1. 会議録本文
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000・会議録情報
昭和五十九年七月十七日(火曜日)
午前十時一分開議
出席委員
委員長代理理事 鹿野 道彦君
理事 久間 章生君 理事 浜野 剛君
理事 三塚 博君 理事 小林 恒人君
理事 吉原 米治君 理事 中村 正雄君
加藤 六月君 小山 長規君
佐藤 文生君 田中 直紀君
近岡理一郎君 中馬 弘毅君
中山 正暉君 林 大幹君
増岡 博之君 若林 正俊君
兒玉 末男君 左近 正男君
関山 信之君 田並 胤明君
西中 清君 森田 景一君
河村 勝君 辻 第一君
出席国務大臣
運 輸 大 臣 細田 吉藏君
出席政府委員
運輸省海上技術
安全局船員部長 武石 章君
海上保安庁次長 岡田 專治君
委員外の出席者
運輸省海上技術
安全局船員都労
働基準課長 和田 義文君
労働省婦人局婦
人政策課長 松原 亘子君
運輸委員会調査
室長 荻生 敬一君
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委員の異動
七月四日
辞任 補欠選任
河村 勝君 塚田 延充君
同日
辞任 補欠選任
塚田 延充君 河村 勝君
同月五日
辞任 補欠選任
田並 胤明君 村山 喜一君
同日
辞任 補欠選任
村山 喜一君 田並 胤明君
同月十二日
辞任 補欠選任
辻 第一君 三浦 久若
同日
辞任 補欠選任
三浦 久君 辻 第一君
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七月十一日
軽車両等運送事業者のタクシー営業類似行為規
制に関する請願(瓦力君紹介)(第七七一四号
)
は本委員会に付託された。
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七月三日
東北新幹線盛岡以北の早期着工に関する陳情書
(第三七八号)
国鉄旭川車両センター存置に関する陳情書
(第三七九号)
国鉄地域格差運賃の導入反対に関する陳情書外
四件(第三
八〇号)
地方バス路線の補助継続に関する陳情書
(第三八一号)
過疎地域におけるバス路線の維持確保に関する
陳情書
(第三八二号)
港湾施設の管理対策に関する陳情書
(第三八
三号)
近距離航空システムの整備促進に関する陳情書
(第三八四号)
三宅島官民共用空港の建設反対に関する陳情書
(第三八五号)
は本委員会に参考送付された。
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本日の会議に付した案件
船員法の一部を改正する法律案(内閣提出第八
四号)
――――◇―――――発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/0
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001・鹿野道彦
○鹿野委員長代理 これより会議を開きます。
本日は、委員長が所用のため出席できませんので、指名により私が委員長の職務を行います。
内閣提出、船員法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑に入ります。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。関山信之君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/1
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002・関山信之
○関山委員 最初に、まず大臣から、この法案にかかわって御所見を承りたいと思うわけであります。
御案内のとおり、この法律が昭和五十四年の国際連合総会において採択をされました婦人差別撤廃条約というものに関連をいたしまして、女子船員にかかわる規制の見直しを行う、こういうことでありますから、したがいまして、この船員法の一部改正はあくまでいわゆる男女均等法、そこでの成り行きを前提にしておるわけなんでありますが、御案内のとおりこちらの本体の方はまだ社会労働委員会で審議中のことでもありますが、しかし、この法律の改正に当たっては、運輸省としても当然雇用の分野における男女の平等な機会及び待遇の確保、こういう問題についてそれなりの御見解をお持ちになってこの法律を提案されておると思うわけであります。
この点につきまして、まず、女子船員の実態あるいは将来あるべき姿などを展望しながら、今回のこの雇用均等法の問題について大臣のお考えをお尋ねしておきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/2
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003・細田吉藏
○細田国務大臣 お答え申し上げます。
ただいま御質問の中にもございましたが、今回の法案は女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准に備えるものでございまして、その本体は労働省所管の社会労働委員会にかかっております雇用平等法案の制定が本体的なものだと思います。しかし、船員に関しましては労働行政を運輸省が担当いたしておりますので、船員法の一部改正はこれと並行してこれを提出することにいたしたものでございまして、男女雇用の平等を目指す世界的な潮流の中で男女の雇用機会均等をするのには最小限度必要なものは何かということを考えまして、それによって法案を改正し条約の批准に備えよう、条件を整備しようというものでございます。
古い日本的な観念から申しますと、女子が海で働くということについてはいろいろな障害がありますし、恐らく国民の皆さんの中にはそこまでしなくてもいいんじゃないかというような御意見もないわけではないと思います。しかしながら、これは世界的な傾向であるだけでなく、日本の女子の中にも既に商船大学校等に入学して海員を志すというような方々も出てまいっておる状況でございまして、将来船長、機関長、事務長、こういったような基幹的な職務にも意欲を見せておられる方々もございます。そういうことでございますので、そうした意欲のある方々、そして能力のある方々にハンディキャップを与えないということが本法の目的でございまして、これによってどこまで伸ばし得るかということについては将来の見通しは立ちませんが、少なくともそういう意欲があり能力のある方々を疎外しないということで立法をいたしたものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/3
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004・関山信之
○関山委員 大臣のいわば基本的なと申しましょうか、一般的なお考えはわかったわけであります。
ところで、そのこととかかわって本船員法の改正では、女子船員の就業制限の緩和、また母性保護という観点からの、ある意味では規制の強化と申しましょうかそういうものが出ておるわけでありますけれども、何分にも船舶の中における仕事というのは特殊であることはお話しのとおりでございますだけに、この辺の内容の改正についてもう一つ、まず大臣から御感想を承っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/4
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005・細田吉藏
○細田国務大臣 海上労働というのは、「板子一枚下は地獄」と昔は言われておりますような非常な激しい、そして特殊な労働でございます。これに婦人が進出をされるということは相当な決意がないとできないことだと思うのでございまして、全体として非常に望ましいことであるかどうかということはいろいろ議論があろうかと思います。しかしながら、こういった時代でございますし、現に海上労働をやりたいという希望の方が日本としましてもだんだんふえてまいっておるということでもございますので、条約の批准を機会にこれに対応する、対応するためにはどうしても夜間労働等の制限を撤廃しなければ仕事になりませんので、最小限度のところはやらなくてはいかぬというのがこの立法となっておるわけでございます。
一方、母性保護の問題でございますが、これは外国の立法例によりますと、母性保護等については規定をしないで、それこそ完全に男子女子の区別なしにやっておるという立法例もあるようでございます。あるようでございますが、我が国としましては、母性を保護するということだけは男女平等ということの中に含めて、母性の保護はあってもこれは男女平等であるという考え方で母性の保護は入れることの方が妥当であると考えたわけでございまして、何もかにも取っ外して完全平等ということがかえって平等ではなくて、母性を保護することが真の意味での平等につながる、かように考えたので、形の上では不平等のようでございますけれども、母性の保護について手厚くといいましょうか一応の規定を設ける、こういうことにいたした、こういうことでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/5
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006・関山信之
○関山委員 せっかくの御答弁をいただいておるわけでありますから、重ねてお尋ねをいたしたいのですが、船中労でもこの船員法の改正に当たりましては答申を出しておりまして、雇用管理の全ステージを対象とした均等措置を求めておるわけでありますけれども、先ほど来御答弁がありますように、何分にもその部分については勤労婦人福祉法の改正にゆだねる分が大きいわけでありまして、今巷間問題になっておりますのは、この勤労婦人福祉法の改正内容が、募集、採用それから昇進、配置といった全ステージにわたっての均等な立場を保障する、そのことについてすべてが努力義務で法律が始末をつけられている、あるいは罰則もなくしり抜けになっている、しかもこうした問題について、不平等な扱いを受けたときの救済措置も労使の自主的な解決というものを基本にいたしまして、行政は助言や指導、勧告というところにとどまっていて、まさに実効ある男女の機会均等を保障する法律体系になっておらぬじゃないか、こういうことになっておるわけでありまして、この辺の法律の、法律のと申しますか、大臣所管じゃないわけでありますが、しかしそれを受けとめる船員法を提案なさるお立場から、この辺の労働省サイドの対応というものをどのようにお考えになるのか。
あわせて、この際、ちょっとお尋ねをいたしておきたいのは、先日、本会議でこの法律が上程されました際に、六月二十六日でございますけれども、我が党の土井たか子副委員長が質問に立ちまして、あなたの女性観はと、こう尋ねましたところ、中曽根総理は、天の半分は女性が支えている、そして女性はよき妻であると同時にまたよき母であってほしい、こういう御発言があったわけであります。我が副委員長がミスであることを御承知の上の御発言ではなかったようでありますから、まあそのことは余り問題にもならなかったようでありますけれども、この辺の御発言については大臣はどんなふうな御感想をお持ちか、この機会にちょっとお尋ねをいたしておきたいわけであります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/6
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007・細田吉藏
○細田国務大臣 どうも総理大臣の答弁を私が批判をする立場にございませんので、何とも申し上げかねるのでございますが、私は、できるならば男女平等ということは可能な限り平等であるべきだと思っております。しかし、女子には人類の半分をしようというよりも、出産、育児という非常に重大な任務がございます。したがって、これらのことを孝之に入れるということは、男女平等に相反するものではなくて、こういうものを考えて、その中でできるだけ平等ということが本当の意味の男女平等じゃないか、何でもかんでも同じにやれというのが本当の意味の男女平等ではないんだ、このように私は考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/7
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008・関山信之
○関山委員 なかなか慎重なお言い回しなものですから、しっぽがつかめませんけれども。
実は、私があえてそのことをお伺いしたのは、もちろん大臣も御承知のことだと思うのですけれども、今回の雇用均等法は、いろいろな長い運動の歴史があるわけでありますけれども、一九六七年に男女の差別の撤廃のための宣言を出しておるのだそうでありまして、そこでの問題意識と、一九七九年の今度の条約の採択の間にはかなり質的な違いがある。その点は、御承知のとおり前の宣言の段階では、家事、育児というのは女性の役割であることを前提にいたしまして、この役割というものを留意した上で男女平等を実現することにしていたわけです。しかし、この条約では、家事、育児を両親の、男の親の方の責任というものも平等に持たせることによって、同時にまた母性の尊重と伝統的な役割分担の変更を求めていかなければ本当の平等じゃないということになっておるわけでありまして、そういう点では私は、総理の発言はこの問題に真剣にかかわってきた女性の皆さんからは大変ひんしゅくを買ったのじゃないかと思っておったわけでありますけれども、我が運輸大臣の方は少し前進をした御答弁でありますので、この問題はそう突っ込むことはやめます。
しかし、先ほど申し上げました全体としてしり抜けになっているというその辺については、所管が違うと大臣としてもなかなか御答弁しにくいのかもしれませんけれども、特に女子船員の場合は、これは後ほどお尋ねをいたしますけれども、先ほどもお話がございましたように商船大学へも今、女子学生が入っている、しかしそれはつい最近まで、昭和五十五年まで女子の入学が禁止されておったという状態なわけであります。そういうようなことを考えますと、全体的に古い日本的な観念からすると、海へ女をというのはいささかという御発言がありました。しかし、全体として対応がおくれているとすればかなり思い切ったいわば体制がないと女性の進出はこの分野ではなかなか難しいのではないか、そんなふうにも考えるものでありますから、重ねて勤労婦人福祉法の方の対応について、今修正案なども出て微妙な段階にありますから大臣の御発言としてはなかなかやりにくいでしょうけれども、ひとつお考えをお聞かせいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/8
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009・細田吉藏
○細田国務大臣 やや専門的なことは政府委員から答えさせていただきたいと思いますが、私は極めて常識的にお答えをさせていただきたいと思っております。
私など明治の人間でございまして、戦前の日本における男女の立場というものをこの目で見てまいっております。民法上の重大な差異、例えば妻の無能力なんというものがあったり、それは今から考えるとめちゃくちゃなものであった、こういうことであったと思うのでございます。
戦後、逐次、いわゆる男女平等の方向にいろいろな点で変わってまいりました。一番大きいのは、政治に参加することなども昔はなかったわけでございます。そうしてだんだん進んでまいって、今のでき上がっておる条約というのは、現在における一つのメルクマールといいましょうか、目標といいましょうか、男女間の関係における一つの理想として現在掲げられておるものではなかろうか、私はかように思うのでございます。
しかしながら、実際上は仕事の性質やらいろいろなものがございます。男の側も女性のやることをもっとやらなければならぬというような問題もあろうかと思います。いろいろな点で、そういう男女平等関係から見て、一つの理想的なところまでは必ずしもまだ一挙にいき得ないという点もあり、その方が国民の考え方にも合う、言うならば一つの理想と国民のコンセンサスというか考え方との調和点といったようなもの、そういうものを見つけていかなければいかぬのじゃないか、女子の方々の志向、意思とかそういうものも考えて現実に即したことにしなければならないのではなかろうか。そこらで条約と今度改正しようとしておる法律との間に若干の食い違いといいましょうか、若干の差が出てまいっておるのじゃなかろうか、私はこのように考えておりますが、やはり何といいましても一歩一歩着実に真の意味の男女平等の方向に向かって進んでいくということが必要ではなかろうか、かように考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/9
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010・関山信之
○関山委員 これ以上大臣の答弁を求めてもいたし方ないことなんでしょう。きょうは労働省の方からもおいでいただいておりますのでお伺いをしたいと思うのですが、最初に大変失礼なことを伺いますけれども、きょうは松原婦人政策課長、お見えになっていらっしゃるわけですね。あなたの場合は、今そういう位置にお座りになっていて、あなたの特殊なすぐれた才能が今婦人政策課長といういすを保障しているのか、それとも全体的に世の中の仕組みの中でこれはまあ当然のことというふうにお受けとめになるのでしょうか。社会労働委員会でいろいろな議論をしておりますが、ここは余り専門的な議論もいかがかと思いますので、まず最初にあなた御自身の勤労婦人福祉法をめぐっての御感想といいましょうか、お考えを承っておきたいのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/10
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011・松原亘子
○松原説明員 お答え申し上げます。
先生も御承知のとおり、公務員の職場といいますのは機会が均等であり、待遇が平等ということが保障されておりまして、そういう意味で意欲、能力がある女性はだれでもそれなりの待遇が受けられる、つまり男性と何ら差別されることなく職場で能力を発揮できるという仕組みになっているところでございまして、今先生御指摘になりましたようなことは、私非常にお答えにくい点ではございますけれども、そういう枠組みが保障されていたということの結果だというふうに私は認識しているわけでございます。したがいまして、こういう公務員における男女の機会の均等、待遇の平等ということが民間の企業におきましても広く確保されていくことは非常に重要なことだというふうに認識いたしているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/11
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012・関山信之
○関山委員 私も改めてこの官公庁職員抄録というのを拝見をいたしまして、各省どれだけ女性がこのリストに載ってくるのだろうかと思って拝見をいたしたのでありますけれども、ざっとめくって労働省の婦人少年局ぐらいなものですね。私は、建前からいえばあなたのおっしゃるとおりだと思うのですけれども、しかし実態がそうなっていないということも十分御承知だと思うのですが、また民間においてをやということになるのだろうと思うのです。
今議論がされておりますように、先ほど運輸大臣にお伺いしたことなんですけれども、一体こうした女性の雇用管理の全ステージにおけるいわば均等というものが本当に今の法体制で守り抜けるのかということは、私どもどう考えてみてもなかなか納得のいかぬところでありますし、ましてや救済措置などについても極めて不十分と言わざるを得ないわけなんですけれども、特に船員という特殊な職業形態について、今回この法律、十分皆さん方のところにもかかわりがあることなんでありますがゆえにそれなりに実態もお調べになり、どのような対応がいいかという御検討もあったんだと思うのですが、その辺はいかがでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/12
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013・武石章
○武石政府委員 私どもは、この法案を作成するに当たりまして、まず女子船員の実態調査を行っております。その結果、現在の女子船員の総数は昭和五十八年九月現在で約千四百三十名ということでございます。そのうち約七百四十名が長距離フェリーなどのいわゆる内航船舶におけるマリンガールと言われている人々、それから三百名弱が内航船舶の機関長、約百四十名が内航船舶、漁船の甲板部員ということになっております。それらで全女子船員の八〇%以上を占めるということで、そのほか内航船舶の船長とかあるいは同機関部員とか司厨員というふうに続いておるわけでございますが、外航船舶にありましては、長期にわたって航海に従事しているというような者は四十二名というものを数えるのみでございます。女子船員総数に占める割合は、そういう意味でその四十二名というのは三%未満にすぎないというような実態が明らかになっております。
これに関連しまして、さらに私の方は外航コンテナ船、長距離カーフェリー、内航の小型船に乗り組んでいる女子船員、そのほか管理者である船長などから、現在の船員法上の女子に関する特別規定であります危険有害業務の就業制限とかあるいは産前産後の休業というような母性保護あるいは生理休暇の規定、夜間労働の制限等につきまして、個々具体的に意見を聴取したところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/13
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014・関山信之
○関山委員 労働省の方にお伺いしたいのですが、その辺の実情については労働省サイドとしては実態の調査やら問題点などは一応フォローしていらっしゃるんでしょうか。
それから今お話がございましたように、確かに全体の女子船員の数というのは非常に少ないわけでありますから、そういう意味では、それ自体対象が少ないという意味ではウエートが低いということになるのかもしれませんけれども、そのこと自体がやはり女子が進出をしにくい分野であるということの裏腹でもあると思うんですね。実は女子船員の実態というのが一体どういうふうになっているんだろうかというようなことであっちこっち資料みたいなものも探したんですが、なかなかございませんで、皆さんもお読みになっていらっしゃるかもしれませんが、海員組合の雑誌で女子船員の特集をやりました。ことしの五月号ですけれども、そこでかなり現場で働いていらっしゃる女性の皆さんの声が収録をされておるわけです。ごらんになりましたかどうかあれですけれども。
それで、ここではもうこれは全部御紹介をしていくわけにもいかないのですが、特に女子船員の中の一番中心部分を占めるマリンガール、フェリーに乗っていらっしゃる女子労働者の皆さんなんですが、今回の船員法の改正の一つの焦点でもあります産前産後の休暇については、例えば一月二十四日、日本沿海フェリー所属「しれとこ丸」、「「結婚前に自己都合で退職するため特に影響はない」。」、二月六日、「日本カーフェリーの専用埠頭に出向き、日本カーフェリー所属の「美々津丸」」、ここでも「産前産後休暇については「結婚が決まると、自己都合で退職しているのが確かな実態」。」、二月十四日、「新さくら丸」、「産前産後休暇は「組合意見の前後各六週間を各八週間に延長する案は母性にとって重要である。ただし、結婚が決まると自分から退職せざるを得ない」。」、これだけしかないんではなくて、ずっといろいろな職場の実態の報告があるわけなんですけれども、ここではもうその大半が結婚をすると船をおりてしまわなければならないということになっておるわけです。
したがって、育児休業あるは再雇用保障というものについてこの海の上の職業というのはそれなりにきちんとした法的な対応や整備がなければ、これは幾ら私どもが男女の機会均等というふうに声を張り上げてみても、特殊な職業分野としてこれは実現し得ないのではないか、こう思うわけであります。特に今回女子船員の場合は今まで産前六週間というのが、妊娠中はもう全部全面的に乗船禁止ということにもなっておるわけです。この辺のことについて勤労婦人福祉法の関係ではどう対応すべきか。今のような対応ではとてもじゃないけれども、この女子船員の問題は解決ができないのではないか、かように考えますので、前段の女子船員の問題への対応といいますか、今までの実績と今の問題についてのお考えをこの機会に労働省側からお聞かせをいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/14
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015・松原亘子
○松原説明員 お答え申し上げます。
先生何点か御質問がございましたけれども、まず女子船員の実態を労働省として把握しているかどうかという点についてでございますが、私どもは民間企業に働きます女子労働者全体の労働実態ですとか労働条件等につきましては調査等いたして把握に努めているところでございますけれども、船員労働は運輸省の所管でもございますので、そういう形で特に女子船員の実態を取り出して把握をいたしているということはございません。
それから、今御指摘になりました調査結果は、申しわけございませんが私ども読ませていただいたことはございません。
それから、マリンガールが結婚してやめなければいけない実態にあるという御指摘でございますが、これはどういう仕組みでそういうことになっているかはいろいろあろうかと思います。例えば就業規則などに結婚退職制が定められているような場合があるかと思います。また、職場の慣行で結婚したらやめなければいけないようなことになっているというようないろいろな実態があろうかと思いますし、御本人みずからが結婚したらやめたいということでおやめになる、いろいろなパターンがあるかと思います。
ただ、これにつきましては例えば就業規則などで結婚したらやめなければいけないといういわゆる結婚退職制をとっているような場合につきましては、こういうものは既に昭和四十年ごろから公序良俗に反して無効であるという判決が相次いで出されておりまして、こういうものは船員労働以外の分野にもかなりあったわけでございますけれども、労働省といたしましてはそういう判決の積み重ねを踏まえまして行政指導をいたしました結果、現在ではもうこういった意に反した結婚退職というようなものはほとんど姿を消している実態にあるわけでございます。
それから、最後に御指摘のございました育児休業ですとか再雇用について、制度的に保障がなければ女予船員については働き続けることがなかなか難しいのではないかということでございますが、この点につきましては男女の機会の均等、待遇の平等の問題を長年検討をいただきました私どもの大臣の諮問機関でございます婦人少年問題審議会でもあわせて検討をお願いいたしたわけでございます。そこでの結論は、育児休業につきましては既に勤労婦人福祉法に事業主の努力義務として規定されているわけでございますが、これをいわゆる女子労働者の請求権、つまり育児休業することを企業に請求できる権利として法制化してはどうかという観点からの議論につきましては、最終的な取りまとめにおきまして、現段階におきましてはまだ普及率が一割くらいでございますし、そういうことを考えますと全企業にこれを強制するのは困難であって、現段階においては行政側がもう少し積極的な努力をやって普及促進を図るべきであるというのが多数意見だったわけでございます。そういうことを踏まえまして、今回の法案におきましては育児休業請求権の法制化はやめまして、そのかわり国としても積極的にこの普及促進を図りたいという見地から、今までございませんでしたけれども国が事業主に対して助言、指導その他の援助をするという規定を新たに置いたわけでございます。
それから、再雇用につきましては、これは最近一部の銀行ですとか流通関係で徐々に導入されてきておりまして、私どもそういうことを踏まえて最近調査いたしました結果では、こういう制度を持っている事業所は七%くらいでございまして、まだまだ一般化しているとは言えない状況にございます。そういうことがございますけれども、女性の場合は妊娠したり出産したり育児のために一たんやめて、それからまたもう一度子育てが一段落したら労働市場に出てきて働きたいという方も多いわけでございますので、そういう方たちが円滑に雇用機会が得られるということは非常に重要なことだと認識いたしまして、今回の勤労婦人福祉法の改正の中に新たに再雇用特別措置を事業主の努力義務として設けたわけでございます。これは、先ほどの婦人少年問題審議会の建議の中でも、女子労働者のそういう就業実態にかんがみまして事業主がこれらの女子を再雇用する制度を導入することを奨励することが必要だというふうに指摘されたことなどを踏まえたものでございます。
今、前段お話がございましたように、そういう点ではそれは意に反した結婚退職というのはないのかもしれません。しかし、実態はそういうことじゃなくて、いろいろな結婚してもなお仕事が続けられていくようなそういう条件が整ってない、そういう職場はたくさんあります。しかし、とりわけ船の場合は特別じゃないか。特に外航船などに乗れば何日か家をあけなければならなくなるわけですから、ある一定期間家庭を留守にしなければならないという特殊な職場でありますから、一般の陸上の労働であれば多少深夜労働があろうと時に忙しい労働があろうと、いわば家事、育児と仕事の両立というのは可能でもありましょうが、そういうものが全然ない職場だけに、私はこの間の勤労婦人福祉法の改正の過程で婦人船員の問題が取り上げられなかったことは大変残念に思います。
特に、育児休業あるいは再雇用といったものは確かに全体状況からすればおっしゃるとおりの数字かもしれません。しかし少なくともこの分野においてはきちっとした問題の指摘なり、今直ちに法律的な手が伸べられないにしても、問題の所在くらいはしっかりつかまえて問題提起をしていただくということがあってしかるべきだったのじゃないかと思うのですけれども、婦人政策課長として、今後この問題の発展の過程で女子船員の問題について積極的にこの実態もお調べになり対応もしていくということをぜひお答えをいただけるとありがたいのですが、その辺についてはいかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/15
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016・関山信之
○関山委員 後段の方は今回出されているいろいろな対応の御説明ですけれども、私は前段のところで不満が残るのです。それは確かに労働基準法に対応する部分としては船員法ということはありましょう。しかし、少なくとも今回の法律改正に当たっては、いわゆる男女の雇用管理の機会均等という面では皆さん方がすべての女子労働者をカバーしていらっしゃるわけでしょう。そういう点では船員法が特に特別な別建ての所管外の法律であるだけに、そこでの見落としがないのかということを、労働省の婦人少年局としてはきちっと実態くらいは一度はさわってごらんになる、問題はないのかということをとらえておいでになければならなかったのじゃないだろうか。きょうは婦人政策課長でいらっしゃいますから余り責任を詰めることもいかがなものかもしれませんけれども、大臣でもいらっしゃったら本当に私は不満に思います。ただ単に子四百人しかいないと言ってしまえばそれは問題外でありますし、そう思っていらっしゃるわけでもないのでしょうけれども、婦人少年問題審議会等の答申にも女子船員の問題が一つも入ってないということです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/16
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017・松原亘子
○松原説明員 今後、運輸省とも連絡をとりまして検討させていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/17
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018・関山信之
○関山委員 それでは、もとへ戻らせていただきます。
船員部長にお尋ねをいたしますが、今お話がございましたように、本体の方は私どもにとりましては非常に不十分、不満足という感じが否めないわけでありますけれども、幸いにしてと申しましょうか、いわばこの問題を最終的に扱う調停の機能を持つ機関が、勤労婦人福祉法では特別な委員会の設置が法律で決められておるわけでありますが、船員法の場合は船員中央労働委員会あるいは船員地方労働委員会というものにいわば権限委譲される、そういう体系になっておるようであります。
この船員労働委員会というものが船員法というものに基づいてあるいは独自の機関として存在をしておりますだけに、今労働省側に申し上げたような、そういういささかの不満もその部分でカバーはできないだろうか、こう思うわけなんですけれども、例えば船員法では大臣への建議権限なども労働委員会は持っておるわけでありますから、より積極的な対応をすべきではないかというふうに考えるわけであります。また、福祉法の第六条の読みかえでは、女子労働者の福祉対策への指針もここで決めることになるわけでありますけれども、この辺のことについてひとつお聞かせをいただきたいと存じます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/18
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019・武石章
○武石政府委員 お答えいたします。
いわゆる雇用平等法に基づく機会均等調停委員会の権限と同じように、船員中央労働委員会がこれを行うことになっているということになった経緯でございますが、女子船員の数とか就労実態から見まして、調停を実施するために私どものもとに新たな組織を設けるというまでの必要性はないのではないかということが第一点でございます。
それから、船員労働委員会は、今先生がいろいろ御質問の中でお触れになりましたように、従来から船員にかかわる一般的な審議機関として、あるいは雇用に関する調停、あっせんその他の機関として機能しておったわけでございますし、さらに、従来から船員にかかわる勤労婦人福祉基本計画の策定とかあるいは変更につきましての審議会としての機能を果たしていたというようなことで、婦人労働問題についての識見も有している、そういうようなことが理由でございます。
また、今回の船員中央労働委員会の行う調停等の権限につきましては、この法律に基づいて創設された権限でございますので、その内容は陸上における機会均等調停委員会の権限と同等のものであるというふうに考えているものでございます。それと、一般的に労働問題に関する審議機関としての船員中央労働委員会においてこのような検討が行われるということは今後あり得るというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/19
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020・関山信之
○関山委員 福祉法の規定に従っていけばそういう権限の制約もあるわけですけれども、しかし船員労働委員会そのものにまた独自な権限もあるわけでしょうから、そこで先ほど来申し上げているような再雇用の問題でありますとか育児休業等の扱いについて、積極的な独自な対応をこれからお考えになっていっていただけないものか、いくべきではないか、こういうことで申し上げておるわけでありますから、ひとつそのようにお受けとめをいただいてしかるべく対応をしていただきたいと思うのですけれども、そういうことは不可能なわけじゃないわけでしょう。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/20
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021・武石章
○武石政府委員 先ほどの労働省の方への御質問に絡んでの実態をちょっと申し上げまして、それとの関連でお答えしたいと思います。
特にマリンガールが結婚するとほとんど退職してしまうという御指摘がありましたけれども、マリンガールの就業年数というのは通常非常に短期間でございまして、結婚を理由として退職するというのが一般であるというふうに私どもの方でも聞いておるわけでございます。これは船内労働の実態が陸上と相違しまして毎日自宅に戻れるというものではなくて、一般の陸上労働者の場合とは異なって家庭生活との両立が困難であるということがその主な理由ではないかと考えておるわけでございます。
それから、船員労働委員会の方から、私どもがこの今回の法改正に対応いたしましていろいろな御審議をいただいたときには、「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保を促進するため、」「原則として一般の女子労働者についてとられる措置に準じた措置をとること。」、一応はそういう形での御答申をいただいているわけでございます。私どもとしましてはその線に沿って従来から今回の法改正についての内容をも固めてきたところであるわけでございます。
それから、船員労働委員会の権限でございますが、労働委員会の委員会としての権限としまして、労働組合の資格審査だとか、あるいは労働協約の拡張適用の決定とか、それぞれ労働組合法等に基づくいろいろな権限を行使しているわけでございますが、そのほかに諮問機関としての権限といたしまして、船員法とか労働基準法の改正あるいは施行に関連するいろいろな政令等の改正につきましていろいろと御審議をいただいている。あるいは船員職業安定法の施行あるいは船員の最低賃金とか災害防止、青少年の勤労福祉対策とか、各種の審議機関として機能いたしておりますので、そういう審議機関としての中でこの問題について今後検討するということは私どもとしても考えられることだというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/21
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022・関山信之
○関山委員 労働省の方に苦情を申し上げましたけれども、運輸省サイドでも、やはり数が少ないとか特殊な職場だとか、そういう常識や観念がつきまとっておるものですから、結局今回の場合もそういう意味での実態調査みたいなものが不十分だったんじゃないだろうかという感じがいたします。
先ほどのレポートを見ましても、やはり結婚してからもできれば仕事をしたいという声だってたくさんあるわけですし、現実にはそういうものがなかなか保障されておらぬ。海員組合というのは、船員部長御存じのとおり、組合としてはなかなかしっかりしておりますから、さっき労働省の方から御答弁のありましたように、就業規則でどうこうというようなことは余りないんじゃないか、私も詳しくわかりませんけれども。それだけに特殊な分野というふうに切って捨てないで、ぜひとも積極的な対応をお願いをしておきたいと思います。
とりわけ、先ほど大臣への御質問のときにも申し上げたのですけれども、昭和五十五年に東京商船大学が、募集要項の改正によって、初めて女子の入学を認めた。私もこれは意外な感じがいたしたのでありますけれども、数は少ないわけでございますが、ことし初めて卒業生が出ていくということのようであります。それだけにこの面でもぜひ今後の対応にまちたいわけですが、一体どのような経過でこうだったのか。他の養成機関ではこういう差別はもう今ないのかどうか。他の養成機関と申しますのは、幾つかありますが、商船大学は別にしまして、商船高専でありますとか海員学校とかそういうところではそういう差別はないのか。それから就職は今後の問題ですけれども、これに対する対応などについてお考えを伺っておきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/22
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023・武石章
○武石政府委員 東京商船大学に女子学生が入学いたしましたのは、先生がおっしゃるとおり、五十五年にオープンいたしまして五十六年からでございます。それで、商船大学におきましては、先ほど大臣からもお答え申し上げましたように、現在女子学生が一年生は二十一名、二年生が十六名、三年生が十三名、四年生が三名、今回卒業する第一回生、今乗船実習科におりますけれども、それが二人ということで、この数字はだんだん女子学生がふえてきたという数字でございます。それから商船高等専門学校でございますが、この商船高等専門学校については、六十年度から女子に対する入学制限を廃止するということにしておるわけでございます。(関山委員「まだ廃止しておらぬわけですね」と呼ぶ)はい、六十年度から入学制限を廃止するということにしております。それから海員学校におきましては、五十七年度から女子に対する入学制限は廃止したところでございますが、現在までのところ入学者はございません。志願者もございません。
そういう状況でございますので、その辺の推移を見ながら私どもとしても対応してまいりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/23
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024・関山信之
○関山委員 今の御答弁で、海が特殊だということで女子が疎外をされておったという実態が明らかにされておるわけですけれども、商船大学の数字で言えば今後だんだんふえていく傾向にあるという。この辺は、商船高専あるいは海員学校についても積極的に女子に門戸を開いていこう、そういうお立場にお立ちになるのでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/24
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025・武石章
○武石政府委員 私どもとしては、今回の法律の改正の趣旨もそういう方向でございますし、積極的に門戸を開いてまいりたいと考えておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/25
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026・関山信之
○関山委員 あと若干、時間もなくなってしまいましたので、具体的な問題について一、二お尋ねをしておきたいと思うのです。
深夜労働の問題なんですけれども、一つは、いわゆる船舶職員法対象船員以外の人たちに対しては現行規制を残すべきじゃないかというような御意見も組合側にはあったようなんですけれども、改正案は全面規制緩和としているわけなんですが、この点はやはり、スチュワーデス、司厨員等、職種に応じて、業務内容あるいは就航航路や労働環境等を考慮して運用をしていかなければならぬのじゃないか、緩和をしていかなければならないのじゃないか、こう考えるわけですが、その点についてのお考えが一つ。
それから、今回の法律改正では十八歳未満の扱い、従来は十八歳未満及び女子、こうなっていた深夜労働の扱いについては、十八歳未満だけ残しておられるわけですね。これとの整合性は一体、どういうことになるのか。ある特定の職種については、今、十八歳未満の少年にかかわっていると同じように深夜労働を特定の場合認めても、ある一定の時間の休養を与えれば、といったような扱いにしておくことの方がよかったのではないかと私は思うのですけれども、この深夜労働についてごく簡単にひとつ、御答弁をいただきたいと思うのです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/26
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027・武石章
○武石政府委員 女子の船員の深夜労働の禁止に関しましては、陸上の女子労働者については労働環境とか家庭責任等を配慮いたしまして、今後も制限規定を存続させたというふうに承知しているわけでございますが、海上労働の場合には生活と労働が船舶という一般社会から離れた同一の場所で行われ、家庭から離れて単身で船舶に乗り組んで海上労働を行うというのが通常でございます。家庭責任や家庭生活との両立を果たすことが本来的に無理な、特殊な労働であるということが一つございます。
それから、船舶における海上労働と申しますのは、代替要員が乏しいのが一般的な状況でございまして、航行中においては夜間においても当直を絶えることなく続けなければならないという特殊な労働であるということ、女子船員にとりましてもそれらの要員として夜に働く必要性が高いというようなこと、このようないわゆる海上労働の特殊性が存するということに関しまして、陸上労働者とは異なった深夜業の制限を存続させる必要性というものが乏しいというふうに考えられ、女子船員の今後の雇用機会の拡大の観点から、今回の法改正では、妊産婦を除いて一般の女子船員については規制を撤廃することにしたところでございます。
それで、マリンガールでございますが、法改正に当たりまして、マリンガールについて一般の女子船員と違う見地から、例えば夜間労働の禁止規定を存続するというような御意見があったわけでございますが、そういうような御意見もあったところでございますので、私どもとしましては今回の船員法の施行に当たっては、本件に関する船員中央労働委員会からの答申にございますように、女子船員の従来の労働実態にかんがみて、女子船員の就業上の不安がないように十分に配慮した法の運用を行っていきたいというふうに考えているところでございます。
なお、女子船員の深夜労働の禁止に関しましては、現在の船員法の規定によりまして、深夜労働につきましてもサービス業務とか旅客の接客業務というようなものについては行政庁の許可を得まして解除することができるといっただし書きがございます。これは二十四時を含む九時間の休養を与えるということを前提に置いてでございますが、そういう許可に基づいて実際には二十四時までの深夜労働をかなりやっているのが実態でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/27
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028・関山信之
○関山委員 その辺はひとつ十分実態を踏まえて御対応をいただきたいと存じます。
最後になりますが、これはぜひひとつ大臣からお答えをいただけるとありがたいと思うのですが、今は専ら女子船員の問題について申し上げてきたわけでありますけれども、しかし考えてみますと、先般、港湾運送事業法の関係で港湾労働者の雇用の問題をいろいろと議論をいたしました。同じようにこの船員の問題も、これは一般の男性も含めて雇用の問題が日々深刻になっておるという実態があるのじゃないかと思うのです。ただ、これもまた、内航、外航ともに厳しい経済環境の中にあるとはいえ、将来に向けていわば日本海運というものを守るというような点につきましては、船員確保対策というのはまさに国家的な見地から考えていかなければならない問題じゃないだろうかというふうに考えるわけです。船員の年齢構成なぞについても実態はますます高齢化が進んでおるようでありまして、新規採用の抑制やら、それぞれの企業が厳しい実態にある。
この前の港湾運送事業法のときの議論の中にもございましたように、まさに今、日本株式会社は生産過程における合理化というのはとことん進んじゃっておるわけでありますから、これ以上合理化のしようもないところまで来ている。したがって、流通過程に専らそのしわ寄せが来て、今海も港もあるいは国鉄もみんなそこへ一挙にしわ寄せが出ているという感じがするんですね。私はそのことについてはさまざまな角度から日本の将来のことを考えて特に海の問題は対応もしなければならないのでありましょうし、また雇用問題ということになれば、これは一国鉄、一海員組合、一港湾労働者の問題というよりは、これだけあっちでもこっちでも雇用問題が激しくなってまいりますと、優等生で来た日本資本主義も、この面では今まで失業の問題というのは諸外国と比べても唯一、優等生で来たわけですけれども、大変深刻な事態を今招きつつあるのではないか。ということになりますと、雇用問題というのは、かなり政策的に、一番このしわ寄せを受けている流通過程におけるさまざまな問題に積極的な手だてが講じられなければならないのではないか。
きょう、UNCTADの便宜置籍船の会議が始まったようでありますけれども、仕組み船やマルシップの問題なぞ、これは別な機会に海の問題でまたいろいろとお話を伺わせていただきたいと思っておりますが、この辺、全体の船員の雇用確保という問題についてのお考えを最後にお伺いをしながら、なお、その中における女子船員の位置づけについてお尋ねをいたして、私の質問を終わりたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/28
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029・細田吉藏
○細田国務大臣 非常に重大な問題であると思います。女子の雇用の問題につきましては、今回の法改正は前向きな方でございまして、雇用の機会を拡大するということになることは確実だと思います。
全体の雇用の問題についてはどう考えるかということでございますが、海運の合理化ということになるとどうしても船員の問題が問題になってまいります。どうしても最小限度の船員で船を動かすという方向でございます。また、おっしゃるように船員の高年齢化も進んでまいっておる、こういうことでございますので、船員の雇用問題というものは基本的、本質的に非常に大きな問題をはらんでおる、こういうふうに考えるべきだと思っておるわけでございまして、これをどうするかということは、私ども今海運造船合理化審議会で将来の海運造船についてどうするかということをいろいろお考えいただいておりますが、これともあわせまして、どうしても政府がこれと真剣に取り組んでいかなければならぬ、基本的に非常に困難な問題を含んでおる問題で、これを単に労使関係に任せるというようなわけにはまいらないというふうに私は思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/29
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030・関山信之
○関山委員 ありがとうございました。終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/30
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031・鹿野道彦
○鹿野委員長代理 森田景一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/31
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032・森田景一
○森田(景)委員 今回の船員法一部改正法案は、先般の大臣の趣旨説明にもありましたように、昭和五十四年の国際連合総会において採択され、昭和五十五年七月に我が国が署名した女子に対する差別の撤廃に関する条約の批准に備えるための国内法令整備の一環として、女子船員について、その特別規定の見直しを行うとともに、母性保護の充実を図ろうとするものである、こういうことでございます。
この婦人差別撤廃条約第十一条では、母性保護を目的とする特別措置を除いて婦人労働に関する特別の制限を設けることは原則として認められず、また募集、採用、昇進、教育訓練、退職等について男女のいわゆる雇用平等等を確保することが規定されているわけでございます。船員法の改正についても当然この精神が尊重されなければならないわけでございます。この点について大臣はどのようにお考えでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/32
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033・細田吉藏
○細田国務大臣 今おっしゃいましたように、女子船員の募集、採用、賃金、配置あるいは昇進、教育訓練、定年、退職等について男女の差別をなくするということが当然考えられなければならないと思っております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/33
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034・森田景一
○森田(景)委員 そういうことでございますから、女子船員の募集とか採用、賃金、配置、昇進、教育訓練、定年、退職等について男女の差別は当然禁止をされなければならないわけでございます。この点については大臣も同じでございますか。
〔鹿野委員長代理退席、久間委員長代理者
席〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/34
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035・細田吉藏
○細田国務大臣 建前としては禁止するという努力義務になっておりますが、罰則がない、こういうことでございますので、強制力について非常に欠けるものがあるということは率直に認めざるを得ないと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/35
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036・森田景一
○森田(景)委員 大臣は最初からもう手を上げていらっしゃるので、それ以上詰めても仕方がないと思いますが、とにかくこの婦人差別を撤廃するという条約の成立のために船員法が改正されるわけでございます。これは本体の方の審議は別の委員会でやっているわけでございます。運輸大臣としてはそういう見解である、こういうふうに承っておきたいと思います。
今申し上げましたけれども、今回の船員法改正案につきましては、雇用機会均等法が成立しなければ実効は上がらないわけでございます。この点について労働省との連携はどのようになっているのか、その辺について大臣の御見解をお聞かせいただきたい。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/36
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037・武石章
○武石政府委員 今回の法律案を作成するに当たりましては、私どもと労働省との間で緊密に連絡をとりながら作成に当たったものでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/37
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038・森田景一
○森田(景)委員 先ほどもいろいろとお話がございましたけれども、女子船員が非常に少ないわけでございまして、この女子船員の雇用という問題についてはいろいろとこれから大変な問題になるのではないかと思っておるわけでございます。今回の船員法改正案及び雇用機会均等法案が成立いたしますと、法律上の男女の雇用機会の均等化、母性の保護が図られることになるわけでございます。しかし、雇用実態として女子船員の就業が進むかどうか、効果については非常に疑問が多いと思うわけでございます。
私は二点疑問がございまして、一つは現在でも船員は海運不況とかあるいは船員制度の近代化等の要因によりまして余剰船員問題が顕在化、恒常化しているわけでございます。
それから第二点は、船員の中に占める女子の比率は陸上の全労働者に占める女子の比率と比較しまして、極端に低いわけでございます。大臣も御存じのとおり、船員数としては二十二万五子余人、このうち女子船員数が一千四百数名、比率としまして〇・六四%、それから親族のみの船員法の適用除外者を除きますと、女子船員数は千四十二人、全体として〇・四六%、このように女子の船員は非常に低いわけでございまして、陸上全労働者数が四千二百五十八万人、そのうち女性労働者が千四百八十六万人、全体として三分の一、三四・九%が女子労働者である、こういうことで、船員の中に占める女子の比率は非常に低いわけでございます。
先ほど大臣からもお話がございましたが、船舶作業という職種は従来は女子の職業としては極めて特殊な職種であった、こういうことがあったと思うのです。こういう状況でございますけれども、そういう中で若干質問をしていきたいと思います。
法的には整備されるとしましても、女子が船員として雇用される環境は整っていないのではないか、こういう現状だと思います。この点についてお答えをいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/38
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039・武石章
○武石政府委員 今回の法改正によりまして、今後女子船員の雇用がふえるかということについての御質問だと思います。
お答えいたしますが、今回の法改正は、女子が船員として就労することを実質的に制限していた差別規定であります夜間労働の制限とかあるいは必要以上の危険有害業務への就業制限を見直すというものでございまして、これによりまして、女子船員の雇用の機会は大幅に拡大すると考えております。
ただ、先生が御指摘のように、女子船員を取り巻く情勢といいますか、非常に厳しゅうございます。海運業界の長期不況ということもございます。それから、それに基づく日本の船員の過剰状態、それから海上労働に対する一般女子の認識などから見ましても、女子の船員が急激に増加するということは当面考えがたいわけでございますが、商船学校に対する女子の入学者が、その門戸を開放して以来着実にふえてきているというような状況も一方にあるわけでございます。こういう中で、当面急激に増加するとは考えにくいところでございますが、着実に増加する機会といいますか、そういう機会だけは少なくとも確保されたというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/39
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040・森田景一
○森田(景)委員 政府の方としては、女子船員は今後ふえるのではないか、ふえる見込みであるという今の御答弁だったと思うのですけれども、本当にそうあってほしいと思います。
一方では、それでは雇用主といいますか船主の側としては、こういう問題についてどう考えておられるのか、わかりますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/40
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041・武石章
○武石政府委員 船主サイドから個々に直接私どもとして聞いたわけではございませんが、今回のこの婦人差別撤廃条約を批准するための法体制の整備という過程で、船員中央労働委員会その他で、労働側、使用者側、公益側と三者構成でかなりな議論をやってまいりました。そういう中で、やはり船主サイドとしても、こういう実質的な差別となっておるような条件を解除する二とが、それによって女子船員の雇用につながるということを十分認識した上で議論がなされておるわけでございます。
それで、現場の意見といいますか、例えば船長なんかの意見を聞きましても、こういう条件ができなければ、例えば船内で一般の男子並みに職員として使って働いてもらうのは大変しにくい、そういう意味では、こういう制限の撤廃が望ましいということを述べておりますし、使用者サイドとしても、こういう世界の情勢あるいはこの法律なり条約を批准するに至る最近における社会情勢というものを十分に認識して、船員の雇用の拡大というものを考えていただけるものと私ども考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/41
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042・森田景一
○森田(景)委員 女子船員の雇用拡大という方向に努力をなさっているということは非常に好ましいことであります。ただ、先ほどもいろいろと質疑の中でお聞きしておりまして、この婦人差別撤廃という問題については、なかなか浸透しにくい面がかなり根強く残っていると思いますし、特に、この船舶作業という問題が特殊な作業だ、こういうことでございまして、なおさら、そういう考えが根深く残っているのじゃないかと思います。
全女性労働者の職種別のパーセントなどをいろいろ拝見しますと、就職状況が非常に偏っている傾向が見られるわけでございます。しかし、差別撤廃ということになりますと、全職種にわたって、やはり同じように就職の状況が進展しなければならない、こういうふうに考えるわけでございます。そういう点について、国として、特に女子船員に限っての雇用促進対策というものはお持ちでございましょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/42
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043・武石章
○武石政府委員 お答え申し上げます。
女子につきましては、船員を志す者自体が極めて少数であるということは、先生から今御指摘のとおりでございます。女子に限っての雇用対策ということにつきましては、現在のところ、特に対策を講じているという段階ではございませんが、海員学校、商船大学等につきましても、女子に対する入学制限を撤廃しておりまして、今後とも女子が安んじて船員となるための教育訓練につき得るような環境整備に努めてまいりたいと思っております。今後そういう環境整備と申しますか、女子船員の雇用が促進されるような条件が徐々に社会的にも煮詰まってまいると思いますし、女子船員の認識といいますか意識というものも変わってくるのではなかろうかと思っております。そういう状況に対応しながら、私どもとしても考えていきたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/43
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044・森田景一
○森田(景)委員 環境整備という問題についても、船という一つの建造物の中で、女性が男性と同じ立場で働く、しかし、女性は女性としてのやはり本質があるわけでございますから、そういう設備の改善ということも当然行われなければならないと思うのですね。入浴あるいはトイレの問題とかいろいろあるのじゃないかと思います。そういう面については、今までどういうふうに改善されてきているか、実態は御存じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/44
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045・武石章
○武石政府委員 従来、長距離フェリーというようなもの以外には実態が余りございませんので、そういう設備が十分になされているとは言えない状況でございますが、例えば私どもが今度つくっております新「日本丸」という帆船では、女子と男子とを区別しまして、当然にそれに相応するいわゆる便所だとかあるいは寝室とか、浴室とかそういうものを区別したような設備をつくっておりますし、それとともに、特に大型船については今後、これはちょっと観点が違いますけれども、船員制度の近代化を進めて、だんだん近代的な船がつくられていくということになりますと、かつてのような非常に厳しいといいますか重量物を持ち上げるとか、非常に汚い作業で大変な作業というようなものがだんだん軽減されてくるというような状況になっておりますので、そういう新しい船をどんどんつくっていくという近代的な船の技術革新の中で、当然にそういう環境整備というものもなされていくというふうに考えておりますし、それは今後のそういう女子船員の雇用の情勢に応じて、当然に顧慮されなければならないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/45
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046・森田景一
○森田(景)委員 やはり今までが、船員というのが男性中心に労働が考えられてきた職種だったと思いますので、そういう点ではまだまだ女子船員を受け入れる環境づくりは不十分だと思います。今、答弁もございまして、これからの新造船については対策を進めていくというお話でございますけれども、しかし、女性の職場を拡大するという立場からいけば、今まである船舶についても、当然これは改造といいますか整備を進めなければならない問題だろうと思うのです。そういう点についてはどうお考えでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/46
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047・武石章
○武石政府委員 今後の女子船員の乗り組みの状況に応じて、当然に船の中でも環境整備が行われていくものと考えております。そういう条件が整備されなければ、やはり女子船員を乗せるということは非常に困難なわけでございますので、今後の女子船員の雇用といいますか、そういう状況に応じて順次そういう状況が進展してまいるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/47
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048・森田景一
○森田(景)委員 先ほども答弁ございましたけれども、船舶職員の養成機関であります高等専門学校といいますかあるいは商船大学、こういうところでの受け入れ態勢といいますか、こういうことは商船大学については現在、学生が千五百四十人のうち女性が五十四人、こういう資料があるわけでございます。ただ、現在までのところは、今年度の学生、来年卒業ですか、女性の卒業生が初めて出るということで、全然女性の就職というのはなかったわけでございますが、この高等専門学校とかあるいは商船大学での女子学生の受け入れについての今後の対応といいますか、こういうことについて当局としてはどう考えていらっしゃるのか、お答えいただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/48
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049・武石章
○武石政府委員 船舶職員の養成機関でございます商船大学、商船高等専門学校におきまして、特に商船大学につきましては、既に五十五年に門戸を開きましてから次第に女子学生がふえてまいって、最近では二十数名というところまで入学しておりまして、総計で五十五名の学生が在学しておるわけでございますが、一名は何か休学しているというように聞いております。
それから、商船高等専門学校につきましては、六十年度から女子に対する入学制限を廃止するということで私どもも考えておりまして、門戸の開放を新たにその面でしていきたいということでございます。
海員学校につきましては、五十七年度から女子に対する入学制限を撤廃しておるわけでございますが、現在のところは入学者はございません。もちろん、そういう女子学生を受け入れるについては、それなりの設備を私どもとしては整えているところでございます。特に海員学校につきましては、全寮制というようなこともございますので、当然そういうところも考えて募集を行っておるわけでございます。そんな状況でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/49
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050・森田景一
○森田(景)委員 商船大学における女子学生の応募状況、入学者はこういうことになっていますけれども、応募に対する合格者というのは御存じでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/50
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051・武石章
○武石政府委員 今ちょっと手元に資料を持ってきておりませんので、後ほどまた作成しまして、先生のところへお持ちさせていただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/51
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052・森田景一
○森田(景)委員 女子船員の雇用拡大ということもさりながら、やはり船員全体としての雇用という問題も重大な問題でございまして、最近特に船員の失業率が上昇傾向にあるわけでございます。この失業率の増加傾向の原因について、どういうところに原因があるか、その辺についてひとつ御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/52
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053・武石章
○武石政府委員 船員の失業率につきましては、御指摘のとおり最近増加傾向にございますが、それは汽船部門におきましては、外航海運にあっては、国際競争力を維持するための少数精鋭化、あるいは外国人船員との混乗とかあるいは海外売船というようなこと、内航海運におきましては、過剰船腹量の調整を図るための最高限度量の設定、あるいは倒産、事業規模の縮小等に基づくものと考えております。いずれも、海運界における不況の状況が非常に厳しいという状況下にあって、失業が増加しているということでございます。
それから漁船部門でございますが、諸外国におきます二百海里漁業専管水域の設定に加えまして、漁獲割当量の削減というようなこと、あるいは各種の規制強化などによりまして減船を余儀なくされているというのが原因であるというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/53
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054・森田景一
○森田(景)委員 そういう状況で、それでは、失業防止対策、こういうことについては当局はどのように対策を講じてこられたのか。特に、昭和五十二年に船員中央労働委員会で、「船員雇用対策の基本方針」というものが答申されているわけでございます。この「船員雇用対策の基本方針」は今日までどのように活用されてきたのか、御説明いただきたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/54
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055・武石章
○武石政府委員 船員の雇用拡大といいますか雇用対策に当たりましては、私ども、先生御指摘の答申を十分踏まえながら各種の施策を講じてきたところでございますが、その内容について申し上げたいと思います。
雇用対策を策定するに当たりまして一番考えなければなりませんのは、一つには、失業を未然に防止するための雇用安定事業というものと、現に失業の状態にある者に対する雇用促進対策であるというふうに考えております。
それで、その雇用安定対策といたしましては、まず第一に、内部登用制度を定着させるために上級の資格を受けさせる、そういう訓練を実施する、あるいはこれを受講させる事業主に対して助成を行うというようなことをやっております。
第二に、日本船員福利雇用促進センターという。ものが設立されておりますが、そこが開拓いたしました、外国船等に余剰船員を派遣する、そういう事業者に対しまして助成を行うということをやっております。また、外国船への乗船に必要な訓練というものもこのセンターにおきまして実施いたしまして、これに受講させる、そういう事業主に対して助成を行うというようなこともやっております。
第三番目といたしまして、海技大学校の分校におきます技能講習におきまして、陸上での就業に必要な技能資格を付与するというような教育訓練を行っております。
それから、本年度から船員保険特別会計からの補助で始めた事業でございますが、先ほどの日本船員福利雇用促進センターにおきまして実施しております能力開発事業というものの一環といたしまして、中高年船員の職業訓練では、陸の公共職業訓練校への入学の道を開くということをやっておりまして、これに受講させる事業主に対してやはり助成を行うというようなことをやっておるわけでございます。
それから雇用促進対策でございますが、雇用促進対策といたしましては、特定不況海上企業からの離職船員、国際環境の変化に伴う減船による漁業離職船員などやむを得ず離職をする船員に対しまして、船員の雇用の促進に関する特別措置法、船員となろうとする者に関する国際協定の締結等に伴う漁業離職者に関する臨時措置法というものによりまして、失業保険の延長給付あるいは職業転換等給付金というものの交付を行うというような特別の措置を講じておるというのが一つ。
第二に、船員職業安定所等にありましては、広域にわたって再就職の促進に努め、求人の開拓、職業相談、就職指導等についてきめ細かな積極的な対応を講ずるようにしております。
それから、日本船員の職域拡大を図るという意味で、先ほどの日本船員福利雇用促進センターを通じまして、外国船への乗り組みを積極的にあっせんするというようなことをやっておるところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/55
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056・森田景一
○森田(景)委員 きょうは、海上保安庁、それから労働省の方もおいでいただいたわけなんですけれども、時間が三十分ということで、時間がございませんので、次の機会に譲らせていただきたいと思います。せっかくおいでいただきながら申しわけございません。
以上で質問を終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/56
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057・久間章生
○久間委員長代理 河村勝君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/57
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058・河村勝
○河村委員 労働省は見えていますか。——まず労働省にお伺いをします。
今度の雇用平等法の関係については、労使、公益それぞれの側が意見が対立してまとまらなかったという異例の立法過程ですから、問題が方々にあることは当然でありますが、一番大きなのは、定年と退職、解雇については、一応罰則はないけれども、強行規定になっている。だけれども、募集、採用については均等な機会を与えるというだけの努力義務、それから配置、昇進については均等な取り扱い、これも努力義務ということで義務規定にはなっておらない。そこが一番問題なんだろうと思いますが、それの救済策といいますか、実効あらしめるために労働大臣は事業者が講ずるよう努力すべき措置について指針を定めることができるという規定が入っておりますね。一体この指針というのは大体どんなことをつくろうと思って考えておられるのですか、それをまず伺います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/58
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059・松原亘子
○松原説明員 お答え申し上げます。
今先生御指摘になりました指針は、募集、採用、昇進、配置という事業主の努力義務とされた事項につきまして、事業主がどういう方向に向かって努力するのかというその努力目標を明らかにするために策定するものでございます。
具体的に申し上げますれば、今企業の雇用管理におきましては、募集、採用、配置、昇進という分野におきましていろいろ男女異なる取り扱いが行われているわけでございます。例えば募集につきましては、例えば男子だけ募集するとか、逆に女子だけ募集するとか、それから男女とも募集するけれども、男子何名、女子何名といったような枠を設けて募集をするとか、それから女子についてだけ例えば自宅通勤者に限るといったような条件をつけるとか、それから年齢制限を採用に当たっての条件とする場合に、例えば女子は三十五歳未満、男子は四十五歳未満といったようなそういう条件の違いがあるといった事例がございますし、また配置におきましては、例えば一定期間ごとに配置転換をするというようなルールがある場合に女性をそういう一定の配転ルールに乗せない。それから、女性も配置転換を行うけれども、転居を伴う配置転換は女性には行わないといったような取り扱いも見られます。また、昇進につきましては、これが制度としてなっているかどうかというのは明確ではないわけでございますけれども、女性には昇進の機会がないとか、機会はあっても例えば課長までであるといったようなことをとっているというふうに、これは私どもの調査からも把握されておりますが、そういう企業もあるわけでございます。また、一定の昇進試験を合格した者について昇進させるというようなシステムをとっているところで、その昇進試験を女子には受けさせないといったようなこともあるように聞いております。
これらもろもろ男女異なる取り扱いがあるわけでございますけれども、これらすべてをその指針の対象といたしまして事業主に努力していただくようにするのか、それともどういうところを優先的にやっていくのか、これらにつきましては、法案にもございますように公労使で成っております婦人少年問題審議会に十分お諮りした上、具体的にその努力目標を指針として策定するということにいたしたいと考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/59
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060・河村勝
○河村委員 例えば、ことしあたり私も大分就職を頼まれて、いろいろ話を聞くと、女子については四年制大学出身者は採用いたしませんというような返事をもらう例がありますが、これなんぞは一体どういうことになるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/60
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061・松原亘子
○松原説明員 ただいま申し上げましたように、指針は具体的には審議会にお諮りした上決めることになりますので、今具体的に先生が御指摘になったような事案が指針として定められるかどうかということは具体的に申し上げられませんけれども、そういうことは当然審議会での検討の対象にはなると考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/61
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062・河村勝
○河村委員 実際差別扱いであるかどうかの判定というのは非常に難しいと思いますが、大いに勉強して実効あらしめるように努力をしていただきたいとお願いをいたします。
後でまたお伺いいたしますが、船員関係につきまして、女子船員に関する保護規定の法案でいえば九章の二の規定、これに対して適用除外の規定がありますね。船員法では「船舶所有者と同一の家庭に属する者のみを使用する船舶」となっていますね。労働基準法八条では「同居の親族のみを使用する事業」、表現がかなり違っておりますが、これは一体具体的にはどう違ってくるのですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/62
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063・和田義文
○和田説明員 先生御指摘の労働基準法の方の規定とそれから船員法の方の規定の差でございますけれども、実質的にはほとんど差はないというふうに考えておりますが、「同居の親族」と「船舶所有者と同一の家庭」との間には若干表現の差がございます。それには、ただいま申し上げましたように、実質的には差はないというふうに考えてはおりますが、「同一の家庭に属する者」とそれから「同居の親族」、「同一の家庭に属する者」と申しますのは「同居の親族」よりは広い概念でございまして、親族に限りませず実質的に家庭をともにしている者、例えば内縁の妻とかそういった者を含む概念でございます。そういうふうに考えておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/63
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064・河村勝
○河村委員 内縁の妻というのは非常に例外的なものであり、かつこれは裁判で争っても恐らく親族以上の者になるでしょう。ですから、そんなことじゃないはずで、わざわざ表現を変えたというのはそれなりの理由が、実質的な意義があるのでしょう。それでなければ労働基準法と同じでいいわけだから。別段検事の追及ではないから、率直に中身を言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/64
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065・和田義文
○和田説明員 先生御指摘のように、常識的に若干疑問を感ずる面があろうかと思われますけれども、これはある意味で労働基準関係の法律というのはかなり条約を翻訳して日本の法律にしたという面がございまして、その面からの差異が若干表現上は出ておるということでございますが、実質的な差はないというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/65
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066・河村勝
○河村委員 素直に読みますと、片一方は「同居の親族」、片一方は「同一の家庭に属する者」でしょう。家庭という言葉は法律用語としては非常にあいまいなんですよ。別段親子、兄弟、親戚でなくともそこらじゅうから連れてきて、同居人の形をとってそれで一緒におっても、やはり法律的には同一の家庭に属するとみなし得る余地がある、そういうつもりだと、いかようにも拡大解釈ができて適用除外ができてしまうのですよ。その点は一体どういうつもりでこの法律を書いたのか、本当は僕は基準法と同じにするのが正しいと思うけれども、はっきりした見解をここでもって確定してもらえばそれでもいいと思うので、少し明確に言ってください。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/66
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067・武石章
○武石政府委員 このように法律の書き方が違ってきた沿革というのは、恐らく私は内航海運の実態に由来するものではないかと思うものでございます。この法律は昭和二十二年といいますか、かなり戦争直後にできた法律でございますので、そのころは内航海運は非常に一杯船主というものが多うございまして、現在でも一杯船主というのはたくさん残っておりますが、そこでは、例えば俗な言葉でございますけれども、父ちゃん船長、母ちゃん機関長というようなことで、家族といいますか、その家庭がそのまま船が生活する場である、家庭であるというような形で、その中で一年じゅう生活をしているというような実態があったわけでございます。
そういう意味で、「同一の家庭に属する」という中では、特にいろいろな面での、労働面での例えば搾取とか、過酷な労働を強制するというようなことはないというような推定があったのだろうと思います。法解釈としては、私はちょっと確認しておりませんので、私の過去からの何といいますか経験で申しますと、そんなことではないかと思うわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/67
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068・河村勝
○河村委員 それじゃ答えにならないので、別段これは労働基準法以上に範囲を拡大をして、いろいろな人を入れ得る余地をつくるために書いたのではない、それをはっきり言ってもらえればいいのですが、どうですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/68
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069・和田義文
○和田説明員 先生御指摘の八十八条の八の規定で「船舶所有者と同一の家庭に属する者のみを使用する船舶については、これを適用しない。」、こういう規定をこの章全体について置いておる。それと同時に、船員法の第六条で、労働基準法の八条を準用しておりまして、そこで船員法についても労働基準法と同様に、同居の親族の場合には船員法は適用しないという規定がある意味でタブルでかかるようになっておりまして、したがって、労働基準法と船員法の間に差が法律上出るということは一切ないようになっております。それはダブルにかかるようになっています。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/69
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070・河村勝
○河村委員 そうはならないのですよ。労働基準法の前段でもって船員法は適用はないと言っておいても、それ以上広い範囲で適用除外があればそれは特別法で生きてくるのですよね。だからその法律解釈は間違いだ。だから、気がつかなかったら気がつかないでいいから、大臣、わざわざ拡大する趣旨じゃないということをちょっと言っていただければそれでいいのですけれども、いかがです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/70
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071・武石章
○武石政府委員 先生御指摘のとおり、私どもとしては、これはそういう適用除外の範囲を拡大するという意図のものとは全く考えておりませんし、そのように運用してまいりたいと考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/71
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072・河村勝
○河村委員 どうも変なことでひっかかってしまって時間がもうなくなってしまって、あと二つだけ具体的なことを伺います。
マリンガール、対象船員の半ば以上を占めるのですけれども、さっき実態を見て深夜業の制限解除について就業不安のないように法の運用を行うという答弁がありましたが、実際実態を聞きますと、私も自分で見たわけではありませんが、就業環境というのは決していいものではなくて、間々就業中乗客によって暴行を受けるというようなこともあるというふうに聞いていますが、その実態は知っていますか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/72
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073・武石章
○武石政府委員 暴行を受けるというような実態は私はちょっと存じませんが、深夜酩酊客が多少絡むようなことをするというようなことがあり得るという話は聞いております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/73
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074・河村勝
○河村委員 どうもこれは本当らしいので、飛行機のスチュワーデスとは就業環境が全く違うのですよね。ですから、この深夜業の禁止を解除すること、そのことに私は決して反対ではないけれども、そうした実態をよく調べて、それで法律が施行後も、一遍に法律で解除されたからいいやということで全部深夜業にするのではなくて、実態を調べて、それでそうした環境の悪いところを改善をされるまでは、これは単に労使間の交渉に任せないで、運輸省としてもチェックをして、そういう危ないところは深夜はやらせないというような措置をぜひ講じてほしい。いかがですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/74
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075・武石章
○武石政府委員 今回の法改正に当たりましては、先生御指摘のとおりマリンガールを含めて一般女子船員全体について夜間労働の禁止的規定を廃止するとかいうような等々の改正を行ったわけでございますが、御指摘のような御意見もございますので、改正船員法の施行に当たりましては、本件に関する船員中央労働委員会の答申にございますように、女子船員の従来の労働実態にかんがみ、女子船員の就業上の不安がないよう十分に配慮した法の運用を行っていきたいということを考えております。その意味で急激な変化ということはないでございましょうし、現実にそのような可能性もないと思いますので、十分そういう点に配慮してまいりたいというふうに考えております。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/75
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076・河村勝
○河村委員 それからもう一つ、実態的な問題ですが、八十七条の妊産婦の就業制限について「命令で定める範囲の航海」については、本人の申し出があって医師が母性保護上問題がないと認めたときには制限を解除してもよろしいという規定がありますが、この「命令で定める範囲」というのは、これは一体どういうものをお考えですか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/76
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077・武石章
○武石政府委員 「命令で定める範囲」と申しますのは、現在の内航海運とか漁業とかの実態に即しまして、沿岸漁業の場合あるいは内航海運でも最寄りの港に比較的短時間で戻れるようなそういう航海というようなものを定めたいと思っておるわけでございます。
これは特に妊産婦の場合などについて、二、三時間というような短時間内に処置をしないと非常に危険な状態になり得るということを前提といたしまして、どの程度にしたらよいかということは、十分専門家の意見を聞きながら定めてまいりたいと思っておるわけでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/77
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078・河村勝
○河村委員 時間がなくなったので終わりますけれども、労働省に最後にお尋ねをいたしますが、男女雇用平等というのは、法律でつくりましても、なかなか社会慣行というものが成熟しないと実効が上がらないという実態があるわけですね。ですから、この法律もそういう意味でかなり問題の多い法律でありますが、こういう法律をおつくりになるなら、まだ審議中なんですから、五年ぐらいやってみて、そこで見直して、もう一遍出直すという見直し規定というのを入れるのが一番妥当だと私は思うのですけれども、一体そういう議論はこれまでなされているのか、また政府としてはそういうことを考えているのか、その点をひとつお尋ねをしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/78
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079・松原亘子
○松原説明員 先生御指摘の点につきましては、私どもが法案を国会に提出いたす前に要綱を諮問いたしました婦人少年問題審議会のその要綱に対します答申におきまして、この今回の法案につきましては、今日の段階ではやむを得ないというのが多数意見であったわけでございますけれども、婦人差別撤廃条約の目指す姿に照らせばなお不十分な点があるということにかんがみまして、この関係法律の施行後適当な期間内にその施行状況を審議会に報告し、その審議結果に基づき、必要がある場合には法改正を含む所要の措置を講ずるべきであると考えるという御意見をいただいたわけでございます。したがいまして、労働省といたしましては、この答申を十分尊重して、社会経済状況の変化に対応してまいりたいとは考えておりますけれども、今先生おっしゃいましたような見直し規定を法律の中に入れるというところまでは必要ないというふうに考えているところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/79
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080・河村勝
○河村委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/80
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081・久間章生
○久間委員長代理 辻第一君。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/81
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082・辻第一
○辻(第)委員 今回の船員法の一部を改正する法律案は、婦人差別撤廃条約を来年批准するためにいわゆる男女雇用機会均等法というのが今提案をされているわけでありますが、この船員法の改正はこの均等法の労働基準法の改正部分に相当するということだと思うのです。
今回の均等法は、現行労働基準法上の女子の時間外・休日労働の制限、深夜業の禁止、危険有害業務の就労制限、坑内労働の禁止、生理休暇の権利を大幅に後退させるものということになっております。この労働基準法の婦人に対する保護規定というのは日本の具体的な条件のもとでの母性保護の見地から設けられたものである、私はこのように考えておるわけでございます。この規制を緩和することは、婦人労働者の労働条件を大幅に切り下げる、婦人労働者の健康と母性の破壊を一層進めるものであり、そのことは女子の就業をさらに困難にし、また家庭生活の維持をも困難にするものであるというふうに考えるものであります。
このような状況の中、婦人労働者が労働基準法の改悪反対、実効ある雇用平等法の制定をという声が大きく上がっております。また、国連の婦人差別撤廃条約にも、「母性保護を目的とする特別措置を締約国がとることは、差別とみなしてはならない。」、第四条第二項に明記されておるわけであります。雇用における男女平等とは母性の保護を当然の前提とするものであります。こういう立場から、産後休業の延長など妊娠、出産にかかる改善部分を除いて、さきに述べた改悪部分については強く反対をし、すべて削除することを要求してきたところでございます。こういう立場をまず明らかにして松原婦人政策課長にお尋ねをいたします。
労働基準法の改正案における深夜労働の原則禁止という考え方は、一番大きな柱は母性保護の立場である、それともう一つは、婦人の家庭生活と申しましょうか育児であるとか家事であるというようなことにかかわっているというふうに考えるわけでございますが、いかがでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/82
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083・松原亘子
○松原説明員 深夜業の禁止の規定は、私どもといたしましては、これは録性の保護のための措置というふうには考えておりません。これは今先生おっしゃいましたように、婦人差別撤廃条約四条二項におきまして母性保護は差別とみなしてはならないというふうにされておりますけれども、この場合の母性保護措置とは、妊娠、出産及び産後の期間における保護措置であって、妊娠、出産、保育等に直接かかるものであると解されているわけでございまして、この条約の解釈に照らしましても深夜業の規制が母性保護ということは言えないのではないかと思っております。
それから、この問題を長年御審議いただきました婦人少年問題審議会におきましても、深夜業の規制の問題は、母性保護という観点というよりむしろ家庭生活といいますか、女性が家庭生活と職業生活を両立させるための諸条件が十分整っていないとか、女性が家事、育児の負担を負っているということが就業に非常に大きな影響を与えているというような観点から議論された経緯はございますが、母性保護のために必要だという議論がなされたということはございません。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/83
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084・辻第一
○辻(第)委員 私は、深夜労働の原則禁止というのは、母性を保護する立場というのが非常に大事な立場だと指摘をせざるを得ないというふうに思うわけでございます。
私は一つの例を申し上げたいのですが、これは船員の方の例ではございません。私の地元の国立奈良病院の例でございますが、病棟の看護婦さん九十二名のうち既婚者が三十五名、このうち五十八年四月から五十九年三月まで一年間に妊娠をされた方が十八人でございます。このうち異常出産の方が十三人で七二%です。正常出産の人は五人で二八%です。異常出産の内訳を見てみますと、流産が二人、切迫流産が十人、この方は一カ月から七カ月の安静を要した方です。それから後期妊娠中毒が一人、実態は本当に深刻な状況であります。私もこの話を最近聞いたわけでありますが、本当にびっくりいたしました。国立病院でございますので、人間の命や健康を守る医療を国がやっていらっしゃる、そこの病棟の看護婦さんの実態が七二%が異常出産だということであります。松原課長、このようなケースをお聞きになったあるいは調査されてそういうことがあったということはございませんでしょうか。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/84
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085・松原亘子
○松原説明員 私どもも女子労働者の妊娠、分娩についてどういう状況であったかについては、ちょっと古い調査でございますが調査したものがございます。それによりますと、これは勤務の形態に着目いたしましてそれごとに集計をいたしておりますが、昼勤だけをやった者よりも深夜勤ですとか交代勤をやった者の方が異常出産の発生率は高いという状況が出ておりますが、これはその妊娠以前にどういう状況であったかということは十分把握されておらず、妊娠中にそういう状況であったというものを分類した結果でございます。
そういうことも踏まえまして、私どもは、そのほか労働基準法研究会の報告、大分前に出た報告でございますが、その報告をまとめるに当たりましての医学的、専門的検討の結果があるわけでございますが、それにもよりまして、妊娠中の深夜業ですとか時間外労働というのは好ましくないということが言われておりますことから、今回労働基準法の改正におきまして、妊産婦から申し出があった場合には時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならないという規定を新たに置いたところでございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/85
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086・辻第一
○辻(第)委員 こんな深刻なケースをお聞きになったり、調査でお知りになったことはありませんかというのが私のお尋ねなんです。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/86
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087・松原亘子
○松原説明員 調査はいろいろございまして、私どももいろいろなところから、労働組合等も通じて今先生の御指摘のあったようなことがあるということを聞いたことはございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/87
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088・辻第一
○辻(第)委員 婦人労働者の現場の実態、これはちょっと特殊な例とも言い切れないと思うのですが、大変な事態があちこちにあるというふうに私は思うわけでございます。こういうことですので、今度は妊産婦については一定の改善がとられましたけれども、妊産婦だけではなしに、そうでないときも、本当に女性の労働者の健康を守る、陽性を守るということから今度の均等法、労働基準法の改悪部分というのはどう見ても納得できない、何としてもこれは削除をされるべきである、重ねて強く要望をして、次に移りたいと思います。
次に、日本の婦人の船員といいますか女子船員の数は千四百三十二名というふうに聞いております。そのうち、先ほど来いろいろお話が出ましたマリンガールが七百四十二名ということでございますが、今度の改正の中で深夜労働の規制がなくなったということでございます。これに対してマリンガールの方が強く反対をしておられるということであります。本来、海上勤務というのは本当に過酷な勤務だと私は思うわけでありますが、その上にマリンガールの皆さん方の深夜の業務の規制が外されたということは、これは大変な問題だというふうに思うわけでございます。それでは婦人の健康を破壊をするということになりますし、母性を破壊をするということになろうかと思います。そのことはまた女子船員の職場をも狭めていくことになろうかと思うわけであります。いかがですか、マリンガールの皆さん方にとっては非常に健康破壊につながるし、また先ほど来少しお話がありましたけれども、深夜酩酊した方が絡むこととか、あるいは暴力というようなことも考えられるわけであります。私は、そういう点でいかがお考えになっているのかお尋ねをいたします。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/88
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089・武石章
○武石政府委員 マリンガールのことでございますが、現在の実態がどうなっているかということからまず最初にちょっと申し上げます。
現行船員法の八十八条、それと船員法の施行規則の五十八条に基づきまして「地方運輸局長の許可を受けて、海員を旅客の接待、物品の販売等軽易な労働にもっぱら従事させる場合」などにおいては、「午前零時前後にわたり連続して九時間休息させる」限り「午後八時から翌日の午前五時までの間において」女子の船員を作業に従事させてよいことになっております。
その許可の現状でございますが、五十七年では会社数で三十二社、船では百三十一隻、五十八年では四十一社、百六十四隻というような実態になっております。これは主としてマリンガールの実際の労働に関してこういう許可が行われているというのが実態でございます。
今回の法改正に当たりましては、マリンガールを含めて一般女子船員について、雇用機会の拡大の観点から夜間労働の禁止規定を廃止しまして、妊産婦についてのみ母性保護の観点から夜間労働の制限規定を存続させたものでございます。しかしながら、先生の御指摘のございますような御意見もございますので、改正船員法の施行に当たりましては、本件に関する船員中央労働委員会の答申にございますように、女子の船員の従来の就労実態というものにかんがみ、女子船員の就業上の不安がないように十分配慮した法の運用を行っていきたいと考えておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/89
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090・辻第一
○辻(第)委員 私は非常に大きな問題だと思いますね。その点で一私は、そこの部分、深夜労働の制限をなくすことは削除していただきたいと考えるわけであります。
ちょうど時間が参りました。もう少しお尋ねをしたいと思っておりましたが、危険有害作業の就業制限でございますが、冷凍庫内において長時間行う作業や三十キログラム以上の重い荷物の運搬または持ち上げ作業というようなものについては従来どおり就業制限の対象とすべき問題である、このことを重ねて要望しておきたいと思います。
最後に大臣に、女子船員の労働条件を改善をして健康や母性を本当に守っていくということでの御所見をお伺いしたいと思います。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/90
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091・細田吉藏
○細田国務大臣 おっしゃる御趣旨はよくわかるわけでございます。今まで制限しておったものを撤廃するわけでございますから、それだけ後退ではないかという御意見はそのとおりなんでございますが、何にいたしましても、雇用を拡大したい、働く意思のある人に本当に働いてもらいたいということのために、矛盾を感ずるわけでございますけれども、今回夜間労働等の制限を撤廃するということをやむを得ずやったということなんでございます。したがって、御趣旨のような点は、いろいろ今後の運用上の問題については十分考えて運用してまいらなければならない、かように思っておる次第でございます。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/91
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092・辻第一
○辻(第)委員 終わります。発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/92
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093・久間章生
○久間委員長代理 次回は、明十八日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。
午後零時八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/110103830X01419840717/93
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