1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十三年四月十一日(火曜日)
午前十時一分開会
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委員の異動
三月二十八日
辞任 補欠選任
柿沢 弘治君 円山 雅也君
三月三十日
辞任 補欠選任
秋山 長造君 小山 一平君
小谷 守君 佐藤 三吾君
三月三十一日
辞任 補欠選任
小山 一平君 秋山 長造君
佐藤 三吾君 小谷 守君
四月十日
辞任 補欠選任
宮本 顕治君 下田 京子君
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出席者は左のとおり。
委員長 中尾 辰義君
理 事
八木 一郎君
山本 富雄君
寺田 熊雄君
宮崎 正義君
委 員
大石 武一君
上條 勝久君
阿具根 登君
橋本 敦君
円山 雅也君
江田 五月君
国務大臣
法 務 大 臣 瀬戸山三男君
政府委員
法務省民事局長 香川 保一君
法務省刑事局長 伊藤 榮樹君
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本日の会議に付した案件
○刑事補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、
衆議院送付)
○仮登記担保契約に関する法律案(内閣提出)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00619780411/0
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001・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告をいたします。
去る三月二十八日、柿沢弘治君が委員を辞任され、その補欠として円山雅也君が選任されました。
また、昨十日、宮本顕治君が委員を辞任され、その補欠として下田京子君が選任されました。
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00619780411/1
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002・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 刑事補償法の一部を改正する法律案及び仮登記担保契約に関する法律案の両案を議題といたします。
まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。瀬戸山法務大臣。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00619780411/2
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003・瀬戸山三男
○国務大臣(瀬戸山三男君) 刑事補償法の一部を改正する法律案について、提案の趣旨を御説明いたします。
刑事補償法による補償金の算定の基準となる金額は、昭和五十年の改正によって、無罪の裁判またはこれに準ずる裁判を受けた者が未決の抑留もしくは拘禁または自由刑の執行等による身体の拘束を受けていた場合については、拘束一日につき八百円以上三千二百円以下とされているのでありますが、最近における経済事情にかんがみ、これを引き上げることが相当と認められますので、右の「八百円以上三千二百円以下」を「千円以上四千百円以下」に引き上げ、いわゆる冤罪者に対する補償の改善を図ろうとするものであります。
以上がこの法律案の趣旨であります。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
次に、仮登記担保契約に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
民法によれば、金銭債務を担保する法的手段としては、抵当権が最も典型的、かつ、近代的な担保制度でありますが、近時、種々の理由により、この抵当権の利用を回避し、またはこれと併用して、代物弁済の予約等を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を利用することが一般に行われております。この仮登記は、通常、金銭債務の不履行がある場合には、その履行にかえて債権者が目的不動産を取得し、これにより債権債務関係を簡易迅速に決済することを目的としているものでありますが、この仮登記を利用すれば、不動産の価額が債権額をはるかに上回るときにおいても、債権者は、仮登記に基づく本登記をすることにより、完全にその不動産をまる取りできることとなり、債務者の保護に欠けるうらみなしとしないのであります。
そこで、最高裁判所は、昭和四十二年十一月十六日第一小法廷判決を初めとし、昭和四十九年十月二十三日大法廷判決に至るまでの一連の判例により、債権者が不動産の所有権を取得しようとするときは、その価額から債権額を差し引いた差額を清算金として債務者に支払うことを要する旨を明らかにし、債権者が債権額を上回る価額を有する不動産をまる取りすることを禁止したのであります。
この判例法理は、債権者が債務者の窮状に乗じて暴利を搾取するのを防止し、債務者を保護する観点から展開されたものでありますが、個別事案の解決を通じて展開された判例法理の性質上関係する各般の法律関係については、必ずしも疑問なしとしないし、立法的に解決すべき多くの問題点があるのであります。
そこで、この法律案は、判例法理を原則として承認しつつ、その法律関係を明確にして債務者の保護を図るとともに、債権者及び利害関係人の利害を合理的に調整しようとするものであります。
この法律案の要点を申し上げますと、第一は、代物弁済等による所有権取得手続の特則を設けたことであります。すなわち金銭債務の不履行があるときはその履行にかえて債権者が目的不動産の所有権を取得することを目的としてされた代物弁済の予約、停止条件つき代物弁済契約等の契約により、債権者がその所有権を取得しようとするときは、あらかじめ債務者にその旨を通知し、その通知が債務者に到達した日から二月の期間が経過しなければ、債権者は、その所有権を取得することができないものとしたのであります。これにより、債権者があらかじめ債務者から預り保管中の登記申請書類を利用して、債務者の不知の間に所有権の取得の登記をしても、その登記を無効とし、もって債務者の保護を図るとともに、この二月の期間を置くことによって、利害関係を有する第三者がその期間内に権利保全の手段をとることができるようにしたのであります。
第二は、債権者に対し清算義務を課したことであります。債権者は、前述の通知が債務者に到達した日から二月の期間が経過したときに不動産の所有権を取得することになるのでありますが、その時における目的不動産の価額が債権額を超えるときは、債権者は、その超過額に相当する金銭を清算金として債務者に支払い、債権債務関係の清算を行うべきものとし、この清算金の支払いの債務と不動産の所有権移転の登記及び引き渡しの債務とは同時履行の関係に立つべきものとしたのであります。さらに、これに反する特約で債務者に不利益なものは、原則として無効とし、債務者の保護を図ることとしたのであります。
第三は、清算金をめぐる利害関係人の争いを合理的に解決する方法を講じたことであります。代物弁済の予約による権利を保全するための仮登記がされた後、抵当権等の担保権の登記を受けた後順位担保権者は、仮登記権利者が債務者に支払うべき清算金について通知を受けるべきものとし、通知を受けた清算金の額に不満がないときは、債務者の有する清算金請求権を差し押さえることによって物上代位し、その権利の順位に従った優先弁済を受けられるようにしたのであります。また、通知を受けた清算金の額に不満があるときは、不動産の競売を請求し、その競売手続にこの仮登記権利者の参加を求め、仮登記権利者にも抵当権と同様の優先弁済権を認め、配当手続を通じて各債権者の利害を調整することにしたのであります。
第四は、債務者の受け戻し権、すなわち債権者が清算金の支払の債務を履行しないときは、一定の要件の下に債務者が目的不動産を受け戻すことができることとしたのであります。
第五は、以上の法律関係を、不動産の所有権以外の登記または登録制度のある財産権についての代物弁済の予約等にも準用することとしたのであります。
なお、このような手続を設けることに伴い、その円滑な運用を期するために、差し押さえを原因とする清算金の弁済供託及び第三の通知の拘束力、その他関係人の利害の調整に関する規定を設けるほか、この法律の制定に伴う国税徴収法等の関係法律の整理をいたしております。
以上が仮登記担保契約に関する法律案の趣旨及びその内容であります。
何とぞ慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00619780411/3
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004・中尾辰義
○委員長(中尾辰義君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時十分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/108415206X00619780411/4
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