1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和四十四年三月四日(火曜日)
午前十時四十四分開議
出席委員
委員長 丹羽 兵助君
理事 安倍晋太郎君 理事 白浜 仁吉君
理事 三ツ林弥太郎君 理事 湊 徹郎君
理事 兒玉 末男君 理事 森 義視君
理事 稲富 稜人君
大石 武一君 大野 市郎君
佐々木秀世君 菅波 茂君
瀬戸山三男君 田澤 吉郎君
中尾 栄一君 藤波 孝生君
藤本 孝雄君 松野 幸泰君
伊賀 定盛君 石田 宥全君
柴田 健治君 永井勝次郎君
芳賀 貢君 美濃 政市君
神田 大作君 斎藤 実君
樋上 新一君
出席政府委員
農林政務次官 小沢 辰男君
農林大臣官房長 大和田啓気君
農林省農政局長 池田 俊也君
農林省農地局長 中野 和仁君
林野庁長官 片山 正英君
委員外の出席者
専 門 員 松任谷健太郎君
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二月二十八日
委員柴田健治君及び石田幸四郎君辞任につき、
その補欠として山中吾郎君及び斎藤実君が議長
の指名で委員に選任された。
同日
委員山中吾郎君辞任につき、その補欠として柴
田健治君が議長の指名で委員に選任された。
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二月二十七日
農地法の一部を改正する法律案(内閣提出第一
四号)
三月三日
漁港法第十七条第三項の規定に基づき、漁港整
備計画の変更について承認を求めるの件(内閣
提出、承認第二号)
二月二十七日
農林年金制度改正に関する請願外七件(足立篤
郎君紹介)(第一一四五号)
同外九件(足立篤郎君紹介)(第一一八七号)
ブリ資源保護に関する請願(鈴木善幸君紹介)
(第一二六八号)
農林漁業団体職員共済組合法の一部改正に関す
る請願(井上泉君紹介)(第一二六九号)
中国産食肉輸入禁止解除に関する請願外七件(
赤路友藏君紹介)(第一二七〇号)
同外二件(楢崎弥之助君紹介)(第一二七一
号)
食糧管理制度の堅持に関する請願(林百郎君紹
介)(第一二八二号)
農業委員会等の組織強化に関する請願(林百郎
君紹介)(第一二八三号)
林業種苗制度の改正に関する請願(林百郎君紹
介)(第一二八四号)
農山村住民及び林業労働者の生活安定に関する
請願外二件(芳賀貢君紹介)(第一三五〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
農地法の一部を改正する法律案(内閣提出、第
一四号)
国有林野の活用に関する法律案(内閣提出、第
五十八回国会閣法第八八号)
農業協同組合法の一部を改正する法律案(内閣
提出、第五十八回国会閣法第八九号)
農業振興地域の整備に関する法律案(内閣提出、
第五十八回国会閣法第一〇一号)
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/0
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001・丹羽兵助
○丹羽委員長 これより会議を開きます。
農地法の一部を改正する法律案を議題とし、趣旨説明を聴取いたします。小沢農林政務次官。
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最近における農業の動向にかんがみ、農地等に係る権利の移動の円滑化を通じて農業経営の規模の拡大に資するとともに、土地の農業上の効率的な利用を図るため、農地等の賃貸借の規制の緩和、小作料統制の廃止、小作料の標準額に関する制度の創設、小作地所有制限の緩和、農地等の権利取得の適正化、農業生産法人の要件の緩和、草地利用権に関する制度の創設、農地等に係る紛争の和解の仲介制度の整備等をする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/1
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002・小沢辰男
○小沢(辰)政府委員 農地法の一部を改正する法律案につきまして、その提案の理由及び主要な内容を御説明申し上げます。
戦後の農地改革により広範に自作農が創設され、これによってわが国の農業生産力は画期的な発展を遂げ、農業者の経済的、社会的地位の向上をもたらしたのみならず、戦後における日本経済の復興と繁栄に大きく寄与したことは、あらためて申し上げるまでもありません。現行農地法は、このような農地改革の成果を維持するという大きな使命をになっているものであります。
ひるがえってわが国の農業の現状を見ますと、国民経済の高度成長が農業就業人口の急速な減少と兼業化をもたらし、その過程を通じて農業生産の選択的拡大と農業機械化が進んだものの、経営規模はなお零細であり、このため、生産性の向上をはかるにもおのずから限界があることを否定し得ない実情にあります。
したがいまして、農業の生産性を高め、国民食糧の安定的な供給と農業従事者の所得の増大をはかるという農政の基本目標を実現するためには、農地がより生産性の高い経営によって効率的に利用されるようにその流動化を促進し、農業構造の改善をはかることが肝要であります。政府といたしましては、このような観点から農地法の改正をいたすこととした次第であります。
なお、この法律案は、第五十八回国会に提出し、審議未了となったものとほぼ同一の内容でありまして、本国会に再度提出したものであります。
次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
第一は、農地法の目的についての改正であります。これは、以上述べました趣旨に基づき、土地の農業上の効率的な利用をはかるため、その利用関係を調整することを現行農地法の目的に追加するものであります。
第二は、農地等の権利移動の制限についての改正であります。まず、近年における農業技術の進歩等にかんがみて、本人またはその家族がみずから農作業を行なうのであれば、上限面積の制限や雇用労働力の制限を設けないこととするとともに、兼業化の進行に照応して、下限面積制限を五十アールに引き上げることとし、また、国が売り渡した農地につきましては、その売り渡し後十年を経過したものはこれを貸し付けることができることとし、さらに、農業経営の規模の拡大、農地の集団化等をはかるため、農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人が農地等の権利を取得することができることとして、農地が農業に専念する農家により効率的に利用されるよう配慮したのであります。
第三は、集団的生産組織の育成と土地の効率的利用に資するため、農業生産法人の要件を実情に即して緩和することとし、その法人の役員の過半が農地の提供者であり、かつ、農作業に常時従事するものでなければならない旨の要件を課して、従来の借入地面積の制限、雇用労働力の制限等は廃止することといたしております。また、農業協同組合が組合員から農業経営の委託を受ける場合には、農地の権利の取得を認めることといたしております。
第四は、小作地の所有制限についてでありますが、さきに述べました農地保有合理化促進事業を行なう非営利法人、または農業生産法人に貸し付けられている小作地、及び農業協同組合に対し農業経営の委託がされている小作地につきましては、小作地の所有制限をしないことといたしますほか、農業をやめて住所を他へ移した場合に、従来住んでいた市町村の区域内に所有していた農地につきましても、在村の場合と同じ面積まで小作地の所有を認めることといたしております。これらは、いわゆる旧地主制の復活を意味するものではなく、他産業に従事しようとする農家の所有する農地が効率的に利用されるよう配慮したものであります。
第五は、農地等の賃貸借の解約、更新拒絶等についての規制を緩和することとし、賃貸借について合意により解約する場合、及び十年以上の期間の定めのある賃貸借、または水田裏作の賃貸借についてその更新をしない場合には、許可を要しないことといたしております。
第六は、小作料の最高額統制制度を廃止することといたしております。これは、農業者の経済的、社会的地位が向上し、また雇用の機会の増大した現在では、当事者の自由な契約にゆだねても、戦前のような高額の小作料が発生する余地は、一般的にはないものと判断されるからであります。しかし、現に存する小作地につきましては、小作農の経営に急激な変化を与えることを避けるため、なお十年をこえない範囲内において、政令で定める日までは小作料の統制を続けることといたしております。
以上の賃貸借に関する規制の緩和により、他産業に従事する者が、その所有する農地を農業に専念する農業者に貸しやすくなり、土地の効率的利用に資することとなると考えるのであります。
第七は、草地利用権設定制度の新設であります。これは、畜産物の需要の増加に対応して飼料の生産基盤の拡大強化をはかるため、未利用の里山等につきまして、市町村または農業協同組合が共同利用施設として草地造成をする必要がある場合に、それが国土資源の利用という総合的見地から妥当とされるときは、一定の手続のもとに草地利用権を設定することにつき所有者等に協議を求め、これがととのわないときには、都道府県知事の裁定を受けることができる制度であります。
以上が、本法案の提案の理由及びその主要な内容であります。
何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/2
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003・丹羽兵助
○丹羽委員長 以上で趣旨説明は終わりました。
————◇—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/3
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004・丹羽兵助
○丹羽委員長 次に、第五十八回国会から継続審査になっおります内閣提出、国有林野の活用に関する法律案、農業協同組合法の一部を改正する法律案及び農業振興地域の整備に関する法律案の各案を一括して議題といたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/4
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005・丹羽兵助
○丹羽委員長 以上の各案につきましては、第五十八回国会におきまして、すでに趣旨説明を聴取いたしておりますので、これを省略することとし、各案について補足説明を聴取いたすことといたしたいと存じますが、これに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/5
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006・丹羽兵助
○丹羽委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。
それでは、各案について順次補足説明を聴取いたします。片山林野庁長官。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/6
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007・片山正英
○片山政府委員 国有林野の活用に関する法律案につきまして、提案理由を補足して御説明申し上げます。
本法案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由説明において申し述べましたので、以下その内容を御説明申し上げます。
第一は、この法律の目的で、第一条に規定してあります。さきに提案理由でも述べましたように、この法律は、林業基本法第四条の規定の趣旨に即し、国有林野の所在する地域における農林業の構造改善、その他産業の振興または住民の福祉の向上のための国有林野の活用につきまして、国の基本的態度を明らかにすること等により、その適正かつ円滑な実施の確保をはかることを目的とすることとしております。
なお、第二条におきましては、この法案において用いる農林業の構造改善、国有林野の活用等の用語の定義を規定しております。第二は、この法律の目的達成のため、農林大臣は、国有林野の管理及び経営の事業の適切な運営の確保に必要な考慮を払いつつ、国有林野の活用を積極的に行なうこととし、これを第三条に規定しております。
まず、積極的に行なうべき活用の種類を、次の六つに分けて規定しております。すなわち、
その一は、農業構造の改善の計画的推進等のための農用地の造成の事業の用に供することを目的とする国有林野の活用であります。
その二は、この農用地の造成の事業の用に供するために譲渡された土地の代替地として、林業経営の用に供することを目的とする国有林野の活用であります。
その三は、林業構造の改善の計画的推進のための小規模林業経営の規模の拡大、その他林業経営の近代化の事業の用に供することを目的とする国有林野の活用であります。
その四は、国有林野の所在する地域において、その住民等が共同して行なう造林、家畜の放牧等のための部分林または共用林野に供することを目的とする国有林野の活用であります。
その五は、国有林野の所在する地域において、公用、公共用または公益事業の用に供する施設に関する事業の用に供することを目的とする国有林野の活用であります。
その六は、これらの活用のほか、山村振興計画に基づく事業の用に供することを目的とする国有林野の活用であります。
次に、国有林野の活用は、その国有林野の位置その他の自然的、経済的諸条件からみて合理的なものであるとともに、その国有林野の所在する地域の経済的または社会的実情を考慮し、かつ、その地域の住民の意向を尊重したものでなければならない旨を規定いたしております。
第三は、国有林野の活用に関する基本的事項の決定及び公表で、第四条の規定であります。すなわち、農林大臣は、国有林野の活用につき、その推進のための方針、適地の選定方法その他活用の実施に関する基本的事項を定め、これを公表しなければならないこととしております。
第四は、国有林野の活用の適正な実施のための措置で、第五条の規定であります。すなわち、農林大臣は、国有林野の活用を受けたい旨の申し出があったときは、現地調査を行なって、すみやかに活用の適否を決定するとともに、活用を行なうにあたっては用途の指定をする等、その土地の利用が適正に行なわれるようにするための必要な措置を講じなければならないものとしております。
第五は、国有林野の活用を受けた者の義務についての第六条の規定でありまして、国有林野の活用を受けた者は、活用の目的に従って、その土地の利用を適正に行なうとともに、その利用の増進につとめなければならないものとしております。
第六は、以上による国有林野の活用の円滑な実施をはかるため、農林大臣は、第二に述べました国有林野の活用で、農林業の構造改善の用に供することを目的とするものに該当する土地の売り払い、またはその活用に伴う立木竹の売り払いをする場合には、二十五年以内の延納の特約をすることができることとしております。
以上をもちまして、本法案についての補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/7
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008・丹羽兵助
○丹羽委員長 池田農政局長。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/8
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009・池田俊也
○池田政府委員 農業協同組合法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由を補足して御説明申し上げます。
本法律案を提出いたしました理由につきましては、すでに提案理由において申し述べましたので、以下、その内容の概略を御説明申し上げます。
第一に、農協による農業経営の受託事業につきましては、この事業の性格にかんがみ、事業主体を出資制の農業協同組合とするとともに、他の事業とあわせ行なわなければならないこととしております。なお、この事業の実施につきましては、受託農地の集団的な利用や、高性能機械施設の使用などにより、効率的な経営が実現されるように指導してまいりたいと考えております。
第二に、農事組合法人制度につきましては、農業経営を行なう農事組合法人につき、最近における諸情勢の変化に即応し、農民の協同組織という基本的性格を保持しつつ、他の生産組合制度との均衡をも考慮して、組合員資格及び員外従事者に関する制限を緩和することとしております。すなわち、定款で定めた場合には、加入の後に農民でなくなった者等については、その農事組合法人との関係においては、組合員たる資格を有するものとし得ることとするとともに、これによって組合員たる資格を有するものとされる者の数は、定款変更等特別議決の場合の議決要件などを勘案して、総組合員の三分の一をこえてはならないこととしております。また、員外従事者の数につきまして、常時従事者の五分の一以内という現行の制限を、二分の一以内に緩和することとしております。
第三に、総代会につきましては、大規模農協の管理運営の円滑化に資するため、従来行なうことのできなかった、役員の選挙または選任及び定款の変更の決議をなし得ることとしております。また、解散及び合併につきましては、総代会において議決をし、さらに、これにつき組合員の直接投票において総組合員の半数以上が投票し、その投票数の三分の二以上の多数による賛成を得ることによっても、これを行ない得ることとしております。このような措置に伴い、組合員の意思を総代会に対しよりよく反映させる必要があると考えられますので、総代の定数につき、現行の百人という最低限度を引き上げ、原則として総組合員の五分の一以上でなければならないこととしております。
第四に、農業協同組合連合会の会員の議決権及び選挙権につきましては、会員が農業協同組合である場合にはその正組合員数、会員が連合会である場合にはその直接または間接の構成員たる農業協同組合の正組合員数等に基づき、定款の定めるところにより付加して与え得ることとしております。なお、付加して与える議決権及び選挙権の数につきましては、一会員一票制の原則に対する例外である趣旨にかんがみ、政令で一定の制限を課することを予定しております。また、中央会につきましても、都道府県中央会にあっては会員の議決権及び選挙権の数、全国中央会にあっては代議員の選挙における会員の選挙権の数等につき、同趣旨の措置を講ずることとしております。
以上のほか、信用事業につきまして、組合員の世帯貝、地方公共団体等の非営利法人または銀行その他の金融機関に対する資金の費し付けに関する取り扱いを、中小企業金融機関における取り扱いとの均衡を考慮して改正するとともに、制度金融の動向にかんがみ、その適正な取り扱いがはかられるように、信用事業を行なう農業協同組合連合会が間接構成員のために、指定金融機関の業務代理をすることができるようにすることとしております。そのほか、組合経営の健全化に資するため、損益計算書を総会の議決事項として加えるなどの改正をすることといたしております。
以上をもちまして、この法律案の提案理由の補足説明といたします。
次に、農業振興地域の整備に関する法律案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。
まず、農業振興地域の整備の原則に関する第二条の規定であります。すなわち、この法律に基づく農業振興地域の指定及び農業振興地域整備計画の策定は、農業の健全な発展をはかるため、土地の自然的条件、土地利用の動向、地域の人口及び産業の将来の見通し等を考慮し、国土資源の合理的な利用の見地から土地の利用の調整に留意して、農業の近代化のための必要な条件を備えた農業地域を保全し及び形成することと、当該農業地域について、農業に関する公共投資その他農業振興に関する施策を計画的に推進することとを旨として行なうものとしているのであります。
第三条におきましては、この法律にいう農用地等とは、農地法における農地または採草放牧地に該当する土地、及び木竹の生育とあわせて採草または家畜の放牧の目的に供される土地のほか、これらの土地の保全または利用上必要な農道、水路等の施設の用に供される土地を含むものとしております。
次に、農業振興地域整備基本方針に関する第二章の規定であります。
都道府県知事は、農林大臣の承認を受けて、当該都道府県における農業振興地域整備基本方針を定めるものとしておりますが、その内容は、農業振興地域の指定の基準及び農業振興地域として指定することを相当とする地域の位置及び規模と、農業振興地域における土地の農業上の用途区分の基準、農業生産基盤の整備開発、農地保有の合理化及び農業近代化のための施設の整備に関する基本的な事項としております。この基本方針は、国土総合開発計画、首都圏整備計画その他の地域整備計画、山村振興計画その他の地域振興計画、及び道路、河川、鉄道等に関する国の計画、並びに都市計画との調和が保たれたものでなければならないものとしております。
なお、農林大臣は、都道府県知事に対し、農業振興地域整備基本方針の作成について、国の農業に関する施策の適正な実施の見地から必要な勧告をするものとしております。
また、都道府県知事は、経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、農業振興地域整備基本方針を変更するものとしております。
次に、農業振興地域の指定等に関する第三章の規定であります。
都道府県知事は、農業振興地域整備基本方針に基づき、関係市町村と協議して、農業振興地域を指定するものとしております。農業振興地域の指定は、一体として農業の振興をはかることが相当であると認められる地域で、農用地等として利用すべき相当規模の土地があり、農業の生産性の向上その他農業経営の近代化がはかられる見込みが確実であって、土地の農業上の利用の高度化をはかることが相当であると認められる等の要件を備えた地域についてするものとしております。なお、新都市計画法の市街化区域で、農林大臣との協議がととのったものについては指定をしないものとしております。
さらに、都道府県知事は、農業振興地域整備基本方針の変更により、または経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、農業振興地域の区域を変更し、またはその指定を解除するものとしております。
次に、農業振興地域整備計画につきまして第四章において規定しております。
農業振興地域の指定がなされますと、農業振興地域の区域の全部または一部がその区域内にある市町村は、都道府県知事の認可を受けて、その区域内にある農業振興地域について、農業振興地域整備計画を定めなければならないこととしております。農業振興地域整備計画においては、農用地区域、すなわち農用地等として利用すべき土地の区域とその区域内にある土地の農業上の用途区分を定めた農用地利用計画農業生産基盤の整備開発、農地保有の合理化のための土地に関する権利の取得の円滑化及び農業近代化のための施設の整備に関する事項を定めるものとしております。
また、都道府県は、関係市町村の同意を得て、農業生産基盤の整備開発、土地に関する権利の取得の円滑化または農業近代化のための施設の整備に関する事項で、受益の範囲が広域にわたるもの等二以上の農業振興地域を通ずる広域の見地から定めることが相当であるものについて、農業振興地域整備計画を定めることができることとしております。
これらの農業振興地域整備計画は、農業振興地域整備基本方針に適合するとともに、さきに農業振興地域整備基本方針について述べた諸計画との調和が保たれたものでなければならないこととし、また、市町村の定める農業振興地域整備計画は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想に即するものでなければならないこととしております。また、農用地利用計画は、当該農業振興地域において農業の振興をはかるための措置を総合的かつ計画的に実施するためには、その農業上の利用を確保することが必要である土地について、農業生産の基盤の保全、整備及び開発の見地から、必要な農業上の用途を指定して定めるものとしております。
市町村が、農用地利用計画を決定する手続きとしては、市町村は、農用地利用計画の案を一定期間縦覧に供し、関係権利者はこれに対して異議を申し出ることができることとし、市町村の決定に不服がある場合の都道府県知事に対する審査申し立て等について規定するとともに、国有地を含めて農用地利用計画を定める場合には、所管庁の承認を受けることとしております。
農業振興地域整備計画の変更につきましては、都道府県または市町村は、農業振興地域整備基本方針の変更もしくは農業振興地域の区域の変更により、または経済事情の変動その他情勢の推移により必要が生じたときは、農業振興地域整備計画を変更しなければならないこととし、都道府県知事は、市町村に対し、農業振興地域整備計画の変更措置をとるべきことを指示することができるものとしております。
次に、第五章において、土地利用に関する措置について定めております。
市町村長は、農用地区域内にある土地が農用地利用計画において指定した用途に供されていない場合には、その土地の所有者等に対し、その土地を当該用途に供すべき旨を勧告することができるものとし、さらに、この勧告を受けた者がこれに従わないときまたは従う見込みがないと認めるときは、その者に対し、その土地を当該用途に供するため所有権、利用権等を取得しようとする者で市町村長の指定を受けた者と、権利の設定移転について協議すべき旨を勧告することができるものとしております。市町村長の勧告による権利の設定移転についての協議がととのわず、または協議をすることができないときは、市町村長の指定を受けた者は、都道府県知事に対し、権利の設定移転につき必要な調停をなすべき旨を申請することができるものとし、都道府県知事は、この申請に基づいてすみやかに調停を行なうものとしております。
さらに、農用地区域内にある土地については、国及び地方公共団体は、農用地利用計画を尊重して、その農業上の利用が確保されるようにつとめなければならないこととし、農林大臣及び都道府県知事は、農用地区域内の農地及び採草放牧地について、農地法による転用許可に関する処分を行なうにあたっては、これらの土地が農用地利用計画において指定された用途以外の用途に供されないようにしなければならないこととしております。
また、農業委員会が農用地区域内にある農用地等について権利の設定移転のあっせんを行なうにあたっては、農業振興地域整備計画に基づき、これらの土地に関する権利の取得が農業経営の規模の拡大、農地の集団化その他農地保有の合理化に資することとなるようにしなければならないこととしております。
なお、以上の土地利用に関する措置についての規定は、農用地区域内にある土地で土地収用法による事業の認定の告示があり、その告示にかかる事業の用に供されるものについては適用しないこととしております。
最後に、第六章において、国の援助その他の規定を設けております。
まず、国及び都道府県は、農業振興地域整備計画の作成及びその達成のために必要な援助を行なうようにつとめるものとし、また、国及び地方公共団体は、農業振興地域における良好な生活環境を確保するための施設の整備を促進するようにつとめるものとしております。
次に、国有財産関係につきまして、国は、農用地区域内において農用地等としての利用に供するため必要があると認めるときは、普通財産の譲渡または費し付けができるものとするとともに、林業基本法第四条の規定の趣旨に即し、農業振興地域における農業の振興に資するため、積極的に国有林野の活用をはかるようにつとめるものとしております。
さらに、税制上の特別措置といたしまして、右に述べた市町村長の勧告にかかる協議、都道府県知事の調停または農業委員会のあっせんによって土地の譲渡が行なわれた場合には、租税特別措置法の定めるところにより、譲渡所得について所得税及び所有権の取得の登記にかかる登記免許税を軽減することとしております。
以上をもちまして、本法案についての補足説明を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/9
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010・丹羽兵助
○丹羽委員長 以上で補足説明は終わりました。
この際、暫時休憩いたします。
午前十一時十二分休憩
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〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/106105007X00619690304/10
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