1. 会議録本文
本文のテキストを表示します。発言の目次から移動することもできます。
-
000・会議録情報
平成八年六月五日(水曜日)
午前十時一分開議
━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第三十五号
平成八年六月五日
午前十時開議
第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
第二 外国船舶製造事業者による船舶の不当廉
価建造契約の防止に関する法律案(内閣提
出、衆議院送付)
━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
一、請暇の件
一、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との
間における後方支援、物品又は役務の相互の
提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政
府との間の協定の締結について承認を求める
の件及び自衛隊法の一部を改正する法律案
(趣旨説明)
以下 議事日程のとおり
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/0
-
001・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより会議を開きます。
この際、お諮りいたします。
泉信也君、白浜一良君、都築譲君からいずれも海外旅行のため来る七日から八日間の請暇の申し出がございました。
いずれも許可することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/1
-
002・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。
よって、いずれも許可することに決しました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/2
-
003・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) この際、日程に追加して、
日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件及び自衛隊法の一部を改正する法律案について、提出者から順次趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/3
-
004・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。池田外務大臣。
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/4
-
005・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
政府は、自衛隊と米軍との間の緊密な協力を促進し、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約の円滑かつ効果的な運用に寄与するため、並びに国際連合平和維持活動及び人道的な国際救援活動において自衛隊と米軍がその役割を一層効率的に果たしていくことを促進し、国際連合を中心とした国際平和のための努力に寄与するため、この協定を締結することにつきアメリカ合衆国政府と交渉を行いました。その結果一平成八年四月十五日に東京で、私と先方モンデール駐日米国大使との間でこの協定に署名を行うに至った次第であります。
この協定は、日米共同訓練、国際連合平和維持活動または人道的な国際救援活動に必要な後方支援において提供される物品または役務を自衛隊と米軍が相互主義の原則に基づいて提供する枠組みを設けるため、その提供、決済、移転の制限等の基本的な条件を定めるものであります。この協定は、十年間効力を有し、その後は、いずれか一方の当事国政府が協定終了の意思を通告しない限り、順次十年間自動的に効力を延長されるものとされております。
この協定の締結は、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用及び国際連合を中心とする国際平和のための努力に積極的に寄与するものと考えられます。
以上を御勘案の上、この協定の締結について御承認を得られますよう、格別の御配慮を得たい次第でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/5
-
006・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 臼井国務大臣。
〔国務大臣臼井日出男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/6
-
007・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 自衛隊法の一部を改正する法律案について、その趣旨を御説明いたします。
自衛隊とアメリカ合衆国の軍隊との間の物品または役務の提供を行うための枠組みにつきましては、これまで日米間で検討を続けてきたところでありますが、今般、日米間で合意に達し、四月十五日に、日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定の署名が行われたところであります。
本協定は、共同訓練、国際連合平和維持活動または人道的な国際救援活動に必要な物品または役務の自衛隊とアメリカ合衆国の軍隊との間における相互の提供に関する枠組みを設けているものでありますが、本協定に定める物品及び役務の提供を実際に自衛隊が行うことができることとするためには、自衛隊法を改正することが必要であります。
この法律案は、総理府の長たる内閣総理大臣等は、本協定の定めるところにより、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度においてアメリカ合衆国の軍隊に対し物品を提供することができることとし、防衛庁長官は、本協定の定めるところにより、自衛隊の任務遂行に支障を生じない限度においてアメリカ合衆国の軍隊に対し役務を提供することができることとすること等を内容とするものであります。
以上が自衛隊法の一部を改正する法律案の趣旨でございます。
何とぞ、慎重御審議の上、速やかに御賛同あらんことをお願いいたします。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/7
-
008・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。田村秀昭君。
〔田村秀昭君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/8
-
009・田村秀昭
○田村秀昭君 私は、平成会を代表して、ただいま議題となりました日米の物品役務相互融通協定の承認及び自衛隊法の改正につきまして、防衛に関する基本的事項を踏まえて、橋本内閣総理大臣及び関係大臣に質問をいたします。
まず、昨日発生したリムパックの事故について、事実関係と政府の見解を承りたいと存じます。
去る四月四日、衆議院安全保障委員会において新進党の西村眞悟委員が質問に立ち、臼井防衛庁長官に対し、自衛隊は軍隊ですかと質問いたしましたところ、通常で言う軍隊とは異なるが、国際法上は軍隊として取り扱われていると理解しているとの答弁でありました。
私は、ここで二つの問題点を指摘し、改めて自衛隊の最高指揮官たる橋本内閣総理大臣に、自衛隊は軍隊ですかとお尋ねしたいと思います。
問題点の第一は、F15戦闘機百五十機以上、P3C対潜哨戒機九十八機、イージス艦三隻、九〇式戦車百十両以上を保有する自衛隊が軍隊でないとなりますと、国際社会、とりわけアジアの近隣諸国から不信の念を持たれることになると考えられます。
第二は、自衛隊が国内においては軍隊でないということになりますと、国内で行われることが想定される自衛戦争で、侵略側に一九四九年のジュネーブ四条約における捕虜の待遇を拒否する口実を与えることになるのではないかと予想されます。捕虜は軍事裁判を受ける権利を持っているのでありますが、軍隊でない、軍人でないということになりますると、侵略側は裁判を経ずしてゲリラとして処断することができるという口実を与えることとなります。
そこで、改めて橋本内閣総理大臣に質問をいたします。自衛隊は軍隊ですか。
次に、自衛官はもちろんのこと、防衛庁の職員の方々は、入隊に際して、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め」ること、すなわち命をかけて国を守るという宣誓をいたすことは御承知のとおりであります。
平成七年十月十六日の参議院予算委員会におきまして、私は、当時の村山内閣総理大臣及び当時の橋本通商産業大臣に次のような質問をいたしました。
我が国土、国民の生命、財産を守り、国民が安心して生活できる社会を築くことは政治の基本であります。命をかけて国を守る人たちに対して、普通の民主主義国家は十分な誇りと十分な名誉を、地位を与えております。命をかけて国を守る人たちに対して国が名誉と地位を与えないような国、農民が農業から離れる国、船乗りが海離れをする国は必ず滅びるというのが歴史の教訓であります。命をかけて国を守るということの価値をどのようにお考えになっているのかという私の質問に対し、当時の橋本通商産業大臣は、「宣誓書の重みというものは、本当にどれだけ感謝をしても足りないもの」があると答弁されました。
ここで、自衛隊の最高指揮官である橋本内閣総理大臣に改めて質問をいたします。
命をかけて国を守ることの価値をどのようにお考えになっておられますか。国を守ることは崇高な任務であるとか宣誓の重みはどれだけ感謝しても足りないものであると御答弁なさると予想されますが、それではなぜ防衛庁が国家行政組織法上、総理府の外局となっているのでしょうか。これでは我が国は守る価値がない共同体であるということを天下に公言しているという意見もあります。
冷戦後、今こそ自衛隊の位置づけを明確にして、防衛庁を国防省に昇格させ、自衛隊を国防軍とするお考えはあるのかないのか、橋本内閣総理大臣にお尋ねいたします。
次に、国を守ることが崇高な任務であるならば、命をかけて国を守ることを誓った自衛官の最高位にある統合幕僚会議議長及び陸海空幕僚長がなぜ認証官ではないのでしょうか。橋本内閣総理大臣にお尋ねいたします。
次に、集団的自衛権についてお尋ねいたします。
歴代内閣法制局長官は、集団的自衛権を行使することは我が国の自衛のために必要最小限度の武力行使の範囲を超えるものであって憲法上許されないと答弁され、それを政府統一解釈であるとされてきております。また、国際法上、集団的自衛権を有していることは主権国家である以上当然であるとも答弁されております。しからば、保有はしているが行使できない権利とはいかなるものか、私どもを含めて大多数の国民が理解に苦しむところであります。
ここで、昭和三十四年十二月十六日の砂川事件の最高裁大法廷判決に際しての当時の田中耕太郎最高裁長官の補足意見を引用してみたいと思います。
今日はもはや厳格な意味での自衛の観念は存在せず、自衛はすなわち「他衛」、他衛はすなわち自衛という関係があるのみである。従って自国の防衛にしろ、他国の防衛への協力にしろ、各国はこれについて義務を負担しているものと認められるのである。
自国の防衛を全然考慮しない態度はもちろん、これだけを考えて他の国々の防衛に熱意と関心とをもたない態度も、憲法前文にいわゆる「自国のことのみに専念」する国家的利己主義であって、真の平和主義に忠実なものとはいえない。私は、この補足意見のとおりであると考える者の一人でありますが、橋本内閣総理大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
集団的自衛権を行使することは憲法上許されていないとの解釈に固執されるのであれば、極東有事に際して我が国の国益を大きく損なうことになると私は懸念いたしております。極東有事に際して集団的自衛権を行使しないことに伴う国損はどの程度大きなものになるとお考えなのか、橋本内閣総理大臣、池田外務大臣、臼井防衛庁長官にお尋ねいたします。
集団的自衛権の問題につきましては、形式的な論争に終わることなく、広く国民一般に理解できる実りのある議論がなされることを期待するものであります。
次に、日米物品役務相互融通協定いわゆるACSAについて、臼井防衛庁長官に御質問いたします。
本年四月十五日に署名されたACSAは、日米防衛協力の貴重な第一歩であると認識し、私も高くこれを評価するものであります。
しかしながら、ACSAの締結時期について見ますと、NATO諸国におきましてはベルギー等が一九八二年に締結いたしており、また、アジア地域におきましても韓国が一九八八年に締結しており、我が国はNATO諸国に比べて約十数年、アジア諸国に比べましても七、八年おくれているわけであります。我が国の締結は余りにも遅きに失したのではないでしょうか。臼井防衛庁長官の御所見を賜りたいと存じます。
次に、ACSAに関連して、日米間の物品・役務の転移は、日米共同訓練、国連平和維持活動、人道的国際救援活動の事態に限定されるとのことでありますが、日米がそれぞれ個別に訓練を行っている場合は適用事態には該当しないということは腑に落ちないところであります。私は、本協定が日米が個別に行う単独訓練にも適用されることを強く期待するものであります。臼井防衛庁長官の御答弁をお願いいたします。
最後に、極東有事に際しての物品・役務の相互支援につきましては、現在、政府・防衛庁において検討中であると承知しておりますが、私は、極東の平和と安定を維持するために作戦行動中の米軍に対して物品・役務を提供するいわゆる後方支援ができないようでは、日米安全保障体制の堅持はおぼつかないと思うものであります。極東有事の際の物品・役務の相互支援について、臼井防衛庁長官にお尋ねいたします。
最後に、私の所見を申し述べて結びといたしたいと存じます。
大東亜戦争中、南方特別留学生として日本に留学した経験を有し、マレーシアの独立をかち取り、ASEAN創設の功労者として名を残したマレーシアのラジャー・ダト・ノンチック元上院議員の「日本人に対するメッセージ」は、私の現状認識と全く同じであるので、読み上げさせていただきます。
かつて日本人は清らかで美しかった。かつて日本人は親切で心豊かだった。アジアの国のだれにでも自分のことのように一生懸命尽くしてくれた。
戦後の日本人は、自分たちのことを悪者だと思い込まされた。学校でも、ジャーナリズムも、そうだとしか教えなかったから、自分たちの父親や先輩は悪いことばかりした残酷無情なひどい人たちだったと思っているようだ。
だからアジアの国に行ったら、ひたすらぺこぺこ謝って、私たちはそんなことはいたしませんと言えばよいと思っている。そのくせ、経済力がついてきて技術が向上してくると、自分の国や自分までが偉いと思うようになってきて、上辺や口先では済まなかった、悪かったと言いながら、ひとりよがりの自分本位の偉そうな態度をする。そんな今の日本人が心配だ。
自分のことや自分の会社の利益ばかり考えて、こせこせと身勝手な行動ばかりしている。自分たちだけで集まっては自分たちだけの楽しみやぜいたくにふけりながら、自分がお世話になって住んでいる、自分の会社が仕事をしている、その国とその国民のことをさげすんだ目で見たりばかにしたりする。こんな人たちと本当に仲よくしていけるだろうか。どうして、どうして日本人はこんなになってしまったんだろう。
一九八九年四月クアラルンプールにて。
今の日本はまさにこのとおりであり、亡国の一途をたどりつつあると言わざるを得ません。
命をかけて国を守る人たちに地位と名誉を与えない国が、我が国憲法の前文に掲げる「国際社会において、名誉ある地位」をどうして占めることができましょうか。心を失った日本を立て直すのが、国民の負託を受けた我々政治家が果たすべき責任ではないでしょうか。
国民に選択された政権ではない橋本政権は、早急に解散をして国民に信を問うべきことを強く要求して、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/9
-
010・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 田村議員にお答えを申し上げます。
まず、冒頭、海上自衛隊リムパック派遣部隊の事故について御報告を申し上げます。
発生日時は、平成八年六月四日、現地時間十六時十二分、発生場所、ハワイ西方約二千四百八十キロの海上であります。当日の天候は晴れ、視界は約二十キロでありました。リムパックにおいて日米共同訓練中、護衛艦「ゆうぎり」が、近接する米海軍攻撃機A6型機をCIWSにより撃墜をいたしたというものであります。
その訓練内容は、A6型機が標的を曳航し、護衛艦「ひえい」、アメリカ海軍ファイフ、「ゆうぎり」の三隻で標的に対しCIWSを用いて対空射撃訓練を実施しておりましたところ、「ゆうぎり」が実射を伴わない射撃手順の訓練に引き続く最初の実射時にA6型機を撃墜いたしました。
損害の程度でありますが、機体は海没いたしました。そして、米海軍攻撃機A6型の搭乗員二名は海上自衛隊「ゆうぎり」の内火艇により「ゆうぎり」に救出され、ヘリによりアメリカ空母インディペンデンスに移乗、搭乗員は一名が顔面あるいはその他に軽傷を負っておりますが、残る一名は打撲のみであります。
今回の事故は、リムパック参加中の護衛艦「ゆうぎり」が訓練中発生させた事故でありまして、極めて遺憾であります。撃墜されました米海軍機のパイロット二名の方は海上自衛隊に救助され、幸い軽傷ということでありますが、大変申しわけなく思っております。
今後、この事故原因を徹底究明し、このような事故の再発防止に万全を期する所存であります。
次に、自衛隊は軍隊かという御質問でありますが、自衛隊は外国による侵略に対し我が国を防衛する責務を有するものでありますが、憲法上、必要最小限度を超える実力を保持し得ないなど制約を課せられており、通常の観念で考えられる軍隊とは異なるものであります。しかし、国際法上はジュネーブ四条約に言う軍隊に該当するものと理解をいたしております。
次に、私自身の答弁を引用して、自衛官の使命というものについての話をされました。
議員が読み上げられました部分のみではなく、私は自身の体験とし、
湾岸危機が湾岸戦争となり終結をいたしました段階で、我が国の国際的な評価は決して高くありませんでした。そのとき、ペルシャ湾に赴いていただいた海上自衛隊五百十一名の掃海艇部隊の諸君の努力というものがどれほど我が国の評価を救ってくれたかわかりません。当時を思い起こして、改めて感謝をいたします。ということを申し添えております。
私は、まさにこうした職務に日夜邁進してくれております隊員諸君に対し、心から敬意と感謝の気持ちを申し上げたいと思います。
防衛庁が総理府の外局となっている事由についてのお尋ねがございましたが、これは防衛庁設置当時の国情などにかんがみて、国家行政組織法上、総理府の外局として位置づけたものであります。
国防省あるいは国防軍という御意見がございました。
私は、防衛庁・自衛隊の組織につきましては、防衛庁設置法、自衛隊法などにおきまして所要の規定が置かれておりますし、防衛庁並びに自衛隊の諸君が我が国の平和と独立を守り国の安全を保つという任務を果たすため必要な体制は整備されており、国民もそれを認識しておられると思います。したがって、現在のところ、防衛力の整備あるいは自衛隊の維持運用などを適切に実施していく上で、この点に特段の支障があるとは思いません。
防衛庁を省にする問題につきましては、私は、防衛庁が総理府の外局として総理大臣の直轄下にあるこの現行制度はすぐれたものだと思います。また、自衛隊の名前も、今日、国民の中に十分定着しており、御指摘のようにあえて国防軍とする必要はないように思います。
次に、統幕議長や幕僚長がなぜ認証官ではないのかという御意見でありました。
認証官となっていない例えば政務次官あるいは事務次官、警察庁長官、海上保安庁長官など、私はこの問題は考慮すべき問題点もあると思っております。現在、この取り扱いを変えるということは考えておりません。
次に、砂川事件の最高裁判決の補足意見に関するお尋ねがございました。
しかし、判決における補足意見は、多数意見に加わられた裁判官がこれにつけ加えて御自分の意見を述べられたものであり、これについて政府の立場から特に所見を申し述べることは差し控えるべきものだと私は思います。
極東有事に際し集団的自衛権を行使しないことによる国損というお尋ねであります。
我が国は、集団的自衛権の行使を禁じる憲法のもとで、適切な防衛力を整備し、日米安保体制を堅持する、そのことによって我が国の安全を確保することといたしております。また、我が国周辺地域において我が国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合に、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ることなどにより、適切に対応することとしており、このような我が国の政策につきましてはアメリカを初め内外の理解を得ているものと考えておりまして、集団的自衛権を行使しないことにより国家的な損失をこうむっているとは考えておりません。
残余の質問は、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/10
-
011・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 総理からただいま御答弁がございましたとおり、極東有事に際して集団的自衛権を行使しないことにより国家的な損失をこうむっていることはないものと考えております。(拍手)
〔国務大臣臼井日出男君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/11
-
012・臼井日出男
○国務大臣(臼井日出男君) 先ほど、今回の事故について御質問がございまして、総理から御答弁をいただいておりますが、今回の事故は、リムパックに参加している護衛艦「ゆうぎり」が訓練中に米海軍A6型機をCIWSにより撃墜した事故でございまして、まことに遺憾でございます。撃墜されたパイロット二名の方には、幸いに軽傷とのことでございますが、大変申しわけないことをいたしたと思っております。
今後、事故原因を徹底究明し、このような事故の再発防止に万全を期す所存でございます。
なお、この旨を私から、今朝、ペリー国防長官にメッセージを送らせていただきました。
極東有事に際して集団的自衛権を行使しないことに伴う国損についてのお尋ねでございますが、ただいま総理及び外務大臣から御答弁申し上げましたとおり、日本国憲法のもとにおける我が国の防衛の基本的方針については、累次の機会に説明し、米国を初め内外の理解を得ているものと考えておりまして、集団的自衛権を行使しないことにより国家的な損失をこうむっているということはないと考えております。
次に、日米物品役務相互提供協定の締結が他国と比べて遅きに失したのではないかとの御指摘でございますが、NATO諸国や一部のアジア諸国が既にACSA協定を米国と締結していることは事実でございます。
政府といたしましては、このような事実も踏まえ、昭和六十三年以来、本協定につき政府部内及び米側との間で鋭意検討を行ってきた結果、所要の調整が整い、本協定の署名に至った次第であります。
防衛庁といたしましては、本協定をできるだけ早くに締結いたしまして、そのもとにおける日米協力の実を上げていきたいと考えているところでございまして、国会の速やかな御審議、御承認をよろしくお願いいたします。
次に、本協定の単独訓練への適用についてのお尋ねでございますが、日米物品役務相互提供協定につきましては、自衛隊と米軍の間で平素から相互支援の体制を確立しておくことが日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用を図る上で重要であるとの観点から、その導入について検討いたしてきたものであります。
この検討において、自衛隊と米軍相互のニーズを精査し判断をいたしました結果、共同訓練、国際平和維持活動及び人道的な国際救援活動を適用対象とすることで米側と合意いたしたものでございまして、単独訓練につきましては、自衛隊と米軍相互の具体的ニーズが乏しかったため、適用対象といたしてはおりません。
いずれにいたしましても、本協定は日米双方のニーズにこたえ得る効果的な協定であると日米間で理解をいたしているところであります。
次に、いわゆる極東有事の際の物品・役務の相互支援についてのお尋ねでございますが、先般の日米安保共同宣言においては、日米防衛協力のための指針の見直しを開始するとともに、日本周辺地域において発生し得る事態で日本の平和と安全に重要な影響を与える場合における日米間の協力に関する研究を促進する旨、明確にされたところであります。
また、総理の御指示によりまして、緊急事態対応策の検討、研究が政府部内で開始されましたが、その検討項目の一つとして対米協力が挙げられているところであります。
防衛庁といたしましても、種々の緊急事態において米国に対する協力を含め自衛隊がいかに対応するかについて、関係省庁やアメリカと協議しつつ真剣に検討、研究を行い、もって日米安保体制の信頼性の向上に努めてまいる所存であります。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/12
-
013・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 川橋幸子君。
〔川橋幸子君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/13
-
014・川橋幸子
○川橋幸子君 私は、自由民主党、社会民主党・護憲連合、新党さきがけを代表し、日米物品役務相互提供協定並びに自衛隊法の一部を改正する法律案について、橋本総理大臣及び池田外務大臣に質問させていただきます。
さて、質問に先立ちまして、昨日の共同訓練において自衛艦の米軍機に対する誤射の事故が起きましたことを大変遺憾に存じます。既にこの場で総理及び防衛庁長官から御答弁をいただいておりますが、与党三党といたしましても、二度とこのような事故が発生しないよう厳重な注意を求めるとともに、原因究明に全力を挙げていただきますことを要請したいと存じます。
さて、質問に入らせていただきます。本題に入ります前に、元従軍慰安婦の方々に対する女性のためのアジア平和国民基金について質問をいたします。
この基金は、戦後五十年の節目に当たる昨年発足し、北京で開催されました国連の世界女性会議でも政府代表から発言し、世界各国に紹介されたものでございます。一年を経ていよいよ事業が開始されるに当たり、御苦労を重ねてこられました大勢の関係者の方々がその成功を祈るような気持ちで見守っておられます。
前内閣からこれを引き継がれました橋本総理におかれましても既にさまざまな御尽力をいただいているところではございますが、確認の意味を込めまして、総理御自身の意のあるところを御答弁いただきたいと存じます。
本題に入りまして、日米物品役務相互提供協定の締結の意義についてお尋ねいたします。
この協定は、去る四月の日米首脳会談における日米安全保障共同宣言により、今後のアジア太平洋地域における平和と安定のための日米協力のあり方が示されたことと深くかかわるものでございます。このような中で締結されました本協定は、新たな日米関係のもとで新たな意義を持つものと考えます。総理の御見解をお願いいたします。
次に、本協定の適用範囲についてお伺いいたします。
本協定の第一条第二項では、この協定を、日米共同訓練、国際連合平和維持活動または人道的な国際救援活動の三つに限定しているところでございます。
この点に関しまして、先月三十日の衆議院外務委員会におきまして池田外務大臣が、戦闘時でありましても、直接戦闘行為に参加していない米軍部隊への物品などの提供は可能との答弁をなさいましたが、この点について改めて外務大臣の御見解をお伺いいたします。
次に、本協定とこれまでの我が国の基本方針であります武器輸出三原則との関係についてお伺いいたします。
本協定によって提供される物品・役務は、協定第六条によりまして、書面による事前の同意なしに相手国部隊以外の者に移転してはならないと規定しているところでございます。
昨年十一月の新防衛大綱の決定の際の内閣官房長官談話にも明らかにされておりますとおり、武器輸出三原則並びに国際紛争の助長の回避のための政府統一見解の基本理念を維持していくことが政府の方針として確認されているところであります。私は、平和主義国家日本として、これら基本方針を今後も堅持していかなければならないと考えておりますが、総理の御決意をお伺いさせていただきます。
次に、日米防衛協力の指針、ガイドラインの見直しについてお伺いいたします。
先週、このための日米安保事務レベル協議SSCの最初の実務者会合が開かれ、作業が開始されたところでございます。また、政府におきましては、緊急事態対応策の検討事項といたしまして、一、在外邦人の保護、二、大量避難民対策、三、沿岸・重要施設の警備、四、各種対米協力措置の四項目を挙げて作業の内容を明らかにされているところであります。この四項目の検討は妥当なものであり、冷静で真摯な作業が進められることが望まれております。
しかしながら、他方、さきの日米首脳会談の際、与党三党では、一、両国が今後とも地域的な多国間の安全保障に関する対話・協力を進めること、二、特に北東アジアにおきまして対話の場の創設が重要であること、三、核兵器のない世界を目指し積極的に貢献することとの趣旨の共同談話を発表したところであります。
政府にとってもう一つのさらに重要な課題は、我が国周辺においていわゆる有事を起こさせない外交努力、各国との間に信頼関係を醸成していく努力を日米が協力して着実に図っていくことにあると考えます。今後、政府においては、ガイドライン見直しのための四項目についての検討だけではなく、より大きな外交努力として安全保障対話、信頼醸成の促進について御努力いただきたいと考えますが、総理の御見解をお伺いいたします。
最後に、当面する外交課題について質問いたします。
北朝鮮に対する食糧援助問題については、このほど北朝鮮を視察された国際赤十字社・赤新月社連盟IFRCのウェーバー事務総長が食糧救援活動のために五百二十五万ドル必要であるとの見解を発表し、各国に対する支援要請を行ったところであります。他方、国連機関としての正式なアピールも近く出されるとの情報もありますが、我が国としましては、人道的な立場から、こうしたアピールには積極的にこたえていく必要があると考えます。
これらの今後予想される国際アピールにどのように対応していくおつもりか、総理の御見解をお伺いいたします。
最後に、ミャンマーとの関係についてお尋ねいたします。
周知のとおり、ミャンマーの軍事政権は、アウン・サン・スー・チーさん率います国民民主連盟の活動を制限するために、多数の国民民主連盟所属議員の拘束を行っているところでございます。これに対しまして池田外務大臣が拘束者の即時釈放を強く求められましたことは、各方面から評価されていると考えます。しかるに、今なお多くの関係者の方々が拘束を受けているのでございます。
このような状況下にありまして、我が国としましても、ミャンマー軍事政権に対する明確な姿勢を示していくことが必要かと存じます。当面、円借款の供与再開について慎重に対応していくとともに、場合によっては無償資金協力の中止を検討すべきであると考えます。
この点につきまして外務大臣の御見解をお伺いしまして、私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/14
-
015・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 川橋議員にお答えを申し上げます。
まず、冒頭、詳細は繰り返しませんが、今回発生いたしました事故は、リムパックに参加をいたしております護衛艦「ゆうぎり」が、リムパックにおける訓練中にアメリカ海軍A6機を近接防空システムにより撃墜した事故でありまして、まことに遺憾であります。撃墜されました米海軍機のパイロット二名の方は海上自衛隊により救助されまして、幸い軽傷ということでありますが、大変申しわけなく思っております。
御指摘のように、今後、事故原因を徹底的に究明し、このような事故の再発防止に万全を期する所存であります。
次に、女性のためのアジア平和国民基金につきまして、この基金の発足以来、関係者の方々の御努力によりまして各方面から多くの善意が寄せられるなど、国民運動としての広がりを見せております。
戦後五十年という歳月を経て、さまざまな問題が風化してきております時期でありますだけに、こうした国民の気持ちが集められ、対象となる方々にお届けされるということは最も望ましいあり方であると考え、これまでにもできる限りの御協力を申し上げてまいりました。
今後ともにこの基金の事業が所期の目的を達成できますよう、引き続き政府として最大限の御協力を行ってまいりたいと考えております。
次に、日米物品役務相互提供協定の意義についてのお尋ねがございました。
この協定を締結することによりまして、自衛隊と米軍との間で日米共同訓練や国連平和維持活動などに必要な物品・役務を相互に提供できる、そのための枠組みが設けられますことは、自衛隊と米軍の間の緊密な協力を促進する、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用に寄与する、同時に、国連平和維持活動などにおきまして自衛隊及び米軍がそれぞれの役割を一層効率的に果たしていくことを促進し、国連を中心とした国際平和のための努力に積極的に寄与するものと、そのように考えております。
次に、武器輸出三原則などに関する政府の見解についてお尋ねがありました。
政府といたしましては、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な運用及び国際連合を中心とする国際平和のための努力に積極的に寄与するというこの協定の意義などにかんがみ、この協定のもとで行われる武器などの提供は武器輸出三原則などによらないことといたしました。
今後とも、国際紛争などを助長することを回避するという武器輸出三原則などのよって立つ平和国家としての基本理念を引き続き尊重してまいります。
次に、安全保障対話、信頼醸成の促進についての御意見をいただきました。
アジア地域は、全体として見れば政治的、社会的な安定を増しつつありますが、依然として多数の国々の軍事力の近代化、朝鮮半島における緊張の継続など不安定性を内包しておりまして、御指摘のとおり、域内諸国の間で安全保障対話及び信頼醸成の促進を行っていくことが必要であります。
我が国としては、アジア太平洋における全域的な対話の枠組みであるASEAN地域フォーラムを初めとして、さまざまなレベルでの政治・安全保障対話を推進しているところであります。今後とも日米安保体制を堅持しながら、このような場を通じ安全保障対話・協力を積極的に推進してまいりたいと考えております。
国連機関から北朝鮮に対する食糧援助問題についてアピールが発出された場合、我が国はどう対応するのかというお尋ねがございました。
国連人道問題局は、先般、北朝鮮にミッションを派遣しておりまして、その結果を踏まえて近々アピールを発出することを検討していると承知しております。しかし、その内容などにつきましてはまだ確定しておらないようでありますし、いつ発出されるという日取りも確定をいたしておりません。
いずれにいたしましても、国連人道問題局から何らかのアピールが発出されました場合、アメリカ、韓国などと緊密に連絡をとりながら、人道的な立場のもとに我が国としての対応を検討していく所存でございます。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/15
-
016・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 川橋議員にお答えを申し上げます。
五月三十日、衆議院の外務委員会において私が答弁いたしましたのは、戦闘行為が行われているという意味におけるいわゆる有事においても、別途自衛隊と米軍が共同訓練やPKO活動等を行っていることがある場合に、その米軍に対してこの協定に基づいて物品・役務を提供することが協定の解釈の問題として排除されているわけではないということでございます。
他方、そうしたいわゆる有事において共同訓練あるいはPKO活動等を実施するかどうかにつきましては、個別具体的な事態に即して判断することになる、このように承知しております。
次に、ミャンマーに対する経済協力についてでございますが、これは民主化及び人権状況の改善を見守りながら、当面は既往継続案件や民衆に直接裨益する基礎生活分野の案件を中心にケース・バイ・ケースで検討の上、対応してまいります。
今後とも諸般の事態の展開を踏まえて、ODA大綱に沿って対処してまいる所存であり、円借款の再開あるいは無償資金協力につきましては、このような基本方針に沿って慎重に対応してまいります。
なお、今後ともミャンマーにおける民主化や人権状況の改善に向けて粘り強く働きかけてまいる所存でございます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/16
-
017・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 聴濤弘君。
〔聴濤弘君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/17
-
018・聴濤弘
○聴濤弘君 私は、日本共産党を代表して、日米後方支援・物品役務相互提供協定いわゆるACSAについて、総理並びに関係大臣に質問いたします。
去る四月十七日、クリントン米大統領の訪日に際し発表されました日米安保共同宣言は、日米安保条約が締結されて以来四十四年の歴史の中で三回目の重大な安保改定に当たるものであります。第一回は言うまでもなく一九六〇年の旧安保条約の改定であり、二回目は七八年のガイドラインの策定という事実上の改定であり、そして今回であります。
しかも、今回は、これまで政府が日米安保の建前としてきた日本防衛とも根本的に違い、アメリカの戦略に沿って日本以外のアジア太平洋地域の国々の紛争に自衛隊が米軍とともに共同行動をとれるようにしようとするものであります。昨日、重大な事故が起こったリムパック演習も地域紛争を想定したものであり、今日の日米軍事同盟の姿を世界に示すものであります。
総理、あなたはことし一月の施政方針演説で、「政府としては、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とならない」と述べられました。また、五月十七日の参議院本会議でも、我が党の笠井議員の質問に答える中で、我が国が「専守防衛を旨とする」国であると述べられております。
そうであればどうして、日本有事でないにもかかわらず、周辺諸国の有事で自衛隊が米軍支援の行動をとることができるのか、専守防衛の観点からどうしてこのようなことができるのか、説明していただきたいと思います。また、日米安保条約そのものに則しても、一体何条からそのような日米の共同対処が出てくるのか。さらに、昨年十二月の新防衛計画の大綱は、今回の共同宣言を先取りし、周辺有事への対処を自衛隊の任務として規定しましたが、一体自衛隊法の何条からそのような任務が出てくるのか、明確に答弁していただきたいと思います。
以上の基本点に立って、以下、協定の具体的内容についてお尋ねいたします。
第一は、これまでも争点になってきましたが、不明のままになっているACSAの有事への適用問題であります。
池田外務大臣は、衆議院外務委員会で、どこかの地域で米軍が有事に対処するために戦闘行動をしていても、米軍のほかの部隊が日本にとどまって他の活動をしていることはあると述べ、それへの物品・役務の提供は可能との見解を示されました。
それでは、例えば朝鮮半島で米軍が戦争を行っている場合でも、日本に残っている部隊にACSAが適用できるということになりますが、それで間違いありませんか。もしそれも有事の際の適用ではないというなら、一体有事の際の適用とは具体的に何なのか、総理及び外務大臣、はっきりとお答えいただきたいと思います。総理は有事法制の研究を始めるよう正式に指示されましたが、その中には日本周辺有事の際の対米支援が含まれております。その内容は、ACSA協定にも規定された後方支援、物品・役務の提供と大きく重なり合うのではありませんか。そうであれば、ACSAは米軍支援の国際法的枠組みをつくるものなのですから、有事法制を協定で国際的には先取りしたものとなるのではないでしょうか。お答えいただきたいと思います。
総理、アメリカがこの協定にかけているねらいは明白であります。一昨年、朝鮮半島情勢が緊張したとき、米太平洋軍準機関紙「星条旗」に、朝鮮で何らかの戦闘が起こればアメリカは直ちにジェット燃料や予備部品、技術援助を日本に完全に依存するようになるだろう、しかしそれが果たしてできるだろうか、前例のない日本の支援がなければ、アメリカは朝鮮で戦争を戦い、勝つことはできない、こう書いた記事を掲載しております。
政府は、ACSAは日米共同訓練、PKO、人道的国際救援活動に限定されると言いますが、実際にはそれらを名目にして朝鮮半島などの地域紛争にアメリカが軍事介入するのを保障するためのものではありませんか。お答えをいただきたいと思います。
第二は、憲法との関係の問題であります。政府は、従来、米軍の武力行使と一体になる支援は憲法の禁ずる集団的自衛権の行使に当たると言ってきました。後方支援と戦闘行動は一体不可分のものです。朝鮮半島で戦争が起こっているとき、朝鮮に向かう米軍に物品・役務を提供することは武力行使と一体ではないのですか。朝鮮に行くかどうかは知らなかったなどと言って言い逃れのできる問題ではありません。
秋山防衛局長は、共同訓練の終わった後に別のオペレーション、作戦行動に出ることを妨げるものではないと述べて、ACSAで提供される武器部品が米軍の戦闘行動に使われることがあることを認めております。これこそ武力行使と一体というものではないのですか。これはまさに集団的自衛権の行使ではないのですか。
さらに伺いたいのは、平時での提供も合憲であるとは言えないことです。
一昨年の朝鮮半島の緊張状況の際、米空母戦闘群が朝鮮周辺に展開されましたが、この理由について米太平洋艦隊司令官は、ハイチの例を挙げながら、強力な軍事力が外交に影響を与えることができると述べています。これは明らかに武力による威嚇によってアメリカの国家意思を相手に押しつけようとするものであります。共同訓練を名目にしてこのような米軍の威嚇行動に協力することは、武力の行使だけでなく威嚇を禁止した憲法に反するものであります。明確な答弁を求めます。また、重大なのは、武器部品の提供に関して武器輸出禁止の原則を適用外としたことです。
そもそも武器輸出禁止の原則は、政策判断で禁止しているのではなく、我が国の憲法が許さないところであることは明瞭であります。一九八一年、当時の園田外務大臣は、武器輸出とかあるいは軍事援助とは憲法によってできないのは当然でありますと述べております。それなのに、なぜ米軍に対してだけは憲法上できないことが認められるのですか。
総理は、提供される物品の使用は「国連憲章と両立するものでなくてはならない」と協定で述べられているので、憲法の理念に反しないとしています。しかし、国連憲章は、国際紛争の解決に当たって武力の使用を慎むことを基本としていますが、四十二条で、最終的に軍事的措置をとることも認めています。日本の憲法との違いはここにあります。国連憲章を引き合いに、憲法で定められていないことを行うことは許されることではありません。答えていただきたいと思います。
今、日本は、戦後最も大きな岐路に立たされていると私は思います。憲法の平和原則とは全く違って、また、日米安保条約のこれまでの建前とも違って、日本が他国の紛争に米軍とともに介入する道を開こうとしております。朝鮮半島問題にしろ台湾問題にしろ、アジア太平洋地域にある緊張状況と言われるものは、基本的にはそれぞれの国の内部問題に属することであり、それぞれの国の国民が自主的、平和的に解決していく問題であります。日本がとるべき道は、それを促進する国際環境をつくることにあるはずであり、他国の紛争への軍事的介入者になることでは断じてないはずであります。
憲法が示す平和の大道に沿って進むことこそ日本の選択する道であり、今日の政府の選択は歴史に重大な禍根を残す明確な誤りであることをはっきり述べて、私の質問といたします。(拍手)
〔国務大臣橋本龍太郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/18
-
019・橋本龍太郎
○国務大臣(橋本龍太郎君) 聽濤議員にお答えを申し上げます。
まず、我が国周辺の緊急事態に対し、専守防衛に徹しながら対米協力措置をとることができるのかというお話であります。
専守防衛などの防衛に関する我が国の基本理念に従い日米安全保障体制を堅持することは、新防衛大綱や施政方針演説においても確認しているところであります。このような基本方針のもと、対米協力措置を含め安全保障上の緊急事態において我が国としてとるべき対応などにつき、今後、真剣に研究、検討してまいりたいと考えております。
我が国周辺地域での緊急事態における対米協力措置と日米安保条約についてのお尋ねでありますが、このような場合の対米協力は、そのすべてが日米安全保障条約の規定に基づき行われるものではなく、我が国自身が憲法その他法令の範囲内で独自にとる措置も当然あり得るものと考えます。このような対米協力措置の具体的内容につきましては、今後、真剣に研究、検討していきたいと考えております。
また、自衛隊法上の根拠についてのお尋ねがございました。
対米協力の内容につきましては、個々具体的なケースによって異なりまして、その法的根拠についても一概に申し上げることは困難でありますが、いずれにせよ、かかる事態において自衛隊がどのような対米協力を行い得るかということにつきましては、法的側面を含め、今後とも十分検討、研究していきたいと思います。
朝鮮半島で戦争が行われているような場合に、日本に残っている米軍部隊に対しこの協定を適用することは可能かというお尋ねでありますが、この協定におきましては、平時、有事といった区分は用いられておりませんし、仮に御指摘のような事態におきまして日米共同訓練などが実施される場合、本協定に基づいて当該訓練などに必要な物品・役務を提供することは排除されないと考えます。
いずれにいたしましても、この協定に基づいていわゆる有事における米軍の戦闘作戦行動への協力として物品・役務を提供できないことは明らかです。
この協定が有事法制を国際的に先取りしたものというお話でありますが、この協定がいわゆる有事における米軍の戦闘作戦行動への協力としての物品・役務の提供に適用されるものではないことは明らかであります。
なお、先般、私から事務当局に対し、各種の安全保障上の緊急事態において我が国としてとるべき対応について十分研究、検討するよう指示をいたしましたが、その際の対米協力のあり方につきましても、この検討、研究の中で真剣に検討していきたいと思います。
この協定が実際は米国の地域紛争への軍事介入を保障するためのものではないかというお尋ねでありますが、この協定は、日米安全保障条約の円滑かつ効果的な適用と国連を中心とした国際平和のための努力への寄与を目的とするものであります。
既にお答えを申し上げたとおり、この協定はいわゆる有事における米軍の戦闘作戦行動への協力としての物品・役務の提供に適用されるものではないということは明らかであり、米国の地域紛争への軍事介入を保障するためのものという御指摘とは私は全く相反する意見を持っております。
本協定に基づき提供される部品が、共同訓練の後、米軍の戦闘行動に使用される場合は、集団的自衛権の行使に当たるのではないかというお尋ねでありますが、自衛隊と米軍の共同訓練はあくまで憲法の範囲内で行われるものでありますし、米軍に対する物品または役務の提供は共同訓練の円滑化のために行われるものである以上、憲法上の問題を生じるものではありません。
共同訓練を名目にして米軍の威嚇行動に協力することは憲法違反だという仰せでありますが、自衛隊と米軍の共同訓練は、我が国の自衛隊が我が国の防衛という目的達成に必要な戦術技量を向上させることを目的とし、あくまで憲法の範囲内で行われるものであります。したがって、このような憲法の範囲内で行われる訓練の円滑化のために行われる米軍に対する物品または役務の提供が憲法上の問題を生じるとは思いません。
本協定のもとにおける武器輸出三原則などと憲法の理念との関係についてでありますが、この協定に基づいて提供されました物品及び役務の使用については、本協定上、国連憲章と両立するものでなければならないこととなっており、また、受領者以外の第三者への移転は提供者側の同意なしては禁じられております。これらによって、国際紛争などを助長することを回避するという武器輸出三原則などのよって立つ平和国家としての基本理念は確保されていると考えます。
なお、武器輸出三原則などは憲法が直接規定するものでないことは、従来から申し上げてきたとおりであります。
いずれにせよ、政府としては、武器輸出三原則などのよって立つ平和国家としての基本理念を維持していく所存であります。
残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣池田行彦君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/19
-
020・池田行彦
○国務大臣(池田行彦君) 聽濤議員御指摘の私の衆議院における答弁は、例えば御指摘のような緊急事態があるときにおいても、別途自衛隊と米軍の間で共同訓練が行われていることがある場合に、米軍に対しこの協定に基づき物品・役務を提供することが協定の解釈の問題として排除されているわけではないという趣旨でございます。
他方、このような状況下で共同訓練が実施されるか否かは、個別具体的な事態に即し判断することになるものと承知しております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/20
-
021・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これにて質疑は終了いたしました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/21
-
022・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第一 電波法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。逓信委員長及川一夫君。
—————————————
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔及川一夫君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/22
-
023・及川一夫
○及川一夫君 ただいま議題となりました電波法の一部を改正する法律案につきまして、逓信委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、無線局の増加等にかんがみ、電波利用料の金額を引き下げるとともに、電波利用共益費用に係る事務の例として、電波のより効率的な利用に資する技術を用いた無線設備の技術基準を定めるために行う試験及びその結果の分析の事務を加えるものであります。
委員会におきましては、電波利用料額の算定方法、携帯電話等の使用上の問題点、電波利用増大に伴う周波数逼迫対策等の諸問題について質疑が行われましたが、その詳細は会議録により御承知願います。
質疑を終了し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
なお、本法律案に対し、全会一致をもって附帯決議を行いました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/23
-
024・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/24
-
025・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/25
-
026・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 日程第二 外国船舶製造事業者による船舶の不当廉価建造契約の防止に関する法律案(内閣提出、衆議院送付)を議題といたします。
まず、委員長の報告を求めます。運輸委員長寺崎昭久君。
—————————————
〔審査報告書及び議案は本号末尾に掲載〕
—————————————
〔寺崎昭久君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/26
-
027・寺崎昭久
○寺崎昭久君 ただいま議題となりました法律案につきまして、運輸委員会における審査の経過と結果を御報告申し上げます。
本法律案は、商業的造船業における正常な競争条件に関する協定いわゆるOECD造船協定の円滑な実施を確保するため、外国船舶製造事業者による不当廉価建造契約を防止する措置等を講じようとするものであります。
委員会におきましては、OECD造船協定の具体的な実施方策、ダンピング調査の情報収集体制、世界の造船業の現状等について質疑が行われましたが、その詳細は会議録によって御承知願います。
質疑を終局し、採決の結果、本法律案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
以上、御報告申し上げます。(拍手)
—————————————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/27
-
028・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) これより採決をいたします。
本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/28
-
029・斎藤十朗
○議長(斎藤十朗君) 総員起立と認めます。
よって、本案は全会一致をもって可決されました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十一時十二分散会
—————・—————発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/113615254X02319960605/29
4. 会議録のPDFを表示
この会議録のPDFを表示します。このリンクからご利用ください。