでございます。しかし、やはり医療問題ということで、専門的な知識のない医療問題でありましただけに、その辺について私どもの判断が当時少し甘かったということは、率直に言えるのではないかというふうに考えております。そこで、私どもとしてはこれをやめますけれども、事の重要性にかんがみて、さらに自分たちの力で専門家の御協力を得て、今後できる範囲内のことをやっていくということで処置をしていきたい、こういうふうに考えておるわけでございまして、結局問題の中心は、医療問題といいますか、そういう問題についてのしろうとである私どもの判断が甘かったということになるのではないか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/5
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006・中谷鉄也
○中谷委員 実効が全くなかったのではないなどというふうなことを、御答弁の中で述べておられるわけです。この制度発足当時に盛んに警察庁がPRをされたレポート、たとえば運転免許課の課員が執筆をした「運転不適格者の排除についての一考察」(警察公論所収)、さらにまた、最も警察庁の一般向けの広報雑誌の「警察の窓」などにはどういうように書いていますか。科学警察研究所の特別研究員の調査によると、調べてみた入院患者一万二千三百十一人のうちに免許取得者が三百五人いたという記載がありますね。一体いまおっしゃたような実効などというものは、実効などということばでぬけぬけと御答弁になれるような実績なのかどうか。では、国民にそういうふうなお金を使わすという前提に立ってこの制度を発足させたとき、一体どの程度の排除者、言うてみれば精神病者であって免許証を取得させてはならないという者の数が、どの程度出てくるだろうかという見通しをお持ちになっていたのか。その見通しと現実にあがってきたところの実績というものは、文字どおり天と地の差であって、実効などというふうなことばで御答弁さるべき数字ではないと私は思うのです。重ねて申し上げますけれども、医療について経験、知識のないしろうとである警察庁がこのような問題に取り組んだところに見通しの甘さがあったと言うけれども、甘いということばをお使いになるなら、甘いも甘いも大甘かったと思う。しかもこの委員会においては、そのような制度については非常な疑義を提起しておったということを、私は重ねて申し上げたいと思う。そういうふうな疑義の提起にもかかわらず、あなたのほうは強行された。しかも、当時精神病理学会等においても、このような制度は不可能だという声があがっておった。耳をかさなかったのは警察庁なんだ。見通しが甘かったというふうなことだけで、私は反省のことばとしては受け取れない。独善、独断、偏狭というふうなことばを、あんまりとにかく反省をされないというなら私は申し上げざるを得ないと思うけれども、もう一度、見通しの間違い、一体こういうふうな人騒がせなことをやって廃止をしたということの経過についての反省、警察庁としてどのように考えておるか、この点についてお答えをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/6
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007・西川芳雄
○西川説明員 この制度を実施します際に、もちろん事は医療の問題でございますから、私どもといたしましては、専門家の意見もお聞きをいたしまして、この制度は、一部専門家のお話では、いいという御意見もちょうだいをした事実はございます。しかしながら、その後の実績を検討してみますと、先ほど来申し上げたように、効果とそれからそれに伴う欠点とを比較考量した場合に、これは非常に問題があるということで、それではやはり早くこういうことはやめることが適切であるということで、十分反省をし、その責任も十分痛感をして、一日も早くという意味合いもあって、制度発足後わずか十一カ月ではございましたが、廃止することにいたしたわけでございまして、もちろん当初から日本神経学会がこれに対して疑義を唱えておったことは、よく承知をいたしております。そういう実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/7
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008・中谷鉄也
○中谷委員 警察庁に対しましては、もっと掘り下げた診断書問題に限って本日はお尋ねをする予定ですから、掘り下げた質問はあとでいたします。
大臣がお見えになっておられますので、次のようなことをお尋ねをいたしたいと思います。
現在、刑法の全面改正作業が進んでおります。そこで、従来刑法一部改正、すなわち本案二百十一条の審議にあたりましては、刑法の全面改正を待ってという論議があったことは、すでに御承知のとおりであります。その点をお尋ねするわけではございません。要するに、刑法の全面改正の作業が現在進んでいる。そうすると、たとえば、世間では緊急に産業スパイ罪を設けるべきではなかろうかとか、あるいはまたいろんな立場から刑法に緊急に新しい条文を加えるべきではなかろうかなどという論議があるわけですが、要するに大臣のお考えあるいは御方針としては、刑法全面改正の作業に先立って刑法の一部改正を提案するのは、この業務上過失致死傷に関する刑法二百十一条に限る、限定する、その余の諸改正等については刑法全面改正を待って、その際に論議すべきものだというお考えは明確にお持ちいただいているのかどうか、この点をお尋ねいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/8
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009・赤間文三
○赤間国務大臣 お答えを申し上げますが、私は近来の交通混乱と申しますか、交通事故の異常な発生というようなこの現状にかんがみまして、刑法第二百十一条の改正は非常に緊急を要する問題である、こういうふうに考えまして、刑法全面の改正と切り離して、できるだけこれをすみやかにやることが人命尊重、また事故をできるだけ少なくすることに役立つ、こういう考えから、緊急にやるということで切り離して本案を提出をしておるのでございます。普通の犯罪——普通の犯罪というてもあれですが、とにかく一年にたいへんな死傷が起こる、この異常な交通事故をできるだけすみやかに減少さしていくというためには、これは非常に急ぐ問題である。それで切り離して提出をして、皆さま方に御審議を賜わりたい、こういう考えでありますので、御了承いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/9
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010・中谷鉄也
○中谷委員 刑法の一部改正というかっこうで刑法二百十一条を提案され、その理由については、承服はいたしませんが、何回か承りました。私がお尋ねをしておるのは、そうすると、その余の問題についていろいろな、たとえば先ほど私が引例をいたしました産業スパイ罪というふうな問題がございます。そのようなものについては、刑法全面改正の作業を待つというふうにお伺いしてよろしいかどうか、この点です。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/10
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011・赤間文三
○赤間国務大臣 産業スパイというような問題も、私はできるだけ早くやりたいという考えは持っております。大体刑法上の問題がいろいろあると思いますが、やはり緊急の必要度によって処理をしていくということが適当だ、そういう根本的な考えを私は持っておるのでございます。私の一番頭にありますことは、何といっても六十数万のけが人あるいは一万数千人の死者が出るなんということは、実にたいへんな悲劇である。これは政府全力をあげてやらにゃならぬ。どこの主管ということでなく、われわれ法務省としても、これの一端をにのうてこれを少なくするということが非常に大事なことであると考えて、これを刑法全体の改正から抜き出して、すみやかにひとつ皆さま方の御協議と御可決を願いたい、そういう考えでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/11
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012・中谷鉄也
○中谷委員 重ねてお尋ねいたします。刑法の二百十一条を刑法の全面改正と切離して提案をしたことについては、非常な問題点が提起をされているわけです。すでに、その点についてはわれわれ論議をいたしました。さらに、今国会においても論議をいたします。ただ、法務大臣の御方針を承りたいと申しますのは、刑法全面改正の作業を待って、二百十一条の関係以外については、その際に新しい法を設けるということを考えておられるのか、それとも現在、刑法の全面改正の作業を待たずに、新しい罪、罪名、法文、そのようなものを提案されるというようなことをお考えになっておる向きはあるのかという点をお尋ねいたしたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/12
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013・赤間文三
○赤間国務大臣 いま考えておりますのは刑法以外にはありませんが、根本的な考えからいいますと、他の案件につきましても、緊急の必要があると認めたものにつきましては、そのつど検討していくという方針をとっていきたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/13
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014・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、刑法全面改正という、決してオーバーな言い方ではなしに、一つの国家的な仕事だと私は思うのです。そういう仕事をさておいて、そういう全面改正の作業は全面改正の作業として進んでいく。そしてそのつどそのつど刑法の一部改正を出していくというふうなことでは、全面改正というものをどのように位置づけるかという問題が、私は出てくるだろうと思うのです。そうだとすると、一体現在お考えになっている緊急なものというのは、どんなものがあるのか。これは、そうなってまいりますと、刑法全面改正との関係において、二百十一条の問題などもあらためて論議しなきゃならぬと思うのです。お考えになっているものの中で、一体どういうものがありますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/14
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015・赤間文三
○赤間国務大臣 現在考えておりますのは、継続審議になっておる刑法一部改正に関する案、それだけでございます。そのほかに考えておる問題はありません。しかしながら、これに準ずるような、また緊急にして重要なもので、速急にやらねばならぬような問題が将来発生をしたならば、あながち刑法全体の中に入れなくてもやることが適当だと認めたときは、取りはずしてやる。現在はありません。ただ刑法一部改正案しかありませんが、御承知のように、何ぶん刑法全体のものは、幾ら急ぎましても、われわれ速急にやりたいと思って急ぎますけれども、やはり相当の日数がかかりますので、そういうことを考慮して、私は、方針としては、いま言いましたように、緊急すみやかにやるべきことが起こってくれば、それを取り出してやるということは適当だ。いまはありませんけれども、将来はそういうこともあり得ることをあわせて申し上げます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/15
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016・中谷鉄也
○中谷委員 緊急、重要ということが大臣の御答弁の中から出てきたわけですが、そうすると、たとえば刑法二百十一条というのは、従来の保護法益について刑を引き上げるという、そのような改正案だということは、これは言わずもがななことです。それがいいかどうかは別として、そういうことなんです。そうすると、緊急、重要という中には、従来の刑法の条文等についてさらに刑を重くしなきゃならないというふうな問題については一部改正でいく、その余の新しい条文等については全面改正を待つ、こういう考え方だとお伺いしてよろしいか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/16
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017・赤間文三
○赤間国務大臣 私は、この交通事故というものは、一つの大きな特色のある事件だ、人命を救うという考えを持っております。これを少なくするということは、目下の一番大きな問題だと私は思う。しかも一年、に六十数万人の人間が死傷するなんということは、考えられぬほどの大事件だと私は考えておる。そしてこれがまたますます地方までもいって、事故は減らなくて、あるいはふえはせぬかというような考え方もある。われわれとしましては、あらゆる方面から、あらゆる部面から事故を減少していくということがもう非常に大事なことだと考えておりますので、それをわれわれとしましては法務省の立場から行なうために、この二百十一条を改正して、今日の事故をできるだけ少なくすることに役立たせよう、こういうふうな特殊の考え方を持っておる。ただ刑を三年声五年にするということも、要するにもとは事故を少なくすることのために、私はこれを取り立ててやっているわけで、一般のその他の犯罪でも、ただ罪を重くするとか軽くするために別に取り立てるというような意味とは違っている。これは一種独特の重要なる問題であるから、これを取り立ててすみやかにひとつお願いを申し上げて、法案が通過するようにという、そういう考え方を持っております。御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/17
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018・中谷鉄也
○中谷委員 念のために、では聞いておきます。たとえば、私先ほど産業スパイ罪というふうなものを一つの設例として引用をいたしましたが、たとえば一部でささやかれているような国家機密あるいは秘密等に関する法文を刑法の中に入れるべきだなどというような考え方を言うている人がおるけれども、こういうようなものは、少なくとも大臣の方針の中には全然ない、まさに緊急、重要というふうなものには、私は要件としても当たらないと思うけれども、そういうふうにお伺いしておきましてよろしいかどうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/18
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019・赤間文三
○赤間国務大臣 産業スパイというような問題につきましては、私は目下いろいろな面から意見を聞いて研究はいたしておりまするが、刑法の一部改正をするとか、別にするとか、そういうふうな考え方は、現在のところまだ持っておりません。まあ研究中の問題であるというふうに御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/19
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020・中谷鉄也
○中谷委員 そうすると、たとえば、あとの設例として申し上げた国家機密に関するようなものについて、公務員法であるとか自衛隊法だとかそういうふうなものを別にして、とにかくそのような法律というもの、法案というもの、法文というものを考えてはいけないというふうにお答えいただけるのかどうか。その点はいかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/20
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021・赤間文三
○赤間国務大臣 現在研究中でございまして、どこに入れるとかどうするという具体的な考えは現在持っておりませんが、研究はいたしております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/21
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022・中谷鉄也
○中谷委員 研究は、いつごろから、どこで、どのような形で行なわれておりますか、研究の案はどのようなものなのか、お答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/22
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023・赤間文三
○赤間国務大臣 研究の方法その他につきましては、具体的にそういうことを申し上げるところまで、私は、大臣としましてはまだ研究は進んでおりません。具体的に、どういうふうな研究をしてどうということは考えておりません。ただ、こういう問題は非常に重大な問題である。とにかく、十分ひとつ研究をして、国家の利益というものを擁護するということについては、十分これは勉強したいと考えて、あるいは現在の国家公務員法なんかもありまするし、いろいろな法律もありまするが、まずこういうものの励行が、はたして都合よく法律のいうとおりできているのかどうかというようなことも、私は研究をいたしております。あるいはそういうもので不足であるのかどうかというようなことも研究をしたいと考えておりますが、具体的な問題につきましては、ここに申し上げるほどの材料は持っておりません。ただ、非常に重大で、これを研究の対象にするという考えは、もうとうの昔から持っておるので、御了承願いたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/23
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024・中谷鉄也
○中谷委員 研究の対象にされたのはいつからか。そして研究はどのような形で行なわれているのか。法務省でということならば、一体それはどこでどのような形で行なわれているのかなどについて、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/24
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025・赤間文三
○赤間国務大臣 刑事局長からお答えをいたさせます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/25
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026・川井英良
○川井政府委員 いまこつ然と法務省におきましていわゆる国家機密の保護についての法案の検討をしているというような事実はございません。ただ、刑法の全面改正に関連いたしまして、その一環といたしまして、御承知のように刑法改正準備草案というものができまして、その準備草案を参考案といたしまして、ただいま法制審議会で全面改正が行なわれておるわけでございます。その法制審議会において行なわれておりますその審議の素材になっております準備草案の中に、これも御承知のことだと思いますけれども、いわゆる防衛、それから外交に関する秘密というものは、独立国家の存在する以上これを保護する必要があるのではないかというようなことで、その二つの秘密についてこれを保護するという規定ができております。その規定につきまして、先般刑法改正の法制審議会の特別法部会で審議が行なわれまして、議論が分かれまして、置くべきだという議論と、削除して特別法にゆだねたほうがいい、こういう意見と、特別法にも置かないほうが適当だ、こういうふうな三つの意見に分かれまして、今日まだその参考案につきまして法制審議会の刑事特別法部会としては結論を得ていない、こういう状況に相なっておりますので、法務省といたしましては、いずれ法制審議会がどういうふうな形の案を答申するかわかりませんけれども、出た案につきまして、さらに法務省としての立場を検討いたしまして態度をきめることになろうか、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/26
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027・中谷鉄也
○中谷委員 この質問はじゃ一点だけにしておきますが、要するに、局長にお尋ねしますけれども、全面改正の作業の中でこの問題は処理するのであって、いやしくも全面改正の作業を離れてこのような問題、いま私が指摘した設例の問題について、一部改正などというかっこうで持ち出してくるなどということはないと明確にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/27
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028・川井英良
○川井政府委員 現在のところは、そういうふうなことを考えておりません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/28
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029・中谷鉄也
○中谷委員 大臣にお尋ねいたしますが、そうすると、刑法二百十一条について現在一部改正が出てきた。そうすると、いま私が申し上げたような設例のものについても、刑法全面改正と切り離して出てくる、言うてみれば、ぽつりぽつりと出てくるということも、あり得るわけでございますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/29
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030・赤間文三
○赤間国務大臣 御質問のような要旨につきましては、まだ何ともお答えを申し上ぐる時期に達していない。現在のところではぽつりぽつりとやるような考えは全然持っておりませんが、将来どういうふうになるかということを、ここではっきり申し上げるわけにはまいらない。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/30
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031・中谷鉄也
○中谷委員 大臣に、ではいま一点だけお尋ねをしておきたいと思います。それで、大臣に対する本日の私のお尋ねはあと一点だけなんです。要するに、刑法二百十一条を改正をして、禁錮刑を引き上げる、このことについて、交通事故防止、人命尊重という二つの柱をお立てになった。だから、もう何べんもその点について答弁の中で言っていただくのはけっこうなんですが、一点だけお尋ねいたします。そういう刑を引き上げることが交通事故防止に役立つなどという実証はあるのかということは、当委員会においても何べんかお尋ねをしたことなんです。単なる威嚇ではないか、もっと交通事故防止のためにはしなければならないことがあるのじゃないかという問題がありました。刑の感銘力というふうなことばが盛んに会議録に出てまいりますのは、御承知のとおりであります。一体大臣として、先ほどの診断書の例のごとく、刑法の改正をして禁錮三年を引き上げた、一体そのことが、見通しとして、交通事故防止に有効であった、少なくとも実証的に有効であったということが、御答弁いただけるかどうか、この点はいかがでございましょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/31
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032・赤間文三
○赤間国務大臣 私は、この刑法の刑を引き上ぐることが事故防止を少なくすることに役に立つかどうかという御質問のように考えておりまするが、政府としましては、あらゆる点から事故を少なくする、これはもう内閣が全力をあげて、あらゆる面から事故を少なくするという方針をとっておることは、御承知のとおりでございます。こういう重要な問題につきましては、私は、あらゆる面からやはりこの事故を少なくするという方針をとることが有効適切である、こういうふうな考え方を持っております。たとえば、われわれとしましては、刑法が、乱暴な操作、運転によりまして人を殺傷した、粗暴きわまる、それがわずか三年以下の禁錮というようなことよりも、非常に粗暴、乱暴な運転によって、ほんとうに金銭にかえられない人間の命というものが死傷を来たしたようなときに、三年ではなくてこれを五年に引き上ぐるということは、やはり事故を少なくすることの少なくとも一助にはなる、こういうふうに考えて、この一部改正の法律を出しておるのであります。それで、抽象的にただ刑を上ぐれば事故が減るというような、そう簡単には考えておりませんが、この交通事故の現状から見ると、すべての面から、すべての力によってこれを少なくするということには、刑のほうも、どんな乱暴なことをやっても三年以下にきまっているというよりも、五年以下にするということのほうが私は役立つという考えで、結論としましては、刑を上ぐることはやはり一種の犯罪、事故を少なくすることに役立つと考えることが適当だ、かように考えております御了承願います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/32
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033・中谷鉄也
○中谷委員 問題を二つ御答弁をいただきました、一つは私の質問に対するお答えと、いま一つは総合的な施策をというお話でございました。
そこで、さてそういうことであるならば、本日私が通告をいたしておきましたいわゆる診断書廃止問題に関して、精神病者に免許を取得させるべきではない、別のことばで言うならば、気違いに刃物を持たすべきでないという問題についてお尋ねをいたします。
まず、警察庁の先ほど引用いたしました四十年四月六日以来の答弁は、不適格者を簡単に確実に発見できる方法を鋭意研究開発をいたしておるというのが、警察庁の答弁なんです。同時に、そのことは裁判所の立場でもあり、法務省の方針でよあり、あるいはまた警察庁は免許については特に第一次的な責任をお持ちにならなければならないんだから、その点についての責任をお持ちいただかなければならないと思っております。
大臣にお尋ねをいたしますが、禁錮三年を五年にあげるということは、まあ言うてみれば三という数字を五と変えればいいわけですね。お金は一銭も要りません。気違いに刃物を持たせない、そんな人間が検察庁へ送られてきたならば、確実、にそれを把握するための予算を、一体検察庁ではどの程度計上されているんでしょうか。先ほど大臣がお見えになる前に申し上げましたけれども、診断書制度によって国民は三十八億円というお金をむだ使いさせられたわけです。そうして一年足らずでこれが廃止になった。一体そういうふうな気違いに刃物を持たせない、精神病者の運転免許を持っている者をチェックするということについての対策として、法務省としてはどの程度検察庁にそのような予算をお組みになっておられるか。また、どのような配置になっておるか。その点について、まず予算の面からどの程度そんな予算があるのかどうか、お尋ねをいたしたいと思います。総合樹立ということをおっしゃったんだから、三という数字を五と変えるだけという安易な交通事故防止対策ではないのかということを刑法一部改正についてわれわれは疑問に思うので、お尋ねをいたしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/33
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034・赤間文三
○赤間国務大臣 この気違いに刃物を持たせるということは、お説のように一番あぶないことで、これはわれわれとしては全力をあげてそういうことのないようにせねばならぬと考えております。法務省としましても、ひとつその点には全力を尽くして、精神のおかしな人が運転するということがないように、予算としましては大体検察費のほうで十億くらいの金がありまするので、その中からそれに必要な金は出したいと考えておるのでございます。これは金を出してもなかなか頭のおかしいのを見つけるというのは骨が折れるということは、事実であろうと思います。それかといって、お説のように気違いに刃物は一番あぶないわけです。苦心惨たんして効果のあがるような方角に全力を尽くしていく。予算としては、大体十億くらいのうちからこれの費用に充てていきたい。なおまた、その発見方法、取り締まり方法については、さらに十分創意くふうをやる必要があるんじゃないか。ただ普通の考えでは、頭のおかしい人間というような者は、金が幾ら多くてもなかなか金だけでもできまいし、よほどのくふう努力によって頭の狂うた人間が運転をせぬように注意をしていくということを考えたいと考えております。なかなか重要な問題で、簡単にどうすればすぐそういうことができるということも、いま私もはっきりとそう申し上げられませんが、全力を尽くしてそういうことの防止に努力する、こういうお答えをひとつ申し上げたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/34
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035・中谷鉄也
○中谷委員 では、まず刑事局長にお答えをいただきたいと思います。今度は、詳細な刑法の一部を改正する法律案についての資料をいただきました。先ほど私のほうから申し上げたように、国民千人のうちの精神病者の数というものは、すでにもう当委員会において何べんも論議をされました。そうすると、それは直ちにイコールでは結びつかないけれども、免許証取得者の中にも相当数の精神病患者がおるということと、これは結びつく可能性が非常に強いわけなんです。そこで一体、大臣は創意くふうをこらしてやりますというふうにおっしゃったけれども、気違いが刃物を持っているような精神病者の運転免許取得者というものを、昨年検察庁はどれだけ発見されましたか。検察庁独自の調査でどれだけ発見されましたか。おそらくそんな調査はないと思うのです。まず、そういうような調査があるのかないのか、お答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/35
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036・川井英良
○川井政府委員 確かに大きな問題でございますので、警察庁ともいろいろ協力いたしまして、最も適確な実効のあがる発見方策を考えることに努力中でございますけれども、なかなか適確な方策を発見することが困難である実情でございます。しかしながら、検察庁におきましては、交通事故に限らず、すべての犯罪を犯した者に対して、精神障害の有無、その程度ということが、御承知のように刑罰法規を適用する上について最も重要な、欠くことのできない前提作業に相なっておりますので、かなり前からこの点については慎重な配慮を加えております。先ほど予算の話が出ましたけれども、検察活動は、予算の面では検察費という特別な項目を設けまして、最近数年間の平均が大体十億弱でございますけれども、その中で、四十二年度の予算は約三億六千万が庁費という名目で認められておりますので、その三億六千万円を使いまして、一年間における、検察行政費じゃございませんで、純然たる捜査活動、検事が行なう捜査活動の庁費をまかなっておるわけでございますけれども、その中から必要なものをさきまして、精神障害者の発見認定方策というふうなものに利用しているわけでございます。たとえば東京、大阪、福岡あるいは神戸というような、統計上非常に事件の多いところ、しかも非常にむずかしい悪質な重大事件が多いところ、そういうところに恒常的な精神診断室を設けまして、常時専門の医師を常駐させまして、検察庁全検事が調べて非常に疑問があると思う者につきましては、直ちに精神診断室に回しまして専門医の診断を受けさせる。そこで直ちに異常があるということが判明した者につきましては、その異常に基づきまして適切な措置を講ずる。ところが、そこでわからないというような者につきましては、さらに専門の医院にそれを回しまして、あらためて的確な診断を受けさせるというふうな措置を講じております。
その他、そこまでの必要はありませんけれども、年間にかなりのそういうふうなものが予想されるというような庁が、全検察庁の約半数ございますけれども、そこでは嘱託医制度を設けまして、月給のような形におきまして専門の先生にお願いをいたしまして、必要があれば常時その先生に的確な診断を願うという方策を講じております。
その他の約半数の庁におきましては、必ずしもそういうふうなものが年間に非常にたくさん出るわけではございませんで、それは先ほども申し上げました庁費の中から、精神診断謝金というふうな名目の裏打ちの金を用意いたしまして、そのつど適当な専門医に診断を受けさせるというふうな措置を講じて、私どもといたしましては、いまの段階といたしましてこの点につきましては一応遺憾のない措置を講じておる、こういうつもりでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/36
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037・中谷鉄也
○中谷委員 お尋ねしたことは、もっと単純なことをお尋ねしたのです。受理件数はすでに資料でいただきました。そういうふうな精神診断室を利用して調査された人の数は、一体何人ですか。そしてそれは推定される免許取得者、その免許取得者の中に含まれる精神病患者の数と比べてみれば、はなはだしく隔絶しているのではないでしょうか。百人のうち何人かという統計が出ているんですよ。そうでございますね。そういうことからいうと、殺人をした場合に心神耗弱の申し立てが予想されるような人間と同じようなかっこうでのそんな診断というふうなことだけで、交通事故防止の総合対策の樹立なんということは、私はおかしいと思うのです。言うてみれば、交通事故の事故の心理などについては最近かなり調査が進んでおりますが、単に精神病者のみならず、性格的不適格者の問題だって論議をされているのです。そんなことについての関心をお持ちのようなお話があるから、全力をあげて総合対策を樹立しておられるような話があるから、それなら、きわめて単純なことをお尋ねしますが、一体昨年、何人そのような調査の対象としておあげになることができますかということを、そのものずばりでお聞きしているのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/37
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038・赤間文三
○赤間国務大臣 私さきに答弁したのが、ことばが足らないで誤解を受けておるとぐあいが悪いので……。
総合対策と言いましたのは、各省、特に内閣のほうで、御承知のように、四十一年の十一月二十一日に、交通対策本部の決定で「交通安全施策の強化に関する当面の方針」、これが総合対策でございます。法務省はこの中のいわば一部のような……。それはもう御承知のように、交通安全施策等の整備を徹底的にやるとか、あるいは安全運転の確保をやるとか、あるいは交通秩序の確立をやるとか、あるいは被害者の救済対策の強化をやるとか、そのほかにもいろいろこれは国全体としてはあらゆる面からやって、法務省がやっているのは、われわれその対策の一部に考えて、この方面からできるだけ交通災害をなくそう、こういうふうな考え方でございます。御参考までに……。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/38
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039・川井英良
○川井政府委員 先ほど申し上げましたような方法によりまして精神障害者を発見いたしました際におきましては、検察庁といたしましては、精神衛生法の二十五条に基づきまして、都道府県知事に対して措置入院の方策を講じているわけでございます。
そこで措置入院の数でございますが、ちょっとさかのぼりまして、私ども手元にありますのは昭和三十一年に全国検察庁で三百十六人の措置入院の制度を講じております。これを一応指数一〇〇といたしますと、昭和四十一年度では千百六十五名の措置入院の通告を行なっておりまして、その倍数が三六九と、こういうことに相なっております。昨年度四十二年度の集計がまだできておりませんけれども、四十一年度におきましては全部で千百六十五という数字に相なっております。ただこの中で、御指摘になりました業務上過失というような業過事件についてのものが何件あるのだ、こういうことが質問の眼目だと思いますけれども、この点についてはまだ罪名別に収録がされておりませんので、時間をいただいてできる限りの調べをいたしたいと思いますが、この千百六十五件の中に若干の業過のものが入っておる、こういうことになろうかと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/39
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040・中谷鉄也
○中谷委員 資料をお出しいただくということだから、お出しいただきたいと思いますが、警察庁がこの診断書制度のときに繰り返し繰り返しPRしたことは、推定が正しいとするならば、運転免許取得者の中には二十万人の精神病患者がおると思われるということを言ったわけです。そうだとすると、総合対策樹立、それを全力をあげておやりになっているという。もちろん検察庁のお仕事の限界、機能というものは、私はあると思う。そのことについて、私は何もないものねだりをしているわけではありませんけれども、少なくとも気違いに刃物を持たしている状態というのは、そのままに放置されている。法務省のお立場においても放置されているといわざるを得ないと思うのです。これらの問題については、では資料をいただきましてから、法務省の関係はあらためてお尋ねをいたしたいと思います。
そこで、警察庁にお尋ねいたしますが、その前に厚生省に御出席をいただきましたが、厚生省のお立場から次のような点についてお答えを簡単にいただきたいと思います。要するに、精神障害者の現状というものについて、簡単にお答えをいただきたい。要するに、精神障害者の総数は一体どういうことになっているのだろうか、その内訳は一体どうか、さらにまた、精神医療の現状として、お医者さんの数、これは一体どういうことになっているのだろうか、この点をひとつ簡単にお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/40
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041・岩城栄一
○岩城説明員 精神障害者の現状につきましては、全国的な推計というようなものになりますと、昭和三十八年に精神衛生実態調査というものが行なわれまして、その結果がございますので、これを申し上げたいと思います。そういたしますと、その当時の調査の結果、これを全国の人口に当てはめて推計いたしますと、精神障害者は百二十四万人という数字が出ております。これは人口千人につきましては十二・九人、約一・三%ということでございます。その内訳は、精神病が五十七万人、それから精神薄弱者が四十万人、その他が二十七万人ということでございますが、この中で精神病の五十七万人の内訳につきましてどういうものが入っておるかと申しますと、精神分裂病が二十二万、躁うつ病が二万、てんかんが十万、それから脳溢血であるとか交通事故であるとかいうようなことで脳に損傷を受けましたために起こります精神障害が二十一万、その他の精神病が二万というようなのが、精神病の内訳でございます。また、その他と含めました二十七万の内訳は、アルコール中毒のような精神障害、それから精神病質それからいわゆるノイローゼといわれております神経症の中で症状の顕著なもの、こういうようなものが含まれておるわけでございます。
なお、それから現在の精神科の医師の数などでございますが、これにつきましては、四十年の末、四十年十二月三十一日現在の医師、歯科医師、薬剤師調査というものによりますと、精神科を標榜する医師の数というものが出ております。これによりますと、精神科を標榜する医師が三千二百五十人ということでございまして、そのときの全国の医師数は十万九千余人、さらにそのうちの診療に従事する医師が十万二千余人、こういう状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/41
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042・中谷鉄也
○中谷委員 厚生省のお話をお伺いしていますと、要するに、精神科の医師の数というものが圧倒的に少ない。そういうような中で、気違いに刃物を持たさないということをどのように対策を樹立するかということは、非常にむずかしい問題だと思うのですけれども、緊急に措置をしていかなければならない問題だと思うのであります。そこで何べんも同じことばを引用して恐縮ですけれども、四十年にすでに簡単でしかも確実にそういう不適格者を発見できる方法を鋭意研究開発をしているというのが、警察庁の口上であり、PRの文句であり、そしてそれが診断書制度に結びついていった。一体鋭意研究開発をするために、どれだけのお金を今日まで警察庁お使いになりましたか。国民は三十八億円というお金を使わされた。一体どれだけの性格不適格者、精神的不適格者を含むその発見のための研究開発の予算をお使いになったか、これをお答えいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/42
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043・西川芳雄
○西川説明員 ただいまのお尋ねが、精神病のほうの研究開発とそれから性格的な運転不適格のほうの研究開発といいますか、この二つが一緒になって御質問でございましたが、実態調査のために各地に出向いたりなんかしますという経費はこれは入っておりませんで、具体的にいろいろ用紙を作成をしたり、一定の対象者に対して謝金を払ったりという直接的な経費は、総計で大体百三十万円程度でございます。これは警察庁の予算の中にあるのではなくして、科学技術庁の交通科学技術研究費のほうから配賦をされておる、こういう実情でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/43
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044・中谷鉄也
○中谷委員 よくもぬけぬけとという感じがするわけですけれども、小さい、われわれが顧問をしているような中小企業でさえも、研究開発の費用には最近五百万、一千万の金を使うのはあたりまえなんですよ。そんなことでこういうふうなことをおやりになった。私は、これが政府の交通事故防止総合対策などというものの実態であると思うのです。だから、刑事局長さんに私はあとで何回かお聞きしますけれども、そういうふうな対策の中で刑法の改正で刑だけが引き上げられるということについて、非常な不安と疑義を持つということを私は申し上げておきたいと思います。
そこで、質問を進めます。ただ、そのような対策の一つとして、まずそういう開発予算というものは、ひとつ今後十分に計上されるべきだということが一点。
第二点目としては、すでにこれも法務委員会において指摘をした点ですけれども、道交法百二条の問題についてです。要するに、道交法百二条については強制力はないということではあるけれども、強制力を持たすべきではなかろうかということを考えるわけです。その一つとしては、百二条に罰則を設けるべきではなかろうかという問題、罰則の関係から強制力を持たしていくべきではなかろうかという問題、この点についてはいかがでしょうか。警察庁、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/44
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045・西川芳雄
○西川説明員 百二条につきましては、お話しのように強制力のない点がございまして、私どももこの問題については研究をいたしておるということでございます。ただ、罰則につきましてどうするかという問題は、まだよく慎重に検討しないといけない、こう考えておる次第でございます。なぜならば、ここに該当する者が精神病者であるという場合も当然出てくるわけでございますので、そこら辺で十分今後慎重に検討していきたい、かように思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/45
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046・中谷鉄也
○中谷委員 いま一つ。次のようなことは検討しておられますか。要するに、百二条は臨時適性検査の問題ですが、その適性検査の内容が、身体検査などの条文とどこかで相通ずるものがあるというふうな感じもするわけです。とすると、そういうふうな検査を拒んだ人に対しての検査をするということについては、承諾がない場合は検査ができないのだという立場を貫いていただくことが、人権保障の観点から私は正しいと思う。ただしかし、そのような検査を拒んだからといって、拒みっぱなしでは社会防衛の立場が成り立たない。といたしますと、むしろ令状などによる検査というふうなものが、百二条の関係において考えられないのかどうか。それは当然罰則の問題とも関係してくると思うのでありますけれども、罰則は拒んだ者についての罰則ですが、検査についてそういうふうな令状についての御検討をされたことがあるかどうか、この点はいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/46
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047・西川芳雄
○西川説明員 百二条で応じない者の問題でございますけれども、要するに精神病になったと思われる者または疑う者についてでございますが、警察自体がいろいろ調査をいたしました結果、たとえばその人間が精神病院に入っておるということが警察の調査の結果はっきりいたしますならば、次の百三条の条文で、その者に対しての免許の取り消しができるという規定があるわけでございます。こちらのほうは取り消しをする場合に、もちろん聴聞をやらなければならないわけでございまして、疑いがあるので専門のお医者さんに見せたいということで出頭を通知しても従わないという者に対しましては、私どもとしては、その疑いを警察自体の調査でできるだけ明らかにして、明らかになった者につきましては百三条のほうで処置をしていきたい、かように考えておりまして、百二条につきまして、先生がいま御提案というか、出されました令状をもってやるということは当面考えてはおりませんが、百三条のほうではっきりできるものはしていくという手段も一つあるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/47
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048・中谷鉄也
○中谷委員 次に、対策の第二点ですが、精神衛生法によりますと、一定の患者については、たとえば検察官などは通報義務が課せられているわけですが、要するに、お医者さんの関係で精神病患者の中で運転免許を取得している人を公安委員会等に通報するという措置が講ぜられたならば、そのことによって確認できるではないかということは、従来から言われていたと思うのですが、この点についての警察庁の考え方はいかがでございましょうか。なお、この点については特別に、警察庁の所管に属することでございますけれども、刑事局長さんのほうからも、この点についての御答弁をいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/48
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049・西川芳雄
○西川説明員 確かにお医者さんのほうから警察に通報していただくならば、精神病者等の運転免許の排除ということには効果的にいくと思います。そういう意味では、警察としてはそういうふうなことをお願いできればということは考えるわけでございますし、また今度の問題に関連いたしまして、日本精神神経学会にも警察としてのそういう気持ちというものは披瀝をいたしたわけでございますが、これはまたお医者さんの立場からいろいろ問題があるということで、そのお医者さんの立場というものも、聞いてみるとわからないでもないということで、そういうことができればたいへん好ましいとは思うが、しかし、この問題も非常にむずかしい問題があるというふうに私考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/49
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050・川井英良
○川井政府委員 検察庁としましては、先ほど申し上げたような義務に基づいて措置入院の通報をするとともに、事件の処分結果につきましては、すべてそのつど、送致した警察に対して処分結果とその必要事項について通報を行なうという措置を講じておりますので、警察といたしましては、検察庁の処分結果について通報を知る機会もございますので、それをもまた基本にして、ただいま御説明がありましたような措置を講ずるわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/50
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051・中谷鉄也
○中谷委員 厚生省にお尋ねをいたします。
刑事局長さんの御答弁、私お尋ねしたことと全然違うわけなんです。要するに法務省が刑法の一部改正をお出しになって、そうしてその中で交通事故防止の総合対策ということをおっしゃっている。それなら、そういうふうな第一線にお立になっている法務省の立場から見て、いわゆる潜在しているそういう精神病患者の中で免許を持っている人について公安委員会などに通報をしてもらうということ、これは精神衛生法との関係、いろいろなむずかしい問題があります。社会防衛の立場と患者の保護、医療に支障を来たさないという問題、いろいろな利益が交錯をする問題ですが、法務省としては、その点についてこうあってほしいというふうなお考えはありませんかとお聞きしたのです。しかし、これも何かその点についてのお答えはありませんでしたが、厚生省のお立場から見まして、いわゆる精神衛生法のたてまえからいうと、お医者さんが一お医者さんといってもいろいろな資格あるいは限定、規定のしかたがあると思うのですが、そういう患者が運転免許を持っているとかいないとか、これを公安委員会に通報することについて通報義務が課せられてないことは、法によってよく承知をいたしました。ただ問題は、通報をすることがどのような悪い影響を生ずるのか、それ以上に、通報することが法律的に禁止されているのではないかというふうな考え方もあると思うのですが、法律的に禁止されていないということになってまいりますとまた別ですが、この点についての厚生省のお考えはいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/51
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052・岩城栄一
○岩城説明員 通報を義務づけることについては、実はこの運転免許だけの問題ではございませんが、全般の問題といたしまして、かつて昭和四十年に精神衛生法の改正が行なわれたわけでございます。それに先立ちまして、いろいろ法案の改正の内容について論議されました場合に、これが非常に大きな問題になりました。中央精神衛生審議会におきましても、非常に何回もこの問題について討議されたと聞いております。その結果、これについては義務づけるべきではないという結論になったわけであります。そういうことから申しまして、これを義務づけることには非常に大きな問題があるわけでございまして、相当慎重な検計をしなければならぬと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/52
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053・中谷鉄也
○中谷委員 最後に、警察庁にお尋ねをいたしておきたいと思います。
「精神的、性格的運転不適格者に対する対策について」、昭和四十三年三月一日、運転免許課から、そのようなものが出ておるようです。問題は、診断書を廃止したからといって大急ぎで、まあ極端なことをいえば一夜づけでおつくりになったという印象を免れない、まことに不十分なものだと私は思います。しかし、この「対策について」を実効あらしめるために、次のような点について準備をして、お答えをいただきたいと思います。
一、「研究開発に努力する。」とあるけれども、これは具体的にどのような予算を組み、どの程度、だれに対して、どのような開発の努力をするのか、この点についてひとつ明確に資料をもってお答えをいただきたい。
第二点は「現に免許を受けている者に対する対策」でございますが、この「特異な事故を起こした者、事故多発者等の運転不適格容疑者については、「観察要目」を積極的に用い、」こういうふうにありますが、少なくとも今後そのような観察要目を積極的に用いて観察をする運転者というものを、どの程度の人数考えているのか、この点をひとつお答えをいただきたいと思います。従来の実績もあわせてお答えをいただきたい。次に、従来この二の方法によって発見された精神病等の容疑者等のいわゆる実績もお答えをいただきたい。
三については、同じくこれの「性格検査のためのペーパーテスト」のいわゆる実績、今後予想される検査人員の数というふうなものについて、ひとつお答えをいただきたいと思います。
それから、「日本心理学会等の協力を得て、検査方法」を確立するとあるけれども、研究開発は、国民の立場からいったならば、気違いが刃物を持っているような状態を一日も黙過することができない、いつまでに研究開発をする目標を持っているか。重ねて同じことを何べんも申し上げますけれども、四十年から鋭意開発中と言っておられる。予算を聞いてみたら百五十万。お話にならぬというのが私の感想です。この点についてのお答えをいただきたい。
それから、適性検査所の実態、適性検査所における適性検査を行なっている実情等についても、ひとつ資料をもってお答えをいただきたいと思います。
質問を留保して、本日はこの程度で終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/53
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054・永田亮一
○永田委員長 本日は、これにて散会いたします。
午後零時七分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/105805206X00419680305/54
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