1. 会議録本文
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000・会議録情報
平成二十年四月二十三日(水曜日)
午前十時一分開議
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○議事日程 第十四号
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平成二十年四月二十三日
午前十時 本会議
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第一 森林の間伐等の実施の促進に関する特別
措置法案(趣旨説明)
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○本日の会議に付した案件
議事日程のとおり
─────・─────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/0
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001・江田五月
○議長(江田五月君) これより会議を開きます。
日程第一 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案(趣旨説明)
本案について提出者の趣旨説明を求めます。若林農林水産大臣。
〔国務大臣若林正俊君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/1
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002・若林正俊
○国務大臣(若林正俊君) 森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案の趣旨につきまして御説明申し上げます。
森林は、国土の保全、地球温暖化の防止等の多面的な機能を有しておりますが、これらの機能の持続的な発揮を確保する上で、また、京都議定書の森林吸収目標を達成する上からも、間伐等の実施を促進することが喫緊の課題となっております。このため、京都議定書の第一約束期間の最終年度である平成二十四年度までの間における森林の間伐等の実施を促進するため、この法律案を提出した次第であります。
次に、この法律案の主要な内容について御説明申し上げます。
第一に、都道府県知事は、農林水産大臣が定めた基本方針に即して、間伐等の実施の促進に関する基本方針を定めることができることとし、また、市町村は、この基本方針に即して、間伐等の実施の促進に関する計画を作成することができることとしております。
第二に、国は、間伐等の実施の促進に関する計画を作成した市町村に対し、当該計画に基づく間伐等の実施に要する経費に充てるため、予算の範囲内で交付金を交付することができることとしております。
第三に、市町村が作成した計画に基づき実施される間伐等に関し地方公共団体が負担する経費について、地方債をもってその財源とすることができることとしております。
以上、森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案につきまして、その趣旨を御説明申し上げた次第であります。(拍手)
─────────────発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/2
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003・江田五月
○議長(江田五月君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。発言を許します。金子恵美君。
〔金子恵美君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/3
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004・金子恵美
○金子恵美君 民主党・新緑風会・国民新・日本の金子恵美でございます。
会派を代表いたしまして、議題となりました森林の間伐等の実施の促進に関する特別措置法案について、農林水産大臣及び関係大臣に質問いたします。
我が国の森林は、国土の三分の二に相当する二千五百万ヘクタールを占めておりますが、この森林は林産物の供給はもとより、国土の保全や水源の涵養、二酸化炭素の吸収など、現在と未来の人間の生存に欠かすことのできない基盤であると考えます。また、森林は、野生生物の育成の場となり、美しい景観を形づくり、伝統文化をはぐくみ、レクリエーション、いやし、憩いの場となります。
このような森林の多面的機能の評価額は、年間約七十兆二千六百億円にも相当すると言われており、人が森林に働きかけ、手入れをし、利用することによって発揮されるものであります。
しかし、我が国の山村の実情を顧みますと、過疎化が進み高齢化率が五〇%を超えるいわゆる限界集落が約七千九百に達し、私有林の不在村森林所有者が所有する森林面積は三百二十七万ヘクタール、四分の一に上ります。
多くの国民の皆さんを始め、平成十八年には千八百六十三団体と急増した森林ボランティア団体、それに多くの企業の方々が森林づくりに参加されるようになってきたとはいえ、林業が一つの産業として成り立たなくなっております。したがって、森林所有者や森林組合などが本来取り組まなければならない森林の管理が十分に行き届かなくなりました。このまま放置すれば、林業、山村の衰退が急速に進むばかりか、森林に期待される多面的機能の発揮に重大な影響を及ぼしかねません。
以上、我が国の林業と山村の現状認識と、そもそも森林・林業の再生の主眼がどこに置かれ進められているのか、お伺いいたします。
今年七月には、我が国において洞爺湖サミットが予定されております。我が国がイニシアチブを取って、地球温暖化対策など地球環境問題の解決に取り組んでいこうとしています。
我が国においては、京都議定書で温室効果ガスの排出削減目標は六%とされております。京都議定書締結時の議長国として約束した温室効果ガス削減目標の達成は、最重要課題であります。達成できなければ我が国の環境外交における威信は失墜し、国際的なポスト京都議定書の動向にも影響を与えかねないと思いますが、政府としての目標達成に向けた決意と具体的な取組を環境大臣にお伺いいたします。
次に、本法案は、我が国の森林・林業の現状を踏まえ、経済的な理由などから森林整備ができなくなっている森林について間伐の推進を特に図るという、誠に時宜にかなったものだと考えます。しかし、林業が衰退し、森林所有者の林業に対する意欲が薄れるなどの根本的な課題を抱えている現状においては、これまでも種々施策を講じているものの、本法案だけでは不十分ではないかと考えます。
政府は、昨年十月二日、地球温暖化対策本部において、京都議定書目標達成計画の見直しに向けた基本方針の中での検討項目として、美しい森林づくり推進国民運動の展開などにより、森林吸収源対策を推進することを決定いたしました。
運動内容は、森林所有者に対する取組、幅広い国民の参加、木づかい運動の推進となっております。また、推進体制として、発起人百三十四名、四十九団体から構成された美しい森林づくり全国推進会議も設立されました。
森林の公益的機能の発揮が期待され、このように大掛かりな運動を展開し、達成しなければならない課題であると政府自体が強く認識しているのであれば、森林組合等による間伐の実施が期待できない森林の整備を市町村に押し付けるのではなく、むしろ積極的に水源林造成事業などと一体的に国の関与により間伐を推進すべきと考えますが、御見解をお伺いいたします。
この法案の趣旨は、我が国の森林が京都議定書に基づく約束の履行に果たす役割の重要性にかんがみ、平成二十四年度末までの間における森林の間伐等の実施を促進するため、市町村による特定間伐等促進計画の作成等について定めるとともに、当該計画に基づく特定間伐等に関し、交付金の交付、地方債の特例等の措置を講ずることとなっております。
本法案では、国は特定間伐等促進計画を作成した市町村に対し、予算の範囲内で交付金を交付することができるとし、平成二十年度では十億円の予算措置がされております。
また、地方財政法の特例として、地方公共団体は、促進計画に基づく特定間伐等の実施又は助成に要する経費の一部について地方債の起債対象とすることができるとしております。
しかし、本法案に基づく交付金を受けて間伐等を行うとしても、この交付金の補助率は二分の一であること、また地方債の適用及びその償還金に関し普通交付税措置が講じられることとしておりますが、地方自治体は慢性的に財政が逼迫しており、森林面積の多い市町村は概して過疎地域も多いことから、財政負担が重くなることになり、起債や交付税の措置では十分に機能しないのではないかと危惧されます。御所見をお伺いいたします。
また、当然のことながら、間伐を実施するに当たり森林所有者の自己負担分が発生いたします。先ほど来申し上げてまいりましたが、現在のように林業経済コストがかさんでいる状況下においては、特にその軽減策が重要になってまいります。政府は、間伐材の利用拡大を促進することにより負担軽減を図るとしておりますが、どの程度までそれが可能であると見込んでいるのか、お聞かせください。
我が国における間伐面積はおおむね毎年三十五万ヘクタール程度で推移してまいりました。しかし、この面積では京都議定書の森林吸収源対策としては不足することとなり、平成二十四年までに毎年二十万ヘクタールの追加的な間伐等を行う必要があります。
市町村は、特定間伐等促進計画の作成に当たっては、実施区域の選定作業や計画の作成、森林所有者、組合との折衝など、各段階での手続があります。この交付金は、作業道の整備あるいは平成十八年度末時点で全国に一万七千ヘクタールある造林未済地への植林についても支援することができるとしています。こうした措置は使い勝手が良さそうに見えますが、実際は市町村にほとんどの作業を担わせることになり、市町村の限られた人員では相当困難な作業になると予想されますが、適切な措置と考えておいででしょうか、お伺いいたします。
また、都市に住んでいる森林所有者の相続などにより、森林所有の権利関係が複雑化し、所有者が不明確になっていたり、所有者が森林への関心を失い、結果として所有者自身も境界が分からなくなっている林地も多くなっているのが現状です。
農林水産省では、森林整備事業を実施するに当たっては測量なども支援対象にし、また、森林整備地域活動支援交付金制度を活用した、くい打ち等の作業に対する助成を行っています。また、国土交通省でも地籍調査や山村境界保全事業を実施しています。これらの連携による境界の確定、確認を推進していくとしておりますが、この地籍調査でも林地における進捗率は平成十八年度末現在で約七万四千平方キロメートル、四割程度でしかありません。市町村の作成する特定間伐促進計画の作成自体が困難であり、それに基づき間伐を行おうとしても、結局、適切な間伐が行えないのではないかと考えます。
特定間伐等促進計画については、計画区域における森林所有者の同意や境界についての了解を得ることができないままでも間伐を実行しようとしているのでしょうか。また、森林境界の問題について、どのように認識され、どのように解決していこうとしているのか、御所見をお伺いいたします。
森林の整備のためには、どうしても林道、作業道の体系的な整備、延伸が不可欠であります。単純には比較できませんが、作業道、林道、林内公道について、一ヘクタール当たりドイツが百十八メートル、オーストリアが八十七メートルなのに対し、日本は十六メートルであります。
我が党は、幹線林道のような高規格の道路は必要なく、それ以外の一般林道、作業道の整備が喫緊の課題であると主張してまいりました。間伐の計画を作って予算を付けても、道がなければ作業現場へは行けません。施業の機械化を進め効率的な林業施業を行ったり、間伐材を搬出し利用することもできません。間伐材が利用できなければ、支出だけがかさみ、間伐推進の取組も長続きしません。本法案に基づく特定間伐等の促進のため、路網整備をどのように進めていくのか、御見解をお伺いいたします。
私たち民主党は、昨年六月に森と里の再生プランを発表し、その施策を国民の皆様にお示ししたところです。森林・林業の再生は、私たちに計り知れない恵みをもたらします。山は地域や人を映す鏡とも言われています。山を再生することは、地域、人を再生することにほかなりません。森林と里に活力を与え、我が国全体を元気にするために、この機会を逃すことなく、持続可能な森林・林業政策を早急に実現すべきであります。
このことを強く申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)
〔国務大臣若林正俊君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/4
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005・若林正俊
○国務大臣(若林正俊君) 金子議員の御質問にお答えいたします。
まず、我が国の林業と山村の現状認識と森林・林業の再生に向けた取組についてのお尋ねでありますが、近年の林業、山村をめぐる情勢を見ますと、長期的に見た木材価格の下落による林業生産活動の停滞、林業従事者の減少や高齢化の進行等が課題となっている一方で、戦後造成された人工林資源の充実、加工技術の向上による間伐材の合板、集成材への活用等により、国産材に対する需要が高まるなど、明るい兆しも見えてきております。
このため、農林水産省としては、平成十八年九月に閣議決定された森林・林業基本計画に基づき、多様で健全な森林の整備保全を進めるとともに、需要に応じた国産材の安定供給体制の整備等により、林業、木材産業を産業として再生していく所存であります。
次に、森林の整備に対する国の関与についてのお尋ねでありますが、民有林における森林整備に当たっては、森林所有者や森林組合等による整備を基本として、間伐や造林等に対する補助事業などを実施しているところであります。これによっては適切な整備が進まない場合には、その立地条件等に応じて、水源林造成事業や都道府県による治山事業などにより公的機関が主体となって整備保全を行い、国がこれに助成しております。また、国自ら国有林野内における森林の整備保全を行うことはもとより、民有林における直轄治山事業や近接した民有林と国有林が一体となって森林整備や治山事業を行う取組などを進めているところであります。
今後とも、これらの取組を通じて、森林の有する公益的機能が十全に発揮されるよう努めてまいる所存でございます。
次に、市町村等の財政負担についてのお尋ねがございました。
地球温暖化防止は国民共通の課題であり、国、地方公共団体、国民挙げて取り組んでいく必要があると考えております。本法律案においては、森林吸収目的の達成に向けて、間伐材の事業量を大幅に増加させる上で、負担の増加分を全額一般財源から手当てしないで済むよう起債を措置するとともに、その元利償還について後年度の地方交付税措置を講じているところであります。
市町村等においては厳しい財政事情にあることは承知しておりますが、地球温暖化防止の重要性にかんがみ、この起債措置等による負担の軽減、平準化のための対策を有効に活用していただけるものと考えております。
次に、森林所有者の負担軽減についてのお尋ねでございますが、戦後植栽され、成熟しつつある人工林の資源を有効に活用して間伐作業の集約化、低コスト化や大規模な合板工場等への間伐材の安定的供給を行うことにより、森林所有者に対して実際に間伐材の売上げを還元し、負担をなくしている取組事例が見られております。
こうした事例は、地形等の条件が特別に恵まれた森林に限られているわけではないことから、低コスト作業システムの普及と国産材安定供給体制の整備を通じた間伐材の利用拡大による森林所有者の負担軽減の取組を全国に展開すべく努力してまいる所存であります。
本法案においては、国から市町村に対する直接交付金を市町村の創意工夫を生かした使い勝手の良いものにするとともに、林業事業体が促進計画に対して提案を行える仕組みを創設、国及び都道府県が市町村に対して必要な助言、指導等の援助を実施するなど、市町村が間伐促進計画の策定、実行などに円滑に取り組めるような措置を講じております。
次に、森林の境界についてのお尋ねでありますが、特定間伐等促進計画に基づく間伐の実施に当たっても、境界の取扱いを含めた関係森林所有者の同意が必要なことは通常の間伐と同様であり、森林整備事業の実施に当たっての測量や森林施業の集約化の活動に対する支援措置等を活用して、境界の明確化の促進を図っているところであります。さらに、国土交通省が地籍調査の関連で実施している山村境界保全事業とも連携して、森林境界の確認が円滑に進むよう努めているところであります。
今後とも、これらの施策を通じて境界の明確化を図りつつ、計画的かつ適切な間伐を進めてまいりたいと考えております。
最後に、路網整備についてのお尋ねでありますが、間伐等の森林整備を着実に推進するためには、森林施業の集約化とともに、高性能林業機械を活用した効率的な作業システムに対応し得るよう、林道と作業道、作業路の適切な組合せによる路網整備を進めることが必要であります。このため、従来からの都道府県を通じた補助事業に加えて、本法案に基づく新たな国の支援措置として、市町村がその自主性、裁量性を生かして作業路網の整備等にも活用できる新たな交付金を国から直接市町村に対して交付することとしております。
今後とも、地域の実情に応じた効果的な路網整備に努め、間伐の促進を図ってまいります。(拍手)
〔国務大臣鴨下一郎君登壇、拍手〕発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/5
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006・鴨下一郎
○国務大臣(鴨下一郎君) 金子議員の御質問にお答えいたします。
京都議定書上の六%削減目標の達成への決意と具体的な取組についてのお尋ねがありました。
今年開催されます北海道洞爺湖サミットなどの場を通じ、我が国が国際的にリーダーシップを発揮するためにも、京都議定書の六%削減目標を必ず達成することが必要であります。このため、あらゆる分野において対策を強化すべく、三月に京都議定書目標達成計画を改定いたしました。
自主行動計画の強化や国民運動の推進など様々な追加対策を盛り込み、国内の排出量を基準年比で〇・八%から一・八%削減し得ると見込んでおります。これに加え、森林吸収分として、二〇〇七年度から六年間にわたり毎年二十万ヘクタールの追加的な間伐を行うことにより、基準年比三・八%分の吸収量を確保することを見込んでおります。さらに、これらの対策に加え、京都メカニズムを活用することによって六%削減目標を達成することとしております。
ただし、今後、経済活動の活発化などにより目標達成が困難になることも考えられるため、適宜適切に計画の進捗状況の厳格な点検と機動的な見直しを実施し、必要な対策の追加、強化を行い、六%削減目標を確実に達成してまいりたいと考えております。(拍手)発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/6
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007・江田五月
○議長(江田五月君) これにて質疑は終了いたしました。
本日はこれにて散会いたします。
午前十時二十八分散会発言のURL:https://kokkai.ndl.go.jp/simple/txt/116915254X01420080423/7
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